住宅ローンを夫婦で協力して組む方法と
メリット・デメリット、注意点
掲載日:2021年7月2日
夫婦が共働きで家計を支える家庭が増えた今、住宅ローンも夫婦で協力して組むのが一般的になってきました。夫婦のどちらかが単独で申し込むのが難しい場合でも、二人で協力して申し込むことで、希望額の融資を受けられる可能性があります。ただし、このときには複数の選択肢があり、注意点も多いもの。そこでこの記事では、夫婦で協力して住宅ローンを組む方法のメリットやデメリット、注意点をまとめました。
なお、みずほ銀行では同性パートナーでも家族ペアでの住宅ローンの申込が可能となっております。同性パートナーと住宅ローンを組もうと考えていらっしゃる方もご覧ください。
1. 住宅ローンを夫婦で組む方法
共働きの夫婦が住宅ローンの利用を検討する場合には、4つの選択肢があります。
- 1.どちらか一人が契約者となり住宅ローンを組む
- 2.ペアローンで住宅ローンを二本組む
- 3.夫婦で収入合算して連帯保証で住宅ローンを組む
- 4.夫婦で収入合算して連帯債務で住宅ローンを組む
1は一人で住宅ローンを組む方法ですが、その他はいわば「夫婦で協力して住宅ローンを組む」方法です。
ここでは、それぞれの方法について見ていきましょう。
ペアローン
同一の金融機関で夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約します。夫の住宅ローンに対して妻が連帯保証人になるなど、夫婦が互いに連帯保証人になるのが一般的です。申込の際には二人とも住宅ローン審査の対象となり、勤務先・収入・勤続年数などの属性確認・個人信用情報機関に登録されている個人信用情報などが照会されます。
一般的に返済義務は二人で負うため、どちらかの返済が滞った場合には、連帯保証人としてもう一方の返済の義務も負います。ペアローン団信に加入すると、一方に万が一のことがあった場合でも、お二人とも住宅ローン残高が0円になります。借入期間や返済方式などの条件は契約別に決められるため、それぞれの契約で金利タイプや団体信用生命保険の選択も可能です。
収入合算
夫婦で収入を合わせて申し込み、住宅ローンを一つ契約するもので、種類が二つあります。
- 連帯債務型
- 「主たる債務者」と「従たる債務者」が連名で住宅ローンを契約します。債務を二人で負うとして契約するため、ペアローン同様、最初から二人で返済の義務を負います。
- 連帯保証型
- 夫婦の一方が「主たる債務者」として住宅ローン契約をし、もう一方は「連帯保証人」として債務の保証人となります。債務を負うのは「主たる債務者」ですが、「連帯保証人」は「主たる債務者」の返済が滞った場合に、「主たる債務者」と同じ返済の義務を負います。
2.住宅ローンを夫婦で組むメリット・デメリット
住宅ローンを夫婦で組む場合、それぞれの方法には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょう?
ペアローンのメリット・デメリット
- メリット
- 1.借入額を増やせる
一人で住宅ローンを契約する場合とくらべて、借入額を増やせるため、住宅取得時に借入金を多く充てることが可能になります。 - 2.住宅ローン控除による還付金を増やせるチャンスがある
夫婦の共有名義となるため、二人で住宅ローン控除を利用し、還付金を受け取ることが可能です。場合によっては、一人で契約するよりも還付額を増やすことができます。 - 3.団体信用生命保険に二人とも入れる
住宅ローン控除に加えて団体信用生命保険も二人で利用できます。 - 4.すまい給付金を増やせるチャンスがある
すまい給付金は消費税引き上げに伴う住宅取得者の負担軽減のために創設された制度です。要件を満たせば住宅取得者の収入と持分割合に応じて最大50万円給付金を受け取れます。(※消費税10%時の給付額です。)場合によっては一人で契約するよりも還付額を増やすことができます。
- デメリット
- 1.契約ごとに諸費用がかかる
印紙税、融資手数料、保証会社への保証料、登記費用など契約時にかかる諸費用は、契約が一つの場合とくらべて約二倍必要になります。 - 2.返済期間中に片方に何かあっても、もう一方の住宅ローンは残る
一般的に団体信用生命保険によって用意できるのは、あくまで加入者の借入残高分の保障です。一方が死亡し、そのローンが完済された場合でも、もう一方のローンは残ります(※)。ただしペアローン団信に加入すると、一方に万が一のことがあった場合でも、お二人とも住宅ローン残高が0円になります。
- ※ペアローン団信など、2人とも完済となる団信種類もあります。詳しくは、取扱金融機関HP等をご確認ください。
収入合算(連帯債務型)のメリット・デメリット
- メリット
- 1.「従たる債務者」も住宅ローン控除を利用できる
ペアローン同様、共有名義となるため負担割合に応じた二人の住宅ローン控除の利用が可能です。ペアローン同様に、場合によっては一人で契約するよりも還付額を増やすことも可能です。 - 2.ペアローンに比べて諸費用を抑えられる
契約は一本ですので、契約時にかかる諸費用を抑えられます。
- デメリット
- 1.主たる債務者が返済できない場合、従たる債務者が債務を肩代わりしなければならない
「主たる債務者」が返済できない場合には、「従たる債務者」が返済の義務を負います。 - 2.「従たる債務者」は団信の保障の対象外となることが多い
「従たる債務者」に万一のことがあっても、住宅ローンは免除されないことが多いです。そのため、万が一の保障を用意しておくことが必要になりますが、団体信用生命保険は一般的には「主たる債務者」のみ保障の対象となるため、団体信用生命保険だけでは十分な保障を用意できない場合がほとんどです。
- ※フラット35の機構団信や一部の民間金融機関には、上乗せ金利を支払うなどによって「従たる債務者」も保障の対象とできる団体信用生命保険もあります。
収入合算(連帯保証型)のメリット・デメリット
- メリット
- 1.ペアローンに比べて諸費用が抑えられる
連帯債務型と同様、契約は一本ですので諸費用を押さえられます。 - 2.連帯債務型よりも取り扱っている金融機関が多い
連帯債務型は銀行などでは利用できないところが多く、選べるプランも少ないです。銀行で収入合算したいというと連帯保証型を提案されるのが一般的です。
- デメリット
- 1.連帯保証人は住宅ローン控除を利用できない
一般的に「主たる債務者」は住宅ローン控除を利用することができますが、所有権がない「連帯保証人」は住宅ローン控除を受けられません。 - 2.連帯保証人は団体信用生命保険への加入ができない
団体信用生命保険は債務者のみの加入となるため、連帯保証人は団体信用生命保険に加入できないことが多いです。一方、連帯保証人に万一のことがあった場合にも返済額は変わらないため、民間の保険で必要な保障を用意しておくことが必要です。 - 3.債務者が返済できなくなった場合は、連帯保証人が債務を肩代わりしなければならない
住宅ローンの債務者の返済が滞った際には、連帯債務者が返済の義務を負います。
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3.夫婦で協力して住宅ローンを組む際の注意点
夫婦で協力して住宅ローンを組む際は、どのようなことに注意すればいいのでしょう?
負担額と所有権の割合が異なると贈与税の対象となるおそれがある
ペアローンや連帯債務型の住宅ローンを利用する場合、実態に応じて所有権を分ける必要があります。夫婦の共有名義と聞くと、折半にしたくなりがちですよね。
しかし、所得や借入額など実態とかけはなれた所有権割合を設定すると、贈与税が発生するおそれがあります。また、片方の返済をもう一方が肩代わりした場合も、資金の贈与と見なされる可能性がありますので、資金を拠出する銀行口座にも留意しましょう。
離婚すると一括返済を求められるケースがある
住宅ローンはご自身の住まいの取得を前提に契約が行われるのが一般的です。そのため、離婚などにより申込者が自宅を出る場合、利用条件に違反したとして一括返済を求められるおそれがあります。
離婚後にどちらかが自宅に残りたい場合は、住宅ローンを一括返済するか、住み続ける方が新たな借入を行って住宅ローンを一本化するといった方法があります。ただし、新たな住宅ローンを契約する際は以前の契約を破棄した方に、贈与税が課せられる場合もあるため注意が必要です。
4.夫婦で協力して住宅ローンを組むなら、思いやりの気持ちが大切
夫婦で協力して住宅ローンを借りるということは、二人の返済能力に応じた融資を受けることであり、最終的には、お互いが債務全額の支払い義務を負います。契約当初は夫婦両方が当然に働けていたとしても、妻が育休からの職場復帰がうまくいかなかったり、夫が転職したりして、契約当初より収入が減ってリまったりすることも考えられるでしょう。
万が一の場合も視野に入れたうえで、頭金を用意して借入金額を安易に増やさない心がけや、日頃からのお互いへの思いやりを持ち、一生一緒に返済していく覚悟が必要です。しっかり相談しながら進め、より良い契約方法と返済方法を検討していきましょう。
内田 英子
(うちだ えいこ)
2級FP技能士、CFP®
独立系FP事務所「生活設計塾FPオフィス幸せ家族ラボ」の代表を務め、ママが笑顔で暮らせる生活設計士として、住宅ローン・投資・保険選びのパートナーとして活動中。NPO法人日本ファイナンシャルプランナー協会愛媛支部の幹事等も担い、大学や資格取得講座の講師も務めている。
ファイナンシャルプランニング技能士1級と同等資格のCFP®や、生命保険資格の最高峰であるTLCを持ち、日本FP協会道央支部に幹事として所属。2017年以降は、確定拠出年金・生命保険・ライフプランに関するセミナーを年間50~100件開催。北海道新聞にもコラム掲載の経験があり、執筆活動にも力を入れている。