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掲載日:2020年12月25日

iDeCo

損をしそうになったら思い出すべし!行動経済学から考える投資の心得

キービジュアル

iDeCoは、老後の資産形成のための積み立て制度ですが、中長期的にお金を増やす「投資」としての一面もあります。

ところで、「行動経済学」という言葉は聞いたことがあるでしょうか?行動経済学は、人が投資をするとき、その人の性格やクセなどの心理的な部分が投資のやり方にどう影響するかに注目した理論です。

結論から言うと、人は不安や課題を抱えたときに誤った判断をしやすいことが分かっています。そこで今回は、人が不安や課題を抱えやすい「自分が運用している資産の相場が下がったとき」の心得について、行動経済学の観点から解説します。

人は「得するよりも損を避けたい」と考えがち

プロスペクト理論イメージ

投資にチャレンジする上で、ぜひ知っておくべき行動経済学のテーマの一つが「プロスペクト理論」です。この理論によれば、人は「得をして嬉しい!」という気持ちよりも、「損をしてガッカリ…」という気持ちを強く感じやすいという傾向があるのです。

では、次の二つの質問について、考えてみてください。

Q1.どちらを選びますか?

  • A.無条件で3,000円の焼肉食べ放題にいける
  • B.半分の確率で10,000円の高級焼き肉食べ放題にいけるが、半分の確率でなにも食べられないくじを引く

Q2.どちらを選びますか?

  • A.無条件で6,000円の焼肉を友達におごる
  • B.半分の確率で15,000円の高級焼き肉を友達におごることになるが、半分の確率でなにも損をしないくじを引く

もし1問目でAを選び、2問目でBを選んだ場合、その人は損を避けたいという気持ちが強く、プロスペクト理論にあてはまります。

1問目でAを選んだ方は、リスクをとらずに確実な利益を優先しました。リスクをとらないのは、「得したい!」という気持ちがそこまで強くないからです。しかし、期待値はBのほうが(10,000円+0円)÷2=5,000円になり、Aの3,000円よりも高いため、実はBを選ぶほうが得する可能性が高いのです。

2問目でBを選んだ方は、リスクをとって損失そのものを回避することを優先しました。リスクをとったのは、「1円も損したくない!」という強い気持ちがそうさせています。しかし、Bの期待値は(-15,000円+0円)÷2=-7,500円になるため、Aの-6,000円よりもマイナスが大きくなり、損する可能性が高くなります。

このように、損得に気持ちを揺さぶられると、リスクに対する感覚がマヒする危険性があるのです。

これは投資にも同じことが言えて、自分が買った金融商品の相場が下がると、気持ちが先行することでかえってリスクの高い行動をとってしまうかもしれません。

プロスペクト理論を意識しておくと、今後の投資運用の見方が変わり、高い運用結果を生みだせる可能性が高まるかもしれません。感情に左右されず、利益は大きく損失は小さい形で結果を出すために冷静に考えることが大切です。

投資にかかわる判断を直感や経験則で行うのは危険!

イメージ

行動経済学のテーマでもう一つ押さえておきたいのが、「ヒューリスティック」です。ヒューリスティックとは、正確な情報が分からない物事について決定するとき、自分の経験や直感に頼ってしまう人間の心理です。

たしかに、論理的に考えて答えを出すよりも、「過去の経験から言ってこれ!」「よく分からないけど直感的にこれ!」という判断の方が楽で、早いかもしれません。人は日常で無意識のうちにヒューリスティックを活用すると言われています。しかし、必ずしも経験や直感による決断が正しいわけではありません。

例えば、Aさんが持っている株式投資信託が急落したとします。

パニックになったAさんは「すぐに売らなければもっとひどいことになる!」と直感的に考え、慌てて保有している投資信託をすべて定期預金にスイッチングしました。しかし相場の下落は一時的なもので、1ヵ月後には基準価額が元通りになるどころか、右肩上がりの好調を示すようになったのです。

結局Aさんは投資信託を買い戻すタイミングを失い、基準価額が安いときに売っただけでなく、本来得られるはずの利益もみすみす手放してしまいました。

このように、深く考えず安易に行動してしまうと、思わぬ損失を被ってしまうかもしれません。

投資の結果に絶対はありませんが、ヒューリスティックをできるだけ排除することで、有益な情報を見落としたり、必要な分析を怠ったりすることを防げるのです。

運用している資産の相場が下がったときも買い続けるべき理由

イメージ

ここまでに解説したように、人間は損得にかかわることでピンチになると、損を避けるために合理的でない行動を取ったり、経験や勘に頼った行動をとりやすいことがわかっています。

そこで、自分が持っている資産の価値が下ったときの心得を持っておくと、その場の心理に流されずに済みます。

その心得の一つが、「とにかく買い続けるべし」です。

iDeCoは毎月の積み立てで運用する制度なので、「買い続ける」という点では自動的に達成可能です。

しかし、iDeCoの運用を投資信託などで行っている場合、特に注意すべきことがあります。

運用中の商品の相場が下がったときは、次のような行動を安易にとらないようにしましょう。

  • 購入する商品の配分をリスクの低い定期預金に多くまわす
  • 保有している投資信託商品を全部売却してリスクの低い別の商品に買い替える

もちろん、「本当にピンチのときでも買い続けていいのか?」と不安に思う方は多いでしょう。では、なぜ買い続けるべきなのでしょうか?その理由は、相場が安いときに買い続けると、相場が回復に転じたとき、結果として安いときに口数(くちすう)をたくさん買えることになるからです。

例えば、投資信託の商品を毎月1万円で買い続けるとします。このとき、相場の変動に惑わされずに買い続けた場合について考えてみましょう。

投資信託の商品を毎月1万円で買い続けた時のイメージ

図のように、1ヵ月目の「10,000口=10,000円」のときに購入するところからスタートします。続いて2ヵ月目で価格が「10,000口=20,000円」となり、購入口数は5,000口に減ることになりました。

重要なのは、3ヵ月目で「10,000口=5,000円」に下がったタイミングです。今後相場が回復することを見込んで買い続けたため、20,000口を購入することができました。もう一つ重要なのは、4ヵ月目で相場が回復し、再び「10,000口=10,000円」となったことです。

その結果、合計40,000円で45,000口購入でき、10,000口あたり9,000円で購入できたことになります。

つまり、一定期間ごとに一定金額で買い付けることで、価格が低いときには多くの口数を、高いときには少ない口数を購入することになり、平均購入価格を低く抑えられます。

【参考】コロナショック前後における株価はどうだった?

「だけどもし相場が回復しなかったら?」という不安はもちろんあるでしょう。相場がどう上下するかを予想するのは、プロの投資家でも難しいといわれます。

ここで、参考として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前後の日経平均株価を例にあげてみます。

いわゆる「コロナショック」と呼ばれる時期の直前となる2020年2月中旬の日経平均株価の終値は23,000円台でした。

2020年2月中旬の日経平均株価の推移

しかし、新型コロナウイルス感染者数が世界中で増加するニュースが報道されるようになり、3月の上旬には21,000円台まで下落します。

2020年3月上旬の日経平均株価の推移

そこからも急落が続き、3月半ばには16,000円台まで株価の終値は下落していきました。

2020年3月中旬の日経平均株価の推移

では、ここからの株価はどう動いたでしょう?さらに下落したのでしょうか?それとも回復に転じたのでしょうか?

正解は「回復に転じた」です。3月半ばに16,000円台という下落のピークから再び相場が上昇し始めたのです。以降は大きな相場の下落もなく、2020年11月末には26,000円台まで回復しています。

2020年3月下旬の日経平均株価の推移

このように、相場の下落時は一時的に苦しくても、買い続ければ結果的に高いリターンを得られる可能性があります。株価が急落した際も、焦って行動するのではなく、まずは冷静に考えることが大切です。

iDeCoは「買い続けられる制度」!心得も忘れずに

行動経済学から考えると、相場が下がったときに「買い続ける」という心得を持つことで、人の心の弱点を埋めることができます。

先ほど解説したように、iDeCoは「買い続けられる制度」なので、相場が上下しても慌てずどっしりと構えられるでしょう。

もちろん、定期預金への配分変更や資産の買い替えといった行動に安易に走らないよう、今回ご紹介した心得の内容はぜひ覚えておいてください。iDeCoで積み立てるお金は老後の資産となる大切なものですので、慎重な運用を心がけましょう。

(記事提供元:サムライト株式会社、画像提供元:ピクスタ株式会社)

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

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