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共働きパワーカップルの住宅ローン設計|離職・育休リスクを織り込む戦略

掲載日:2026年4月24日

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共働きで世帯年収が高い、いわゆるパワーカップルと呼ばれる世帯では、住宅ローンの借入額を大きく設定しやすい傾向があります。しかし、借入可能額の大きさが、そのまま無理なく返済できる金額と一致するとは限りません。これから迎える出産や育児、キャリアチェンジによる転職などのライフイベントで、収入が変動する可能性も十分に考えられます。そのため、住宅ローンのプランを立てる際には、将来を見据えた慎重な検討が欠かせません。本記事では、共働きの高年収世帯が住宅ローンを考えるうえで知っておきたい借入額の目安や住宅ローンの組み方、さらに将来の収支変動を踏まえた資金計画のポイントを分かりやすく解説します。

1. パワーカップルが住宅ローンを組む際の注意点

パワーカップルに明確な定義はありませんが、一般的には夫婦それぞれの年収が700万円以上、世帯年収で1,400万円以上といった高い収入のある共働き世帯を指します*。こうした世帯では、夫婦の収入を合算してローンを組むことで、一人で借りるよりも借入額を大きくできる場合があります。世帯年収が高いほど金融機関からの信頼も厚くなり、融資を受けやすくなるためです。例えば、夫の年収が1,300万円、妻の年収が900万円で世帯年収が2,200万円というケースでは、1億2,000万円を超えるような多額のローンを組めることも珍しくありません。

ここで気をつけたいのは、金融機関が提示する借入可能額が、必ずしも自分たちが無理なく返せる金額ではないという点です。お客様からは、金融機関が貸してくれる金額なら大丈夫ですよね、というご相談をいただくこともありますが、審査はあくまで今の収入や一定の基準に基づいたものに過ぎません。

実際には、これから迎える出産や育児、キャリアチェンジによる転職など、収入が大きく変わるタイミングが誰にでも訪れる可能性があります。ですが、金融機関の審査ではこうした将来のライフイベントまでは個別に考慮されていません。

だからこそ、住宅ローンのプランを立てる際は、今の世帯年収だけで判断するのを避け、もしどちらか一方の収入が減ったとしても、返済を続けていけるかという視点を持っておくことが大切です。

2. 高年収世帯が陥りやすい「家計の硬直化」リスク

高収入世帯ほど、生活水準に合わせて固定費も膨らみがちです。一度上がった生活レベルを下げるのは難しく、いざ収入が減ったときに家計をやりくりする余裕がなくなる傾向があります。教育費や保険料も高額になりやすく、知らず知らずのうちに支出の規模そのものが大きくなってしまいます。

生活費・教育費などの支出に住宅ローンの返済が重なると、夫婦どちらかの収入に頼りきった状況であれば、家計のバランスは一気に崩れてしまいます。これだけ稼いでいれば大丈夫だろうと思われがちですが、現役世代の収入は決して一生安泰ではありません。特に外資系企業や成果報酬型の職種ではボーナスの比重が高く、業績や個人のパフォーマンス次第で年収が大きく変動するリスクもはらんでいます。

だからこそ、住宅ローンを検討する際は、今の高い年収を基準にするのは避けましょう。あらかじめ「もし収入が落ち込んだらどうなるか」を想定したうえで、無理なく返し続けられるかを確認しておきましょう。

3. 共働き世帯に最適な住宅ローンの組み方と選択基準

パワーカップルが住宅ローンを組む際には、主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解して、自分たちのスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。

まずペアローンは、夫婦がそれぞれ別々にローンを契約する仕組みです。二人分の年収をフルに活かして借入額を増やせるほか、住宅ローン控除を夫婦どちらも受けられるのが大きなメリットです。また、二人とも団体信用生命保険(団信)に加入するため、万が一の際にお互いの負担を軽減できるという安心感もあります。

一方で、連帯債務や単独ローンは、契約が1本にまとまるのが特徴です。ペアローンに比べて諸費用を抑えやすく、手続きもシンプルになります。また、将来的に離職や転職などで収入が変わった際も、返済計画の見直しが比較的スムーズに進めやすいという側面もあります。

住宅ローンを検討する際、どうしても住宅ローン控除などの節税メリットに目が向きがちです。しかし、目先の得失だけでなく、将来の働き方が変わったときに柔軟に対応できるかという視点も忘れてはいけません。住宅ローンを選ぶときは、税制上のメリットだけでなく、自分たちのキャリアや生活の変化にどれだけ寄り添えるプランか、という点も含めてじっくり検討しましょう。

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4. 育休・転職時の「手取り減少」を織り込んだ返済プラン

住宅ローンの形が決まったら、次に考えておきたいのが将来の暮らしの変化です。特に育休や離職は、住宅ローンの返済計画に大きな影響を与えるきっかけになります。育休期間中は収入が変化するため、これまでの家計のバランスを維持するのが難しくなりがちです。

例えば、夫婦どちらかが育休を取得した場合を、育児休業給付金は、原則として休業開始から180日目までは休業前賃金の67%、その後は50%程度が支給されます*2。社会保険料の免除などはありますが、給付金には上限額があるため、世帯の条件によっては手取りベースの収入が大きく減少する場合もあります。

「育休は一時的なものだからなんとかなるだろう」と楽観的に捉えてしまいがちですが、復職後に時短勤務を選んでこれまでの年収に戻らなかったり、キャリアプランの変化によって働き方が変わったりする可能性もあります。

だからこそ、住宅ローンを検討する段階で、少なくとも一定期間はどちらか一人の収入だけでも返済を続けていけるかを確認しておきましょう。万が一の収入減少に備えて、生活費の1年分ほどを目安に予備の資金を確保しておくと安心です。

5. パワーカップルが取るべき「安全な借入額」の算出法

住宅ローンの借入額を決める際、一つの目安になるのが「もし片働きになったとしても返済を続けていけるか」という視点です。一般的には、どちらか一人の収入をベースにして、返済額を年収の25%以内に抑える考え方が参考にされます。

この場合、世帯年収ではなく、夫婦のうち収入が低い方、あるいはどちらか単独の収入をもとに試算してみます。 例えば、年収1,200万円で手取りが約800万円と仮定すると、年間の返済額は200万円前後が一つの目安です。金利年1.00%・返済期間35年で計算すると、借入額はおおよそ6,000万円から7,000万円ほどになります。

金融機関からは「1億円まで借りられます」と提示されるケースも珍しくありませんが、借りられる金額と無理なく返せる金額は別物だと考えておきましょう。具体的な計算の流れは、次の通りです。

  1. 1.単独の手取り年収を把握する
  2. 2.生活費を差し引き、返済に回せる金額を確認する
  3. 3.そのうち25%以内を目安に年間の返済額を決める

このような手順で試算を進めることで、将来の暮らしの変化にも柔軟に対応できる、地に足の着いた資金計画が立てやすくなります。

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6. 低金利下の戦略:繰上返済と資産運用の優先順位

ここまでは「無理のない返済」に焦点を当ててきましたが、資金に余裕があるパワーカップルの場合、手元の余剰資金をどう扱うかも大きな悩みどころです。住宅ローンの繰上返済を進めて負債を減らすか、それとも資産運用に回してお金を増やすか。これは、その時の金利水準や家庭の資産状況によって考え方が分かれるポイントです。

住宅ローン金利は、今後上昇の可能性も含め注視が必要ですが、依然として歴史的に見れば低い水準にあります。そのため、無理に繰上返済を急ぐだけでなく、手元の資産を運用に回して分散させるという選択肢も現実的です。ただし、その大前提として、毎日の暮らしに支障が出ないよう、十分な現金(流動性)を確保しておくことが欠かせません。

住宅ローン金利変動型である場合、株式や債券を組み合わせた長期分散投資の歴史的なリターン水準を踏まえると、金利水準を上回る期待利回りが見込まれる場合もあります。世帯年収が2,500万円、金融資産が3,000万円といった余裕のある家庭では、金利動向を見守りつつ、繰上返済と資産運用をうまく併用していくのも一つの選択肢です。

一方で、「借金は一日でも早く返したほうがいいのでは」という不安の声もよく耳にします。確かに心理的な安心感はありますが、住宅ローンは他のローンに比べて非常に低い金利で長期間借りられる貴重な資金調達の手段でもあります。急いで返済した結果、手元の現金が減りすぎてしまい、教育費のピークや急な出費への対応が難しくなっては本末転倒です。

そのため、繰上返済を検討する際は、目先の金利差だけでなく、自分たちがどの程度のリスクを取れるのか、そして手元にいくら残っているのかを冷静に見極めることが不可欠です。特に、生活費の1年分に満たない資金しか確保できていない時期は、まずは「いつでも使えるお金」を手厚く持っておくことを優先しましょう。

7. 年収2,200万円の事例:成功と見直しの分かれ目

パワーカップルの住宅ローン設計には、正解が一つあるわけではありません。それぞれの価値観や将来のビジョンに合わせて、「単独重視型」「均等負担型」「資産運用併用型」など、いくつかの代表的なパターンがあります。

例えば、世帯年収2,200万円のご夫婦のケースを見てみましょう。この家庭では、あえて世帯年収フルでの借り入れはせず、夫の単独収入を基準に約7,000万円を借り入れました。妻の収入は住宅ローン返済には組み込まず、教育費の積み立てや資産形成に充てる設計です。こうした形をとることで、育休などで一時的にどちらかの収入が減ったとしても、生活水準を変えずに返済を続けられる「ゆとり」を確保しています。

一方で、約1億5,000万円をペアローンで借り入れたケースでは、その後の変化に苦労することもあります。お子さんの海外留学やキャリアチェンジによる転職など、想定外の収入変動があると、当初の返済計画を大幅に見直さざるを得なくなります。

「自分たちにはどの形が合っているのか」と悩まれる方も多いですが、最適な設計は、今の年収だけでなく「将来の働き方」をどう描くかによって決まります。住宅ローンを検討する際は、目先の借入条件だけにとらわれず、これから数十年続くキャリアや家族のイベントを一度整理してみることが、後悔しない選択への第一歩となります。

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8. 「現在の年収」を過信しない、失敗を防ぐ資金計画

住宅ローンの計画で最も避けたいのは、現在の「借入可能額」を目一杯まで使って資金計画を立ててしまうことです。特にパワーカップルの場合、高年収ゆえに高額な物件も手の届く範囲に入ってしまい、結果として借入額が膨らみすぎてしまう傾向があります。

借入当時は返済能力に余裕があると考えていても、その後お子さんが私立校へ進学した場合、教育費の大幅な増加が家計を圧迫します。当初想定していた貯蓄のペースが極端に鈍化してしまう場合もあります。

「今の高い収入水準が定年までずっと続くことを前提に考えてしまった」というお悩みは、実は少なくありません。こうした失敗を避けるためには、資金計画を立てる際に次の3つのポイントを意識することが大切です。

  • 単独収入を基準に借入額を試算する
    夫婦どちらか一人の収入だけでも返済が滞らないか、保守的にシミュレーションしておきましょう。
  • 将来の支出増加をあらかじめ見込む
    私立への進学などで考えるべき教育費だけでなく、住宅の維持費や親の介護など、将来的に増える支出を予算に組み込んでおきます。
  • ボーナスに過度に依存しない返済計画を立てる
    景気や業績によって変動しやすいボーナスは、あくまで「繰上返済や貯蓄用」と割り切り、毎月の給与だけで返済できる金額に設定するのが安全です。

将来の収入減少や支出の増加は、誰にでも起こりうるものです。それらを「想定外」にとどめず、あらかじめ余裕を持った計画を立てておくことが、長く安心して住み続けるための鍵になります。

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9. 住宅ローンの設計で見落としがちな注意点

住宅ローンの計画を立てる際は、借入額や金利以外にも、税制の仕組みや団体信用生命保険(団信)の保障内容、そして将来の金利変動といった「目に見えにくい要素」に目を向けておきましょう。

特にパワーカップルが注意したいのが、住宅ローン控除の所得制限です。合計所得金額が2,000万円を超える年(給与所得のみの場合、年収ベースでは約2,200万円以上が目安)は、住宅ローン控除が一切受けられない仕組みになっています*3。夫婦のどちらかがこの基準に近い場合、「節税になるからペアローンがお得」という前提が崩れてしまう可能性があるため、自分たちの収入水準で実際にメリットが得られるのか、事前にシミュレーションしておくことが欠かせません。

また、「団信(団体信用生命保険)に入っているから万が一の時も安心」と考えがちですが、その保障範囲は商品によって千差万別です。死亡時だけでなく、ガンや脳卒中などの三大疾病、あるいはケガや病気による就業不能時にどこまでカバーされるのか、その条件をしっかり確認しておきましょう。

さらに、今後の金利上昇への備えも忘れてはいけません。一般的には、返済比率が30%を超えると家計への負担感が一気に高まりやすいといわれます。変動金利型を選ぶのであれば、「もし金利が年1.00%、年2.00%と上昇したら毎月の返済額はどう変わるか」をあらかじめ試算し、自分たちの家計がどこまで耐えられるかを知っておくことが、将来の不安を解消する鍵となります。

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10. パワーカップルの住宅ローンに関するFAQ

「世帯年収」だけで判断するのは禁物です。大切なのは「どちらか一方の収入になっても返済を続けられるか」という視点です。

住宅ローンの返済プランを立てる際、今の高い世帯年収をベースにするのではなく、「万が一、どちらか一方の収入が減少した場合でも生活が成り立つか」という観点が非常に重要です。もしどちらかが育休や離職などで収入が一時的に途絶えた場合、もう片方の収入に対する返済負担は急激に重くなります。

「自分たちは稼いでいるから大丈夫だろう」と楽観視せず、どちらか単独の収入を基準にした「返済比率25%以内」という目安に収まっているかを確認してみることが賢明です。収入の変動は誰にでも起こりうるという前提で、返済の継続性を厳しくシミュレーションしておくことが、真の意味での「安全な借入」につながります。

税制面では有利になりやすい反面、将来の柔軟性は低下します。一概に「どちらが良い」とは言えないため、自分たちのキャリアプランに合わせた判断が必要です。

ペアローンの大きな特徴は、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる点や、双方に団体信用生命保険(団信)が付帯される点にあります。返済期間や方法を個別に設定できるため、一見すると「万が一」に備えた合理的な設計に見えます。ただし、デメリットも無視できません。契約が2本になるため、事務手数料や印紙代などの諸費用がそれぞれ発生します。また、将来的にどちらかが離職や転職をした場合、返済負担の割合を変更したり、住宅ローンを一本化したりといった見直しが難しくなるケースも少なくありません。

「住宅ローン控除を最大限に活用したい」というご相談は非常に多いですが、目先の税制メリットだけを優先するのは危険です。数十年続くローンの期間中、自分たちの働き方や収入がどう変化しても対応できるか、という「家計の弾力性」の観点から慎重に検討しましょう。

少なくとも1年間、どちらか一人の単独収入だけでも、滞りなく返済を継続できる設計にしておくべきです。

育休中の給付金(育児休業給付金)は、当初は休業前賃金の約67%程度、半年を過ぎると50%程度の水準まで低下します。社会保険料の免除などはありますが、給付金には上限額が設定されているため、高年収世帯ほど手取りベースでは「これまでの半分近く」まで収入が落ち込むケースも珍しくありません。

「育休は一時的なものだから大丈夫だろう」と楽観視されがちですが、実際には復職後に時短勤務を選択して以前の年収に戻らなかったり、子育てとの両立のために働き方を大きく変えたりする可能性もあります。世帯年収2,400万円といったゆとりのある世帯であっても、どちらか一方の収入に頼る期間ができると、家計の収支バランスは一気にシビアになります。育休期間中だけでなく、その後のキャリアや生活スタイルの変化まで見据えたうえで、余裕を持った返済計画を立てておくことが、家族の安心を担保するのです。

低金利下では資産運用との併用が合理的ですが、まずは「生活防衛資金」の確保が大前提です。

現在の金利水準では、住宅ローンの金利水準によっては、株式や債券を組み合わせた長期分散投資の期待利回りがそれを上回る可能性も十分にあります。そのため、すべての余剰資金を繰上返済に回すのではなく、一部を運用に充てるのは賢い選択肢の一つです。

一方で、繰上返済には「手元の現金が減る」というリスクもあります。住宅ローンは他の借入に比べて非常に低金利で長期間借りられる貴重な資金です。焦って返済を進めた結果、急な出費や収入減に対応できなくなっては本末転倒です。「借金は早く返すべき」という心理的な不安から相談に来られる方も多いですが、大切なのは金利差だけでなく、自分たちの「リスク許容度」と「手元資金の厚み」を見極めることです。特に、生活費の1年分に満たない資金しか手元にない場合は、まずは何があっても動かせる「流動性(現金)」の確保を最優先しましょう。

「単独返済耐性」「流動資産の残高」「将来の働き方の変動幅」の3点です。

世帯年収が2,500万円という非常に高い水準であっても、お子さんの教育費増加や海外転勤、予期せぬキャリアチェンジなどが重なれば、家計の収支バランスは一気に様変わりします。「今の高い収入が定年まで続く」という前提でプランを立てて良いのか、と不安に感じる方も多いですが、住宅ローンの設計で最も大切なのは、あえて「収入や支出が大きく変動するシナリオ」を想定しておくことです。

特に高収入世帯においては、順風満帆な時だけでなく、以下のような「一定の揺らぎ」を資金計画に組み込んでおくことが、結果として数十年続く返済の安定感につながります。
まず、どちらか一人の収入が途絶えても即座に生活が破綻しない「単独返済耐性」があるか。次に、急な支出や収入減を少なくとも1〜2年はカバーできる「流動資産(現金)」が手元にあるか。そして、時短勤務や転職などの「将来の働き方の変化」を制限してしまわない返済負担か。

これら3つの視点を持って、あらかじめ「余裕の幅」を設計に組み込んでおくことが、変化の激しい時代において家族の自由と暮らしを守り抜くための、最も確かな指標となります。

佐々木 正孝
(ささき まさたか)

編集/ライター。キッズファクトリー代表。教育・ビジネス系の記事を執筆しつつ、児童書の編集やマンガ原作も手がける。

編集/ライター。キッズファクトリー代表。教育・ビジネス系の記事を執筆しつつ、児童書の編集やマンガ原作も手がける。

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