法人の印鑑証明書を取得するには?印鑑登録の方法から詳しく解説
掲載日:2022年12月7日 起業準備
法人が重要な契約を結ぶ際や許認可を申請する際等に、法人の印鑑証明書を求められる場合があります。法人の印鑑証明書を発行するには、事前に法務局への印鑑登録が必要です。
本稿では、印鑑証明書とは何か、必要となるのはどのような場面か、事前に必要な手続きとしての印鑑登録と印鑑カード交付申請の手続き、そして印鑑証明書の取得方法について解説します。
法人の印鑑証明とは
「印鑑証明」とは、契約書等に押された印影(印鑑を押した際の朱肉等の跡)が正式なものであると証明することです。個人の場合には地方自治体、法人の場合には法務局が印鑑証明書を発行し、それを契約書等に添付することで印鑑証明を行います。
株式会社や合同会社等は法人の一形態なので、法務局が会社の印鑑証明書を発行します。事前に会社の実印として使用する印鑑を法務局に届け出て、必要なときに印鑑証明書を発行してもらうという仕組みです。
法人が使用する印鑑には、実印の他に、銀行印や角印等の認印があります。法人の実印とは、代表者個人の意思ではなく、法人としての決定を表す際に押印する重要な印鑑です。盗難や紛失を避けるために厳重な保管が求められるので、以下のように他の印鑑と使い分けるのが一般的です。
印鑑の分類 | 主な使用用途 |
---|---|
実印 | 法人の設立・変更登記 銀行口座開設 |
銀行印 | 銀行口座開設 銀行での取引 |
角印等の認印 | 請求書・領収書の発行・受け取り 郵便物の受け取り 社内文書の確認 |
法人の印鑑証明が必要な場面
印鑑証明書は、印影が会社の実印によるものであることを証明するために添えるものです。法人の印鑑証明書が必要とされる場面には、次のようなものがあげられます。
- 法人登記、登記事項変更の申請をするとき
- 法人用の銀行口座を開設するとき
- 法人名義の不動産や自動車を売買するとき
- 融資を受けるとき
上記の中には、提出先によって印鑑証明書の提出が求められないこともあります。例えば銀行口座開設の場合、みずほ銀行の「法人口座開設ネット受付」であればインターネットから申込ができ、印鑑証明書の提出も原則不要です。提出先の必要書類を確認したうえで準備を進めましょう。
法人の印鑑証明書を取得するために必要な印鑑登録の方法
印鑑証明書を発行してもらうには、事前に法人の実印を法務局に届け出て登録を済ませておく必要があります。
法人登記と同時に印鑑登録を行うケースが多いですが、オンライン経由で登記申請する場合は印鑑登録が必須ではないため、印鑑登録を済ませていないケースもあるでしょう。ここからはケースごとに印鑑証明書を発行してもらう方法を紹介します。
法人登記と同時に印鑑登録する
ここでは、法人登記と同時に印鑑登録する方法を、申請書類を窓口に提出する場合と、オンラインによる場合に分けて詳しく解説します。
法務局の窓口で手続きする場合
法人の登記申請を窓口で手続きする場合、印鑑登録を同時に行うことになります。具体的には、「印鑑(改印)届書」という様式に必要事項を記載し、法人の実印を押印して提出します。
「印鑑(改印)届書」内、届出人の「地方自治体に登録した印」とは法人の実印を届け出る代表者個人の実印を指します。様式の注意書きには、届出者本人の印鑑証明書を添付する旨の記載がありますが、会社設立登記申請書に添付した印鑑証明書を援用できるので二重に提出する必要はありません。
この様式は、法人の実印を変更するときにも使用するため「会社法人等番号」欄がありますが、設立前なので空欄にしておきます。
注意すべき点として、印影が欠けたり、不鮮明であったりすると再提出を求められ、その間、法人登記申請も中断されてしまいます。
オンラインで手続きをする場合
印鑑登録をオンラインで行う場合、法人登記のオンライン申請と同時に行う必要があります。法人登記を書類で提出する場合には、印鑑登録のみをオンラインで行うことはできません。
登記申請をオンラインで行う場合、デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」または法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用する方法があります。どちらの場合でも、編集画面にある「印鑑届出の有無」の欄で「有」を選択し、「印鑑(改印)届書」のPDFファイルを添付することで、印鑑登録が可能です。
このPDFファイルを添付するまでの手順は以下の通りです。
- 1.オンライン専用の「印鑑(改印)届書」という様式を印刷
- 2.届書に必要事項を記載して法人の実印を押印
- 3.届書をスキャナーで読み込みPDFファイル化
- 4.PDFファイルに電子署名を付与し電子証明書を取得して添付書類として提出
前述の窓口で提出する場合の注意点に加えて、スキャナーの解像度の目安は600dpiと指定されていることや、汚れや折り目に対して注意が必要です。
法人登記後に印鑑登録を行う
法人登記申請をオンラインで行う際、印鑑登録を同時に行わない場合は、法務局の窓口で印鑑登録を行うことになります。「印鑑(改印)届書」を提出する点は前述の「法務局の窓口で手続きする場合」と同じですが、法人登記申請と同時ではないため、必要な書類が若干異なる点に注意しましょう。
原則として代表者が法務局の窓口で手続きをします。様式は事前にプリントアウトしたものを使用できますが、窓口でも入手可能です。
窓口には以下のものを持参します。
- 法人の実印(代表印)
- 代表者個人の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内のもの)
- 代表者個人の実印
- 代表者の本人確認書類(運転免許証等)
「代表者個人の印鑑証明書」を取得するには、代表者個人の印鑑登録が必要です。よって、代表者個人の印鑑登録が済んでいない場合は、地方自治体の窓口にてまず個人の印鑑登録を済ませたうえで、その印鑑登録証明書を取得しましょう。
代表者本人が手続きできない場合は、「印鑑(改印)届書」の下段が委任状を兼ねており、窓口に行く人を代理人、代表者を委任者として記載し代表者個人の実印を押します。この場合、本人確認書類は代表者のものではなく代理人のものに変わります。
法人の印鑑カードを作成する方法
法人の印鑑証明書を取得するには、法務局で印鑑カードを発行してもらう必要があります。印鑑カードを作成するためには、印鑑登録後に「印鑑カード交付申請書」を法務局に持参するか郵送します。記載事項の会社法人等番号とは登記事項証明書に記載されている12桁の番号です。
窓口へ持参する場合、印鑑カード交付申請書は事前にプリントアウトしたものを使用できますが、窓口でも入手できます。代表者が申請するのが原則であり、申請に必要なのは法人の実印です。
代理人が持参する場合は、「印鑑カード交付申請書」の下段が委任状を兼ねているので、窓口に行く人を代理人、代表者を委任者として記載し法人の実印を押します。
郵送する場合、交付申請書と切手または着払いの宅配伝票等を貼った返信用封筒を同封し郵送します。返信先は代表者住所または本店所在地を記載します。後日、印鑑カードが送られてくるので、返信には普通郵便ではなく書留や宅配伝票等を利用した方が安全です。
法人の印鑑証明書の取得方法
法人の印鑑証明書を取得するためには、窓口請求、証明書発行請求機での請求、郵送請求、オンライン請求の4種類の請求方法があります。それぞれかかる日数や手数料が異なるので、順に解説します。
法務局の窓口で印鑑証明書を取得する
法務局の窓口で印鑑証明書を取得する場合、「印鑑証明書交付申請書」に必要事項を記載し、法人の印鑑カードを添えて窓口に提出します。
申請書は事前にプリントアウトしたものまたは法務局で配布されているものを使用しましょう。申請者は印鑑カードを持参していれば、代表者でなくても支障ありません。
手数料は1通につき450円です。印鑑証明書の発行は非課税取引のため、消費税はかかりません。収入印紙または登記印紙を申請書に貼り、割印せずに窓口に提出します。法務局もしくはその隣接地に印紙売り場があるので印紙は事前に用意する必要はありません。
印鑑証明書の他に、登記事項証明書も必要な場合には、「印鑑証明書及び登記事項証明書交付申請書」という様式が便利です。こちらを使えば、2種類の申請書を記載せずに済みます。
法人設立後は銀行口座開設や税務署等への行政系の手続きがあります。その際、印鑑証明書と登記事項証書を求められる場合があるので、それぞれ何通必要かを確認しておくとスムーズです。
証明書発行請求機で取得する
法務局によっては、証明書発行請求機が設置されている場合があります。これは、印鑑証明書や登記事項証明書を請求する際、交付申請書に記載することなく、タッチパネル入力によって証明書の請求が行える端末です。
印鑑証明書の請求には印鑑カードが必要ですが、この端末に印鑑カードを挿入すると請求情報の入力を省略できるので便利です。また、登記事項証明書のみを請求する場合でも印鑑カードを持参すれば入力の手間が省けます。
手数料は通常の窓口申請と同じ1通につき450円です。
手続きをする前には、証明書発行請求機が管轄の法務局に設置されているかどうかを事前に確認しましょう。
郵便で取得する
法人の印鑑証明書は窓口に行かずに郵便で請求できます。使用する申請書は窓口請求の場合と同じです。必要事項を記載した申請書と印鑑カード、返信用封筒を同封して法務局へ郵送します。返信用封筒には切手を貼り、返信先も記載しておきましょう。
印鑑カードを同封するので、往復ともに普通郵便ではなく書留や宅配伝票等を利用した方が安全です。窓口に行く手間が減る分、印鑑証明書が手元に届くまで日数がかかります。また、その間印鑑カードが手元にない状態になるので、急ぎで追加の印鑑証明書が必要になる可能性がある場合には窓口請求が良いでしょう。
手数料は通常の窓口申請と同じ1通につき450円です。収入印紙または登記印紙を申請書に貼ります。
オンラインで取得する
法人の印鑑証明書は窓口に行かずにオンラインで請求できます。「申請用総合ソフト」を使用しオンラインで必要項目を入力するため、交付申請書の記載を必要としません。
また、手数料の納付は電子納付で行います。印鑑証明書はデータではなく紙での交付になるので、受取方法として郵送または窓口交付を選択します。窓口で受け取る場合には印鑑カードが必要です。
アプリを新たにインストールすることや、電子署名の準備が必要であることから、初めてこのソフトを利用する場合は手間がかかりますが、法人登記申請や印鑑登録等で既に仕組みに慣れている場合には、様式への記載や収入印紙等の購入が不要な点で便利な請求方法です。
また、他の請求方法より手数料が安く、具体的には郵送で受け取る場合は1通につき410円、窓口で受け取る場合は1通につき390円です。
法人の印鑑証明書の取得方法 | 手数料(1通) |
---|---|
法務局の窓口 | 450円 |
証明書発行請求機 | 450円 |
郵便 | 450円 |
オンライン | 390円(窓口受取)、 410円(郵送受取) |
- *印鑑証明書の発行は非課税取引のため、消費税はかかりません。
まとめ
法人の印鑑証明とは、印鑑が法人の正式な印鑑であることを証明することを指します。印鑑証明書を取得するには、印鑑登録と印鑑カードの交付申請という2つの手続きが必要です。
印鑑証明書の請求には法務局の窓口、証明書発行請求機、郵便、オンラインという4種類の方法があります。オンラインによる印鑑登録申請や印鑑証明書の請求は、2021年2月に加わった手続きです。上手に使えば時間の節約にもつながります。
なお留意点として、オンラインで法人登記を行う場合は印鑑登録の申請も同時に行えますが、オンライン申請時に印鑑登録を省略したうえで後から印鑑登録だけをオンラインで申請することはできません。法人を設立する際は、こういった点を理解したうえで都合の良い方を選択すると良いでしょう。
法人が活動する中で、法人の登記申請や銀行口座の開設、クレジットカードの作成、融資の申し込み等、印鑑証明書が必要になる場面は発生するものです。印鑑証明書の発行手順を事前に知り準備しておけば、そのようなケースでも慌てずに手続きを進められます。
法人口座を開設するなら、みずほ銀行がおすすめです。みずほ銀行は、法人口座開設受付や面談もオンラインで実施しており、基本的には来店不要で手続きが完結します。法人設立時の負担を減らすためにも、みずほ銀行での法人口座開設を検討してみてはいかがでしょうか。
(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
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