会社設立時に利用できる助成金・補助金について徹底解説
掲載日:2023年2月8日 資金調達
会社の資金調達の方法には、出資や融資を受ける他に助成金・補助金を受給する方法もあります。本稿では、会社設立時に利用できる助成金・補助金を中心に、制度の概要や種類、そしてスムーズに活用するためのステップと注意点を詳しく解説します。
目次
会社設立時に知っておきたい助成金・補助金の基礎知識
助成金・補助金とは、法人や個人事業主の支出の一部または全部を、国や地方自治体などが給付するというものです。助成金・補助金とも、原則として返済する必要はありません。
助成金と補助金の主な相違点の一つは募集・審査方法です。助成金は要件を満たして申請すれば原則給付される一方、補助金は応募者の中で採択された場合に給付が受けられるという場合があります。
また、助成金は厚生労働省・地方自治体が管轄することが多いのに対して、補助金は経済産業省・地方自治体が管轄していることが多い傾向です。
なお、上記の違いはあくまでも傾向であり、両者は厳密に区別されているわけではありません。上記以外の省庁・団体が管轄する助成金・補助金もあります。
助成金の特徴
助成金の特徴は、対象となる法人や個人事業主が一定の要件を満たす活動をし、それを決められた期限内に報告すれば原則支給される点です。厚生労働省・地方自治体が労働者の雇用の安定や事業者の生産性向上などを目的に実施しているものが多いのも特徴といえます。
公募期間は補助金と比較すると長い傾向があり、1年中受け付けているものもあります。支給額は補助金と比べると少額であることが多く、要件を満たす法人や個人事業主が広く活用しやすい仕組みになっています。
なお、「活動の開始前に計画書の提出が求められる」「活動の実施から申請までの提出期限は1ヵ月などと短い」場合もあることに注意しましょう。
補助金の特徴
補助金の特徴は、対象となる法人や個人事業主が一定の要件を満たす活動計画を作成して応募し、審査の結果、採択されれば支給を受けられる点です。経済産業省・地方自治体が国・地方の産業の活性化を目的にしたものが多い傾向にあります。
公募期間は2週間から1ヵ月程度のものが多く、公募の告知があった時点で応募の準備を開始しなくては間に合わない場合もあります。支給額は上限が1,000万円超のものなど、助成金に比べると高額なものが多い点も特徴です。
なお、審査では助成金とは異なり他の応募者の計画と比較されるため、優れた計画を提案しても必ず受給できるわけではありません。
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会社設立時に活用したい主な助成金
会社設立時に活用を検討したい主な助成金は以下の通りです。
名称 | 制度概要 | 管轄 | 支給金額 | 主な要件 |
---|---|---|---|---|
キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換した事業主に助成 | ハローワーク・都道府県労働局 |
|
雇用保険適用事業所の事業主である |
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース) | 雇用機会が不足している地域で事業所の設置と雇用をした事業主に助成 | ハローワーク・都道府県労働局 | 施設・設備の設置・整備費用と雇用人数により1年ごとに100万円から1,600万円(創業の場合) |
|
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
制度概要 | 非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換した事業主に助成 |
---|---|
管轄 | ハローワーク・都道府県労働局 |
支給金額 |
|
主な要件 | 雇用保険適用事業所の事業主である |
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
制度概要 | 雇用機会が不足している地域で事業所の設置と雇用をした事業主に助成 |
---|---|
管轄 | ハローワーク・都道府県労働局 |
支給金額 | 施設・設備の設置・整備費用と雇用人数により1年ごとに100万円から1,600万円(創業の場合) |
主な要件 |
|
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の正社員化または処遇改善の取り組みをした事業主に対して助成するものです。この制度のコースは、正社員化支援と、賞与・退職金の導入や短時間労働者の労働時間延長などの処遇改善支援に分かれます。
正社員化支援の「正社員化コース」とは非正社員を正社員にすると助成金が支給される仕組みで、有期契約から無期契約の正社員に転換した場合は1人あたり57万円が支給金額の基準となり、生産性向上の有無や企業規模によって金額が変動します。
主な要件は、「雇用保険適用事業所の事業主である」「雇用保険適用事業所ごとのキャリアアップ管理者の設置」「雇用保険適用事業所ごとのキャリアアップ計画の作成・管轄労働局による認定完了」などです。
会社設立時にはパート従業員を雇用し、事業が軌道に乗ってから正社員にする予定がある場合などに活用できます。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)とは、雇用機会が特に不足している地域で事業所の設置や整備を行い、さらに地域住民を雇用した場合に給付される助成金です。
支給額は、設置や整備に要した額と雇用人数によって細かく分かれています。一例として、創業において設置や整備の費用が1,000万円以上であり10人を雇用した場合、1回の支給額は400万円です。
複数回の支給を受けることも可能で、1回目の支給の主な対象要件には、「事前に計画書を提出している」「計画期間内の設置・整備の費用の合計が300万円以上である」「ハローワークの紹介により3人(創業の場合は2人)以上雇用する」などがあります。
なお、地方の雇用創出が趣旨となっており、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪は対象地域外です。事業を行う地域が上記以外の場合は検討する意味があるでしょう。
会社設立時に活用したい主な補助金
会社設立時に検討しておきたい主な補助金は以下の通りです。表に記載の項目以外にも振興公社が扱う制度もあります。ここでは順番に紹介します。
名称 | 制度概要 | 管轄 | 支給額(上限) | 主な要件 |
---|---|---|---|---|
小規模事業者持続化補助金(一般型) | 小規模事業者の販路開拓や業務効率化の費用を補助 | 全国商工会連合会 |
|
小規模事業者である |
地域デジタルイノベーション促進事業 | 地域の特性や強みをデジタル技術と掛け合わせた新しいビジネスを構築するための実証費用を補助 | 経済産業省 |
|
常時使用する従業員数が1,000人未満の会社である |
ものづくり補助金 (一般形・通常枠) |
革新的な製品・サービス開発等に必要な設備・システム投資等を補助 | 全国中小企業団体中央会 |
|
中小企業者・特定事業者の一部・特定非営利活動法人である |
IT導入補助金 (通常枠) |
生産性向上に貢献するITツールの導入を補助 | 中小企業庁 |
|
中小企業である |
小規模事業者持続化補助金(一般型)
制度概要 | 小規模事業者の販路開拓や業務効率化の費用を補助 |
---|---|
管轄 | 全国商工会連合会 |
支給額 (上限) |
|
主な要件 | 小規模事業者である |
地域デジタルイノベーション促進事業
制度概要 | 地域の特性や強みをデジタル技術と掛け合わせた新しいビジネスを構築するための実証費用を補助 |
---|---|
管轄 | 経済産業省 |
支給額 (上限) |
|
主な要件 | 常時使用する従業員数が1,000人未満の会社である |
ものづくり補助金(一般形・通常枠)
制度概要 | 革新的な製品・サービス開発等に必要な設備・システム投資等を補助 |
---|---|
管轄 | 全国中小企業団体中央会 |
支給額 (上限) |
|
主な要件 | 中小企業者・特定事業者の一部・特定非営利活動法人である |
IT導入補助金(通常枠)
制度概要 | 生産性向上に貢献するITツールの導入を補助 |
---|---|
管轄 | 中小企業庁 |
支給額 (上限) |
|
主な要件 | 中小企業である |
小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者持続化補助金(一般型)とは、小規模事業者の販路開拓や業務効率化を図る際に活用できる補助金です。
複数の枠の中でも「創業枠」は、過去3年以内に開業し、かつ指定の創業支援を受けた事業者を対象としています。採択された場合の補助率は補助対象となる経費の3分の2で、補助上限額は200万円です。
会社設立時であれば「小規模であること」という要件を満たしやすく、また補助対象となる経費には宣伝広告費などが含まれるので、比較的活用しやすい制度です。
地域デジタルイノベーション促進事業
地域デジタルイノベーション促進事業とは、地域の特性・強みとデジタル技術を掛け合わせた新たなビジネスモデルを構築する際の実証事業に要する費用を補助する制度です。実証とは、民間企業が新製品や技術の実用化に向けて実際の環境で検証を行うことを指します。
対象となるのは、デジタル起業および協力団体と連携した実証企業です。これらの複合体をコンソーシアムと呼び、この形成が必須の要件です。さらに、実証企業が中小企業の場合は、複数企業で実証企業群を構成する必要があります。中小企業の場合の補助率は補助対象となる経費の2/3で、上限額は1,500万円です。
地域の強みとデジタルを掛け合わせたビジネスの構築に取り組む場合は検討の価値があります。
地域の振興公社による補助金
振興公社とは、地域において主に中小企業・産業の支援を行うことを目的とした実務を行う機関です。名称等は若干異なりますが、全国に同様の機関があってそれぞれ支援制度を用意しており、法人設立時に活用できる補助金もあります。
例として、以下のような支援制度が用意されています。
名称 | 管轄団体 | 制度概要 | 主な要件 |
---|---|---|---|
創業助成金事業 | 公益財団法人東京都中小企業振興公社 | 東京都内で創業する際の創業費を助成 |
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起業支援金補助事業 | 公益財団法人埼玉県産業振興公社 | 埼玉県内の対象地域における起業、事業承継、二次創業に要する経費を補助 |
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やまぐち創業補助金事業 | 公益財団法人やまぐち産業振興財団 | やまぐち維新プランに関連する指定分野における社会的事業の創業を補助 |
|
創業助成金事業
管轄団体 | 公益財団法人東京都中小企業振興公社 |
---|---|
制度概要 | 東京都内で創業する際の創業費を助成 |
主な要件 |
|
起業支援金補助事業
管轄団体 | 公益財団法人埼玉県産業振興公社 |
---|---|
制度概要 | 埼玉県内の対象地域における起業、事業承継、二次創業に要する経費を補助 |
主な要件 |
|
やまぐち創業補助金事業
管轄団体 | 公益財団法人やまぐち産業振興財団 |
---|---|
制度概要 | やまぐち維新プランに関連する指定分野における社会的事業の創業を補助 |
主な要件 |
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ものづくり補助金(一般形・通常枠)
ものづくり補助金(正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)は、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う中小企業・小規模事業者等の設備投資等を支援するものです。
複数の枠のうち「一般形・通常枠」の対象は中小企業・小規模事業者で、革新的な製品・サービス開発等に必要な設備やシステム投資において単価50万円(税抜)以上の設備投資をする場合に活用できます。
事業計画の基本要件として、給与と事業所としての付加価値額の向上等が求められます。補助率は補助対象となる経費の2分の1で、上限額は従業員数と対象経費の種類により異なりますが、従業員数5人以下の場合には、100万円から750万円です。
審査の加点項目の中に「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」があり、会社設立にあたって活用を検討しておくと役立つ可能性があります。
IT導入補助金(通常枠)
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する場合に経費の一部を補助するものです。いくつかの枠のうち「通常枠」の対象は中小企業・小規模事業者等で、導入するITツールの要件には「労働生産性の向上に資するもの」などがあります。
採択された場合の補助率は補助対象となる経費の2分の1で、補助額はITツールを導入する業務工程により、30万円から450万円です。補助対象にはソフトウェア費、クラウド利用料、導入関連費があります。
通常枠以外に、セキュリティ対策推進枠ではセキュリティ向上のサービス、デジタル化基盤導入枠ではPC・タブレット等の導入も対象となっており、活用できる場面の多い補助金です。
生産性向上のための補助金なので会社設立後すぐに活用できるものではありませんが、2期目以降に生産性を向上させる計画を作成する場合は、この補助金が役立つ可能性があります。
会社設立時に助成金・補助金をスムーズに活用するステップ
ここからは、会社設立時に助成金・補助金をスムーズに活用するためのポイントを解説します。
自社の状況に合う助成金・補助金を選ぶ
自社の状況に合った助成金・補助金を選ぶのは、最初の重要なステップです。助成金・補助金の種類は多いので、経済産業省の「ミラサポplus」といったウェブサイトも使いながら調べてみましょう。
助成金・補助金は対象の業種を限定しているものがあるので、業種の分類も理解しておくとスムーズに調べやすくなります。「創業」「販路開拓」といったテーマを明確にすることもポイントです。
募集中の助成金・補助金を調べる
助成金・補助金を選んだら、募集要項で対象・要件を確認し申請するかどうかを検討しましょう。
ただし、選んだ助成金・補助金が必ずしも募集中とは限りません。期限まで募集しているものや、定員に達した段階で締め切りになるものもあるため、不明な場合は窓口に問い合わせておくと安心です。
募集が終了している場合、次回の募集を待つ選択もありますが、助成金・補助金は常に次回があるとは限りません。次の募集予定が決まっているかの確認も重要です。
所定の方法で申請する
助成金・補助金の申請においては、申請書類が最重要です。募集要項を理解し、所定の方法に沿って漏れなく書類を提出する必要があります。また、申請期限までに猶予があれば提出後に補正や再提出できることもあるので、余裕をもって準備しましょう。
補助金は予算上限が決まっているケースがあり、優れた計画であっても審査の過程で他者の計画と比較されて、不採択となることがあります。
「申請する計画は補助金・助成金制度の目的に沿っているか」「計画を実現できる根拠は何か」などを具体的に示し、支援する価値のある事業であるとできるだけアピールするのも重要です。
会社設立で助成金・補助金を利用するときに注意すべきポイント
ここからは、助成金・補助金を利用するときに注意すべきポイントを解説します。
助成金・補助金の種類ごとに要件・仕組みが異なる
助成金・補助金ごとに要件や仕組みは異なります。例えば、計画の提出が事後報告で良いものもあれば、事前の提出を要件としているものもあるので注意が必要です。
また、同じ種類であっても募集要項の確認は必要です。例えば同じ創業に関するものでも、その支援事業の目的が国の経済発展のためなのか、地域活性化なのかでは求められる事業内容・計画・必要書類は異なります。
不明な点があれば、窓口に問い合わせて疑問を解消しておくとスムーズです。
全額が補助されるわけではない
多くの助成金・補助金には、助成・補助率と上限額が定められています。
例えば、300万円の支出が対象となる制度において、助成・補助率が3分の2であれば200万円と計算されますが、上限額が100万円であれば支給額は100万円です。
このように、全額が補助されるわけではなく、一部の自己負担が前提であることに注意する必要があります。
審査・検査がある
前述の通り、助成金・補助金には審査があります。必要書類がそろっていなければ補正を求められたり、受理されなかったりする場合があります。募集要項にある提出書類は漏れなく提出しましょう。
また、無事に支給された後にも、提出済みの計画通りに実行されているかの確認のために、検査が入る可能性があります。設備投資や雇用などを前提にした制度の場合、それらを一定の期間継続することを給付の条件にしているものがある点にも注意が必要です。
実際の支給に向けた報告・請求が必要
助成金・補助金の多くは、計画の実行にあたり支払った経費の領収書等を提出し、その後支給を受けるという流れです。つまり、一旦は全額負担することになります。
支給を受けるには計画した事業の結果や支払った経費について報告が必要です。中には一度の書類提出ですべてが完結するケースもありますが、多くの場合、支給決定の通知を受けた後に報告と請求の手続きを行います。
また、支給が数回に分かれている制度もあり、定期的に報告と請求をしなければ満額を受け取れない場合もあるので注意しましょう。
まとめ
助成金・補助金は種類が豊富です。要件を満たせば受給できる助成金と、審査によって採択されれば給付される補助金といったように特徴に違いはありますが、どちらも融資とは異なり返済する義務がありません。会社設立時に活用できる種類もあるので、要件を満たすものがあれば活用を検討する価値があります。
助成金・補助金を受給する場面をはじめ、会社運営における資金の管理には法人名義の銀行口座があると便利です。法人名義の銀行口座を開設するなら、みずほ銀行がおすすめです。
みずほ銀行は、法人口座開設申込受付や面談もオンラインで実施しており、基本的には来店不要で手続きが完結します。法人設立にあたって法人名義の銀行口座を開設予定の方は、みずほ銀行を検討してみてはいかがでしょうか。
(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
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