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REPORT レポート

建設分野の物価等動向について~2025年の建設分野を読み解く~(3/3)

応用技術開発部 主任研究員 三澤文香

5.2.設備工事における供給制約の深刻化

建設業界全体が人材不足であるが、特に供給制約が強く表れているのが設備工事である。2章で示した通り、設備工事費は建設工事費全体の上昇率を上回って推移しており、設備分野におけるコスト上昇圧力は相対的に強い。しかしそれにとどまらず、資材・機器の納期長期化と、サブコン(専門工事業者)の確保難が同時に進行している点が大きな問題であるといえる。

一般社団法人日本建設業連合会によるヒアリング調査*3では、会員より設備の長納期化の声が上がっている。特に昇降設備では、2025年秋時点で昇降機工事の対応可能時期が一部の特注品では2030年度以降着工(メーカーによっては2031年度以降)といった声が上がっている。また一般社団法人経済調査会による第38回労務需給調査(2026年2月調査)*6では、電気工や配管工といった設備関連職種の不足感が、他の職種と比較して高い水準で推移すると発表されている。今後3カ月後の見通しにおいても不足感の継続が示されており、今後もこの傾向が続く可能性は高い。この状況では、発注者が予算を積んでも、物理的に工事を開始できない、人材が見つからないという状況が起こりうると考えられる。

図12 納期や工事着手に期日がかかる設備工事

図12

(出所)一般社団法人日本建設業連合会 設備工事費上昇等の現状について 2025年秋版*3より当社作成

全国的に設備工事に係る需給が逼迫している現状は、現在の建設市場における問題の本質を端的に示している。「お金を積めば解決できる問題」ではなく、「お金を積んでもモノが届かない、担い手が見つからない」という、より根深い供給能力そのものの問題となっている。設備工事の動向は、建設市場が「供給制約の時代」へと移行しつつあることを象徴しているといえる。

6.まとめ

2025年の建設分野の物価動向においては、建設物価の上昇そのもの以上に、その背後にある供給制約の構造が重要性を増している。コロナ禍直後には、資材価格やエネルギー価格の急騰が市場の最大の関心事であったが、足元ではそれらの上昇率が鈍化する一方で、労務費の上昇、人材不足、設備工事を中心とした施工能力不足が、より前面に現れている。

この変化は、建設市場が「価格変動を主因とする市場」から、「供給制約を主因とする市場」へ移行しつつあることを意味する。従前は、価格条件を見直すことで一定程度調達や発注が成立する余地があったが、現在では条件次第で、そもそも担い手や設備を確保できない局面が生じている。したがって、今後の建設事業においては、単に建設工事費の増額を見込むだけでは十分ではない。発注者・受注者の双方において、事業の進め方そのものを見直す必要がある。例えば、以下のようなアクションが重要であると考える。

・発注者側は、実勢価格や長期化する納期を直視し、実現可能な予定価格・工期を設定することが求められる。また、入札条件の見直しや、計画初期段階から施工者・専門工事業者の意見を把握する仕組みを導入することが重要である。
・受注者側は、新規入職者の確保、人材の定着促進、技能継承の強化等を通じて、供給力の維持・向上を図る必要がある。また、人材制約が長期化するなかでは、デジタル技術の活用や省人化投資を通じた生産性向上も重要となる。

2020年以降、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻等、建設物価や資機材調達に大きな影響を与える事態が相次いで生じた。こうした局面で、「実勢価格と指数値の乖離」といった現象が生じ、当初は発注者側の理解や参照可能な資料が十分でない場面もみられた。その後、業界団体や国等の働きかけがなされ、建設業界や建設物価をめぐる状況への理解は徐々に進み、対応も広がりつつある。しかし、今後も中東情勢や為替変動等を含め、建築資材の価格や納期に大きな影響を与える事態が生じる可能性は否定できない。そのため、現時点では予見しにくい形で、再び価格が大きく変動し、必要な資機材が円滑に調達できなくなる局面が生じる可能性がある。以上を踏まえると、今後の建設事業においては、足元の価格動向だけでなく、供給制約の長期化や突発的な外部環境変化も織り込んだうえで、発注条件、工程計画、調達戦略を柔軟に見直していく姿勢が一層重要になるといえるだろう。

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