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掲載日:2021年9月10日

就職・20代社会人

年収500万円、貯蓄はいくら必要?若手社会人のための“失敗しない”お金のやりくり

フィナンシャルプランナー(FP)に相談してみた! 年収500万円、貯蓄はいくら必要? 若手社会人のための“失敗しない”お金のやりくり

毎月の給与を何にどれくらい使うべきかについて、きちんと考えたことはありますか。将来のための資金はどの程度必要なのか、そしてそのために今どれくらい貯蓄が必要なのか、まだイメージできないという方が多いのではないでしょうか? そこで、今回はファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ長沼 満美愛(ながぬま まみえ)さんに、若手社会人のための資産形成についてお話を伺いました。相談者は、東証一部上場企業に勤める社会人1年目のSさん。Sさんの資産形成はどうすると良いか、長沼さんにアドバイス頂きました。

今回のご相談者 社会人1年目 23歳男性/独身 東証一部上場の金融系企業勤務 会社の寮(月12,000円)に住んでいる 年収500万円

社会人1年目。毎月の貯蓄額はどのくらい?

長沼FP:まずは、給与や支出についてお聞かせ頂けますか?

Sさん:月収が手取りで約26万円です。現在会社の寮に住んでおり、その費用が月に1万2,000円です。食費に大体月4万円ほどかかっており、それ以外の生活費で月7万円、雑費が8万円ほどです。残りの6万円を毎月貯蓄しています。コロナの影響もあってお金を使う機会が減ったので、今までより貯蓄に回せているかなと思っています。

長沼FP:年収500万円の方の貯蓄割合は手取りの17%ですから、会社の寮で家賃が抑えられていることと、ボーナスを含めて毎月8~10万円を貯蓄することを目標にすると良いですね。社会人になって、入社前と比べてお金の面で気付いたことはありましたか?

Sさん:想像していたよりも、出費が多かったです。3~4万円くらいのスーツを数着買ったり、靴も3足ほど揃えたりと、仕事に必要なものを揃えるのに特にお金がかかりました。また、一人暮らししている友人は、家賃や光熱費の負担が大きく貯金が難しいと言っていたので、今後寮を出ることも視野に入れると、今から節約しておいた方がいいのかなとも思っています。

長沼FP:そうですね。Sさんのご友人のように一人暮らしをされている方の場合、月の家賃や光熱費は、会社の家賃補助なども鑑みると約3.6万円といわれています。Sさんのように寮に入っている方や、実家で暮らされている方はその分を貯蓄に回すことができるので、資産形成のチャンスですよ。それではSさんのライフプランを伺いながら、これからの資産形成について一緒に考えていきましょう!

  • 年収500万円の貯蓄割合は手取りの17%~30%が理想的

人生100年時代。お金の備えはいくら必要?

長沼FP:いま必要な貯蓄額を考えるには、やはり将来何をしたいか、そしてそれにかかる費用がどれくらいかを考えることが重要です。まだ入社したばかりで、将来の計画もそこまで具体的ではないとは思いますが、まずはSさんがここ10年のうちにしたいと考えていることを教えてくれませんか?

Sさん:そうですね、20代のうちに結婚したいと考えています。実は学生時代に結婚式場でアルバイトをしていたんです。それもあって結婚に強い憧れがあります。結婚式もぜひしたいですね。

長沼FP:そうなんですね。ご結婚された後は、共働きがいいとか、子供が欲しいみたいなご希望はありますか?

Sさん:結婚相手の希望次第ですが、共働きを考えています。子供は、僕が二人兄弟なので二人欲しいです。あと、マイホームにも憧れがあって、できれば住宅は購入したいと考えています。

長沼FP:なるほど、ありがとうございます。では、それぞれの費用について具体的に考えていきましょうか。

まず結婚についてですが、大きくお金がかかるのが、結婚式・結納・新婚旅行・新居費用です。Sさんのご希望次第ですが、結婚式の費用の平均は362.3万円です。ただし、一般的にはご両親からの援助が180~190万円ほどあり、飲食代や引き出物の費用もご祝儀で賄えるでしょうから、結婚式の費用は貯蓄から捻出することを想定しなくても問題ないでしょう。ただ、婚前の両家での食事会、婚約指輪の費用等を平均すると、二人で78万円かかりますので、場合によっては準備が必要です。次に新婚旅行ですが、新婚旅行は海外に行く方が多いため、二人で72万円ほどを目安に、行き先やプランを決めると良いでしょう。最後に新居費用ですが、家具・家電の新調や敷金・礼金を合わせて、大体102万円かかります。これらを合計するとだいたい252万円ですね。今23歳のSさんが仮に29歳で結婚するとした場合、今から月1万7,500円の積み立てが必要です。

  • 婚前の費用と新婚旅行、新居や新生活の物品購入を合わせると、二人で252万円必要

Sさん:やっぱり結構お金がかかりますね。結婚式の費用などは何となく頭にあったのですが、新居の費用や婚前の費用まで考えられていませんでした。また、出産への備えはいかがでしょうか。準備を早いうちから始めておいた方が安心でしょうか。

長沼FP:病院によって異なりますが、出産そのものにかかる費用は子供一人につきおよそ50万円といわれています。ただし、健康保険から出産育児一時金が42万円ほど給付されます。そのため差額は8万円となりますが、妊娠・出産への準備品の購入と、赤ちゃんグッズを揃えることも考えて、50万円ほど目安に準備しておくと安心です。出産が31歳だと仮定すると、二児の出産費用のためには今から、月5,200円を積み立てると良いですね。

  • 出産に必要な費用は子供一人につき約50万円

Sさん:出産準備にも結構お金が必要なんですね。マイホームが欲しいと思っていましたが、お金が足りるか不安になってきました。

長沼FP:住宅購入を予定しているのであれば、無理のないローン返済計画が立てられるように早めの購入がおすすめです。
住宅を購入する場合、頭金に2割、諸費用に1割として、購入時に購入金額の3割の現金があると安心です。仮にSさんが5,000万円のマンションを購入する場合、現金で1,500万円の準備をしておく計画です。31歳に購入するとした場合、お二人で準備するのであれば一人750万円が必要となるので、月7万8,000円の積み立てが必要になりますね。

  • 購入のタイミングまでに、物件価格の3割の現金があると安心

▼各ライフイベントの費用と今から必要な毎月の貯蓄額

ライフイベント
(想定年齢)
項目 費用(二人分) 必要な毎月の貯蓄額
(一人分)
結婚
(29歳)
挙式・披露宴 (362.3万円) 1万7,500円
食事会・婚約指輪等 78万円
新婚旅行 72万円
新居 102万円
出産
(31歳・33歳)
出産・諸費用 100万円 5,200円
マイホーム
(31歳)
頭金と諸費用 1,500万円 7万8,000円
合計 1,852万円 10万700円

(数値出典:長沼FP調べ)

Sさん:ここまでの金額を合算すると、毎月約10万円の積み立てが必要になるんですか。予想以上にお金が必要で驚きました。

長沼FP:そうです。しかも、これはあくまで今後10年のために必要な金額です。このほかにも、子供の教育費や住宅ローンの返済など、様々なことにお金がかかっていきます。例えば、Sさんはお子さまに中学受験をさせたいという考えはお持ちですか?

Sさん:まだそこまで考えていないですが、子供の希望に合わせていきたいと考えています。

長沼FP:そうですよね。ではいったん比較的お金のかかるパターンとして、お子さまが中学受験後、私立の中学校・高校を経て、私立大の理系に進学することを想定します。そうするとおよそ1,785万円かかると想定されます。Sさんの場合、お子さまはお二人欲しいとおっしゃっていたので、この金額の2倍の3,570万円を想定しましょう。

Sさん:結構な金額がかかりますね。ここにさらに住宅ローンの支払いもあるんですよね。

長沼FP:そうですね。例えば、Sさんが住宅購入にあたって4,000万円のローンを組んだとします。ローンの返済には年間125万5,000円、月に換算すると10万4,000円の返済が65歳まで続き、住宅の管理費や固定資産税が月6万円弱とすると、月16万2,800円ほどがかかる計算です。

Sさん:なるほど、こんなに必要なんですね。ここまでお金を使ってしまうと、老後の蓄えなどを用意できるかどうか不安です。

長沼FP:今回、Sさんのライフプランを考えるにあたって、奥さまの年収を、新卒入社時から60歳まで400万円、60歳以降はパートで100万円と想定しています。もしこの通りの収入で、厚生年金に加入されている場合でしたら、老後の年金は二人で月32万円見込めます。Sさんの老後の生活水準次第ではありますが、これだけの年金収入があれば、基本的には老後の生活にお困りになることはないでしょう。

▼年齢別の貯蓄残高の推移(Sさんのライフプランの場合)

貯蓄残高推移のグラフ

若手社会人は、若さを武器にした計画的な資産形成をしてみては?

長沼FP:ライフプランのシミュレーションを通じて、早くからの資産形成が大切だとわかっていただけたと思います。では、資産形成をどのように行っていくかについてですが、Sさんは今、何か資産形成に取り組んでいますか?

Sさん:学生時代から、月1万円の掛け金でつみたてNISAを運用しています。後は企業型確定拠出年金を会社経由で月1,000円と、会社の一般財形貯蓄制度を利用しています。

長沼FP:学生時代から資産形成に取り組まれているのですね。素晴らしいです。資産形成を始めるにあたって、まずはつみたてNISAをおすすめします。つみたてNISAは金融庁が選定した商品に絞られているので、コストが安くて良質な商品が揃っています。投資の初心者でも始めやすく、運用益が非課税になるので、ぜひ活用していただきたいです。しかも、つみたてNISAは年間40万円まで利用できます。最大限活用するためには、現状の月1万円から、上限である月3万3,000円の掛け金にした方が良いでしょう。

また、住宅購入の可能性があるなら、一般財形貯蓄ではなく財形住宅貯蓄にした方が良いですね。通常の金融商品は、利息に対して税金がかかります。しかし、財形住宅貯蓄の場合、住宅購入の目的で払い出しをした場合、非課税になるのです。万一住宅購入を見送って目的外で払い出しをする場合でも、通常の金融商品と同じ課税方法になります。
非課税にできる上限は、550万円まで。月4万5,000円だと10年超で上限に達するため、31歳で住宅を購入するには、ちょうど良い貯蓄ペースではないでしょうか。

Sさん:つみたてNISAの掛け金や、財形住宅貯蓄についてなど、よく分かっていませんでした。それでは、企業型確定拠出年金の掛金も増やした方が良いでしょうか。

長沼FP:企業型確定拠出年金は事業主が掛金を拠出するため、年次等に応じて掛金が会社で決められている可能性があります。しかも、確定拠出年金は老後資金を積み立てるもので、60歳まで引き出せません。23歳という今のご年齢でしたら、少額での積み立てでも良いと思いますよ。若いうちは、いざとなったら現金化できる形で積み立てた方が良いと思いますので、確定拠出年金の掛金については、ご結婚されて余裕が生まれたときや、老後が心配になったときに見直すと良いでしょう。

さて、つみたてNISAと財形住宅貯蓄で月7万8,000円ほどになりました。仮に月10万円の貯蓄を目標にする場合、残りは2万2,000円です。こちらは、特定口座などで積立投信等に活用してはいかがでしょうか。運用益に税金がかかってしまいますが、つみたてNISAでは取り扱っていない商品も購入できます。ここでは、積極的な運用スタイルを選んでみてはいかがでしょう。

積み立てというのは、時間を味方にできる資産形成です。たとえ相場が悪い期間があっても、その期間には同じ金額で口数を増やすことができるので、その後相場が好転したときには有利になりますよね。長い目で見れば相場の上下によるデメリットも少ないですから、ぜひ新興国株が含まれる商品や、NASDAQ100に入っている銘柄やNYダウ、S&P500などに連動をめざす投資信託、またはパッケージの商品などを活用してみると良いでしょう。

Sさん:ありがとうございます。一つ気になったのが、毎月の貯蓄を全て資産形成に回してしまっていいのか、という点です。手元に現金を残しておかなくて大丈夫なのでしょうか?

長沼FP:そうですね、毎月の給料が現金として残らないと不安になる気持ちもわかります。そのためにはボーナスを現金として残しておくと良いでしょう。また、入社したての2~3ヵ月の収入は手元に残しておき、夏以降に貯蓄計画を実行していくと安心です。しかし、やはり若いうちから資産形成の経験を積むことをおすすめします。20代の今始めるのと、40代で資産形成を始めるのでは圧倒的に差が出ます。若い頃から自分のライフプランを想像して資産形成を始めておくと、将来も安心です。

Sさん:よく分かりました。今一度自分の資産形成を見直してみたいと思います。

▼Sさんが月10万円を資産運用する場合の長沼FPおすすめプラン

項目 金額
つみたてNISA 3万3,000円
財形住宅貯蓄 4万5,000円
積立投信 2万2,000円
合計 10万円

今回は社会人1年目であるSさんの資産形成についてお話を伺っていきました。若い頃から資産形成の経験を積むことで、将来の自分の資産にも影響が出てきます。また、早く始めれば始めるほど、少額の積み立てでリターンが低くても、時間が味方をしてくれるためローリスクで資産を増やしやすくなります。まずはつみたてNISAを活用し、財形住宅貯蓄や確定拠出年金、そして積立投信などについても検討してみてはいかがでしょうか。

  • つみたてNISA:毎年上限40万円で一定の投資信託が購入可能。非課税投資枠は20年間で最大800万円。(若手社会人が始めるのにおすすめ!)
  • 財形住宅貯蓄:毎月の給与から一定額を天引きして積み立てる。住宅を購入しない場合を除いて、利子等が非課税になる。55歳未満の従業員が対象となる。財形年金貯蓄と合わせて元利合計550万円までの利子が非課税になる。(※福利厚生として導入している会社のみ利用可)
  • 確定拠出年金:老後に向けて掛金を積み立て、預金や投資信託など自分で選んだ商品で運用する年金制度。勤務先で加入する「企業型確定拠出年金」と個人で加入する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がある。拠出時、運用中、受取時にそれぞれ税制優遇があり老後資金の準備におすすめだが、原則60歳まで途中の引き出しはできない。

長沼満美愛

長沼満美愛

ファイナンシャルプランナーCFP(R)・1級FP技能士

神戸女学院大学英文学科卒業後、損害保険会社に就職。積立・年金・介護など長期保険に特化した業務を担当。そのあと、FP協会相談室の相談員として従事。現在、大学・資格の学校TAC・オンスク.JPにて資格講座の講師として活動するかたわら、セミナー講師や執筆も手がける。『あてるFP技能士1級』(TAC出版)を執筆。毎日新聞「終活Q&A」コラム寄稿。毎日新聞生活の窓口相談員。塾講師・家庭教師の豊富な経験を活かして、「誰でも分かるセミナー講師」・「親身なFP個別相談」をめざす。

(記事提供元:サムライト株式会社)

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

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