定款変更はできる?手続方法や費用、頻繁な変更を避けるための注意点を解説
掲載日:2025年6月9日起業準備

会社を設立する際に必ず作成しなければならない定款は、定款変更手続によって内容を変えられます。しかし、手続きは簡単ではなく費用を伴うため、定款変更は慎重に行わなければなりません。
本記事では、定款変更の手続方法や費用、注意点等を解説します。定款をできるだけ変更しないために作成時に気を付けたいポイントも紹介するので、これから定款を作る方もぜひ参考にしてください。
定款変更が必要なケースは?
定款変更を検討している場合、変更に伴いどんな手続きが発生するのか疑問に思うこともあるでしょう。
定款の記載事項を変更する場合は、必ず手続きが必要です。手続きなしで、経営者や社員が定款を勝手に変更することはできません。
定款の記載事項には、絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項の3種類が存在します。
以下のような絶対的記載事項は、会社法で定款に必ず記載しなければならないと決められているので、作成時に記載したうえで変更時には手続きをしなければなりません。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
また、法的には記載義務がないものの、記載しなければ効力が認められない相対的記載事項や、絶対的記載事項と相対的記載事項に含まれない任意的記載事項も、定款に記載した場合変更時は手続きが必要です。
定款の内容を変更するときは、必ず決められた手続きが必要だと覚えておきましょう。定款の記載内容について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご確認ください。
関連記事:「定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説」
定款変更に伴い変更登記も必要なケース
定款変更によって登記事項に変更が生じた場合は、変更登記の手続きも必要です。定款変更があってから2週間以内に、法務局に変更登記申請をしなければならないと会社法第915条で決められています。
定款変更に伴い変更登記が必要なケースは、例えば以下のものです。
- 会社名(商号)の変更
- 事業目的の変更
- 本店所在地の変更
- 発行可能株式総数の変更
- 株式発行の定めの新設
- 取締役会や監査役の設置や廃止
- 資本金額の変更
何を変更する際に登記申請が必要かを判断するのは難しいため、定款変更時には専門家に相談するのがおすすめです。
関連記事:「会社名の決め方やルールは?商号との違いや注意点を解説」
定款変更の手続方法

定款は会社の決まりごとを定めた重要なものなので、簡単には変更できません。変更する場合は、会社法で定められた以下の流れで手続きが必要です。
- 株主総会の特別決議によって定款変更の内容を決議する
- 株主総会の議事録を作成して定款変更する
- 必要であれば法務局に変更登記を申請する
- 税務署へ届け出て変更定款と議事録を保管する
株主総会の特別決議によって定款変更の内容を決議する
定款変更をする際は、株主総会の特別決議が必要であると会社法で定められています。
定款は会社の根幹に関わる重要事項なので、変更するためには株主総会の特別決議が必要です。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席して、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で決議となります。
株主総会が開催される時期でない場合も、臨時株主総会を開かなければなりません。株主総会がない合同会社が定款変更する場合は、全社員による決議と承認が原則です。
株主総会の議事録を作成して定款変更する
株主総会を開いたら議事録を作成しなければならないと会社法で決められているため、定款変更の場合も議事録を作成する必要があります。議事録には、株主総数や出席株主数、議事の結果等を記載してください。
議事録の作成期限は定められていませんが、変更登記をする場合に議事録の添付が必要であり、変更登記は株主総会の決議後2週間以内に行わなければなりません。そのため、定款変更時は速やかに議事録を作成しましょう。
必要であれば法務局に変更登記を申請する
定款変更した内容が登記事項に該当する場合は、法務局に変更登記申請をしなければなりません。書面を窓口や郵送で提出するほか、オンラインでも申請が可能です。
変更登記の申請書の他に、株主総会の議事録や株主リスト等の提出が求められる場合があります。
税務署へ届け出て変更定款と議事録を保管する
事業年度や本店所在地、事業目的等を変更した場合は、税務署に届出が必要です。
異動届出書に必要事項を記入し、所轄の税務署に提出しましょう。納税地が変わる場合は、変更前の所轄へ提出してください。書類はe–Taxや窓口、郵送で提出できます。
作成した新たな定款は、最初に作った原始定款と株主総会の議事録と一緒に保管しなければなりません。
定款変更にかかる費用や金額
定款変更や税務署への異動届提出に費用はかかりませんが、変更登記をする場合は費用が発生します。登録免許税が発生するため、手続時に支払わなければなりません。
変更内容と登録免許税の金額は、以下の通りです。
変更内容 | 登録免許税の金額 |
---|---|
会社名(商号)の変更 |
1件につき3万円 |
事業目的の変更 |
1件につき3万円 |
本店所在地の変更 |
管轄内(同一管轄)の場合3万円、管轄外(他管轄)への移転の場合6万円 |
役員の変更 |
1件につき1万円 |
資本金(増資) |
増資した資本金額の0.7%または3万円のどちらか多い金額 |
また、変更登記の手続きを司法書士に依頼すると、上記とは別に費用が発生するため準備しておきましょう。
定款変更時の注意点
定款変更する際は、いくつか押さえておくべき注意点があるため、事前に確認しましょう。
原始定款は変更してはいけない
定款変更する際は、原始定款の変更は禁止です。
原始定款は、会社設立時に作成した定款であり、そのまま保管する必要があります。定款変更時は、変更内容を反映した新しい定款を作り、新しいものを現行定款として原始定款と一緒に保管します。
原始定款を直接書き換えて手続きを省くことはできないため、注意してください。
公証人の認証は必要ない
定款変更の際は、公証人の認証は必要ないと覚えておきましょう。
株式会社設立時は、法務局で法人設立登記をして、公証人による定款案の内容チェックと発起人との面前確認を行う定款認証が必要です。
しかし、定款変更の際は公証人の認証は必要ありません。必要書類を揃えたり、公証役場を訪れたりする等の不要な手間をかけないためにも、公証人の認証がなくても定款変更の効力が生じることは知っておきましょう。
関連記事:「会社設立の流れを解説!準備から法人登記後の手続きまで」
株主総会の特殊決議が必要なケースがある
定款変更時には株主総会の特別決議が必要ですが、特殊決議が必要なケースもあるため、確認しましょう。
特別決議 |
議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議する |
---|---|
特殊決議 |
|
定款変更で特別決議ではなく特殊決議が必要になるのは、全部の株式を譲渡制限株式とする場合や、株主ごとに異なる取扱をする定めを新たにするとき、またその内容を変更するときです。
定款変更をできるだけ減らすための作成のコツ
定款変更は簡単にはできないので、変更をできるだけ避けられるように作成するのが大切です。事業を始める前の段階で、今後一切変更の必要がない定款を作ることは難しいですが、できるだけ変更の頻度を減らせるように意識して作りましょう。
頻繁な変更を避ける定款の作り方のコツは、以下の通りです。
事業年度を慎重に設定する
定款変更をできるだけ減らすために、事業年度を慎重に設定しましょう。
定款への事業年度の記載は任意ですが、株主の利益配当の時期を明らかにするために、定款に記載するケースが多いです。事業年度の最終日が決算日となるため、決算日をいつにするかを決めなければなりません。
決め方に絶対的な正解はないので、資金繰りを考慮して決算月が重ならないようにする、消費税免税となるように設定する等、自社にとって良い結果となるように事業年度を決めましょう。
事業目的を幅広く設定する
定款に記載する事業目的は、幅広く設定すれば定款変更の回数を減らせます。
定款の事業目的に記載された事業でなければ基本的に行えないので、未記載の事業を新たに始める場合は都度定款変更が必要になり、手間がかかります。将来的に広く事業を展開していきたいなら、始める可能性がある事業を定款に記載しておくといいでしょう。
ただし、実態のない事業を無闇に記載すると取引先からの信用を失ったり、登記審査が厳しくなったりするデメリットもあるため注意が必要です。
本店所在地は最小行政区画までの表記にする
定款に記載する本店所在地は、最小行政区画までの表記にすると定款変更回数を抑えられます。
最小行政区画とは、東京都であれば「区」まで、その他の場合は「市区町村」までのことです。定款で「東京都千代田区」や「大阪府大阪市」等で表記しておけば、その区画内で本店所在地を移転した場合、定款の変更が不要です。
本店移転の登記は必要ですが、定款の変更が不要なので、手間を抑えられるでしょう。
役員の任期は適切な年数にする
定款に記載する役員の任期を適切に設定すれば、定款変更の頻度を抑えられます。
そのため、非公開会社では役員が変わる可能性が少ない場合に取締役の任期を長く設定し、変更手続が頻繁に発生しないように定款を作成することも可能です。
関連記事:「代表取締役と社長の違いは?取締役・CEOなど似ている言葉もまとめて解説」
まとめ
定款変更は、決められた手続きを踏んで正しく行わなければなりません。定款を作成する際に内容を慎重に決めれば、定款変更の回数を抑えて手間を減らせます。会社設立後の手続きについても考えながら、定款を作成しましょう。
会社設立後は、法人名義の銀行口座を作成しておくと社会的な信用度が高まります。
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監修者

志塚 洋介
- 行政書士
- 1級FP技能士
- CFP
大学在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。証券会社で資産運用コンサルティングに従事したのち、不動産会社で保有不動産の収支計算や資産管理、収支改善業務などに従事し、独立開業。行政書士とファイナンシャルプランナーというお金と法律の2つの側面から会社設立、相続、遺言、運用、不動産などに関する幅広い業務を展開中。雑誌やwebでの執筆や株式や投資のセミナーなどの講師も行い、YouTubeでの投資に関する動画も好評。