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掲載日:2021年3月19日

住宅購入

住宅ローンと投資をどう考える?(39歳カップルに聞いてみた)

キービジュアル

広い家に引っ越したい。今の住まいは売るか貸すか?

プロファイル

山本晃さんと、まゆみさん(仮名)は39歳、同い年の共働きカップル。都内の2LDK、50m²のマンションに3歳の久美ちゃんと三人暮らしです。

このマンションを買ったのは約6年前。当時独身の晃さんは「毎月10万円の家賃を払うのはもったいない」と考え、「同じくらいのローンで買えるマンションを買おう」と決心しました。4,500万円の新築マンションを頭金300万円、4,200万円の35年ローンで購入しました。住み続けない可能性を考え、値上がりが期待できて賃貸に出しやすいと聞いた港区の物件を選びました。

住宅ローン返済額は月12万円。修繕積立金や管理費を合わせると月14万円を超えましたが、なんとか払うことができました。

2年後に結婚。その1年後には子供も生まれて、マンションでの暮らしは3人に。子供はそろそろ二人目がほしいと考えています。

もう一人家族が増えそうなこと、3年後に住宅ローン減税が終了することから、住まいや住宅ローンをどうするか、二人で2,600万円ほどある貯蓄をどうするかなどについて悩んでいます。最近「つみたてNISA」を始めた以外は投資をしておらず、ほとんど普通預金に預けています。

<収入、支出、資産>

山本さんカップル家計表
月収入 月支出 ボーナス(1年) ボーナスからの貯蓄 総資産(預金) 住宅ローン残高
65万円 40.15万円 240万円 120万円 2,600万円 3,600万円
山本さんカップル家計表
月収入 65万円
月支出 40.15万円
ボーナス(1年) 240万円
ボーナスからの貯蓄 120万円
総資産(預金) 2,600万円
住宅ローン残高 3,600万円

お金の悩みは色々あるけど、考える暇がない

3歳の子を保育園に預けての共働きの暮らしは、本当に忙しい!今日1日をどう過ごすかで手いっぱい。二人とも収入は高めで、経済的な余裕はあるはずですが、今の貯蓄で大丈夫なのか、教育費はどう貯めたらいいか、住み替えや住宅ローンをどう考えたらいいか、投資にはどう取り組んだらいいか。考えたいけど考えられない日が続いていました。
今回、プロのファイナンシャルプランナーに相談することになり、気になっていることを色々と聞くことができました。

今ある住まいか、広い住まいに移るか、どちらがいいか。

山本さん:住宅ローン減税が終わる3年後をめどに、もう少し広い物件を買って引っ越したいと、漠然と考えています。でも今の住まいは気に入っているので、売らずに、持ち続けて賃貸に出したいと思っています。可能でしょうか。

FP:便利な場所にお住まいですね。ただ、独身の時に買った50m²のマンションに3人暮らしでは、だいぶ狭いのではないでしょうか。一人で4,200万円の住宅ローンは借りすぎで、返済の負担はやや大きすぎましたが、結婚して収入も2倍になったので、広いマンションに住み替えるのが現実的です。
ただ、住宅ローンは一つしか借りられません。広い住まいを住宅ローンで買うには、今お借りしているローンを投資用の不動産ローンに借り換える必要があります。
晃さんが調べたところ、賃貸に出した場合は想定家賃が月17~20万円ということ。家賃収入で、住宅ローン返済額+諸経費(修繕積立金、管理費、固定資産税など)の約15万円をカバーしてお釣りが来そうです。また人気の高い地域なので、不動産ローンへの借換はスムーズに行くと思います。

山本さん:今の住宅ローンをそのまま返し続ければいいと思っていましたが、そうはいかないのですね。でも不動産ローンに借換られるだろうと聞いて安心しました。今の住まいを売らないで、新しい住まいを買うのと、売って買い換えるのとどちらがいいでしょう。

FP:今の住まいを売って買い換えると、新規に借りる住宅ローンが少なくてすみます。その後の家計が楽です。売らずに買うと、貯金から多く頭金に充てることになり、住宅ローンの負担は増えますが、家賃収入を退職後の収入に充てることができます。

  1. (1)買い換える場合
    今の住まいが5,000万円で売れたとして、3,400万円の住宅ローン残を払うと手元に1,600万円残ります。これに貯金から1,000万円を加えると、2,600万円の頭金で次の家を買うことができます。仮に8,000万円の物件(マンションでも一戸建てでも)を買うと、住宅ローンは5,400万円。返済期間25年なら、毎月の返済額は約17万4,000円程度です(金利1%、ボーナス返済なし)。
  2. (2)住まいを売らず(賃貸に出し)新しく購入する場合
    今の住まいを賃貸に出し、賃料収入とローン返済額が同じだと仮定します。
    新しく8,000万円の家を、貯金から頭金2,000万円を出して買うと、住宅ローンは6,000万円。少ない金額ではありませんが、二人の収入では十分に借りられる額です。毎月返済額は約22万6,000円と、今よりも約10万円増えます。
    ただ、現在月25万円+ボーナスから240万円以上は貯蓄できているので、住宅ローンが10万円増えても、年180万円以上の貯蓄は続けられます。子供がもう一人増えても余裕です。賃貸マンションが退職後に収入を産んでくれるので、老後のための貯金が少なくてすみます。このプランも十分にありですね。

住宅ローン減税を10年間全部使い切ろうと計画していますが、良い住まいが見つかったら、その前に住み替えても良いでしょう。不動産との出会いは大切です。今から時間を見つけて物件探しを始めてはいかがでしょう。

これから貯金はどのくらいしたらいい?節約は?

山本さん:同じ年齢の人たちは、どのくらい貯金しているのでしょうか。うちは食費が高すぎるのではないか。もっと節約して貯めなくちゃいけないと、漠然と考えているのですが。

FP:貯金や老後資金を考えるとき、周りや平均値を気にする方は多いのですが、あまり意味がありません。自分たちの収入で、自分たちが望む暮らしを実現するには、どう使ってどう貯めたらいいかを考えましょう。私はいつも、そう提案しています。
貯蓄額については、「会社員の世帯では、手取り収入の15%を現役の間ずっと貯め続けたら、住宅資金、教育資金、老後資金を準備することができますよ」とアドバイスしています。山本家は手取り収入の30%くらいを貯めています。これは貯めすぎ(笑)。食費を節約したければしてもいいですが、貯金を増やすために節約する必要はありません。
むしろ、忙しい共働きの暮らしのゆとりを買うために、お金を使ってはどうでしょう。たとえば、定期的なお掃除サービスや家事代行サービスを頼む。ベビーシッターさんに保育園の送り迎えを依頼したり、休日に子供の面倒をみてもらって夫婦でデートすることも計画してみてください。

教育資金は、一般的な進路(国内の4年生大学)なら、子の大学入学までに一人あたり250~500万円を貯めることをお勧めしています。児童手当にプラスして、つみたてNISAの月1万円分を、教育資金にあてるつもりでいれば十分です。

老後資金のためには、iDeCoの積み立てをお勧めします。私は、iDeCoは40歳くらいが始め時だと思っているので、お二人とも丁度良いタイミングです。現在の月10万円の貯金のうち、それぞれ上限まで(まゆみさんは月12,000円、晃さんは23,000円)利用すると良いでしょう。所得控除もあるのでお勧めです。25年続けると、元本だけでも360万円と690万円、合計1,000万円以上になります。

投資にも積極的に取り組みましょう

FP:現在、普通預金に合計で約2,600万円あります。普通預金は利息がほとんどつかないので、インフレが起こると大きく目減りしてしまいます。円安(外貨高)でも価値が減ってしまいます。
数年後の住宅の買い替えで使う分(プランにより頭金1,000~2,000万円)は投資に回してはいけません。しかし、それ以外は主に教育資金、老後資金のためなので積極的に運用することができます。そうお勧めしています。
まずは、つみたてNISAやiDeCoで投資の経験を積みましょう。一度手続きをすると、自動的に投資を続けることができるので、忙しい共働きカップルこそ、利用したい制度です。そのうえで、将来、もっと投資を増やしたくなったら、新たな投資戦略を考えると良いですね。

山本さん: なるほど、そう考えれば良いのですね。次の住まいを買うのに、今の住まいを売るか売らないかで、どう違ってくるか分かりました。二人で話し合ってみます。投資は、以前に株で損をして苦手感がありましたが、投資信託で自動的に長期に積み立てる方法なら忙しくても実行できそうです。iDeCoは節税メリットもあるということで、早速二人で始めたいと思います。
教育費や老後資金も、今の貯蓄ペースで十分貯められるということで安心しました。暮らしのゆとりを手に入れるための家事代行サービスなども検討してみます。ありがとうございました。

住宅ローンの繰上返済と投資はこう考えよう。

山本夫妻は、普通預金にまとまったお金がありましたが、同じように普通預金の残高が多い人たちは少なくありません。

住宅ローン返済中だけど、毎月一定額の貯金はできている。すぐは使う予定のない100万円以上のお金が普通預金に入っている。こんなとき、住宅ローン、繰上返済、投資はどのように考えたらいいでしょう。

住宅ローンは金利と返済終了時期を確認しよう

現在、住宅ローンの金利は、歴史的に見ても最低レベルなので、急いで返済する必要はありません。ただ次の2つを確認してください。

  • 返済終了時期
    今現役の方は、退職年齢65歳、年金の受け取り開始も65歳というのが大半なので、住宅ローンは65歳までに返済を終えるのが基本です。もし返済終了が66歳以降で、特に使う予定のない預金があれば、繰上返済に充てて「期間短縮」をし、65歳までに返し終えるようにしましょう。
  • 金利をチェック
    以前に借りた住宅ローンは、今の水準より金利が高いことがあります。固定金利はもちろん、変動金利でも、より金利の低いローンへの「借り換え」で(借り換え手数料を払っても)総返済額を減らせることがあります。ウェブサイトなどで金利を調べ、試算してみるといいでしょう。

普通預金に眠ったお金の運用を考えてみよう

当面使う予定のないお金だから住宅ローンの繰上返済に当てようか、と思う人もおられるでしょう。それも正解です。
ただ、繰上返済した後に、収入が減ったり大きく支出が増えることになると(新型コロナでそんな経験をした方はたくさんいます)、手元のお金が足りなくなって、新しく金利の高いローンを借りることにもなりかねません。こんな時代なので、自由に使える預金は多めに持っておくのが安全です。
一方、投資も大切です。これから世界の経済がどうなるかは不透明。資産を守るには、インフレに備えると同時にデフレにも、株安にも株高にも、円安にも円高にも備えなくてはいけません。持っている資産が「円」の「預金」に偏っていると、インフレや円安で資産の価値が目減りします。日本や海外の株式相場が値上がりしても、その恩恵も受けられません。おまけに、世界経済がどう動いているかを実感できずに、世の中の変化についていけなくなる恐れがあります。
そうならないためには、資産の一部を投資資産で持つ、毎月の貯金の一部を投資信託などで運用することが大切になります。手始めは「つみたてNISA」や「iDeCo」です。資産額が多い方はそれ以外の投資も少しずつ手掛けると良いですね。変化を続ける社会を生き延びるため、投資力はサバイバル・スキルの一つです。

中村 芳子さんの写真

中村 芳子さん

ファイナンシャルプランナー(FP)

(有)アルファアンドアソシエイツ代表。日本の女性FP第1号。個人のマネー相談(FPコンサルティング)に加えて、マネー記事の執筆、講演、企業の金融プロジェクトのアドバイスなど幅広く活動。
『50代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)で、老後に向けた準備を、お金とお金以外の面からやさしく、実際的に解説して喜ばれている。みずほ銀行のカップル向けウェブサイト『おうちのおかね』の監修も務めた。

(記事提供元:中村 芳子、画像提供元:中村 芳子)

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

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