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事業を法人化する9つのメリット|個人事業主との違いや注意点を解説

掲載日:2023年2月8日 起業準備

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個人事業主として事業を営んでいる方の中には、法人化を検討している方もいるでしょう。法人と個人事業主では法律上の位置付けが異なり、それに付随して税務や社会的な信頼度の得やすさなど様々な違いがあります。

本稿では、個人事業主が法人化することのメリットや注意点を解説したうえで、法人化する流れを紹介します。法人化を考えている個人事業主の方や、事業を始めるにあたって法人か個人事業主かで迷っている方はぜひご覧ください。

法人と個人事業主の違い

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法人と個人事業主では、大前提として法律上の形態が異なります。法人とは法律上の概念です。株式会社や合同会社等を設立すると、人間と同じように法律上の人格(法人格)を持ち、契約や財産の所有、納税といった権利・義務を有します。

個人事業主が法人化する場合、通常その本人が法人の代表者となりますが、代表者と法人は法律上全く別の存在です。取引先との契約も法人・取引先間で結びます。また法人化することで、法人名義の銀行口座を作ることができます。

一方で、個人事業主は税務署に開業届を提出して「個人事業主」として事業を営む人のことです。取引先との契約は個人・取引先間で結ばれます。銀行口座も個人名義が基本です。個人事業主が開設できる「個人事業主口座」でも、名義に屋号を付けることは可能ですが、「屋号+個人名」のように個人名も盛り込む必要があります。

事業を法人化する9つのメリット

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個人事業主が法人化するメリットは多くあります。法人化を検討している方は以下の代表的なメリットを押さえておきましょう。

法人化のメリット1:法人税率が適用される

法人と個人事業主では利益(所得)に対してかかる税金の種類が異なります。法人には「法人税」、個人事業主には「所得税」が課せられますが、下表の通りこの2つは税率も異なるものです。

法人税
(普通法人で資本金
1億円以下の場合)
所得税
税率 年800万円以下の部分:
15%
年800万円超の部分:
23.20%
所得金額に応じて
5~45%
(7段階)
  • *法人税率は法人の種類や開始事業年度によって異なります。

所得税は所得金額に応じて税率が高くなる累進課税制度で最高税率は45%です。これに対して法人税の税率は年800万円以下と800万円超の部分に課せられる2種類で、最高税率も低く設けられています(資本金1億円以下の法人の場合)。

法人税と所得税の所得の計算方法は少し異なるため一概には言えないものの、一定の所得がある個人事業主の場合、法人化することで税負担が軽くなる可能性があります。

法人化のメリット2:経費の対象が増える

法人化すると個人事業主と比較して経費にできる項目が多くなるのもメリットです。法人化して計上できるようになる経費には以下のようなものがあります。

  • 代表者の給与(役員報酬)
  • 退職金
  • 代表者の生命保険料
  • 健康診断費用
  • 社員旅行等の福利厚生費

これらの費用は個人事業主では経費として認められないものです。退職金に関してはそもそも個人事業主が自分に支給すること自体が認められていません。

経費にできる項目が多くなるということは、結果として税負担の軽減につながります。売上から経費を差し引いた金額が所得となり、その金額に対して法人税(個人事業主では所得税)がかかるためです。

法人化のメリット3:社会的な信用度が高くなる

法人名(商号)は会社法によって決め方のルールが定められており、設立した会社の種類(株式会社、合同会社等)を含める必要があります。個人事業主が「株式会社」や「合同会社」といった法人と誤認されるような屋号を付けることはできません。

このように商号を見ただけで法人と分かる仕組みになっているため、個人事業主と比べて、取引先や顧客からの信用を得やすいというメリットがあります。単純な印象だけでなく、代表者個人とは別の、法律上の人格であるという要素が信用度アップにつながるのです。

法人化のメリット4:事業を拡大しやすくなる

法人化することで、これまでは取引できなかった取引先と契約できる可能性があります。社会的な信用力を重視して、法人としか取引しない方針の企業もあるためです。個人事業主の時より取引できるクライアントが増えれば、事業拡大にもつながるでしょう。

また社会的な信用度がアップすることで、人材を確保しやすくなるというメリットもあります。優秀な人材が確保できれば、事業の生産性が上がり事業拡大につながるかもしれません。さらに、次項で解説する通り、資金調達しやすいことも事業拡大のしやすさに関係してきます。

法人化のメリット5:資金調達しやすくなる

法人では、金融機関等からお金を借りる融資だけでなく、出資や助成金・補助金など、個人事業主よりも資金調達の方法の選択肢が増えます。

出資は投資家等の第三者が事業の成長を見込んで資金を援助することで、融資のように返済義務がないというメリットがあります。株式会社なら、新たに株式を発行することで資金を調達できる「増資」も可能です。

助成金・補助金や制度融資(地方自治体・金融機関・信用保証組合が連携して提供する融資)は、法人と個人事業主で申請できる金額の枠を分けているものが多く、法人の方が優遇されている傾向にあります。

資金調達方法の主な種類とそれぞれの特徴・注意点

会社設立時に利用できる助成金・補助金について徹底解説

法人化のメリット6:代表者の退職金の支給が可能

法人化すると、代表者にも退職金が支払えるようになります。前述の通り、法人格と代表者は法律上、別の存在として扱われるためです。個人事業主の場合、そもそも事業のお金と代表者個人のお金が区別されないので、給与という概念が存在せず退職金も定義できません。

代表者が退職金を受け取ると所得税の対象となりますが、給与等の所得とは別に課税される「分離課税」で税金が計算されるため、税率は退職金単体で判定されます。

さらに「退職所得控除」という、勤続年数に応じて退職金額から一定額を控除できる仕組みもあるため、給与や賞与として受け取るより税負担を抑えられる点もメリットです。

法人化のメリット7:欠損金の繰越が可能

事業の所得のマイナスを「欠損金」と呼び、法人で欠損金が出た場合、青色申告で確定申告していれば最長10年間(*)繰り越せます。欠損金を繰り越せば、翌年以降に利益が出た場合に所得と欠損金を相殺でき、将来の法人税額をその分抑えられます。

個人事業主でも、青色申告で確定申告していれば欠損金の繰越は可能ですが、最長3年間と限定的です。

なお繰越可能な欠損金額は、中小法人等(普通法人のうち資本金または出資金が1億円以下であるもの等)であれば所得の全額まで、それ以外の法人は所得の50%(*)が上限となります。

  • *2018年4月1日以降に開始する事業年度に発生した欠損金の場合

法人化のメリット8:決算期を自由に設定できる

個人事業主の決算期は12月(会計期間は1月1日~12月31日)で固定されていますが、法人化すると、決算期を自由に決められます。例えば「繁忙期と重ならないようにする」「資金繰りに余裕のある時期に設定する」といった調整ができるため、うまく設定すればゆとりを持った申告や納税が可能です。

決算の申告を税理士に依頼する場合は、税理士の繁忙期(3月、6月、9月、12月)と重ならないよう設定するのも一案です。

法人化のメリット9:事業を承継できる

個人事業主の場合、代表者が亡くなるとその事業は廃業となるのが普通です。しかし法人の場合、事業を第三者に承継する(引き継ぐ)ことができます。法律上、法人(法人格)と代表者は切り分けて扱われるため、事業を承継できれば会社は消滅しません。

この点は取引先の企業にとっても安心材料であり、個人事業主よりも継続性があると判断される要素の一つです。

個人事業主でも事業を承継することは不可能ではありませんが、共同経営者や従業員のいる法人に比べて後継者を見つけにくい傾向にあります。また、事業承継にあたって「相続税や贈与税の負担が重くなる」「法人の事業承継より手続きに手間がかかることがある」といった注意点もあるのです。

事業を法人化する際の注意点

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法人化には多くのメリットがありますが、当然ながら注意しなければならない点もあります。法人化した後で「こんなはずではなかった」と後悔しないために、以下のような点も踏まえて検討しましょう。

経理処理の手間がかかる

法人の経理処理は個人事業主より手間がかかることが一般的です。会計帳簿の記帳方法には「複式簿記」と「簡易簿記」があります。個人事業主の場合、白色申告や青色申告でも、簡易簿記を選べば経理処理の負担を減らせます。一方で法人化すると、より煩雑な複式簿記での記帳が求められます。

また確定申告の際に提出する申告書も法人と個人事業主では異なります。法人の方がより煩雑な経理処理が求められるため、その分手間がかかることは覚えておきましょう。

個人事業主のときは自分で確定申告していた人でも、法人化により税理士に申告業務を依頼したり、経理のための人材を確保したりするケースは少なくありません。

各種手続が必要

法人化すると、経理処理以外にも各種手続が必要になります。例えば株式会社を設立する場合、公証役場での定款認証(*)や、法務局への登記申請手続が必要です。納税地の税務署へ法人設立届出書を提出したり、事業所のある自治体へ法人住民税を納めたりする必要もあります。

また代表者1人であっても、健康保険・厚生年金保険への加入が必要とされています。さらに従業員を1人でも雇う場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きを行わなければなりません。法人化に必要な手続きについては、後述します。

  • *合同会社を設立する場合は認証不要

設立・運営にコストがかかる

法人の設立や運営には一定のコストも見込んでおきましょう。例えば設立時には以下の法定費用(法務局や公証役場に支払う費用)がかかります。株式会社なら25万円程度、合同会社なら10万円程度が目安です。

  • 登録免許税
  • 収入印紙代(定款用)
  • 認証手数料(定款用)
  • 登記簿謄本・印鑑証明書の取得手数料

法人化によって新たに発生する運用コストもあります。代表的なものは、事業所のある自治体に納める「法人住民税」です。法人住民税には、法人税額に応じてかかる「法人税割」と法人税額にかかわらず等しく課せられる「均等割」があり、均等割は赤字でも納めなければなりません。

会社設立に必要な費用とは?法定費用や運営費用など項目別に解説

事業を法人化するまでの流れ・手順

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ここでは事業を法人化するまでの一般的な流れを紹介します。事前にチェックして、スムーズに手続きを進めましょう。

また、以下の記事でも具体的に紹介しているので、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

会社設立の流れを解説!準備から法人登記後の手続きまで

法人化の手順1:基本事項の準備

法人化のためには法人登記が必要ですが、その前に以下のような準備をしておく必要があります。

  • 法人名(商号)等の基本事項の決定
  • 会社実印の作成
  • 定款の作成
  • 定款の認証(株式会社の場合)
  • 資本金の払込

法人名(商号)は企業イメージ、資本金は税金や手数料に影響するものなので、しっかり検討して決めることをおすすめします。

定款と資本金については、以下の記事で詳しく解説しています。

定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説

資本金とは?その役割と金額を決める際の基準について解説

法人化の手順2:法人設立登記

法人設立登記の準備ができたら、法務局で法人設立登記申請の手続きを行いましょう。法人設立登記申請は通常、申請書を所轄の法務局窓口に直接提出するか郵送して行います。また法務局へ行かず、ウェブサイトや専用のソフトウェアを使ってオンラインで申請する方法もあります。

詳しくは以下の記事で解説しています。

登記とは?法人登記に必要な手続きと必要書類を解説

法人化の手順3:法人設立登記後の必須手続

法人設立登記が完了した後は、以下のような手続きが必要になります。手続きの内容によって窓口が異なるので、忘れずに届け出ましょう。

窓口 手続内容
税務署 「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」の提出
地方公共団体 法人住民税・法人事業税の届出
年金事務所 厚生年金保険と健康保険の加入手続
労働基準監督署 労働保険の加入
(従業員を雇用する場合)
公共職業安定所(ハローワーク) 雇用保険の加入
(従業員を雇用する場合)

他にも、業種によっては許認可が求められる場合があります。例えばリサイクルショップ業を営む場合は警察署に「古物商許可」を、飲食業では保健所に「食品営業許可」の届出が必要です。

法人化の手順4:法人設立登記後の任意の手続き

法人化において必須ではないものの、以下の手続きも合わせて行っておくと便利です。

  • 法人用銀行口座の開設
  • 印鑑カードの取得

法人用の銀行口座は、煩雑な経理処理が求められる法人において事務負担を減らすために有効です。また法人名義の口座を持つことで、取引先からの信頼も得やすくなるでしょう。

印鑑カードとは、印鑑証明書を発行するために必要なものです。法人では、法人用銀行口座の開設、不動産売買の契約、登記などの際に法人実印の印鑑証明書が求められます。

法人の印鑑証明書を取得するには?印鑑登録の方法から詳しく解説

スムーズに法人化するためのポイント

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ここまで法人化のメリットや注意点、手続きの流れを解説してきましたが、それだけではスムーズに法人化が進められないこともあります。以下のポイントも押さえつつ、法人化の準備を始めましょう。

専門家のサポートを受ける

法人化の手続きは個人が行うことも可能ですが、法律に基づいた手続きが必要なため、専門家に相談するとスムーズです。相談内容や依頼したい手続きによって、適した相談先は異なります。以下の表を参考に、相談先を選びましょう。

相談内容 相談先
法人登記 司法書士
許認可 行政書士
経費処理や税務処理 税理士
雇用・社会保険 社会保険労務士

法人化に適したタイミングを検討する

税金面を考慮して法人化のタイミングを検討することも大切です。法人化のタイミングを計る一つの要素は年間の所得金額です。税率の面で、法人税の方が有利になるのは所得が800万〜900万円程度の時期が目安とされています。

ただし、代表者に事業以外の収入があるなど、状況によって目安となる所得金額は異なるため、税率のシミュレーションが必要です。この点でも、税理士等の専門家のサポートを得るのが良いでしょう。

もう一つの要素は課税売上高です。個人事業主の場合、2年前の課税売上が1,000万円を超える場合は、原則課税事業者となり、消費税を納めなければなりません。

ただしこのような場合でも、法人を設立すれば2年間は消費税の納税が免除されます。つまり、消費税の面では、2年前の課税売上が1,000万円を超えるタイミングが法人化の目安といえます。

また2023年10月1日に始まるインボイス制度も考慮すべきポイントです。制度スタート後は、適格請求書発行事業者ではない事業者に支払った消費税は売上にかかる消費税から差し引けなくなるため、取引先の消費税負担は増えてしまいます。そして、適格請求書発行事業者になるためには課税事業者でなければなりません。

これにより適格請求書発行事業者ではない事業者、つまり免税事業者は、取引先から適格請求書発行事業者になることを求められたり、取引の継続が難しくなったりすることが懸念されています。そのため、法人化を検討している個人事業主は、早めに法人設立の手続きを行い、インボイス制度がスタートする前までに免税のメリットを受けておくという手もあります。

まとめ

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個人事業主が法人化することで、税制面の利点や事業拡大のしやすさ、社会的信頼度の向上など得られるメリットは多くあります。法人と個人事業主の違いを把握したうえで、タイミングも踏まえて法人化を検討しましょう。法人化には法律に基づいた手続きが必要なため、専門家に相談するのも一案です。

法人設立後は、法人名義の銀行口座を開設するのがおすすめです。経理処理の負担軽減や、取引先からの信頼度アップに役立ちます。

みずほ銀行では、実店舗・オンラインで法人口座の開設申込を受け付けています。「法人口座開設ネット受付」なら、原則来店不要で口座開設の手続きが完了します。法人化の際は、みずほ銀行での口座開設をご検討してみてはいかがでしょうか。

法人口座開設(法人のお客さま)

(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)

  • *本稿に含まれる情報の正確性、確実性あるいは完結性をみずほ銀行が表明するものではありません。
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