「気づいてつなぐ」支援と単身高齢者

2026年3月31日

みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員

藤森克彦

*本稿は、『週刊東洋経済』2026年1月24日号(発行:東洋経済新報社)の「経済を見る眼」に掲載されたものを、同編集部の承諾のもと掲載しております。

お正月を家族と過ごす光景は、今後減少すると考えられる。家族がいない、あるいは家族がいても頼れない「身寄りのない高齢者」の急増が一因だ。

国立社会保障・人口問題研究所の将来誰計によれば、未婚の単身高齢者は、2020年の144万人から50年には460万人へと約3.2倍に増える。特に単身高齢男性に占める未婚者の割合は、20年の34%から50年には60%に高まる。未婚者は配偶者だけでなく子どももいないことが考えられるので、身寄りのない状態になりやすい。

また、家族内のトラブルなどによって家族から支援を得られない人も多い。高齢期に身寄りのないことは誰にでも起こりうる。

身寄りがなくても、友人や近所の支援があればいい。しかし、日本では「人様に迷惑をかけてはいけない」という意識が強いためか、欧米諸国に比べ、頼れる友人や近所を持つ単身高齢者の割合は低い。

誰ともつながりがなく孤立すると、困ったときにSOSを出せない。病院同行などの日常生活支援や、入院や借家入居時の保証人確保などで課題が生じる。

政府は、身寄りのない高齢者への支援策を検討している。居住支援の領域では、25年10月に「居住サポート住宅」制度が新設された。

注目すべきは、同住宅の入居者には見守り支援がつき「入居者の変化に気づいて、必要な支援につなぐ」機能がある点だ。全国居住支援法人協議会(全居協)の奥田知志・共同代表副会長は、この支援を「家族機能の社会化」と呼ぶ。高齢者の体調変化や困り事に気づいて、必要があれば医療機関や介護サービスにつなぐ同居家族の役割の機能を持つからだ。

「気づいてつなぐ」支援は身寄りのない高齢者が安心して生活を送るための肝といえる。こうした機能を社会で備える意義は大きい。

では、「気づいてつなぐ」支援の実態は今どうなっているのか。以前から見守り付き住宅を運営する3つの居住支援法人を対象にした全居協の調査では、入居者の4割強が月5回以上の訪問を受けていた。居住サポート住宅では、月1回以上の訪問が義務づけられているが、入居者の訪問ニーズは想定よりも高い。

見守りをする支援員によると、訪問時に重要なのは雑談であり、雑談を通じて信頼関係をつくり、体調変化や困り事を伝えてもらうという。支援者との雑談は、孤立していた人の生きる意欲の回復にもなり、孤立防止効果を持つ。

一方、制度化されたとはいえ、この支援は基本的に受益者負担となっている。支払い能力が乏しい人や、多くの支援を要する人は、料金の支払いが困難になる。居住支援を行う事業所の持ち出しとなるケースも多いと聞く。公的な財政支援が課題である。

この点、富山大学の研究グループは、地域住民が集まる場に定期的に通うことは、要介護になるリスクが低下し、介護費の増加抑制に効果があるという実証結果を発表した。「気づいてつなぐ」支援も、同様の効果を持つ可能性がある。こうした点を検証できれば、介護保険の財源を用いた、支援強化の方策を探れるのではないか。

*当記事の内容は執筆時点の情報に基づくものであり、その正確性・完全性・最新性を当社が保証するものではありません。閲覧者の判断と責任にてご利用ください。

(CONTACT)

お問い合わせ

お問い合わせは個人情報のお取扱いについてをご参照いただき、同意のうえ、以下のメールアドレスまでご連絡ください。

サービスに関するお問い合わせはこちら

メール内にご希望のサービス名の記載をお願いします。
mhricon-service-info@mizuho-rt.co.jp

その他のお問い合わせはこちら

mhricon-info@mizuho-rt.co.jp

採用情報について

採用情報はこちらから

MORE INFORMATION