掲載日:2021年5月31日
退職・セカンドライフ
退職金を運用して、老後資金を増やす方法
「老後に必要な生活資金を公的年金だけですべてカバーすることは難しい」と考えている方は多いのではないでしょうか。豊かなセカンドライフを実現するには、計画的に老後の資金準備を行うことが大切です。そのために必要なことをあらかじめ把握し、ゆとりある老後の生活を手に入れましょう。
60歳で退職してから生涯必要になるお金
退職後の支出は、「生活費」「持ち家の有無」「余暇の過ごし方」「医療や介護にかかる費用」などによって大きく異なります。しかし、あえて目安をあげるとすると、「老後に夫婦で日常生活を過ごすために必要な資金」が毎月約26万5,000円(総務省「家計調査年報」/2018年)、「余暇を楽しむ費用を含んだゆとりある老後資金」となると毎月約36万1,000円(生命保険文化センター「生活保障に関する調査/2019年度」)が必要になるというデータがあります。
多くの世帯では、一般的に退職後の収入は公的年金がメインになります。厚生労働省が標準的なモデル世帯として想定しているのは、平均的な男性賃金で40年間厚生年金に加入した夫と、40年間専業主婦をしていた妻。このモデル世帯の年金月額は約22万1,000円(2020年4月現在)だそうです。日常生活に必要な資金に対して毎月約4万4,000円、ゆとりある老後資金と比べると約14万円が不足する計算になります。
日本人の平均寿命は男性81.25歳、女性は87.32歳(厚生労働省:平成30年簡易生命表)ですから、ここから60歳を引いた年数分をかけることで、老後に必要なおおよそのお金を計算できます。また、今後も日本人の平均寿命は延びていくことが予想されるため、60歳以降の期間を仮に約30年として日常生活で不足すると試算される約4万4,000円を毎月かけると、総額で約1,600万円が不足していることになります。また、ゆとりある老後資金に対しては約5,040万円も不足していることになります。
この不足分を補ってくれる代表的なものが退職金です。経団連の調査(2018年9月)では、大学卒の総合職が60歳で退職した場合の退職金は約2,256万円、高校卒で約2,038万円です。
十分に余裕があるとはいえませんが、上記の退職金をもらうことで日常生活に必要なお金はほぼカバーできることになります。しかし、ゆとりある老後を過ごすためには大学卒の場合で約2,800万円、高校卒の場合だと約3,000万円が不足してしまいます。
今からでも遅くない、老後のためにできること
基本的な対策は次の三つです。
- 支出を減らす
- 収入を増やす
- お金を殖やす
仮に、毎月の生活費を5万円節約できれば、25年で1,500万円もの支出を削減できることになります。しかし、日々の食費や日用品費などといった基本生活費の過度な切り詰めはストレスを生み、継続が難しいと思います。さらに現在、政府と日本銀行が2%のインフレターゲットを設定していることをふまえると、今後物価が上がっていく可能性があります。そうなると、目に見えて基本生活費を減らす想定は現実的ではありません。
では、どうすれば良いのでしょうか。まずは保険を見直したり、クルマにかける費用を削減したりなど、節約効果が大きく出そうなことから実行しましょう。
また、住宅ローンを繰り上げ返済して利息負担を減らしたり、健康維持に努めて医療費の抑制に取り組んだりなど、現役のうちからできることを始めておくことをお勧めします。収入を増やすには、定年後に再就職する、あるいはパートやアルバイトなどで働くといった手段が考えられます。
いずれにしても、老後の生活にはまとまったお金が必要になるため、資金づくりには時間が欲しいところです。なるべく早い段階から、老後の準備に取り組む必要があります。
退職金を運用して老後資金を増やそう
収支の改善のみで老後資金に不安が残るのであれば、お金を増やすこと(資産運用)にも目を向けてみましょう。具体的に、退職金をもらった段階で目的別に資金を分けてみるのはいかがでしょうか。
- いつでも引き出せるお金(流動性資金)
- 使い道が決まっているお金(使用予定資金)
- 安定的に運用するお金(確実性資金)
- 積極的に運用するお金(収益性資金)
1.いつでも引き出せるお金(流動性資金)
日常生活でつかうお金や突然の出費などに備えておくもので、半年分程度の生活費を目安にすると良いと思います。いつでも引き出せることが最優先であるため収益性を求めず、元本保証*のある普通預金や定期預金などに預けておきましょう。
- *利息つきの普通預金・定期預金等は、金融機関破綻時には預金保険制度により元本1,000万円までとその利息等が保護されます。
2.使い道が決まっているお金(使用予定資金)
住宅のリフォームやクルマの購入、子どもの結婚資金援助など、数年以内につかうことが決まっているお金については、使用予定資金として確保しておく必要があります。この部分は使用時期に応じて、預け先を決めなくてはいけません。基本的には使用時期にあわせた定期預金や、安全性の高い債券などが選択肢として考えられます。
3.安定的に運用するお金(確実性資金)
運用するお金は、安全第一を考えて運用する部分(確実性資金)と、ある程度のリスクを許容しながら積極的に収益を求めて運用する部分(収益性資金)とに分けて考えましょう。
確実性資金は、元本割れのリスクをできるだけ抑えて、安定的にお金を運用していくというものです。将来的に流動性資金が不足してきた場合は、この確実性資金からあてていきます。そのため、できるだけお金を減らさないことが大切になります。
金利が高い時期であれば、スーパー定期や高格付けの社債などである程度の収益が得られたのですが、現在のようなマイナス金利が導入されている超低金利の環境では、リスクをとらずに運用しても収益を期待できません。そのため近年は、この確実性資金の運用が難しくなっています。解決のためのヒントは日本よりも前にマイナス金利が導入されたスイスや欧州連合(EU)にあるように思います。
これらの地域では、マイナス金利が導入されてから、少しでも収益を確保する手段として、機動的に資産配分を変更することでリスクコントロールを行い、低リスクの運用を目指すタイプのバランスファンドが人気になりました。日本国内においても、このような低リスクタイプのバランスファンドは少しずつ広がってきています。
4.積極的に運用するお金(収益性資金)
収益性資金はリスクがあることを前提に、積極的にリターンを求めて運用を行っていく部分です。価格変動リスクや為替リスクなどを許容しながら、国内外の株式や不動産といった資産に投資を行い、収益性を求めていきます。ただし、あまりにも高い収益性を求めてしまうと、大きなリスクを抱えることにもつながりかねませんので、その点には注意が必要です。
以上のように、資産運用は目的をもって計画的に行うことが大切なのですが、投資目的がはっきりしていなかったり、必要以上にリスクをとってしまっていたりする人がいます。また、適切な資産配分ができていない人も見受けられます。セカンドライフを幸せに豊かに暮らすために必要な金額を計算して、それに向けた適切な目標収益率を決めてから、具体的な商品の検討に入ることが大切です。
安定した投資を目指すなら、成長性を重視して資金を投じ、インカム収入(株主配当や債券の利子収入など)を得ながら、時間をかけてじっくり育てていく長期投資のスタンスが基本となります。焦らずじっくりと育てていくことで、利息が元本に組み込まれ、時間が経つほどその利息が雪だるま式に積みあがって大きくなる「複利効果」をいかすことにもつながります。
しかし、その場合も、割高なタイミングで資産を購入してしまわないよう注意しなければいけません。資産運用の経験が少ない方は、積立投資を活用するなどして、投資時期の分散(時間分散)を図ると良いでしょう。
みずほ銀行:投資信託*
- *投資信託のご注意事項 元本割れリスクや手数料等についてはこちらをご覧ください。
- *上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
参考:
久保 逸郎(クボ イツロウ)
ファイナンシャルプランナー(FP)
大手リース会社の営業職としてファイナンスリース、自動車ローン・住宅ローンなどのローン商品の営業・与信業務に従事した後に、外資系保険会社を経て、2003年春にフィナンシャルプランナー(FP)として独立開業。
顧客のライフプラン実現のサポートを行う実務家FPとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて全国各地で年間100回近い講演や、マネー雑誌や金融誌等の執筆を行っている。
(記事提供元:サムライト株式会社、画像提供元:Shutterstock,Inc)
- *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
関連商品
投資信託
投資信託
お客さまの大切な資産運用にお役立ていただけるよう、様々なタイプの投資信託をご用意しています。
関連記事
最近ではいわゆる「2,000万円問題」が話題となり、老後資金について不安を感じる方が増えているようです。対策としてすでに何らかの方法で「貯蓄」を始めている方は多いと思います。
セカンドライフの重要な資金となる退職金。1人で考えてしまうと情報が足りなかったり、間違っていたり。でも、どこへ相談してよいのか悩んでしまいますよね。
今あるお金を「当面の日常生活費として確保しておく資金」、「将来つかう予定の資金」、「使いみちの決まっていない余裕資金」の3つに色分けをします。
ご注意事項
- 投資信託は預金・金融債・保険契約ではありません。また、預金保険の対象ではありません。
- 投資信託については元本の保証はありません。元本割れのリスクや手数料などのコスト等、ご注意点がございます。