役員報酬にかかる税金とは?節税対策や損金算入のルール、賞与の扱いを解説
掲載日:2026年4月17日起業準備
役員報酬とは、役員に対して支給する報酬のことで、税務上は法人税法等に基づく取り扱いが定められています。取締役や監査役等に支払う報酬は、従業員給与とは異なる取り扱いとなり、役員報酬として扱われます。
従業員給与と同様に、役員報酬にも所得税や住民税がかかります。また、社会保険料も原則として役員報酬を基に算定されます。
本記事では、役員報酬にかかる税金と、役員個人・会社それぞれの税負担を抑えるためのポイントを紹介します。
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役員報酬とは?
役員報酬とは、役員の職務に対して支払われる対価のことです。なお、対価は金銭だけを指すのではありません。役員が受け取る次のようなものも、役員報酬に含まれます。
- 無償で贈与された資産
- 時価よりも著しく低い価格で譲渡された資産の時価と譲渡価格の差額
- 家賃や生命保険料等の負担(免除)として提供されたもの
役員報酬は、原則として課税対象です。次は税金の計算方法について解説します。
役員報酬にかかる税金等の計算方法
役員報酬には、従業員給与と同様に所得税と住民税がかかります。また、税金ではありませんが、役員報酬を基に社会保険料が算定されます。
役員が会社から受け取る報酬は、所得税法上「給与所得」に該当します。この「給与」には、毎月の役員報酬や賞与といった金銭的な支払いだけでなく、社宅の提供や生命保険料の負担等の「経済的利益(現物給与)」も含まれ、一定の要件のもとで課税対象となります。
それぞれの計算方法を解説します。
所得税
所得税は、以下の手順で計算します。
- 1.給与収入(金銭+経済的利益)から給与所得控除を差し引き、給与所得金額を求める(給与以外に収入がない場合は給与所得=総所得金額となる)
- 2.総所得金額から所得控除(各種控除)を差し引き、課税所得金額を求める
- 3.課税所得金額に所得税率を乗じ、税率に応じた控除額(速算控除)を差し引く
- 4.税額控除があるときは、上記で求めた所得税額から差し引く
給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出します。
所得控除には、雑損控除、社会保険料控除、生命保険料控除、基礎控除等があり(*制度改正により内容が変わる場合があります)、全部で16種類です。控除が適用されるかどうかは、扶養親族の人数や合計所得金額、支払った保険料(民間保険)の種類・金額等によって異なります。
所得控除の種類
雑損控除・社会保険料控除・生命保険料控除・基礎控除・医療費控除・小規模企業共済等掛金控除・地震保険料控除・寄附金控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・特定親族特別控除
- *参考:国税庁「所得税のしくみ」
所得税率は、課税所得金額が高くなるほど高くなる「累進課税」です。例えば、課税所得金額が700万円の場合の所得税率は23%ですが、課税所得金額が1,000万円の場合の所得税率は33%に上昇します。
【所得税率(速算表)】
| 課税所得金額* | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
|
1,000円~1,949,000円 |
5% |
0円 |
|
1,950,000円~3,299,000円 |
10% |
97,500円 |
|
3,300,000円~6,949,000円 |
20% |
427,500円 |
|
6,950,000円~8,999,000円 |
23% |
636,000円 |
|
9,000,000円~17,999,000円 |
33% |
1,536,000円 |
|
18,000,000円~39,999,000円 |
40% |
2,796,000円 |
|
40,000,000円~ |
45% |
4,796,000円 |
例えば、課税所得金額が1,000万円で税額控除がない場合、所得税額は次の通り1,764,000円です。
- 所得税額:10,000,000円×33%–1,536,000円=1,764,000円
ただし、2037年までの各年分は、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を併せて申告・納付するため、合計1,801,044円を納付します。
- 復興特別所得税:1,764,000円×2.1%=37,044円
- *課税所得金額は1,000円未満を切り捨てたうえで、上記の表に当てはめます。
住民税
住民税には「所得割額」と「均等割額」があります。所得割額は、以下の手順で求めます。
- 1.総所得金額から所得控除(各種控除)を差し引き、課税所得金額を求める
- 2.原則として10%を乗じ、税額控除を差し引く
上記の手順で求めた所得割額に均等割額を加えた金額が、住民税額です。なお、均等割額は自治体により異なります。加えて、2024年度からは森林環境税(国税)年額1,000円を、個人住民税と併せて納付します。
例えば、課税所得金額が1,000万円で税額控除がない場合、(原則の計算では)住民税の所得割額は100万円です。住民税の均等割額と森林環境税を合算した金額を加えると、納付額が増えます(均等割額は自治体により異なります)。
社会保険料
社会保険料は以下の計算式で求めます。
- 厚生年金保険料:標準報酬月額×厚生年金保険料率
- 健康保険料:標準報酬月額×健康保険料率
2025年3月分(4月納付分)から、厚生年金保険料率は18.30%です。健康保険料率は加入先により異なりますが、協会けんぽ東京支部の場合は9.91%で、介護保険第2号被保険者は介護保険料率1.59%が上乗せされるため合計11.50%となります。
ただし、社会保険料は原則として労使折半のため、本人負担分は上記の式で算定した保険料の半額になります。
役員報酬にかかる税金を抑えるには?
役員報酬を受け取る役員は、所得等に応じた所得税と住民税に加え、社会保険料の負担が必要です。また、役員報酬を支給する企業側も、役員報酬の支給方法や取り扱いによって法人税等の税額が変わります。
役員と企業がそれぞれ実施できる、税負担を抑える方法を紹介します。
役員の税負担を抑えて手取りを増やす方法
役員の税負担を抑えて手取りを増やす方法として、主に次のものが挙げられます。
- 退職金として支給する
- 社宅を提供する
- 旅費日当・通勤手当を支給する
- (要件を満たした)賞与として支給する
企業が上記の方法を実施し、役員の手取りが増えると、企業側の支出が同じでも事実上の「報酬アップ」となります。その結果、役員の満足度や組織エンゲージメントが高まる可能性があります。経営資金を効率的に活用するためにも、税負担を抑える方法を検討することが重要です。
退職金として支給する
役員報酬の一部を退職金としてプールし、離職時にまとめて支給する方法も検討してみましょう。退職金には「退職所得控除」が適用されるため、役員の課税対象額を減らせる可能性があります。
【退職所得控除額の計算方法】
| 勤続年数*1) | 退職所得控除額*2) |
|---|---|
|
20年以下 |
40万円×勤続年数 |
|
20年超 |
800万円+70万円×(勤続年数–20年) |
例えば、勤続年数が30年の役員の場合、退職所得控除額は次の通り1,500万円となります。
- 退職所得控除額:800万円+70万円×(30年–20年)=1,500万円
退職金から退職所得控除を差し引いた後の残額に2分の1を掛けた金額が退職所得となります。税制上、給与所得よりも大幅に優遇されているといえます。
課税対象となる金額が減ることで、役員が実際に受け取る手取り額が増える可能性があります。
- *1)勤続年数の端数月は切り上げます。例:9年2ヵ月の場合は勤続年数10年とします。
- *2)算出した金額が80万円未満の場合、退職所得控除額は80万円となります。
社宅を提供する
社宅を提供することで、役員の課税所得金額を抑えられる場合があります。
ただし、社宅の取り扱いには要件があり、「賃貸料相当額」等一定の基準に基づく役員負担が求められます。詳細は税理士等の専門家に確認しましょう。小規模な住宅であれば、実際の家賃より役員負担を抑えられる場合があります。役員の税負担の軽減に加え、福利厚生の充実にもつながります。
旅費日当・通勤手当を支給する
社内規程に基づき、通常必要と認められる範囲であれば、旅費日当や通勤手当は非課税となる場合があります。
社内規程を整備したうえで、旅費日当や通勤手当として支給する方法も検討すると良いでしょう。役員の課税所得金額を抑えられる可能性があり、手取りの増加につながる場合があります。
賞与として支給する
役員報酬の一部を賞与として支給すると、制度上の上限等により、条件によっては社会保険料負担を抑えられる場合があります(税務上の要件にも注意が必要です)。
賞与額も社会保険料の計算対象です。ただし、標準賞与額には上限が設けられているため(上限額や適用単位は制度・加入先により異なります)、高額の賞与を支給しても社会保険料負担が一定以上増えない場合があります。
例えば、役員(介護保険被保険者)に年720万円を支払うケースを試算します*。賞与なしで月給60万円を支払う場合、社会保険料は以下の通りです。
- 厚生年金保険料:標準報酬月額590,000円×厚生年金保険料率18.3%×12ヵ月=1,295,640円
- 健康保険料:標準報酬月額590,000円×健康保険料率11.5%×12ヵ月=814,200円
- 社会保険料:厚生年金保険料1,295,640円+814,200円=2,109,840円
労使折半により、役員自身の負担は1,054,920円です。
一方、賞与として年600万円、月給として10万円を支給する場合、社会保険料は以下の通りです。
【賞与の社会保険料】
- 厚生年金保険料:標準賞与額1,500,000円×厚生年金保険料率18.3%=274,500円
- 健康保険料:標準賞与額5,730,000円×健康保険料率11.5%=658,950円
- 社会保険料:厚生年金保険料274,500円+健康保険料658,950円=933,450円
【月給の社会保険料】
- 厚生年金保険料:標準報酬月額98,000円×厚生年金保険料率18.3%×12ヵ月=215,208円
- 健康保険料:標準報酬月額98,000円×健康保険料率11.5%×12ヵ月=135,240円
- 社会保険料:厚生年金保険料215,208円+健康保険料135,240円=350,448円
【年間の社会保険料】
- 賞与の社会保険料933,450円+月給の社会保険料350,448円=1,283,898円
労使折半により、役員自身の負担額は641,949円です。企業が支払う報酬はいずれも年720万円ですが、(本人負担分で)賞与を増やすことで社会保険料負担が約41万円減る場合があります。また、社会保険料は原則として労使折半のため、企業側の負担も同程度減ることとなります。
- *各種控除は割愛し、試算しています。
企業の税負担を軽減する方法
役員報酬の支給方法や損金算入の条件を満たすことで、企業の税負担を軽減できる場合があります。主な方法としては、次のものが挙げられます。
- 役員を被保険者とした生命保険に加入する
- 役員報酬を損金算入できる条件を満たす形で支給する
- 福利厚生を充実させる
それぞれの方法について見ていきましょう。
役員を被保険者とした生命保険に加入する
役員を被保険者として生命保険に加入すると、契約内容によっては、生命保険料の一部を損金算入できる場合があります。
役員の福利厚生を向上させつつ、法人税の課税対象額を抑えられる場合があります。一方で取り扱いは複雑なため、税理士等の専門家に相談したうえで実施することが重要です。
ただし、生命保険の活用は、当期の法人税負担を抑える効果が見込める一方、解約返戻金を受け取る際に課税対象となります。そのため、生命保険の活用は課税の繰り延べといえ、トータルでは税負担軽減効果が限定的だとする見方もあります。
実行する場合は、資金繰りを踏まえ、保険料の支払い時期や解約のタイミング等を含めて計画的に運用する必要があります。
役員報酬を損金算入できる条件を満たす形で支給する
役員報酬は、税務上の要件を満たしたうえで「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかとして支給する場合、損金算入できることがあります。
ただし、役員報酬の金額が過大と判断されると、損金算入できないことがあるため、税理士等の専門家に相談して実行しましょう。
関連記事:「損金算入・不算入の考え方とは?損金・費用の違いも分かりやすく解説」
福利厚生を充実させる
慶弔見舞金や社員旅行費等の福利厚生関連の費用は、要件を満たす場合に損金算入が可能です。ただし、いずれも役員だけでなく他の従業員も利用できることが条件となります。
役員報酬と税金に関するよくある質問
役員報酬と税金に関するよくある質問をまとめました。
なお、いずれも一般的とされる答えを紹介しています。企業によって適切な対応は異なるため、税理士等の専門家に相談することが重要です。
役員報酬の金額にルールはある?
役員報酬の金額自体は会社で決められますが、税務上の取り扱いには一定のルールがあります。ただし、過大な金額に設定すると損金算入できないことがあるため注意が必要です。
役員報酬はいくらに設定するのが得?
役員報酬は、事業の利益額や社会保険加入状況等を踏まえて設定する必要があります。一般的には、法人と個人それぞれの税負担に加え、社会保険料も含めた総負担を踏まえてバランスよく設計することが重要です。
法人税と、個人の所得税・住民税の見込み額も踏まえ、会社と役員双方にとって適切な金額を設定することが大切です。
関連記事:「役員報酬の決め方は?給与との違いや相場、変更のルールも解説」
会社を設立したら法人口座を開設しよう
役員報酬の適正な支給や正確な記帳を行い、公私の混同を防ぐためには、法人口座の活用が重要です。役員報酬を含む会社の資金管理のためにも、法人口座をまだ開設していない場合は検討してみてはいかがでしょうか。
会社と個人の口座を分けることで、お金の流れを正確に把握しやすくなります。みずほ銀行の法人口座は、休日・夜間でもお申し込みが可能で、また、ウェブ面談により来店不要で手続きを完結できるのも特徴です。なお、一部のお客さまは、店舗での対応が必要となる場合がございます。
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関連記事:「法人口座開設にかかる期間はどのくらい?スムーズに進めるために必要な準備も紹介」
関連記事:「法人口座の開設について 審査のポイントと開設手順をご紹介」
まとめ
役員報酬には従業員給与と同様に、所得税や住民税がかかり、社会保険料の負担も生じます。ただし、支給方法や制度の活用によって、役員と会社の税・社会保険料負担を軽減できる場合があります。紹介した内容も参考に、税理士等の専門家に相談しながら、自社に合った対応を検討することが重要です。
また、健全な企業運営のためにも、役員報酬を含む会社の資金管理に法人口座を活用することが大切です。まだ法人口座を開設していない場合は、併せてご検討ください。
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監修者
安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。