定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説
掲載日:2022年10月14日起業準備
株式会社や合同会社などを設立する際には、定款を作成する必要があります。また、株式会社を設立するなら作成した定款について公証人の認証を受けなければならないと、会社法で定められています。設立手続きをスムーズに進めたいなら、定款についての基礎的な知識や定款認証の方法を事前に知っておくに越したことはありません。
本稿では定款の定義に加え、定款認証や設立登記の流れと費用、会社設立後の法人用銀行口座開設など、会社設立時に役立つ幅広い知識を紹介します。
定款とは
法務省のウェブサイトによると、定款は「法人の組織活動の根本原則」とされています。より簡単な言葉で言い換えるなら、定款とはいわば「会社を運営するうえでの基本ルール」です。会社(法人)運営にあたっては、まず定款を作成しそれを基に経営方針を決める必要があります。
会社法第26条において、株式会社の設立時には定款を作成することが義務付けられています。また、同条には、定款を作成するのは発起人であり、発起人全員が定款に署名または記名押印しなければならないとも定められています。発起人、つまり会社を立ちあげる人が基本ルール(定款)をまず作成し「会社設立後はその基本ルールに従って会社を運営していきましょう」という趣旨です。
株式会社に限らず、合同会社の設立時においても定款作成は必須です。ただし、株式会社の場合は公証人から定款の認証を受ける必要がある一方、合同会社の場合は認証が不要だという点が異なります。
定款を作成するタイミングは、法人設立登記の申請前です。法人設立登記時は法務局へ登記申請書と定款を一緒に提出しなければならないので、申請日までに準備しておきましょう。
定款を作る目的
定款は会社の基本ルールですが、設立時の定款作成や、株式会社の場合における公証人による認証は何のために義務付けられているのでしょうか。ここでは、定款を作成する主な3つの目的を解説します。
会社のルールに公的な効力を持たせるため
定款には例えば「事業目的」「商号」「本社所在地」といった最も基本的な法人概要を記載する必要がありますが、これらを定款という形で定義し、また法務局への提出・登録を経ることで、その内容を保証することが可能です。
会社には様々なルールがあるものですが、それらを独自に定めただけでは拘束力を持たせにくい場合があります。しかし、定款を公的に保証させることで一定の拘束力を発揮させることが可能なのです。
利害調整・トラブル防止につなげるため
定款は、会社と株主の間や、会社とその他の第三者間の利害調整に役立つ指針でもあります。例えば金銭的なトラブルが発生したとして、定款に責任の所在に関する定めがあれば、それに基づいたスムーズな対処が可能です。
また、そもそも定款は会社法にのっとって作成する必要があり、たとえ社長や役員であっても定款に違反する決定はできないため、定款そのものが善管注意義務違反に触れるような経営者の横暴を防ぐストッパー的な存在になります。
社会的な信用を得るため
定款は「会社ならあって当然のもの」なので、定款があれば即信頼されるというわけではありません。しかし、後述するように定款には記載が義務付けられている項目と、必要に応じて記載すべき項目、記載してもしなくても良い項目などがあり、さらに内容や書き方は会社によって個性が出るポイントです。定款の項目に不足がなく、理にかなっている内容であれば、会社の信頼性向上につながる可能性があります。
定款に記載する3つの内容
ここからは、定款に記載する内容について解説します。定款に記載する内容は「絶対的記載事項」「相対的記載事項」そして「任意的記載事項」の3種類です。なお、ここでは株式会社の定款を例に解説していきます。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、文字通り「定款へ絶対に記載しなければならない事項」です。絶対的記載事項を欠いた定款は無効とされているため、作成時には漏れのないよう細心の注意を払わなければなりません。
株式会社の定款の絶対的記載事項は次の5つです。
- 目的:会社の事業目的です。会社は、定款に記載した目的以外を事業とすることはできません。ただし、定款を修正することで会社設立後でも事業目的を追加・変更できます。
- 商号:会社の「名前」です。設立する会社の種類に応じ、株式会社なら「株式会社」を商号中に含めなければなりません。なお、既に存在する会社と同じ商号をつけることも可能ですが、商号だけでなく本店所在地までも同じになる場合は認められません。
- 本店の所在地:会社の本店(本社)の所在地を記載します。具体的な地番まで記載する必要はなく、最小行政区画までの記載で問題ありません。
- 設立に際して出資される財産の価格又はその最低額:発起人が出資する財産の価格または最低額を記載します。なお、設立時に発行する株式の数は絶対的記載事項ではありません。
- 発起人の氏名または名称及び住所:「発起人の氏名又は名称及び住所」も絶対的記載事項です。個人に限らず、法人も発起人になることができます。
相対的記載事項
定款の相対的記載事項とは、定款に記載することで初めて効力が発生する事項を指します。絶対的記載事項とは異なり、相対的記載事項の記載がない定款でも有効です。また、相対的記載事項については、設立後に定款変更をして定めることもできます。
主な相対的記載事項は以下の通りです。
- 変態設立事項:変態設立事項には、例えば、現物出資に関する定めや、発起人の報酬に関する定めなどがあります。
- 株主総会などの招集通知期間短縮:株式会社は、原則として株主総会の開催日の2週間前までに株主に対して招集通知を発しなければなりません。ただし、会社が非公開会社であり、かつ、書面や電磁的方法による議決権行使の定めがない場合は、定款の定めにより招集通知期間を短縮することができます。
- 株券発行:定款に定めることによって、株券の発行が可能になります。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、会社法に反しない範囲という条件付きで、定款に記載しておける事項のことです。相対的記載事項とは異なり、定款へ記載しなければ効力が発生しないというわけではありません。任意的記載事項は、明確にしておくことで会社運営がスムーズにいく事項や、運営上拘束力を持たせたい事項がある場合に記載します。
以下に任意的記載事項の例をあげます。
- 定時株主総会の招集時期:例えば、定款に「毎年6月に定時株主総会を開く」と定めておくことができます。
- 事業年度:会社の事業年度は任意的記載事項ですが、一般的にはほとんどの会社が定款に事業年度を記載します。基本的には「当会社の事業年度は毎年4月1日〜翌年3月31日の年1期とする」といったように、1年以内の期間を一事業年度として設定します。
- 公告の方法:旧会社法においては、公告方法は絶対的記載事項の一つでしたが、2022年時点での会社法では任意的記載事項とされています。なお、定款に公告方法を定めなかった場合、公告方法は自動的に官報になります。
定款の認証手続きの方法
株式会社を設立する場合、発起人が作成した定款について公証人による認証を受ける必要があります。公証人による定款認証なくしては、株式会社の設立登記手続きを進められません。ここでは、定款の認証手続きで必要な書類や費用について具体的に解説していきます。
なお、前述の通り、合同会社の場合にも定款の作成は必要ですが、公証人による認証は不要です。
認証に必要な書類
定款の認証手続きには、原則として次の書類が必要です。
- 定款原本:合計で原本を3通作成し、公証人へ提出します。認証後、公証人は3通の内1通を公証役場で保管し、残りの2通を依頼者へ返却します。返却された2通の内1通は登記手続きに利用し、もう1通は会社で保管するのが通常です。
- 発起人の印鑑証明書:発起人の本人確認のため、印鑑証明書を提出します。定款に記載した発起人全員の印鑑証明書が必要です。法人が発起人である場合は、法人の代表者の印鑑証明書を用意します。
- 代表者事項証明書、現在事項全部証明書、履歴事項全部証明書、法人登記簿謄本の内のいずれか一つ:発起人が法人の場合にのみ、必要になります。
- 実質的支配者となるべき者の申告書:設立する会社の実質的支配者が暴力団員である場合、公証人は定款を認証できません。そのため、実質的支配者が暴力団員でない旨の申告書を提出する必要があります。株式会社の実質的支配者の定義については、「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」に記載があります。
認証にかかる費用
株式会社の定款について公証人による認証を受ける費用は、設立する株式会社の資本金の額によって異なります。
公証人の認証手数料については、次の表の通りです。
資本金の額 | 認証手数料 |
---|---|
100万円未満 | 3万円 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
その他の場合 | 5万円 |
また、認証手数料に加えて、次の費用もかかります。
定款謄本代 | 1枚につき250円 |
収入印紙(*電子定款なら不要) | 4万円分 |
令和4年1月1日から新しい手数料額となりました。
定款についてよくある疑問
ここからは、定款についてのよくある疑問について、一つずつ解説していきます。
定款の書式は決まっている?
前述の通り、定款の記載内容には厳密な規定がありますが、書式については特に規定がありません。一般的には、A4サイズの用紙に横書きで記載し、縦方向で印刷をしてから長辺綴じで一冊の冊子にします。日本公証人連合会のウェブサイトに記載例があるので、参考にしてみてください。また、電子データ(PDF)で電子定款を作成するという後述の方法もあります。
定款は自分で作れる?依頼するなら誰に?
定款は自分で作成できますが、作成を司法書士や行政書士といった専門家に依頼することもできます。司法書士は法務局や裁判所へ提出する書類作成や登記の専門家で、行政書士は主に許認可関係で行政機関へ提出する書類作成の専門家です。なお、行政書士は定款を作成できても、司法書士とは違って法人設立登記の申請代理人になることはできません。
定款の認証は電子データで手続きできる?
定款は、電子データ(PDF)で作成することもできます。電子データで作成された定款を「電子定款」と呼び、電子定款での認証手続きなら印紙代が不要です。なお、クラウド型の会計ソフトの中には定款作成機能が備わっているものもあります。
定款認証を受けた後に変更できる?
定款認証を受けた後でも、必要な理由がある場合には定款の記載内容を変更できます。定款認証後に定款を変更するためには、原則として、発起人全員が署名または記名押印をした変更の同意書が必要です。さらに、変更した定款については再度公証人の認証を受けなければなりません。
なお、定款認証後の定款変更であっても、次のケースでは公証人による再度の認証は不要です。
- 変態設立事項に関する裁判所の変更決定があった場合
- 発起人全員が署名または記名押印した同意書により発行可能株式総数を定める場合、または変更する場合
再度の定款認証にも、費用がかかります。二重の出費を避けるためにも、定款の記載事項に漏れがないかどうかは認証前にしっかりと確認しておいてください。
定款以外に法人設立で必要な手続き
会社を設立する際には、定款の作成と認証以外にも様々な準備をしなければなりません。ここからは、定款作成・認証以外に必要な手続きと、手続きの流れについて解説していきます。
出資金の払い込み
定款認証後、発起人は速やかに出資金を払い込まなければなりません。会社設立前はまだ会社名義の銀行口座は存在しないため、発起人の個人口座へ出資金を払い込みます。会社名義の口座は原則として会社の設立後にしか開設できませんので、設立後、会社名義の口座を開設したタイミングで、出資金を発起人の口座から会社名義の口座へ移動させます。
法務局への登記
会社を設立するためには、法務局へ会社設立登記を申請しなければなりません。登記の完了をもって会社登記簿が作成され、会社設立手続きが完了します。会社設立登記には、前述した認証済定款の他にも印鑑届出書や出資金払込証明書といった書類が必要です。
また、会社設立登記の申請時には登録免許税を納めます。株式会社設立にかかる登録免許税の額は、設立する会社の資本金の額次第ですが、最低でも15万円がかかります。
その他の手続き
会社を設立するには、定款認証、出資金の払い込み、法務局への登記申請以外に必要な手続きについて、その内の主な種類を次の表で紹介します。
手続き項目 | 届出先・申請先 | 提出期限 |
---|---|---|
法人設立の届出 | 税務署・地方公共団体 | 会社設立日(設立登記の日)から2ヵ月以内 |
法人税について青色申告の承認申請 | 税務署 | 設立の日以後3ヵ月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日まで |
給与支払事務所等の開設届出 | 税務署 | 給与支払事務所等の開設日から1ヵ月以内 |
労働保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 事実発生の翌日から10日以内 |
雇用保険の適用届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 事実発生の翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 公共職業安定所 | 事実発生の翌日から10日以内 |
健康保険・厚生年金保険の適用届 | 年金事務所 | 事実発生日から5日以内 |
上記はあくまで一例です。会社形態や規模に応じて、それぞれ所定の期日までに必要な手続きを済ませましょう。
まとめ
定款は会社の基本的なルールを指し、定款を作成する目的には「公的な効力を持たせる」「利害調整・トラブル防止につなげる」「社会的な信用を得る」といった点があげられます。定款の作成には所定の記載内容や手続き方法、費用がありますが、定款を用意しなければ法人登記はできないため、法人設立時はしっかり準備しておきたいところです。
法人設立に際しては、税務署や公共職業安定所、年金事務所などでの手続きも必要になります。また、会社のお金の流れを明確にするために、法人用銀行口座を開設するのが一般的です。
みずほ銀行では、実店舗・オンライン両方で法人口座開設を受け付けています。特に「法人口座開設ネット受付」サービスでは、原則として申し込みから口座開設まで来店不要・オンラインのみで完了させることが可能です(条件がございます)。法人設立にあたって銀行口座の開設を検討している方はご利用をご検討ください。
(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
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