今、見直すべき省エネの価値

2026年6月1日

みずほ総合研究所 サステナビリティコンサルティング部

甘利朋矢

※みずほ総合研究所はみずほ銀行内の組織の名称です。

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パリ協定を契機にSBTiが立ち上がり、また同時期にはRE100といった国際イニシアチブも開始された。これらの枠組みの広がりとともに、多くの企業が2050年ネットゼロに向けた取り組みを加速させている。

こうした流れの中で、将来の削減カーブを踏まえた企業の排出削減は熱需要の電化を含めた「電化+再エネ電力導入」が主軸となりやすく、その結果として、省エネは引き続き重要であるものの、相対的に優先順位が下がっているように感じる。

しかしながら、今次中東情勢の緊張に見られるように、エネルギー供給の不確実性は依然として高い。また、AIの普及に伴うデータセンターの電力需要増加などを背景に、電力そのものの価値も一層高まっている。資源制約や立地制約を抱える我が国にとって、省エネの重要性はむしろ高まっていると言える。

我が国のエネルギー政策は、安全性(Safety)を前提としつつ、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時達成する「S+3E」を基本としている。この考え方に照らせば、エネルギー需要そのものを抑制する省エネは、供給制約の影響を受けにくく、コスト効率にも優れた対策であり、エネルギー政策の中核的な手段の一つとして位置付けられる。

ここで改めて意識しておきたいのは、仮に再生可能エネルギー由来であっても、エネルギーの無駄遣いが許容されるわけではないという点である。

再エネ導入の拡大には、太陽光パネルに必要な鉱物資源といった資源制約、バイオマス利用に伴う土地・食料との競合といった土地制約、さらには再エネの地域偏在性や需要地との距離に起因する系統制約が存在する。また、増加する電力需要に対応するための送配電インフラ整備も不可欠であり、エネルギー需要そのものを抑制することは、こうした制約の緩和にもつながる。

だからこそ、脱炭素の議論において、炭素強度の低減(低炭素化)に加え、エネルギー消費量そのものの削減(省エネ)を、もう一つの重要な軸として捉える必要がある。

今一度、エネルギー政策と脱炭素の双方の観点から、省エネの重要性を見直すべきではないだろうか。

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