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掲載日:2020年8月21日

税金対策

【前編】年収850万円超だと税負担アップ!?2020年税制改正について解説

キービジュアル

2018年3月28日に「所得税法等の一部を改正する法律案」および「地方税法等の一部を改正する法律案」が国会で可決・成立しました。 この平成30年度税制改正では、「一億総活躍社会」の実現や「少子高齢化」に伴う問題点への対応などを背景に、各種制度が大きく改正されました。そこで、この改正が家計に与える影響を、前編と後編の2回に分けて解説します。

前編では、2020年1月1日から適用された「基礎控除額の引き上げ」「給与所得控除額の引き下げ」「公的年金等控除額の引き下げ」について、内容の詳細と改正点をまとめます。

そもそも控除とは? 基本をおさらい

控除の基本

平成30年度税制改正において、「控除」という言葉が頻出します。「控除」という意味も多様に存在するため、まずは各種控除について確認しておきましょう。

所得控除の意味・定義

控除とは、“差し引く”という意味で、税務では頻繁に使われます。基礎控除、配偶者控除、扶養控除など控除は全部14種類あり、納税者それぞれの税金の負担能力を考慮し、不公平をなくすために控除が設けられています。例えば、所得が同額でも税額は同じになりません。子供がいない人と3人の子供がいる人では、同じ所得でも養育費や教育費がかかるため、扶養控除により税負担が軽くなります。

基礎控除とは?

基礎控除とは所得控除の一つであり、すべての納税者に無条件で一律に適用されます。控除を受けるための要件が無いため、職業や家族構成、収入などに関わらず、誰もが一律の金額(改正前:38万円)を所得から差し引くことで課税対象金額を小さくする効果があります。税率を掛ける対象金額が小さくなるため、税負担は軽くなるのです。

給与所得控除とは?

所得と控除の基本

勤務先から受け取る給料や賞与は給与所得に分類されます。会社員やアルバイト・パートタイマーなどが給料や賞与を稼ぐためにかかる概算の経費を給与所得控除といいます。

給与所得=給与の収入金額-給与所得控除額

給与所得とは、給与等による収入から概算の経費にあたる給与所得控除額を差し引いた“もうけ”のことです。給与所得控除額は一律ではなく、給与収入金額に応じて異なります。

公的年金等控除とは?

公的年金等による収入は雑所得に分類されます。公的年金等の受給者が公的年金をもらうためにかかる概算の経費を公的年金等控除といいます。

公的年金等の雑所得=公的年金等の収入金額-公的年金等控除額

公的年金等の雑所得とは、公的年金等の受給額から概算の経費にあたる公的年金等控除額を差し引いた部分を指します。公的年金等控除額は一律ではなく、公的年金等の収入金額と受給者の年齢に応じて異なるので注意が必要です。

平成30年度の税制改正内容を解説

写真

それでは、具体的にこのたびの税制改正でどのような変更があったのか、解説します。

基礎控除額は引き上げられる

基礎控除の改正内容

基礎控除は、すべての納税者が無条件に適用できます。しかし、高所得者ほど基礎控除による税負担の軽減効果が大きくなるとの指摘は以前からありました。そこで、特に高額の所得者に限り、控除額を逓減することも含めて法改正が行われました。

合計所得金額

<参照元:財務省「平成30年度税制改正」を基にグラフを作成>

給与所得控除額は引き下げられる

給与所得控除の改正内容

給与の収入金額が850万円超の場合は、税額が増えました。給与所得控除の上限額が適用される給与の収入金額が1,000万円超から850万円超に変更となり、また、控除の上限額も220万円から195万円に下がったことが影響しています。

ただし、23歳未満の扶養親族がいる子育て世帯や、特別障害者の扶養親族等がいる介護世帯等は、給与の収入金額が850万円超の場合も税負担が増加しないように調整され、控除の上限額は一律10万円減の210万円となりました。これは、子育て世帯や介護世帯に配慮したものです。

近年、働き方の多様化により、企業を離れて個人事業主やフリーランスとして働く人が増えています。給与所得控除は会社員のための経費控除の仕組みです。これでは働き方によって控除額に差が出てしまいます。

また、給与所得控除は高所得になるほど税負担の軽減効果が大きくなることから、公平性の観点から見直されました。

公的年金等控除額は引き下げられる

公的年金等控除の改正内容

給与所得控除は控除額に上限がありますが、公的年金等控除は控除額に上限がありませんでした。また、年金以外に高所得がある人も年金所得のみの人と同じ公的年金等控除が適用されていました。その結果、高所得の年金受給者ほど税負担の軽減効果が大きくなることから、制度が見直されました。

税制改正前後でシミュレーション

給与収入1,000万円で控除額をシミュレーション

給与収入1,000万円を例に「子育て・介護世帯」と「子育て・介護世帯以外」における税制改正前後の控除額について比較してみましょう。

  • *子育て介護世代:23歳未満の扶養親族あり、または特別障害者の扶養親族あり

子育て・介護世代

  • 改正前
    基礎控除額38万円+給与所得控除額220万円 合計258万円
  • 改正後
    基礎控除額48万円+給与所得控除額210万円 合計258万円
    →税制改正による影響なし

子育て介護世帯以外

  • 改正前
    基礎控除額38万円+給与所得控除額220万円 合計258万円
  • 改正後
    基礎控除額48万円+給与所得控除額195万円 合計243万円
    →税制改正後、控除額が15万円減少

このように控除額が算出されていきます。「子育て・介護世帯以外」の世帯は控除額が15万円減少しているので税負担が上がることになります。

<参照:国税庁「No.1410 給与所得控除」>

給与収入別に税額をざっくりシミュレーション

さきほどは給与収入1,000万円の場合に細かく見てきました。ここでは年収別で「子育て・介護世帯」と「子育て・介護世帯以外」における税制改正前後の税額について比較してみましょう。

税制改正適用前(2019年)と適用後(2020年)の年収別税額シミュレーション

早めの対策で税制改正の影響を最小限に

2020年1月1日から適用された「基礎控除の引き上げ・給与所得控除の引き下げ・公的年金等控除額の引き下げ」について解説しました。給与所得控除額や公的年金等控除額を引き下げた一方で、基礎控除額は引き上げられたため、税負担が変わらないようにバランスをとっています。子育て・介護世帯以外における高所得の給与所得者や年金所得者は税負担が増加しました。働き方の多様化を支援して格差を是正するなど、社会の構造変化に対応する方向で個人所得に関する税制が大きく見直されました。

今回の税制改正は各家計にどのような影響を及ぼすかについて、計算しておきましょう。影響が明らかになると、その対策を具体的に検討できます。対策を講じ、税制改正による影響を最小限にとどめましょう。一方で、「つみたてNISA」や「iDeCo」などの税制優遇のメリットを受けられる資産形成の制度が充実しています。ぜひ、活用を検討してみてください。また、みずほ銀行の店舗でもこれらの資産形成に役立つ様々な商品・サービスをご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

後編では、今回紹介した控除が所得税に与えた影響について解説します。

長沼満美愛

長沼満美愛

ファイナンシャルプランナーCFP(R)・1級FP技能士

神戸女学院大学英文学科卒業後、損害保険会社に就職。積立・年金・介護など長期保険に特化した業務を担当。そのあと、FP協会相談室の相談員として従事。現在、大学・資格の学校TAC・オンスク.JPにて資格講座の講師として活動するかたわら、セミナー講師や執筆も手がける。『あてるFP技能士1級』(TAC出版)を執筆。毎日新聞「終活Q&A」コラム寄稿。毎日新聞生活の窓口相談員。塾講師・家庭教師の豊富な経験を活かして、「誰でも分かるセミナー講師」・「親身なFP個別相談」をめざす。

【参考】
平成30年度税制改正|財務省

(記事提供元:サムライト株式会社、画像提供元:ピクスタ株式会社)

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

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