株式会社とは?仕組みや設立のメリット・デメリットを分かりやすく解説
掲載日:2025年5月14日起業準備

株式会社とは、会社形態の一つです。会社形態の中でも知名度が高く、「所有と経営の分離」がされている特徴があります。
株式会社は個人事業主や他の会社形態よりも社会的信用を得やすく、ビジネスの場面で自社の認知度や事業内容を伝えやすいメリットがあります。
これから会社の設立を検討している方は、株式会社と他の形態の違いを理解し、自分に合った種類の会社を設立しましょう。本記事では、株式会社の定義や設立するメリット等を解説します。
株式会社とは?
株式会社とは、株式を発行して集めたお金で運営する会社です。株式を購入(出資)した人は「株主」と呼ばれ、経営に参加したり、利益の還元を受けられたりします。
会社の所有権は株式を購入した「株主」にあり、会社の事業方針を決定するのは株主です。会社を経営するのは代表取締役や取締役等の役員で、事業方針を実行する役割を担います。
なお、株式会社で設けられる役職と役割は、以下の通りです。
役職 | 役割 | 任期 |
---|---|---|
代表取締役 |
|
原則2年(非公開会社は最長10年) |
取締役 |
|
原則2年(非公開会社は最長10年) |
監査役 |
|
原則4年(選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで) |
代表取締役 | |
---|---|
役割 |
|
任期 |
原則2年(非公開会社は最長10年) |
取締役 | |
役割 |
|
任期 |
原則2年(非公開会社は最長10年) |
監査役 | |
役割 |
|
任期 |
原則4年(選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで) |
任期が満了した後も継続して役員を務める場合は、一度退任したうえで再任が可能です。
株式会社は年に1回定時株主総会を開き、取締役や監査役がその年の会社の経営状況を株主へ報告します。ただし、中小企業の中には代表取締役がすべての株式を保有しており、実態として「所有と経営の分離」がされていないケースも少なくありません。
株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の違い
設立できる会社の形態には、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社があり、それぞれの特徴は以下のように異なります。
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
株式会社 |
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合同会社 |
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合資会社 |
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合名会社 |
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株式会社 | |
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特徴 |
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メリット |
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デメリット |
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合同会社 | |
特徴 |
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メリット |
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デメリット |
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合資会社 | |
特徴 |
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メリット |
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デメリット |
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合名会社 | |
特徴 |
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メリット |
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デメリット |
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なお、会社の中でも、「所有と経営の分離」がされているのは株式会社だけです。
株式会社以外の会社を「持分会社」と総称し、これらの会社は所有と経営が一致しています。すべての社員の同意によって運営され、社員が経営にもあたります。
株式会社を設立するメリット

一般的に、「会社」と聞くと株式会社をイメージする方が多いのではないでしょうか。
会社形態の中でも、株式会社を設立するメリットを具体的に解説します。
社会的信用を得やすい
株式会社は、個人事業主や他の会社形態よりも社会的な信用を得やすいメリットがあります。会社形態の中でも、知名度が高く厳格な運営が求められるためです。
また、株式会社は総会の決議や決算公告等遵守すべきルールが多く、設立までのハードルも高い特徴があります。「株式会社を設立し、実際に経営している」という事実が一定の信頼につながるため、対外的に信用を得やすいのです。
実際に自分で株式会社を設立し、ビジネスを進めるうえでは信頼・信用を得ることは欠かせません。取引先・顧客・金融機関に自社の理解を深めてもらい、安心して取引できる相手であると認知してもらえれば、事業展開・発展につながるでしょう。
資金調達の選択肢が広い
株式会社を設立すると、株式を発行して多くの人たちから出資を募ることが可能です。発行できる株式の種類が普通株式や種類株式など幅広く、資金調達の選択肢が広いメリットがあります。
出資者からすると、将来有望な企業に投資し、実際に成長すれば大きなキャピタルゲイン(株式等を売却した際の売買差益)を得られる可能性があります。また、出資者は間接有限責任であるため、出資金額を超えて損失を負うことはありません。
一方で、企業側からすると出資を受けることで既存事業とのシナジー効果(相乗効果)を発揮し、事業展開につながるメリットが期待できるでしょう。出資で得たお金は融資とは異なり返済義務がないため、様々な事業投資に充てられます。
税金の負担を抑えられる場合がある
個人に課される所得税と法人に課される法人税は、税率が異なります。所得税は課税所得が増えるほど税率が高まる累進課税であるのに対して、法人税は原則として一定税率です。
所得税と法人税の税率は以下の通りです(2025年3月時点)。
課税所得 | 所得税(個人) | 法人税(資本金1億円以下の中小法人) |
---|---|---|
330万円以下 |
10% |
15% |
330万円超~695万円以下 |
20% |
|
800万円以下 |
– |
|
800万円超 |
23.2% |
|
695万円超~900万円以下 |
23% |
|
900万円超~1,800万円以下 |
33% |
|
1,800万円超~4,000万円以下 |
40% |
|
4,000万円超 |
45% |
また、株式会社は個人事業主よりも経費として認められる範囲が広く、節税しやすいメリットがあります。例えば、法人名義でマンションを借り、自宅を社宅として取り扱えば家賃を経費として計上でき、自身への給与(役員報酬)も経費として計上できます。
さらに、青色申告をしている個人事業主が赤字を繰り越せるのは3年間ですが、株式会社は10年間にわたって繰り越せるため、節税の選択肢が広いことが分かります。
株式会社を設立するデメリット
株式会社を設立するときと設立した後、経営者として知っておくべきデメリットがあります。
以下で、具体的にどのようなデメリットがあるのかご紹介します。
設立に手間と費用がかかる
株式会社を設立するには、定款を作成したうえで認証を受けたり法務局で登記手数料を支払ったり、様々な手間と費用がかかります。税務署に開業届を出すだけで済む個人事業主と比較すると、事務的・経済的負担が重くなる点はデメリットといえるでしょう。
また、会社形態の中でも、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)は定款の認証を受ける必要がありません。持分会社は1週間~2週間程度の期間で設立できるのに対し、株式会社は設立までに2~4週間程度かかるのが一般的です。
司法書士に依頼するかどうかにもよりますが、株式会社を設立するまでには20万~30万円ほどの費用が発生します。個人事業主は0円、持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)の設立は10万円程度です。
株式会社の場合、事業を開始する当初から、ある程度のお金が必要になる点は押さえておきましょう。
関連記事:「定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説」
決算を公示しなければならない
株式会社を設立すると、毎年収入と費用をまとめ、会社の売上やかかった費用等をまとめて株主に発表しなければなりません。個人事業主や持分会社とは異なり、事業運営の成果や財務状況について、決算期ごとに公開する手間が発生します。
決算の公告は会社法で義務付けられており、決算公告を怠ると罰則が課せられる可能性があります。また、決算の公告を怠ると企業運営の透明性が疑問視され、信頼を損ねてしまう事態にもなりかねません。
役員には任期がある
株式会社では、役員(取締役・会計参与・監査役)に任期が設けられています。変更があるたびに登記情報を変更する手続きや費用が発生するため、注意しましょう。
なお、持分会社の場合は役員の任期が設けられていません。役員を変更する手続きや費用の負担をデメリットに関する場合は、持分会社のほうが向いているかもしれません。
株式会社の設立方法
株式会社を設立する際の流れは、以下の通りです。
- 1.事業目的や理念を決める
- 2.定款を作成する
- 3.定款の認証を受ける
- 4.資本金を払い込む
- 5.設立時取締役や設立時代表取締役を選定する
- 6.法人設立の登記申請をする
株式会社の設立手続きは、自分で行っても司法書士に依頼しても問題ありません。事業の準備にリソースを割きたい場合は、司法書士に一任するのも一つの手段です。
必須ではありませんが、事業計画書を作成して事業内容や経営戦略、自社の強み等を言語化しておくことは有意義です。開業資金や運転資金、将来的な収益予測等も整理し、財務的な問題を抱えるリスクも可視化しておきましょう。
投資や融資を受けるときには、事業計画書の提出を求められるのが一般的です。外部からの資金調達を検討している場合は、会社を設立する過程の中で、事業計画書を作成しておきましょう。
関連記事:「会社設立の流れを解説!準備から法人登記後の手続きまで」
関連記事:「事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイントを分かりやすく解説!」
株式会社を設立したら法人口座を開設しよう
株式会社を設立した後は、個人のお金と事業用のお金を明確に区別するために、法人口座を開設しましょう。
事業におけるお金の動きを正確に把握できれば、現在の事業が好調なのか不調なのかを判断しやすくなります。また、資金繰りを改善する必要性や事業投資の計画についても考えやすくなるでしょう。
法人口座を使って取引を行うと、事業実態を明確に証明できます。その結果、取引先や顧客に「安心して取引できる企業」という印象を与えられ、事業の理解や信頼の構築にもつながります。
事業をするうえで、信頼の獲得は欠かせません。信頼を獲得できれば、販路の拡大や取引先の開拓等、事業によい影響をもたらす期待が持てるでしょう。
金融機関によっては、法人口座を開設している企業に対して、経営をサポートするサービスを用意しています。また、担当者と事業運営や資金繰りに関する相談ができることもあるため、経営をする中で困ったことがあっても安心です。
関連記事:「法人口座の開設方法は?メリットや金融機関の選び方、必要書類を解説」
まとめ
株式会社は、個人事業主や他の会社形態よりも社会的信用度が高く、ビジネス上のメリットが多い特徴があります。
会社法に基づいて厳格に運営する必要があるため、設立にあたって手間や費用が発生する点は否めません。しかし、対外的な信用を獲得すれば事業にも良い影響をもたらすと考えられるため、長期的に見れば株式会社を設立するメリットは大きいといえるでしょう。
株式会社を設立した後は、経理の事務的な負担を軽減して事業実態を対外的にアピールするためにも、法人口座の開設をご検討ください。
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監修者

安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。