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掲載日:2022年3月22日

基礎編

2022年の制度改正でiDeCo(イデコ)はどう変わるのか

iDeCoについて学ぼうシリーズ④ 2022年の制度改正でiDeCoはどう変わるのか

公的年金の受取時期を最大75歳まで先送りできるよう2022年4月に変更されます。このタイミングに合わせて、個人型確定拠出年金(以下 iDeCo)も色々とルールの変更があります。今回は2022年からiDeCoがどのように変わるのかと、その変更によって受ける影響についてご紹介したいと思います。
この記事を通じて2022年から変わるiDeCoをどう活用していくべきかイメージいただければ幸いです。

2022年のiDeCoの大きな変更点は以下の3つになります。

  1. iDeCoの受取開始時期の選択肢が拡大 2022年4月1日から
  2. 加入可能年齢の拡大 2022年5月1日から
  3. 企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和 2022年10月1日から

1.iDeCoの受取開始時期の選択肢が拡大 2022年4月1日から

1つ目の変更点は、iDeCoの受取開始時期の選択肢が広がることです。これに関しては、以下の図をご参照ください。

受け取り開始可能期間の拡大のイメージ図

この図はiDeCoと公的年金の受け取り開始可能期間を表しています。2022年3月末までは、iDeCoの受取期間は図の青い部分になり、60歳から70歳まででしたが、今回の法改正で水色の70歳から75歳までが追加されました。

改正前は、70歳までにiDeCoの受取を開始しなければいけませんでした。しかし、70歳でも直近の生活費にはまだ余裕があり、非課税*1で運用できるメリットを最大化し、もっと運用を続けてさらに資産を増やした後で受け取りたいと考える方も多くいます。そのような方は、今回の改正で最大で75歳まで受取開始を遅らせることができるようになります。70歳以降もさらに運用を続けて非課税メリットを最大化できるというわけです。

  • *1運用中の年金資産には1.173%の特別法人税がかかりますが、現在は課税が凍結されています。

この法改正は2022年4月1日から有効になりますが、同じタイミングで公的年金も受取開始の選択肢が拡大されます。改正前の公的年金は、受取開始を60歳から70歳までの間で選べます。60歳からの受取開始を選ぶと、早くから年金を受給できますが、1ヵ月あたりに受給できる金額は65歳から受取開始にする場合よりも少なくなります。反対に70歳からの受取を選ぶと、その間の生活費を自分で用意する必要がありますが、かわりに1ヵ月あたりに受給できる年金額は42%*2多くなります。2022年4月からは、さらに75歳まで受取を先延ばし可能になります。受取を先延ばしにすることを繰下げ受給といいますが、70歳から75歳まで繰下げ期間を伸ばすことで、さらに1ヵ月あたりに受給できる年金の額は84%*2大きくなります。

  • *22022年3月時点

このように、2022年4月1日からは公的年金とiDeCoの両方とも75歳からの受取を選択できるようになります。「受取開始を遅らせる」と聞くと制度が改悪したと感じてしまう人もいるかもしれませんが、この改正は受取開始時期を強制的に遅らせられるわけではなく、あくまで選択肢が広がっただけなのでポジティブな改正といえるでしょう。例えば65歳を過ぎていても、まだ年金を受け取らなくても生活が回っている方は、受け取る年金額を増やすとともに、iDeCoの非課税の運用期間も長くできるようになったのです。今までと変わらず早くから年金やiDeCoを受け取りたい場合は、60歳から受取も可能です。

2.加入可能年齢の拡大 2022年5月1日から

2022年からのiDeCoの変更点2つ目はiDeCoへの加入年齢が拡大することです。2022年の改正前はiDeCoへ加入できるのは、60歳未満であることが条件になっています。これが2022年5月からは、国民年金の被保険者であれば原則65歳未満まで加入できるようになります。

具体的には、以下の方がiDeCoに加入できるようになります。

  • 60歳以上65歳未満の会社員・公務員等(第2号被保険者)の方
  • 60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している方
  • 20歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している海外居住の方

iDeCoの加入可能年齢の拡大のイメージ図

まず会社員や公務員の場合、勤め続けて厚生年金に加入している方は、第2号被保険者としてiDeCoに加入できます。勤務時間が短い場合などで、厚生年金に加入していない場合はiDeCoに入れない場合があるのでご注意ください。

自営業者・フリーランスの人や、専業主婦(夫)の方などパートナーの扶養として年金に加入している人は、「国民年金に任意加入していることを条件」として、65歳までiDeCoに加入できるようになります。
国民年金の任意加入というのは、年金の受取額が満額に達していない方が追加で年金保険料を支払うことで、将来受け取る年金を最大満額まで増額できる制度です。国民年金は40年間(480ヵ月)分の保険料を納めると満額もらえる制度ですが、年金未納の分があれば、その期間に応じて将来もらえる年金は減ってしまいます。その場合でも、満額までもらいたい場合は60歳から65歳までの間で、任意で保険料の追加支払いができるようになります。20歳を超えると年金の納付が始まりますが、学生時代などまだ収入がない場合は「学生納付特例」などを使って、国民年金の納付猶予を受けて年金を払っていない人も多くいます。また、著しく収入が乏しくなってしまった場合も、状況により申請することで一部免除が認められたりしますので、そのような未納期間や免除期間がある場合も60歳を超えた後に任意加入することで受け取る年金を満額に近づけることができます。

また、海外居住の日本人で、20歳以上65歳未満の方も国民年金に任意加入できます。
改正前は、海外居住者の方はiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金に任意加入していればiDeCoに加入できるようになります。

このように、国民年金に任意加入をしている方や、会社員・公務員で厚生年金に加入している人であれば、原則65歳未満までiDeCoにも加入できるようになるのが今回の変更点です。

ちなみに、「企業型」の確定拠出年金の場合は、60歳前と同一事業所で引き続き使用される厚生年金被保険者について65歳未満の規約で定める年齢まで加入者とすることができましたが、今回の改正で厚生年金被保険者(70歳未満)であれば加入者とすることができるようになります。この加入可能期間の延長は、現役で長く働き続ける予定の人にとっては朗報といえるでしょう。

確定拠出年金へ拠出した金額は全額所得控除になるので60歳以降も税制優遇を受けられます。ただし、企業型DCまたはiDeCoの老齢給付金を受給された方は、それぞれ再加入できません。また、公的年金を65歳前に繰り上げ受給した方は、iDeCoに加入ができませんので注意が必要になります。

3.企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和 2022年10月1日から

2022年からのiDeCoの変更点3つ目は、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人でも、iDeCoに入りやすくなることです。2022年10月の改正前は企業型確定拠出年金に加入している場合は、企業型DC規約でiDeCoへの加入を認めていないとiDeCoへの加入ができないというハードルがありました。しかし、2022年10月1日からは企業型確定拠出年金に加入している人でも原則iDeCoに加入できるようになります。iDeCoの掛金の限度額は企業型DCのみに加入している場合と、企業型DCに加えて確定給付企業年金(DB)等に加入している場合とで以下の表のように異なっています。

企業側DCとiDeCo併用時の拠出限度額のイメージ図

企業型DCのみに加入している場合は、事業主の掛金は最大で5万5,000円です。そしてiDeCoの掛金は最大で2万円となっています。ただし、事業主の掛金とiDeCoの掛金の合計が最大でも5万5,000円までとなっています。つまり、事業主の掛金が既に5万5,000円に達している場合は、iDeCoに拠出することはできません。例えば事業主の企業型DCへの拠出が4万円であれば、iDeCoを1万5,000円まで拠出可能になりますし、企業型DCの掛金が3万5,000円であれば、iDeCoに2万円まで拠出できるということです。

また確定給付企業年金(DB)等にも加入している場合は、計算の方法は一緒ですが上限額が異なります。事業主の企業型DCの掛金は最大で2万7,500円で、iDeCoの限度額は1万2,000円となり、この2つの合計が2万7,500円を超えなければ良いことになります。

現在、企業型DCに加入している方で拠出額が5万5,000円か、2万7,500円に届いていない人は、iDeCoに追加加入することで掛金を出せるようになります。ただし、企業型DCの中でも、マッチング拠出をしている場合は、iDeCoとの同時加入はできません。マッチング拠出とは企業型DCの制度の一つで、会社が拠出する掛金に加えて加入者本人が掛金を上乗せして拠出できるものになります。
iDeCoかマッチング拠出のいずれかを選択する必要があるので注意が必要になります。

今回の変更でメリットが大きい人

以上が2022年のiDeCoに関する改正ですが、多くの方にポジティブな変更になっていると思います。特に50代の方は、60歳までだと加入期間を長くとることができないのでiDeCo加入に消極的になっている人もいます。しかし、65歳まで会社で働き続ける予定の方であれば、例えば55歳から加入したとしても、最大で10年加入できることになります。
改正前では50歳以降でiDeCoに新規加入した場合は、60歳時点の通算加入者等期間が10年未満だと60歳で受け取れず、受取可能となるまで運用のみを行う期間が必要となる人がいました。その間、掛金は拠出できないので所得控除の恩恵は受けられず、口座管理手数料を負担して残高を運用するしかありませんでした。

さらに受取開始時期も、最大で75歳まで遅らせられるので、55歳から75歳まで運用した場合、20年間も非課税で運用できるようになります。今までiDeCoに興味があっても、始めるには遅すぎたと感じていた方でも今回の改正後は、iDeCoを有効活用するチャンスが広まったと言えると思います。

そもそも60歳まで途中解約ができないことがiDeCo最大のデメリットですが、40代や50代の方であれば20代や30代の人と比べて、60歳までのライフイベントにかかる費用や、今後働いていられる期間のイメージもつきやすくなっていると思います。60歳、あるいは65歳までのライフイベントに手持ち資金で対応できそうであれば、余剰資金をiDeCoで運用するのは、所得控除や運用益の最大化の観点からも有用といえるでしょう。

また、iDeCoには「スイッチング」という仕組みがあり、iDeCo内でもっている金融商品の構成割合を見直すことが容易です。例えば、50代前半は株式型の投資信託の比率を多めにしてリスクをとりながらリターンを狙っていき、利益が出ているタイミングで値崩れしづらい債券型のファンドの比率を高めていくことも可能です。

老後資金の大きな助けとなるのが公的年金ですが、先述の通り受取時期を繰り下げることで給付額を大きくし終身受け取ることできると、老後が長くても安心していられます。公的年金受取を繰り下げる期間を、労働収入で埋めたりiDeCoで貯めた資金を活用できると、より無理なく繰下げ給付を大きくできるでしょう。

秋山芳生さんの写真

秋山芳生 自己紹介

新卒で広告代理店の博報堂に入社。2014年から株式会社マネーフォワードに入社しマネーフォワードMEの事業責任者となる。また、お金の相談窓口「miraitalk」を立ち上げFPとして年間1,000回以上の家計相談を実施。現在は、ベンチャー企業の役員をするとともに、会社員向けの金融教育やYouTubeでの情報発信、家計改善のオンライン面談などマルチに活動している。

(記事提供元:秋山芳生)

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

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ご注意事項

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)は、原則60歳まで途中の引き出し、脱退はできません。
  • 運用商品はご自身で選択します。運用の結果によっては損失が生じる可能性があります。
  • 加入から受取が終了するまでの間、所定の手数料がかかります。
  • 60歳時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合、段階的に最高65歳まで受取を開始できる年齢が遅くなります。また、通算加入者等期間を有しない60歳以上の方が加入した場合、加入から5年後以降の受取開始となります。
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