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REPORT レポート

建設分野の物価等動向について~2025年の建設分野を読み解く~(1/3)

応用技術開発部 主任研究員 三澤文香

1.はじめに

2025年の建設市場において注目すべきは、建設物価の高止まりそのもの以上に、施工を支える供給能力の制約が主要課題として前面化している点である。コロナ禍以降に急騰した資材価格は上昇ペースを鈍化させているものの、全国各地で公共工事や民間プロジェクトの入札不調、計画変更・中止が相次いでいる。こうした現象は、一部の特殊案件にとどまるものではなく、庁舎、学校、文化施設、再開発事業等、幅広い分野で確認されている。一般に、この混乱の背景には「資材価格や人件費の高騰」があると指摘されることが多い。しかし、足元の状況をみると、単なる価格上昇のみでは説明しきれない。問題の中心は、価格の問題から、人材の確保を含む供給制約の問題へと重心が移っている点にあると考えられる。

本レポートでは、各種データを基に、2025年時点における建設分野の動向を整理し、その背景にある構造変化を分析する。特に、人材不足の深刻化、設備工事を中心とした供給制約に着目し、建設分野の動向、昨今の問題を読み解く。2024年のレポート*1、2023年のレポート*2も併せて参照いただきたい。

2.建設物価の動向:「高止まり」局面へ

本章では、2025年の建設分野の物価動向を、2.1 建設分野全体、2.2 資材物価、2.3 設備工事費、2.4 労務単価から分析する。

2.1.建設分野全体の物価動向

建設分野全体の物価動向を把握するため、建設工事費デフレーターを用いて工事費の推移を分析した。材料費、労務費等を含む建設工事費は、2025年(2025年1月~2025年12月)は約2.3%の上昇であった。2024年(2024年1月~2024年12月、約5.5%の上昇)、コロナ禍(2020年3月~2023年5月、約3.9%/年の上昇)と比較すると上昇率がやや鈍化している。

図1 建設分野全体の物価の推移(建設工事費デフレーター)

図1

(出所)建設工事費デフレーター(国土交通省)より当社作成

このことは価格上昇が停止した、あるいは下落局面に転じたことを意味するものではない。むしろ、過去数年間に急上昇したコスト水準が新たな基準として定着し、高い価格水準が継続する「高止まり」だといえる。

2.2.資材物価の動向

主要建設資材の物価動向について企業物価指数を用いて分析した。まずは躯体を構成する鉄骨、鉄筋(小形棒鋼)、生コンクリート、仕上げを構成する板ガラス、建築用金属製品(サッシや建具等)の分析を実施した。2025年(2025年1月~2025年12月)では、生コンクリートおよび建築用金属製品で物価上昇がみられた。一方、鉄骨、鉄筋、板ガラスは微減であった。建設資材全体が一律に上昇しているわけではなく、品目ごとに異なる動向を示しているが、全体的には上昇または高止まりの傾向であるといえる。なお、生コンクリートの物価上昇の背景には、働き方改革に伴う労務費・輸送費の上昇に加え、材料費や電力費の上昇があると考えられる。

図2 躯体・仕上げに係る個別品目の物価動向(企業物価指数)

図2

(出所)企業物価指数(日本銀行)より当社作成

表1 躯体・仕上げに係る個別品目の2025年12月時点の物価指数のまとめ

表1

(2025年12月時点)

次に設備資材として、設備全般に含まれる鋼管、電気設備を構成する電線・ケーブル、変電設備(変圧器・計器用変成器)、衛生設備を構成する衛生器具(衛生陶器)、空調設備を構成するダクト類(金属製管継手)、昇降機を構成するエレベータの分析を行った。2025年(2025年1月~2025年12月)では、電線ケーブルは変電設備、衛生器具は上昇傾向が見られたが、その他の品目は横ばい、微減といった動きを示し、前述した躯体、仕上げを構成する資材と同様の傾向であるといえる。なお、電線・ケーブルの価格高騰の背景には、データセンター、EV等を筆頭とした主材料の銅の需要増や為替変動があると考えられる。

図3 設備に係る個別品目の物価動向(企業物価指数)

図3

(出所)企業物価指数(日本銀行)より当社作成

表2 設備に係る個別品目の2025年12月時点の物価指数のまとめ

表2

(2025年12月時点)

2.3.設備工事費の動向

設備工事費(電気、衛生、空調、昇降)の物価動向として建築費指数を分析した。建築費指数における設備の指数値は2025年(2025年1月~2025年12月)では約5.0%の上昇であった。2024年の約6.7%と比較すると上昇はやや鈍化しているが、建設工事費デフレーターの約2.3%の上昇と比較すると設備工事費の上昇は大きいといえる。

図4 設備工事費の物価動向(建築費指数)

図4

(出所)建設物価 建築費指数®(建設物価調査会)より当社作成(建設物価 建築費指数は、一般財団法人 建設物価調査会の登録商標です。)

なお、大規模建築物等における設備工事費の上昇率は指数値よりも大きい*3との報告もあり、一部の特殊な設備工事では更なる上昇が起きていると考えられる。

2.4.労務単価の動向

労務単価の動向として、公共工事設計労務単価の推移を分析した。令和8年度の公共工事設計労務単価は最近の労働市場の実勢価格を適切・迅速に反映したとして、全国全職種平均値25,834円、前年度から4.5%増となった。労務単価の上昇は平成25年度の改訂から14年間連続である。人材不足の継続に加え、若年入職者の確保に向けた処遇改善の動き等も踏まえると、労務費の上昇又は高止まりは今後も継続する可能性が高く、建設分野全体のコスト構造に引き続き影響を及ぼすとみられる。

図5 公共工事設計労務単価の推移

図5

(出所)令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について*4(国土交通省)より当社作成

3.建設需要

建設需要の動向として、建設投資額の推移を示す。2025年度の建設投資は前年度比3.2%増の75兆5700億円であり、政府投資は前年度比0.7%増の25兆2100億円、民間投資が前年度比4.5%増の50兆3600億円となる見通しである。投資額の増加は昨今の建設工事費上昇による影響も大きいが、今年度以降も一定の需要は続くと想定される。

図6 建設投資額の推移

図6

(出所)国土交通省 令和7年度(2025年度)建設投資見通し概要*5より当社作成

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