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合同会社の作り方は?自分で設立する流れや手順、必要書類を解説

掲載日:2025年6月9日起業準備

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会社を設立するとき、選択肢の一つとなる形態が合同会社です。出資者と経営者が同一であり、スピーディーな意思決定ができるメリットがあります。

合同会社は「日本版LLC」とも呼ばれており、合名会社や合資会社と同じように、持分会社の一つです。株式会社よりも設立費用を抑えられるため、コストを抑えたい方は検討する価値があるでしょう。

合同会社にはメリットがある一方で、いくつか注意すべきデメリットもあります。本記事では、合同会社と株式会社との違い、合同会社の作り方等を解説します。

合同会社とは

合同会社とは、会社法により設立が認められている持分会社の一形態です。所有と経営が一致しており、スピーディーに意思決定をしたい場合や複数人が対等な立場で経営に参加したい場合に向いています。

合同会社を含む持分会社には「株式」がなく、出資者の地位を自由に譲渡することはできません。出資者の地位を譲渡するには、原則として全出資者の同意が必要です。

また、合同会社では、すべての出資者が会社の債権者に対して有限責任を負います。もし会社が倒産した場合でも、出資額を限度として責任を負えば良く、個人の財産を手放して債務を弁済する必要はありません。

合同会社と株式会社の違い

会社を設立する際には複数の選択肢がありますが、一般的には株式会社が選ばれることが多いです。合同会社と株式会社の違いをまとめると、以下の通りです。

合同会社 株式会社
経営の自由度

経営の仕組みや運営方法を柔軟に定められるため、自由度は高い

経営と所有の分離が求められ、合同会社よりも低い

出資や利益配分

出資比率に連動せず、メンバー間の合意により自由な利益分配方法が可能

原則として出資比率に応じた利益配分が基本で、柔軟性は低い

信用力・認知度

取引先や金融機関からの信用・認知度は株式会社よりも低い

一般的に、社会的な認知度や信用力が高い

資金調達

金融機関からの融資や助成金・補助金等が中心

株式の発行が可能で、資金調達手段の選択肢は多い

役員の任期

なし

通常2年、最大10年

決算公告の義務

なし

あり

経営の自由度
合同会社

経営の仕組みや運営方法を柔軟に定められるため、自由度は高い

株式会社

経営と所有の分離が求められ、合同会社よりも低い

出資や利益配分
合同会社

出資比率に連動せず、メンバー間の合意により自由な利益分配方法が可能

株式会社

原則として出資比率に応じた利益配分が基本で、柔軟性は低い

信用力・認知度
合同会社

取引先や金融機関からの信用・認知度は株式会社よりも低い

株式会社

一般的に、社会的な認知度や信用力が高い

資金調達
合同会社

金融機関からの融資や助成金・補助金等が中心

株式会社

株式の発行が可能で、資金調達手段の選択肢は多い

役員の任期
合同会社

なし

株式会社

通常2年、最大10年

決算公告の義務
合同会社

なし

株式会社

あり

株式会社では、出資額(保有株式数)に応じて議決権と剰余金の配当を得られます。一方で、合同会社は出資額に関係なく、出資者全員に議決権や利益が割り当てられます。

合同会社の議決権は、出資額に関わらず原則として平等です。ただし、定款で定めれば、出資者の議決権や利益の分配に応じて付与できます。

関連記事:「株式会社とは?仕組みや設立のメリット・デメリットをわかりやすく解説」

合同会社のメリット

イメージ

合同会社には、株式会社にはないメリットが複数あります。起業を検討している方は、どのようなルールで経営をしたいか考慮して、設立形態を判断しましょう。

設立の費用・時間を抑えられる

合同会社は、株式会社よりも設立費用を抑えられるメリットがあります。

例えば、会社を設立する際の登録免許税は株式会社が15万円程度であるのに対し、合同会社は6万円程度です。また、株式会社は作成した定款を公証役場で認証を受ける必要がある一方で、合同会社は定款の認証が不要です。

定款の認証には1.5万円~5万円程度の費用が発生するため、合同会社は株式会社よりも10万円近く設立費用を抑えられます。

さらに、株式会社には毎年必ず決算公告を行う義務があり、7万円程度の費用がかかります。合同会社には決算公告の義務がないため、設立後のランニングコストも抑えられるでしょう。

なお、合同会社を設立するまでに必要な期間の目安は2週間程度、株式会社の場合は3週間程度です。合同会社では定款認証が不要な分、株式会社よりも1週間程度早く設立できる傾向があります。

所有と経営が一致しており会社経営の自由度が高い

株式会社は所有と経営が分離している一方で、合同会社は所有と経営が一致しています。

株式会社が合意形成や意思決定をする際には、株主総会での決議を経なければなりません。しかし、合同会社では原則として、出資者から過半数の同意を得ることで意思決定ができます(定款で異なるルールを定めることも可能)。

会社経営の自由度が高く、会社の意思決定をスムーズに進めやすい点は、合同会社のメリットといえるでしょう。

利益配分を自由に決められる

合同会社では、利益配分を出資者が自由に決められます。会社が事業活動を通じて得た利益は、「配当」という形で出資者に分配され、分配のルールは定款で自由に定められます。

出資者が挙げた成果や貢献度等に応じて利益を配分できるため、各出資者のモチベーション向上にもつながるでしょう。

合同会社のデメリット

合同会社ならではのメリットがある一方で、気を付けるべきデメリットもあります。

知名度と信頼性が低い傾向がある

合同会社は、株式会社よりも知名度と信頼性が低い傾向にあります。一般的に、「会社」と聞くと株式会社をイメージする人が多く、日本で合同会社は馴染みが薄いといえるでしょう。

そのため、きちんと運営していても、取引先や顧客から「信頼できるのか不安」「資金的に問題があるのではないか」というイメージを持たれてしまう可能性があります。

出資者の対立が起こると意思決定が煩雑になる

合同会社の運営は、出資者である出資者が対等な立場で行います。株式会社のように株式数に応じて議決権を行使するのではなく、対等な立場であるため、意見の対立が起こると意思決定が煩雑になる可能性があります。

出資者が自分一人の場合や、出資者同士の関係が良好であれば、スムーズに運営できますが、人間関係に問題が起こると意思決定に影響が出てしまう点には注意しましょう。

上場できず資金調達の方法が限られる

合同会社は株式がないため、証券取引所に上場ができません。株式を発行できないため、資金調達の方法が融資や助成金、補助金等に限られます。

株式会社よりも資金調達の選択肢が限られるため、事業投資資金や運転資金を確保したいとき、苦労する可能性があるでしょう。

関連記事:「会社設立時に利用できる助成金・補助金について徹底解説」

みずほ銀行の法人口座開設(法人のお客さま)

合同会社を作るときの流れ

合同会社を作る際には、法務局での登記が必要です。実際に登記に至るまでに、どのような手順で設立を進めれば良いのかを見ていきましょう。

基本事項の決定

まずは社名や事業内容、資本金額等の基本事項を決めます。社名は覚えてもらいやすく、また良い印象を与えられる名称を考えましょう。

どのような事業内容を展開するのか、決算期はいつに設定するのか等、会社の基本的な指針も決めます。出資者間で話し合いながら、イメージしている会社経営の形を具体化していきましょう。

関連記事:「会社名の決め方やルールは?商号との違いや注意点を解説」

定款の作成

定款とは、会社の目的・組織・活動・構成員・業務執行等の基本規約や規則を文書化したものです。会社を設立する際には、定款の作成が必須です。

合同会社を設立するには、社員候補者になろうとする者が定款を作成し、出資者全員が署名と押印をしなければなりません。定款には、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」があり、それぞれの内容は以下の通りです。

絶対的記載事項
  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 出資者の氏名または名称および住所
  • 出資者の全部を有限責任社員とする旨
  • 出資者の出資目的およびその価額または評価の標準
相対的記載事項
  • 持分の譲渡の要件
  • 業務執行社員の指名または選任方法
  • 出資者または業務執行社員が2人以上ある場合における業務の決定方法
  • 合同会社を代表する代表社員の指名または互選
  • 存続期間または解散の事由
任意的記載事項

定款の記載事項のうち、絶対的記載事項および相対的記載事項以外の事項で、会社法の規定に違反しないもの(業務執行社員の員数、業務執行社員の報酬、事業年度等)

定款の作成は必須ですが、合同会社の場合は定款の認証を受ける必要がありません。

関連記事:「定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説」

出資の手続きをする

合同会社の出資者は、定款の作成後から合同会社の設立登記をするまでに、出資の手続きを済ませる必要があります。出資の方法は「現金出資」と「現物出資」に分けられ、それぞれ以下のような違いがあります。

特徴 方法
現金出資

現金を会社に出資する方法

代表社員となる人の口座に振り込む

現物出資

現金以外の財産(不動産・動産・債権・知的財産権等)を会社に出資する方法

現物財産の価値を評価し、評価額を資本金に算入する

現金出資
特徴

現金を会社に出資する方法

方法

代表社員となる人の口座に振り込む

現物出資
特徴

現金以外の財産(不動産・動産・債権・知的財産権等)を会社に出資する方法

方法

現物財産の価値を評価し、評価額を資本金に算入する

会社の登記が完了する前は、会社名義の銀行口座がないため、まず代表社員となる人の口座へ出資金を振り込みます。払い込まれた口座の通帳のコピー(通帳の表紙、表紙裏、振込記録のあるページ)は、忘れずに取っておきましょう。

登記申請をする

出資の手続きが完了したら、本店所在地を管轄する法務局へ登記申請をします。設立登記時には登録免許税を納付する必要があり、合同会社の場合は「資本金の1000分の7」か「6万円」のいずれか高い方です。

なお、登記申請の方法には持参・郵送・オンラインの3通りがあります。自分(自社)に適した方法で登記申請をしましょう。

メリット デメリット
持参
  • 窓口で誤りがないか確認し、その場で修正ができる
  • 窓口に出向くため、時間や移動の手間がかかる
  • 窓口の受付時間が平日午前9時00分から午後5時00分までと決まっている(2025年3月時点)
郵送
  • 平日に時間をとって足を運ぶ必要がない
  • 書類の到着や返却に時間がかかる
  • 必要書類が多く、切手の準備なども含め手間がかかる
  • 郵送中の書類紛失や遅延のリスクがある
  • 不備があると登記申請が却下される
オンライン
  • 必要書類が少なく、申請作業を効率的に進められる
  • 自宅やオフィスから申請でき、移動の手間が不要
  • 事前準備が必要
  • パソコン操作に慣れていないとスムーズに進められない可能性がある
  • 不備があると登記申請が却下される
持参
メリット
  • 窓口で誤りがないか確認し、その場で修正ができる
デメリット
  • 窓口に出向くため、時間や移動の手間がかかる
  • 窓口の受付時間が平日午前9時00分から午後5時00分までと決まっている(2025年3月時点)
郵送
メリット
  • 平日に時間をとって足を運ぶ必要がない
デメリット
  • 書類の到着や返却に時間がかかる
  • 必要書類が多く、切手の準備なども含め手間がかかる
  • 郵送中の書類紛失や遅延のリスクがある
  • 不備があると登記申請が却下される
オンライン
メリット
  • 必要書類が少なく、申請作業を効率的に進められる
  • 自宅やオフィスから申請でき、移動の手間が不要
デメリット
  • 事前準備が必要
  • パソコン操作に慣れていないとスムーズに進められない可能性がある
  • 不備があると登記申請が却下される

合同会社を設立した後に必要な手続き

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合同会社を設立した後は、税務・社会保険・労働保険等に関する手続きが必要です。

手続きの種類 手続きの場所 具体的に提出する書類

税務関係

本店所在地がある地域を管轄する税務署

  • 法人設立届出書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書等

社会保険関係

年金事務所

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等

労働保険関係

労働基準監督署と公共職業安定所(ハローワーク)

  • 労働保険関係成立届
  • 労働保険概算保険料申告書
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届等

上表の中でも、雇用する従業員がいない場合は、労働保険関係の手続きが不要です。

合同会社の出資者は「役員」という立場であり、労災保険と雇用保険に加入しません。そのため、雇用する従業員がいない場合は、税務関係と社会保険関係の手続きを行いましょう。

関連記事:「会社設立時に必要な社会保険・労働保険の手続きは?基礎から解説」

合同会社を作るときの必要書類

法務局で合同会社の設立手続きする際に必要な必要書類や添付書類は、以下の通りです。

  • 合同会社設立登記申請書
  • 定款
  • 業務を執行する社員の一致があったことを証する書面
  • 出資に係る払込みおよび給付があったことを証する書面
  • 資本金の額が会社法および会社計算規則にしたがって計上されたことを証する書面(設立に際して出資される財産が金銭のみである場合は不要)
  • 代理人によって登記を申請するときは、その権限を証する書面

なお、代表社員が法人であるときは、さらに以下の書類が必要です。

  • 当該法人の登記事項証明書
  • 当該社員の職務を行うべき者(職務執行者)の選任に関する書面
  • 職務執行者が就任を承諾したことを証する書面

書類に不備があると、再度申請をし直す手間と労力が発生します。必要な書類がすべてそろっているか、書類の内容に不備がないか確認したうえで、登記申請をしましょう。

合同会社の設立費用

合同会社を設立するときにかかる費用は、おおむね10万円前後です。詳細な内訳は以下の通りです。

定款の収入印紙代

4万円(電子定款の場合は不要)

登録免許税

資本金の1000分の7または6万円(どちらか高い方)

資本金

最低1円

その他
  • 実印の作成費用
  • 印鑑証明書や登記簿謄本等の発行手数料

法人の設立手続きを司法書士に依頼する場合は、別途で手数料が発生します。司法書士によって異なるものの、5万円~10万円程度の追加費用が発生するでしょう。

合同会社を設立した後は、運転資金を用意しなければなりません。設立時の費用だけでなく、事業展開するために必要な自己資金、または資金調達方法も考えておきましょう。

なお、スムーズに手続きが進めば、1週間程度で合同会社を設立することが可能です。

合同会社から株式会社へ組織変更する方法

事業の成長や資金調達のニーズに応じて、将来的に合同会社を株式会社に組織変更するケースが考えられます。以下のように、法務局で組織変更の手続きをすれば、合同会社から株式会社に変更できます。

  1. 1.組織変更計画書の作成
  2. 2.官報公告と債権者への催告
  3. 3.登記変更申請

組織変更計画書とは、合同会社から株式会社へ変更した後の基本情報や組織構成、資本金の額等を記載する書面です。変更点がある箇所は、正確に記載しましょう。

官報公告と債権者への催告は、債権者の権利を保護するための手続きです。1ヵ月程度の異議申し立て期間を設けて、期間中に異議がなければ法務局で登記変更申請を行います。法務局での登記が完了すると、正式に株式会社として組織変更が完了します。

なお、組織変更をする際に発生する費用は10万円程度です。官報への公告掲載費用として3万円程度、合同会社を解散する登録免許税の「3万円」と株式会社を設立するときの登録免許税として「資本金額の1000分の1.5」か「3万円」のいずれか大きい金額が発生します。

官報への公告掲載期間にもよるものの、40日~60日程度の期間があれば、合同会社から株式会社への組織変更が完了します。

まとめ

合同会社は所有と経営が一致しており、意思決定をスムーズに行えます。また、株式会社よりも設立にあたって費用と手間がかからないメリットがあります。

スムーズに進めば、準備を開始してから実際に合同会社を設立するまで、2週間~3週間程度で完了させることも可能です。設立当初は合同会社でも、将来的に株式会社へ組織変更することも可能なので、柔軟に経営できる会社形態といえるでしょう。

会社の設立を検討している方は、合同会社を一つの選択肢として検討してみてください。

合同会社を設立した後は、会社のお金を正確に管理するために、法人口座の開設をおすすめします。金融機関によっては、法人口座の保有者に経営を助けるサービスやサポートを行っています。

みずほ銀行の法人口座は、休日・夜間でもお申し込みができ、ウェブ面談のため来店不要で口座開設の手続きを進めることが可能です。原則として、登記事項証明書・印鑑証明書の原本提出が不要なので、書類を準備する手間も減らすことができます。

また、みずほ銀行は創業期のお客さまに向けた特典もご用意しているため、ぜひ口座開設をご検討ください。

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監修者

志塚 洋介

志塚 洋介

  • 行政書士
  • 1級FP技能士
  • CFP

大学在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。証券会社で資産運用コンサルティングに従事したのち、不動産会社で保有不動産の収支計算や資産管理、収支改善業務などに従事し、独立開業。行政書士とファイナンシャルプランナーというお金と法律の2つの側面から会社設立、相続、遺言、運用、不動産などに関する幅広い業務を展開中。雑誌やwebでの執筆や株式や投資のセミナーなどの講師も行い、YouTubeでの投資に関する動画も好評。

HP:http://www.shizuka-office.com/

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