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REPORT レポート

建設分野の物価等動向について~2025年の建設分野を読み解く~(2/3)

応用技術開発部 主任研究員 三澤文香

4.相次ぐ入札不調と計画変更の実態

全国各地で公共工事や民間プロジェクトの入札不調、計画変更、事業費の増額、仕様見直し等が相次いでいる。これらは地方、都市部を問わず全国各地で起きている現象であり、対象も庁舎、学校、文化施設、再開発等、多様な分野で確認されており、広範な市場現象であるといえる。以下に、その一端を示す事例を整理する。

表3 入札不調や計画変更が発生した事例(一部抜粋)

表3

(出所)各種公表資料より当社作成

各事業の公表資料では、入札不調や計画変更の要因として「資材価格や人件費の高騰」を挙げている。実際、物価の高止まりと労務費の上昇が、積算時点の予定価格と実勢価格との間に乖離を生じさせていることは、直接的な要因の一つである。しかし、入札不調や計画変更の背景は、それだけでは十分に説明できない。受注者側においては、施工体制を確保できない、工程条件に無理がある、採算が見込めない、既受注案件との兼ね合いから対応余力が乏しい等、複数の要因が同時に作用している。すなわち、現在の入札不調は、単なる価格不一致ではなく、「施工可能性」そのものに関する問題として捉える必要がある。

図7 入札不調の背景

図7

図7に示した通り、入札不調や計画変更の背景には、価格高騰という直接的な要因に加え、人手や資機材の不足、工程条件への対応困難といった実務上の制約が重なっている。さらにその背後には、長期的に進行してきた供給基盤の脆弱化という構造的な要因がある。つまり、昨今の状況は価格高騰の文脈のみならず、供給能力の制約や構造上の問題が顕在化した局面として理解する方が適切であるといえる。

5.問題の中心:構造的な供給基盤の脆弱化

前章で確認した入札不調や計画変更の頻発は、価格水準の問題だけでは説明しきれず、施工を支える供給基盤そのものの弱体化を示している。本章では、その構造的要因を整理する。中でも、人材不足の深刻化と設備工事分野の逼迫は、現在の建設市場における供給制約を端的に示す要素である。

5.1.人材不足の深刻化:長い時間をかけて積み上がった構造問題

建設分野の課題として、近年特に深刻さを増しているのが人材不足である。日銀短観の雇用情勢によると、2025年12月データでは建設業は-63(雇用情勢が良いと回答した企業-悪いと回答した企業の割合)であり、1年前(2024年12月)と比較して状況は悪化している。全産業や製造業と比較しても、建設業の人手不足は際立って厳しい水準にある。この点について、長期的な建設投資と雇用情勢の推移に基づき整理する。

図8 雇用情勢

図8

(出所)企業短期経済観測調査(日本銀行)より当社作成

建設投資の長期推移をみると、バブル崩壊後、1990年代後半から2011年頃まで減少傾向が続いた。その後は、東日本大震災の復興需要、アベノミクス、東京オリンピック関連需要、都市再開発の進展等を背景に、建設投資は再び増加基調に転じた。需要面だけをみれば、2011年以降、市場は回復してきたといえる。

図9 建設投資額の推移(1960年以降)

図9

(出所)建設投資見通し(国土交通省)より当社作成

一方、雇用情勢に目を向けると、バブル期には人材不足の状態にあったものの、バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代前半にかけては、人材過剰の局面が存在した。その後、2011年以降は中長期的に供給力の低下傾向が続いている。

図10 雇用情勢(長期)

図10

(出所)企業短期経済観測調査(日本銀行)より当社作成

建設投資と雇用情勢を合わせて分析すると、バブル崩壊後の長期の市場縮小局面のなかで、人員整理がなされたことで、建設業から人材が流出し、その後、東日本大震災の復興需要や都市部の再開発により建設投資は回復基調に転じたが、一度離れた人材は容易には戻らず、建設業の就業者数は減少傾向に歯止めがかかっていないとみるのが妥当である。

図11 建設投資額と雇用情勢の相関

図11

(出所)建設投資見通し(国土交通省)、企業短期経済観測調査(日本銀行)より当社作成

したがって、建設分野の人材不足は、少子高齢化という我が国全体の問題に加え、「長期の投資低迷局面において失われた供給基盤が十分に回復しなかったこと」に起因する側面が大きいといえる。言い換えれば、需要回復に応じて人材が自動的に戻る段階は既に過ぎており、現在の人材不足は、景気循環に伴う一時的な逼迫ではなく、構造的かつ長期的な供給問題として理解する必要がある。このため、今後は人材の確保・定着に加え、デジタル技術の活用等を通じて限られた担い手で施工体制を維持する、生産性向上の取組も重要性を増すと考えられる。

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