創業と設立、創立の違いとは?意味や事業を始める手順を解説
掲載日:2025年11月6日起業準備
事業や会社の開始を表すには、創業や設立、創立など、様々な言葉があります。これらの言葉は日常的によく使われますが、それぞれの意味の違いを正しく理解している人は少ないでしょう。
新たに事業や会社を始める際には、言葉の意味の違いを正確に理解することが重要です。本記事では、事業や会社の開始を表す様々な言葉の違いに加え、スムーズに起業するための関連手続きも解説します。
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会社を始めることを意味する言葉の違い
事業・会社を始める際には、様々な手続きが必要です。これらの手続きでは「創業」「設立」「創立」といった事業開始に関連する言葉が用いられます。
それぞれの言葉の違いを理解しておくことで、手続きの内容をより正確に把握できます。
創業とは「事業を始めること」
創業とは、個人や法人が新たに会社や店舗を立ち上げ、事業を開始することを指します。一般的には法人による事業開始を指しますが、個人事業主が店舗を開業する場合も創業に含まれます。
創業は、過去の時点を述べる際に使われることが多い言葉です。「創業20周年」や「創業したとき」等の表現で使われます。
設立とは「組織や施設等を作ること」
設立とは、組織や施設、制度等を新たに設けることを指します。例えば、「会社を設立する」「生活支援制度を設立する」等の形で使われます。
また、設立は法人として正式に登記し、法人格を得ることを指す場合も多くあります。会社や法人にとって重要な節目であることから、「会社設立日」を記念日として定めている企業も存在します。
創立とは「会社や機関等を初めて作ること」
創立とは、会社や機関等の団体を新たに設けることを指します。「創設」と呼ばれることもあり、文脈によっては置き換えることも可能です。
また、創立は、法人設立の手続きが完了し、登記によって正式に組織が発足したことを指す場合も多くあります。「創立したばかりの法人」や「創立100年を超える学び舎」等の表現で使われます。
開業とは「(個人事業主が)新しく事業や商売を始めること」
開業とは、新たに事業や商売を開始することを指します。「開業中」や「開業時間」等の表現では、現在も事業や商売を行っている状態を指すことがあります。
個人事業主が事業を始めるときは、「開業」と表現されるのが一般的です。個人事業主は開業時に「開業届」を提出するため、「開業」という言葉にも馴染みが深いでしょう。一方、法人が事業を始めるときは「設立」や「創業」を使うことが一般的です。
起業とは「新しく事業を始めること」
起業とは、新たに事業を開始することを指します。そのため、自ら新たに事業を立ち上げる人を「起業家」と呼びます。
創業が過去の出来事に使われることが多いのに対し、起業は過去だけでなく未来についても使われます。例えば、「いつか起業したい」「来年、起業する予定だ」等、未来の話をする際は「起業」という言葉を用いるのが自然です。
起業についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「起業とは?形態やフリーランスとの違い、成功のコツを分かりやすく解説」
創業と設立の流れの違い
事業を始める「創業」にあたっては、法人の場合、「設立」という組織や制度の構築が欠かせません。
創業は設立とは異なり、法的な手続きを伴わないため、実施の順序に決まりはありません。一方、設立は、法的に定められた手続きの流れに従って進める必要があります。
それぞれの手続きの流れについて、詳しく解説します。
創業の流れ
事業を成功へ導くためにも、創業の各ステップを着実に進めることが重要です。
そこで、一般的な事業計画や準備の流れをご紹介します。ただし、これらは法的な設立手続きではないため、進捗に応じて順序が前後しても支障はありません。
1.競合分析・ターゲット調査
まずは、どのような事業を展開するのかを明確にしましょう。「誰に」「何を」「どのような方法で」の3つの観点から事業アイデアを整理します。
例えば、インテリア専門店の開業を想定した場合、以下のようなアイデアが考えられます。
- 誰に:個性とセンスの良さにこだわる30~50代の富裕層
- 何を:ヨーロッパの輸入壁紙や家具
- どのような方法で:提案から仕入れ、施工までをワンストップで提供
事業の大まかなイメージが固まったら、競合分析とターゲット調査に着手しましょう。競合との差別化を図るためには、市場性を意識しつつも、自社の独自性と付加価値を明確に打ち出すことが重要です。
2.事業計画の構築
競合分析とターゲット調査を踏まえて、具体的な事業計画を構築します。
事業を継続するためには、継続的に利益を生み出す必要があります。どのようなビジネスモデルで継続的な収益を得るのかを明確にしましょう。また、効果的なマーケティング戦略の策定も欠かせません。差別化ポイントを分析し、それを事業の魅力として明確に訴求します。
次に、収益を具体的に見積もり、開業に必要な資金や当面の運転資金を算出しましょう。これらの過程は頭の中で考えるだけでなく、文書としてまとめることが重要です。事業計画書を作成することで、事業を見直す際や資金状況を把握する際の指針となり、客観的な視点を持ちながら事業を進めやすくなります。
事業計画書についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイントを分かりやすく解説!」
3.資金調達
事業を開始する際には、創業資金と当面の運転資金を確保する必要があります。まずは、どの程度を自己資金でまかなうかを検討しましょう。手持ちの資金をすべて事業に投じてしまうと、想定どおりに収益が上がらなかった場合、事業の継続が困難になるおそれがあります。また、日常生活にも影響が及ぶ可能性があるため、慎重な判断が求められます。
自己資金で不足する分については、融資や出資等で調達する必要があります。なお、金融機関から融資を受ける場合には、提出された事業計画が審査の対象となります。綿密な調査やマーケティング分析に裏付けされた説得力のある事業計画書を作成しておきましょう。
また、創業資金に活用できる助成金制度や補助金制度の確認も重要です。国や自治体では創業時に活用できる助成金・補助金制度を実施しています。原則として返済不要であり、創業時の資金負担を軽減する手段としても有効です。
助成金制度や補助金制度についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「創業時に使える補助金は?助成金・支援金や申請時の注意点も解説」
関連記事:「創業補助金とは?その種類と地域別の制度をご紹介」
設立の流れ
会社を設立するには、まず事業の内容を明確にし、創業に向けた準備を進める必要があります。以下の手順で会社設立を進めましょう。
- 1.法人形態を選択する
- 2.定款作成・認証を受ける
- 3.役員を選出する
- 4.資本金を払い込む
- 5.会社設立登記を行う
以下で、それぞれの手順について解説します。
1.法人形態を選択する
個人事業主ではなく法人として活動する場合は、まずは法人の形態を選択しましょう。法人には、株式会社や合同会社、一般社団法人等の形態があります。
法人形態の違い
| 株式会社 | 合同会社 | NPO法人 | 一般社団法人 | |
|---|---|---|---|---|
| 根拠法 |
会社法 |
会社法 |
特定非営利活動促進法 |
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 |
| 事業目的 |
定款に掲載した事業の営利追求 |
定款に掲載した事業の営利追求 |
特定の非営利活動 |
公共事業や収益事業など、制約なしに目的を設定できる |
| 設立方法 |
公証人役場で定款認証後、登記 |
定款作成後、登記 |
所轄庁の認証後、登記 |
公証人役場で定款認証後、登記 |
| 議決権 |
出資比率による |
1人1票 |
原則として1社員1票 |
1社員1票 |
| 課税対象 |
全所得 |
全所得 |
収益事業の全所得 |
全所得 |
| 会計書類* |
|
|
|
|
| 根拠法 | |
|---|---|
| 株式会社 |
会社法 |
| 合同会社 |
会社法 |
| NPO法人 |
特定非営利活動促進法 |
| 一般社団法人 |
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 |
| 事業目的 | |
| 株式会社 |
定款に掲載した事業の営利追求 |
| 合同会社 |
定款に掲載した事業の営利追求 |
| NPO法人 |
特定の非営利活動 |
| 一般社団法人 |
公共事業や収益事業など、制約なしに目的を設定できる |
| 設立方法 | |
| 株式会社 |
公証人役場で定款認証後、登記 |
| 合同会社 |
定款作成後、登記 |
| NPO法人 |
所轄庁の認証後、登記 |
| 一般社団法人 |
公証人役場で定款認証後、登記 |
| 議決権 | |
| 株式会社 |
出資比率による |
| 合同会社 |
1人1票 |
| NPO法人 |
原則として1社員1票 |
| 一般社団法人 |
1社員1票 |
| 課税対象 | |
| 株式会社 |
全所得 |
| 合同会社 |
全所得 |
| NPO法人 |
収益事業の全所得 |
| 一般社団法人 |
全所得 |
| 会計書類* | |
| 株式会社 |
|
| 合同会社 |
|
| NPO法人 |
|
| 一般社団法人 |
|
- *主な書類のみ
事業目的や活動内容等に合わせて、法人形態を選択することが重要です。また、この段階で会社の代表印を作成しておくことで、定款作成や登記手続きを円滑に進めることができます。
株式会社や合同会社についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「株式会社とは?仕組みや設立のメリット・デメリットを分かりやすく解説」
関連記事:「合同会社の作り方は?自分で設立する流れや手順、必要書類を解説」
2.定款作成・認証を受ける
株式会社や合同会社等を設立する際には定款が必要です。会社設立を企画し、事務手続きを担当する「発起人」が定款を作成します。なお、定款は会社設立登記の際にも提出が求められる重要な書類です。
目的・商号・本店所在地・出資額・発起人の氏名および住所は、定款に記載が義務付けられている項目です。必要な内容をすべて整えたうえで、公証人による定款認証を受ける必要があります。ただし、合同会社を設立する場合は、定款の作成は必要ですが、原則として公証人による認証は不要です。
定款についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説」
3.役員を選出する
次に役員を選出しますが、その前に役員の決定方法を定めておく必要があります。なお、役員は設立の事務を行う「発起人」と同一人物でも問題ありませんが、必ずしも同一人物である必要もありません。
役員の選任には、登記手続きが必要です。会社設立後に役員を変更する場合は、そのたびに登記変更の手続きが必要となります。
4.資本金を払い込む
法人口座を開設できるのは、法人を設立した後です。法人設立時には資本金を払い込む必要がありますが、設立前は法人口座がないため、発起人個人の口座に払込をします。
資本金を払い込んだ証明として、通帳のコピーを取得し、保管しておきましょう。ネット銀行やオンライン通帳を利用する場合は、払い込んだことが確認できる画面のスクリーンショットを保存してください。また、資本金の払込証明書も作成し、通帳のコピーとともに提出用に製本します。
資本金についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「資本金とは?その役割と金額を決める際の基準について解説」
5.会社設立登記を行う
会社設立登記は、法務局で手続きすることも、オンラインで申請することも可能です。設立時取締役等の調査が終了した日、または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に、会社設立登記を行う必要があります。
株式会社は、その本店の所在地で設立登記を行うことで成立します。会社設立登記が完了すると、法人口座の開設が可能になります。会社と個人のお金を分け、透明性の高い事業運営を実現するためにも、早めに法人口座を開設しておきましょう。
会社設立の流れやかかる日数についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「会社設立の流れを徹底解説!法人化のメリット・注意点も確認」
関連記事:「会社設立にかかる最短日数は?最短で設立する3つのポイントも解説」
法人口座開設の流れ
会社設立登記後には、法人口座を開設しましょう。法人口座を開設することで、次のようなメリットがあります。
- 会社と個人のお金の区分を明確化し、経費管理や会計処理がしやすくなる
- 企業としての信用力や実態を対外的に示せる
- 融資や資金調達の機会を得られる可能性がある
- 法人向けサービスを受けられる可能性がある
会社のお金の流れを正確に把握することは、企業の存続に関わる重要な要素です。法人口座の開設は、以下の流れで進めていきます。
- 1.口座開設申込
- 2.審査・面談
- 3.口座開設完了
順に紹介します。
1.口座開設申込
法人口座の開設を希望する金融機関に、必要書類や申込方法を事前に確認します。必要書類を準備したら、口座開設の申込を行いましょう。多くの金融機関では、店舗窓口またはオンラインで申込を受け付けています。ただし、金融機関によっては店舗のみでの対応となる場合や、法人の状況に応じて店舗での申込が必要となる場合もあります。
法人口座の開設における審査のポイントや必要書類についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:「法人口座の開設について 審査のポイントと開設手順をご紹介」
関連記事:「法人口座開設に必要な書類は?取得方法と提出時のポイントを解説」
2.審査・面談
一般的に、一次審査を通過後に、二次審査として面談が行われます。
金融機関によっては、オンライン面談に対応していることもあります。本支店へ行くのが難しい場合や、開業準備で時間が取りにくい場合には、オンライン面談を実施しているかどうかも金融機関を選ぶ基準の一つにしてみてはいかがでしょうか。
3.口座開設完了
面談後、審査結果が通知されます。法人口座の開設が承認された場合は、金融機関の店舗で口座開設の手続きを行います。金融機関によっては、フルリモートでの口座開設が可能です。
口座開設の契約が完了すると、通帳やキャッシュカードが交付され、郵送または店舗で受け取ることが一般的です。
みずほ銀行の法人口座はオンラインでも申込可能
みずほ銀行では、法人口座開設の審査申込から面談・契約の手続きまでオンラインで対応しています。会社設立時は手続きや業務が多忙となり、金融機関へ足を運ぶ時間を確保するのが難しい場合もあるでしょう。そのため、オンラインを利用した口座開設も検討してみてください。なお、一部のお客さまは、店舗での対応が必要な場合があります。
みずほ銀行で法人口座を開設いただくと、様々なサービスをご利用いただけます。例えば、インターネットバンキング(みずほビジネスWEB)は、お申込月より3ヵ月間、月額基本料金が無料になります。さらに、会社設立3年以内でかつ、一定の条件をクリアした場合には、月額利用料が最大5年間無料です。
また、スタートアップ企業を支援する会員制サービス「M’s Salon」も利用可能です。「M’s Salon」では、経営知識や事業遂行ノウハウ、ビジネス拡大機会、資金調達サポート等を提供しています。
まとめ
事業を開始する際に使用される言葉には類似したものが多く、混同されることも少なくありません。「創業」「設立」「創立」等の違いをあらかじめ理解しておくことで、各種手続き時の混乱を避けやすくなります。
「創業」は会社設立前の準備段階を指し、「設立」は法律に基づいて法人化の手続きを行うことを意味するのが一般的です。
会社設立登記後には、法人口座の開設がおすすめです。みずほ銀行では、経営相談や業務に役立つサービスを提供しています。法人口座を開設したいとお考えの方は、経営相談や業務に役立つサービスを提供しているみずほ銀行をご利用ください。
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監修者
安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。