ページの先頭です

掲載日:2021年11月10日

住宅購入

34歳で駅チカ中古1LDKを購入。税制優遇を受けるには?

フィナンシャルプランナー(FP)に相談してみた! 34歳で駅チカ中古1LDKを購入。税制優遇を受けるには?

今年、住宅を購入したMさん。もうすぐ年末なので、税理士でFPの中島典子さんに住宅ローン控除についての内容や手続き方法等を相談しました。ほかにも、年末だからこそ意識しておきたい税負担を軽くするポイントを確認。

今回のご相談者 34歳女性(東京都) 東証1部上場の製造業、勤続11年 1人暮らし 住まい:持ち家(マンション) 年収:620万円 金融資産:300万円(預金250万円、持ち株50万円)

30代で家を買った理由は?

中島FP:お一人で住宅を購入されたのですね。どのような家を買われたのでしょうか。

Mさん:今年、都内に43.42平方メートル、築20年の中古マンションを業者から買いました。

中島FP:価格はどれくらいでしたか?

Mさん:3,680万円でした。住宅ローンは、2,800万円を期間35年、変動金利1,960万円+全期間固定840万円のミックスで借りました。月返済額は81,000円で、ボーナス払いは組みませんでした。

中島FP:頭金は880万円ですね。これはどのように貯めましたか。

Mさん:財形貯蓄で貯めた分と、両親から600万円の贈与を受けてまかないました。

中島FP:20歳以上の人が、自宅を購入したり新築・増改築するための資金を父母・祖父母などの「直系尊属」から贈与されたりした場合、一定額までは非課税になります。上限は1,000万円ですが、これに贈与の基礎控除110万円を上乗せして1,110万円まで非課税で贈与を受けられます。上限は住宅の性能によって異なります。

Mさん:贈与税がかからないことを知って、贈与をしてくれたのですね。

中島FP:贈与を受ける人の合計所得金額2,000万円以下の場合は、50~240平方メートルが要件ですが、2021年は合計所得金額1,000万円以下であれば40平方メートル以上と緩和されたのです。
贈与を受けた翌年3月15日までに贈与の確定申告が必要ですのでお忘れなく。

Mさん:分かりました。

購入した住宅の概要

  • 物件:中古マンション
  • 広さ:43.42平方メートル
  • 価格:3,680万円
  • 購入年月:2021年3月
  • 住宅ローンの借入期間:35年
  • 借入額:2,800万円
  • 金利タイプ:ミックス(変動金利1,960万円+全期間固定840万円)
  • 金利:変動金利 0.79%、全期間固定 1.85%
  • 返済額:月81,000円(ボーナス返済なし)
  • 団信:普通団信

中島FP:ちなみに、34歳というご年齢で住宅を買われたのは何か理由があるのでしょうか。

Mさん:定年退職後に収入がなくなると、家を借りるのは難しくなると思ったので、買える時に買おうと思い販売会社に相談しました。

中島FP:今は超低金利ですし、タイミング的にもよかったですね。購入後の家計も拝見しましたが、毎月の貯蓄もできていて問題ないです。つみたてNISAで長期の資産形成を始めるのもいいですね。

Mさん:そうですね。口座を開いたままでしたが、研究して挑戦してみます。

マンション購入後のMさんの月間収支
収入
本人の手取り収入 30万円
支出
住宅ローン 8.1万円
管理費・修繕積立金 2.4万円
食費 4万円
水道光熱費 1万円
通信費 1.4万円
日用雑貨 0.5万円
こづかい 3万円
その他 3.2万円
保険料 0.4万円
貯蓄 6万円
合計 30万円

住宅ローン控除について

中島FP:ところで、住宅ローン控除の概要はご存じですか?

Mさん:不動産会社からだいたいの説明は聞きました。

中島FP:住宅ローンを利用して住宅の新築・取得、または増改築等をした場合、一定要件を満たせば、住宅ローン控除を受けることができます。税額控除により所得税が軽減されますが、所得税で控除しきれない場合は住民税も軽減されます。

Mさん:住宅ローン控除が適用になる物件を探してもらいましたが、なかなか出会えず大変でした。

中島FP:控除されるのは年末の住宅ローン残高の1%で、物件により上限額が定められています。

Mさん:私の場合は13年です。

中島FP:これまで合計所得額3,000万円以下で床面積50平方メートル以上が要件でしたが、2021年から緩和され、合計所得額1,000万円以下なら40平方メートル以上で受けられるようになったのです。

Mさん:やはりタイミングがいい(笑)。

住宅ローン控除の概要
居住開始年月 消費税率 種類 年末残高限度額 控除期間 控除率 住民税からの控除上限額
1~10年目 11~13年目
2019年10月1日~2022年12月31日 10% 一般住宅 4,000万円 13年間 1% 「年末残高×1%」か「建物価格×2%÷3年」の低い方 136,500円/年
認定住宅等 5,000万円
2019年10月1日~2021年12月31日 かからない 一般住宅 2,000万円 10年間 97,500円/年
認定住宅等 3,000万円
住宅ローン控除の概要
居住開始年月 2019年10月1日~2022年12月31日 2019年10月1日~2021年12月31日
消費税率 10% かからない
種類と年末残高限度額 一般住宅:
4,000万円
一般住宅:
2,000万円
認定住宅等:
5,000万円
認定住宅等:
3,000万円
控除期間 13年間 10年間
控除率:
1~10年目
1%
控除率:
11~13年目
「年末残高×1%」か「建物価格×2%÷3年」の低い方
住民税からの控除上限額 136,500円/年 97,500円/年

国税庁サイトを参照し作成

中島FP:ただし、会社員の場合、2年目からは年末調整で済みますが、初年度は確定申告を行う必要があります。

Mさん:確定申告をこれまで行ったことがなく、そのあたりが心配でした。

中島FP:会社員であるMさんの場合、確定申告(還付申告)は2022年の1月4日~3月15日までに行います。今はPCやスマホを使って、国税庁のウェブサイト(e-Tax)からでも申告や納税が可能です。

Mさん:それはラクですね。

中島FP:まずは、以下のような必要書類を集めます。手順としては、住宅借入金等特別控除額の計算明細書に入力をして控除額を算出し、確定申告書を入力します。

<確定申告を行う際の必要書類>

  • 源泉徴収票(職場で受け取る)
  • 土地・家屋の登記事項証明書
  • 不動産売買契約書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書(金融機関から郵送)
  • マイナンバーカードまたは通知書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算証明書(e-Taxで入力)
  • 確定申告書(e-Taxで入力)

Mさん:郵送しなくていいのですね。

中島FP:e-Taxならネットで完結です。還付金は、手続完了後1ヵ月後くらいに、指定口座に振り込まれます。2年目以降は年末調整でできます。

Mさん:そんなに難しくなさそうですね。ほっとしました。

年末だからチェック!他にもある、控除を受けられるもの

中島FP:実は住宅ローン控除だけでなく、他にも年末にチェックしておきたいものがあります。住宅ローン控除は「税額控除」といって、算出された金額がそのまま所得税・住民税から引かれますが、ここから説明するのは「所得控除」です。所得控除は、計算の過程で所得から引かれたのちに、税額が計算されるものです。

Mさん:2種類あること、覚えておきます。

<生命保険料控除について>

中島FP:生命保険に入っていると受けられる所得控除が生命保険料控除です。生命保険には入っていますか?

Mさん:はい。養老保険300万円と終身医療保険です。

中島FP:契約は2012年以降ですか?

Mさん:そうです。

中島FP:となると新制度の適用ですね。保険料はいくらですか?

Mさん:養老保険は10年満期で保険料は年30万円。医療保険は入ったばかりで月4,500円が年内3ヵ月です。

中島FP:つまり、下表で計算すると、一般生命保険料控除が40,000円、介護医療保険料控除が13,500円、合計53,500円が所得から控除できることが分かります。

Mさん:そうやって計算することも知りませんでした…。

生命保険料控除(所得税)
新制度(2012年以降) 旧制度(2011年まで)
年間保険料 控除額 年間保険料 控除額
~20,000円 払込保険料全額 ~25,000円 払込保険料全額
~40,000円 (払込保険料×1/2)+10,000円 ~50,000円 (払込保険料×1/2)+12,500円
~80,000円 (払込保険料×1/4)+20,000円 ~100,000円 (払込保険料×1/4)+25,000円
80,000円超 一律40,000円 100,000円超 一律50,000円
一般生命保険料控除 上限40,000円 一般生命保険料控除 上限50,000円
介護医療保険料控除 上限40,000円 個人年金保険料控除 上限50,000円
個人年金保険料控除 上限40,000円 合計 上限100,000円
合計 上限120,000円
【新制度(2012年以降)】
生命保険料控除(所得税)
年間保険料 控除額
~20,000円 払込保険料全額
~40,000円 (払込保険料×1/2)+10,000円
~80,000円 (払込保険料×1/4)+20,000円
80,000円超 一律40,000円
一般生命保険料控除 上限40,000円
介護医療保険料控除 上限40,000円
個人年金保険料控除 上限40,000円
合計 上限120,000円
【旧制度(2011年まで)】
生命保険料控除(所得税)
年間保険料 控除額
~25,000円 払込保険料全額
~50,000円 (払込保険料×1/2)+12,500円
~100,000円 (払込保険料×1/4)+25,000円
100,000円超 一律50,000円
一般生命保険料控除 上限50,000円
個人年金保険料控除 上限50,000円
合計 上限100,000円

国税庁サイトを参照し作成

<医療費控除について>

中島FP:次は医療費控除。家族全員で1年間に支払った医療費の合計が10万円(所得が200万円以下なら、所得の5%)を超えた場合、確定申告をすることで、税金が還付されることがあります。今年、医療費はかかりましたか?

Mさん:ほとんどかかっていません。

中島FP:「セルフメディケーション税制」というものもあって、医療費控除といずれか一方が利用できます。健康診断を受けるなど所定の健康増進を行っている人が、厚生労働省指定の「スイッチOTC医薬品」を12,000円以上購入していれば、超えた分の医療費控除が受けられます(最高88,000円まで)。レシートをチェックすると該当するかどうか分かります。

Mさん:薬のレシート、捨ててしまいました。来年からは取っておきます…。

中島FP:年内もまだ時間がありますので、もし薬を買われるときは意識しておいてください。

Mさん:そうですね。

中島FP:一般的に、医療費控除が適用になる場合や、もうちょっとという場合、年末までに歯医者に行くなど必要な医療を受けるのも一つです。

<寄附金控除について>

中島FP:今年、寄附などはされましたか?赤十字などへの寄附だったり、ふるさと納税も該当します。ただし、寄附金控除として控除証明書が発行されるものでないと確定申告は受けられません。

Mさん:寄附はしていないですね。

中島FP:寄附をしたときも所得控除を受けられます。一部、税額控除に該当するものもありますが、控除証明書を見るといずれに該当するか確認できます。

Mさん:ふるさと納税はやってみたいと思っていました。周囲でやっている方はいますが、私は未経験です。

中島FP:所得控除が受けられる寄附の場合、年間の寄附額から2,000円を引いた分が寄附金控除となります。ふるさと納税は応援したい自治体を指定して寄附をすることで、農産物・海産物などの返礼品を受け取ることができます。

Mさん:来年、やってみようかしら。

中島FP:来年と言わず、12月末までなら今年の分の寄附金控除も可能です。ただし、住宅ローン控除と生命保険料控除を受けても、戻せる所得税・住民税があるかどうかを、今年の収入で確認する必要があります。昨年と同じ収入だった場合、自己負担2,000円でおさめるとして、8万円くらいまでのふるさと納税は可能なようです。

Mさん:ありがとうございます。

<小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)について>

中島FP:もう1つお聞きしますが、老後のためのiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)はやっていますか?

Mさん:職場には企業型DC(企業型確定拠出年金)があり、できないのです。

中島FP:企業型DCがあっても、規約でできるようにしている企業もありますが、ほとんどの企業はできません。ただし、2022年10月からは、加入者本人の意思で併用ができるようになります。

Mさん:そうなんですね。老後用とのことなので、40歳過ぎたら始めたいと思っています。

中島FP:iDeCoの掛け金は、小規模企業共済等掛金控除として全額所得控除され、税負担を軽くする効果が大きいのも特徴です。

Mさん:そうなのですね。

中島FP:Mさんの場合、今年だと、住宅ローン控除と生命保険料控除で所得税が30万円は戻せる感じなので、今後の収入の伸びや住宅ローン残高の減り方などを見ながら、ふるさと納税やiDeCoを始めるといいですね。

Mさん:源泉徴収票は必ず確認するようにします。

12月は節税を考えながら過ごそう

個人の課税は12月が締めです。医療費控除のプラスアルファで治療を考えていた歯医者等に行く、ふるさと納税を年内に行うなど、12月中にできることを考えましょう。また、Mさんのように住宅ローン控除を受ける場合は、書類集めなどをしっかり進め、関係書類をなくさないように保管しておくことも大事です。贈与の確定申告も期限までに行わないと課税されますので、忘れないようにしましょう。

うっかり忘れそうなときは、生命保険や地震保険の保険料控除証明書や住宅ローンの残高証明書など、届いた関係書類は1ヵ所にまとめておくようにしましょう。確定申告も早めに済ませてすっきり!を心掛けたいものですね。

  • 記事中の金利は年率で表示しています。

中島 典子さんの写真

中島 典子

税理士、社会保険労務士、相続診断士 、CFP®認定者、1級FP技能士

中島典子税理士事務所代表。外資系会計事務所の税務部門を経て独立。「笑顔で円満相続」の普及を推進。相続贈与を中心とした税務業務のほか、FP関連書等の執筆、個別相談業務、講師などで活動中。大蔵財務協会「会社が知っておきたい 補助金・助成金の活用&申請ガイド(令和3年度版)」など著書多数。親の介護・相続と自分の老後に備える会メンバー。

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

関連記事

【前編】年収850万円超だと税負担アップ!?2020年税制改正について解説

2018年3月28日に「所得税法等の一部を改正する法律案」および「地方税法等の一部を改正する法律案」が国会で可決・成立しました。

住宅ローンと投資をどう考える?(39歳カップルに聞いてみた)

山本晃さんと、まゆみさん(仮名)は39歳、同い年の共働きカップル。都内の2LDK、50m²のマンションに3歳の久美ちゃんと三人暮らしです。このマンションを買ったのは約6年前。

20代から50代まで!今iDeCoを始めるべき理由

2019年の金融庁による報告書がきっかけで話題となった「老後資金2,000万円問題」や「人生100年時代」といった言葉が社会に浸透したように、個人で行う老後資産の形成はこれまで以上に重要となってきています。

ページの先頭へ