税・社会保険料の負担は給付の視点も必要

2026年8月4日

みずほ総合研究所 ソーシャルイノベーションコンサルティング部 特任研究員

藤森克彦

※みずほ総合研究所はみずほ銀行内の組織の名称です。

*本稿は、『週刊東洋経済』2026年7月4日号(発行:東洋経済新報社)の「経済を見る眼」に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

政府の社会保障国民会議は、食料品の消贅税率を1%とする方向で議論を進めている。同会議の目的は、中・低所得者の税・社会保険料の負担を減らして、手取りを増やすことにある。

確かに、物価高による生活苦が続く中で、消費税や社会保険料の負担が強く意識されている。

しかし社会保障制度は、国民から集めた税・社会保険料を財源にして、家計の必要に応じ社会保障給付を行う再分配機能を持つ。再分配される給付には、お金を渡す現金給付のみならず、医療や介護などの社会サービスを提供する現物給付もある。ともに人々の生活水準を高めており、負担のみに着目するのではなく、給付を含めて評価すべきである。いわば、負担から給付を引いた「ネット」の負担で考える必要がある。

同会議事務局は、この視点から給付と負担の全体像を分析しており、興味深い。具体的には、世帯が負担する税金(所得税・住民税・消費税)と社会保険料(医療・年金・雇用保険)を合算して、そこから社会保障給付を差し引いた純負担額を算出する。そして、世帯収入に対する純負担額の割合を「純負担率」として示した。

例えば、共働き(被用者)の夫婦と子ども2人で構成される子育て世帯を見ていこう。負担だけ見ると、社会保険料はどの所得階層でも世帯収入のおおむね15%、消費税も約5%の負担となっている。いずれも、ほぼ所得に比例した負担であることがわかる。

給付を見ると、低所得世帯ほど給付が大きく、負担を大幅に上回っている。給付内容としては、児童手当は全所得階層に支給されている。また、低所得世帯には生活保護給付がある。さらに、保育や医療は現物給付なので、受給の実感は乏しいかもしれないが、低所得世帯に手厚い給付になっている。

その結果、負担から給付を差し引いた純負担率は、世帯収入の増加に伴って高まる累進的な右肩上がりのカーブを描く。また世帯年収約800万円までの世帯は、給付が負担を上回る。つまり、再分配された社会保障給付により、年収約800万円までの子育て世帯の家計は改善されているのである。

もう1つ重要な点は、負担と給付をライフサイクル全体で捉える視点である。多くの人にとって、高齢期は収入が途絶しやすく、医療や介護の費用が膨らんでいく。

こうした高齢期の生活リスクに備えるため、就労できる現役期に税や社会保険料を拠出して、高齢期に自らが貧困に陥ることを防いでいる。言い換えれば、現役期の税・社会保険料を減らすと、自分の高齢期の貧困リスクを高めることになりかねない。誰もが現役期の後に高齢期を迎えるのだから、人生全体での負担と給付のバランスも考えるべきだ。

筆者は、格差を拡大させる市場圧力が強まる中で、所得再分配の強化が重要だと考えるが、現役期の税や社会保険料の軽減は、その目的に逆行するものである。むしろ消費税を含む財源確保を強めて、逆進性には給付で対応していく。税・社会保険料を負担としてのみ捉えるのでなく、現物給付を含めた純負担率で考えることが重要だ。

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