住宅ローンのボーナス払いを利用する
メリット・デメリット、注意点
掲載日:2021年8月6日

目次
住宅ローンの返済方法には、月々返済する方法に加えて、ボーナス時にまとまった金額を返済できる、ボーナス払いという方法があります。ボーナス払いは、各金融機関ともに用意しており、月々の返済を軽減できるメリットがあります。しかし、逆に返済総額が増えるため利用には注意が必要です。この記事では、住宅ローンのボーナス払いの仕組みと注意点について解説していきます。
1. 住宅ローンのボーナス払いとは?
住宅ローンのボーナス払いとは、毎月のローン返済に加えて、定期的なボーナスを原資として返済が前倒しでできる返済方法のこと。毎月のローンの返済額以外に、年2回のボーナスを上乗せして返済することで、毎月の返済額の負担を減らすことができます。
2. 住宅ローンのボーナス払いを利用するメリット・デメリット

住宅ローンのボーナス払いを利用すると、毎月の返済額を抑えるができますが、しかしその仕組上、デメリットもゼロではありません。実際のシミュレーションで確認しながら、ボーナス払いの仕組みについて考えていきましょう。
ボーナス払いを利用するメリット
通常の返済回数にボーナス払いを加えることで、毎月の返済額を減少させることができます。どれくらいの減少になるか、ボーナス時に実際に利用した場合の計算例をご紹介します。毎月の返済額をまずは確認してみましょう。
【計算条件】
- 返済期間35年、金利(年率)1.5%の固定金利、借入額は4,000万円のケースで計算
- ローン元金4,000万円の内20%ボーナス払いをする場合(ボーナス払い部分の元金は4,000万円×0.2=800万)
- ローン元金4,000万円の内30%ボーナス払いをする場合(ボーナス払い部分の元金は4,000万円×0.3=1,200万)
毎月の返済額 | ボーナス返済額 | 年間返済額 | 返済総額 | |
---|---|---|---|---|
ボーナス返済なし | 毎月の返済額: 122,473円 | ボーナス返済額: なし | 年間返済額: 1,469,676円 | 返済総額: 51,438,816円 |
4,000万(内20%はボーナス払い) | 毎月の返済額: 97,979円 | ボーナス返済額: 147,317円×2回 | 年間返済額: 1,470,382円 | 返済総額: 51,463,080円 |
4,000万円(内30%はボーナス払い) | 毎月の返済額: 85,731円 | ボーナス返済額: 220,975円×2回 | 年間返済額: 1,470,722円 | 返済総額: 51,475,364円 |
ボーナス返済なしの場合は、毎月の返済額は122,473円ですが、借入額4,000万の内20%をボーナス払いとした場合は、月々97,979円。30%をボーナス払いとした場合は85,731円。このように、ボーナス払いの割合が高くなるにつれて毎月の返済額が下がっていることが分かります。
ボーナス払いのデメリット
ボーナス払いは、毎月の返済額を減少させる効果はありますが、年間返済額と返済総額が増加するというデメリットがあります。実際、上記表を見るとボーナス払いの割合が増えるほど年間返済額と返済総額も増加していることが確認できます。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
住宅ローンの毎月の返済額の内訳は、「元本+利息」となっています。ボーナス払いを利用しない場合、毎月の返済額が多くなり、元本の返済がより進むということです。
一方、ボーナス払いを利用した場合、毎月の返済額は利用しない場合よりも減少します。すると、元本の減り方も減少。そのため、元本の減り方がボーナス払いを利用しないときに比べて緩やかになるのです。
結果、ボーナス払いを利用する方が、返済総額が増えてしまうことがあります。
ボーナス払いは毎月の返済額が減少するメリットはあるものの、利息を先送りしているだけとなる場合がありますので、返済計画を作成して、自分の希望通りとなっているか慎重に検討しましょう。
また、ボーナス払いを利用すると、毎月の返済額は減少しますが、その分ボーナス時に住宅ローンの負担が増えてしまうため、その他の用途に使える資金が少なくなってしまいます。家族旅行や車の頭金等のまとまった支出がボーナスでまかないきれない場合、月々の積み立てや、その他の方法での準備が必要となってくるでしょう。
また、現在勤めている会社から、そもそもボーナスが支給されるかどうかという問題もあります。基本的にボーナスは給料と異なり、業績に応じて事業主が決めるものなので、必ずしも支給されるとは限りません。企業の業績や、本人の査定次第で最悪の場合、ボーナスがゼロになってしまう可能性があることも知っておきましょう。
ボーナスを生活費に充てざるを得ない状況になると、住宅ローンの利用時にボーナス払いの原資を失い、貯蓄から取り崩さなければなりません。
想定の借入額や、月々の返済額から返済計画を確かめてみませんか
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3. 住宅ローンのボーナス払いを利用する際の注意点
それでは、住宅ローンのメリットとデメリットを理解したうえで、ボーナス払いを利用する場合、または既に利用している場合はどのようなことに注意をしたらよいでしょうか?
ボーナスに頼り過ぎた返済計画を作らない
ボーナスは事業主の都合によって、減額や不支給となる可能性がありますので、ボーナスが支給された場合と、ボーナスが支給されない場合の両方を仮定した返済計画を比較してみると良いでしょう。
不測の事態に備えて毎月積み立てを行う
ボーナス払いを設定すると、ボーナス払いを利用しないときよりも、毎月の返済額は減少します。返済額が減少した分は、不測の事態に備えて、積み立てておくと良いでしょう。ある程度積み立てた段階で、定期的に繰上返済をすれば大きく利息負担を減らせることができます。ただし、繰上返済は手数料がかかることがあるので、事前に確認をしておきましょう。
ボーナス払いと繰上返済を組み合わせる方法は、ローンを効率的に返済するという点では有効な方法です。
定年退職後に返済を残さない
定年退職後に住宅ローンの返済が残ってしまう場合でも、極力ボーナス払い部分は減らしておきましょう。定年退職後は、毎月の給料はもちろん、ボーナスもなくなるため、収入の多くを公的年金に頼るしかありません。しかし、厚生労働省の統計によると、一般的な退職後のモデルケースでは、必要最低限の生活をするだけでも貯蓄を取り崩すことになるとされています。
定年退職後に住宅ローンの返済が残っていると、老後生活資金の取り崩しが加速してしまうため、毎月の住宅ローンの返済自体をなくすことが望ましいです。少なくとも定年退職後は住宅ローンのボーナス払い部分を残さないようにボーナス返済分を繰上返済するなど、余裕のある返済計画を立てておきましょう。
4. 住宅ローンの返済中にボーナス払いは止められる?

住宅ローンの返済中にボーナス払いをやめることは可能です。ただし、ボーナス払いはなくなりますが、その部分は毎月の返済額に上乗せになる点に注意しましょう。
また、ボーナス払いの金額を減らすこともできますが、ボーナス払いを減額した場合でも、その部分は毎月の返済分の金額に上乗せされます。
そして、改めてライフプランを作り、家計の見直しを行うとより安心です。
5. 住宅ローンのボーナス払いの特徴を理解して効率的に返済しましょう
各金融機関は、住宅ローンの毎月の返済に加えて、お勤め先のボーナスを活用して年2回追加で返済できるボーナス払いを用意しています。
ボーナス払いを利用すると、毎月の住宅ローン返済額は抑えられる一方で、返済総額が逆に増えてしまうことがあります。ボーナス払いは、年に数回しか返済が無いため元金の減りが緩やかで、その元金がまた利息を生み出してしまうためです。ボーナス払いを利用するときは、この特徴を理解して返済計画を立てたうえで利用しましょう。
また、勤務先の業績や、本人の査定次第で、ボーナスそのものが支払われない可能性があります。仮にボーナスが支給されなければ、ボーナス払い部分は自分の貯蓄を取り崩して返済をすることになるので、注意しておきましょう。
ボーナス払いは仕組上、返済総額が増えてしまう等、一見デメリットばかりに感じてしまうかもしれません。しかし、住宅ローンを含めたローン全般にいえることですが、前倒しで返済すればするほど利息負担が減るのは確かなことです。少し負担は大きくなりますが、ボーナス払いに加え、繰上返済も並行して行うことで効率的にローン残高を減らすことができます。ぜひ、ボーナス払いを活用して、住宅ローンを賢く利用してみてはいかがでしょうか。

金子 賢司
(かねこ けんじ)
ファイナンシャルプランニング技能士1級と同等資格のCFP(R)や、生命保険資格の最高峰であるTLCを持ち、日本FP協会道央支部に幹事として所属。2017年以降は、確定拠出年金・生命保険・ライフプランに関するセミナーを年間50~100件開催。北海道新聞にもコラム掲載の経験があり、執筆活動にも力を入れている。
ファイナンシャルプランニング技能士1級と同等資格のCFP(R)や、生命保険資格の最高峰であるTLCを持ち、日本FP協会道央支部に幹事として所属。2017年以降は、確定拠出年金・生命保険・ライフプランに関するセミナーを年間50~100件開催。北海道新聞にもコラム掲載の経験があり、執筆活動にも力を入れている。