学生起業のやり方は?メリットやデメリットと成功するためのポイントを解説
掲載日:2025年6月9日起業準備

若い頃から事業を始めて活躍する学生起業家を見て、学生起業に興味を持っている方もいるでしょう。学生起業には、社会に出てからの起業とは異なるメリットがある一方で特有の困難もあるため、挑戦するかどうかは慎重に考える必要があります。
本記事では、学生起業のやり方やメリットとデメリット、成功させるコツを解説します。学生起業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
データや取り組みから見る学生起業の現状
近年では有名な学生起業家も登場しているため、学生起業の事例は多いと感じている方もいるでしょう。学生起業の現状を知るために、まずはデータや実際の取り組みを紹介します。
学生ベンチャーの事例数は増えている
経済産業省が公開した「令和5年度産業技術調査事業 大学発ベンチャーの実態等に関する調査」*の結果を見ると、大学発ベンチャー数は2014年以降年々増えていると分かります。
2021年は3,305社、2022年は3,782社、2023年は4,288社と、大学発ベンチャー数は企業数だけでなく増加数も過去最多となりました。
なお、「大学発ベンチャー」には学生ベンチャーだけでなく、大学と関連がある教職員等のベンチャーも含まれますが、学生起業の割合は高いです。
2023年の定義別の割合を見ると、最も多いのは「研究成果ベンチャー」の49%、次に多いのが「学生ベンチャー」の27%でした。また、2023年の大学発ベンチャー4,288社のうち1,150社以上は学生起業であり、大学発ベンチャー数の増加とともに学生起業の事例も増えているといえます。
成功した学生起業家として有名なのは、ソフトバンクグループ株式会社の創業者である孫正義氏や、実業家として幅広い分野で活躍している堀江貴文氏です。
他にも、オンラインショップ作成サービス「BASE」を立ち上げた鶴岡裕太氏や、料理レシピ動画サービス「クラシル」を立ち上げた堀江裕介氏等が、学生時代に起業して成功しています。
国が学生起業を支援する取り組みを行っている
近年では、以下のように国が学生起業を支援する取り組みを行っています。
- スタートアップ育成5か年計画
- 起業家教育支援
スタートアップ育成5か年計画は2022年11月に全体像の取りまとめが行われ、スタートアップへの投資額を5年間で10倍にすると決めた計画です。人材と資金、オープンイノベーションの3つを柱として、取り組みを実施しています。
起業家教育支援は、起業家に必要とされるマインドや資質、能力を持つ若手人材を育成する教育を推進するものです。出前授業や講演、教育プログラムの実施等を支援するとともに、ビジネスプランをアウトプットする環境を整備して開業率の向上をめざしています。
学生起業のメリット

学生起業は、社会人で起業する場合に比べて以下のようなメリットがあるため、詳しく確認しましょう。
- 学生向けの起業支援サービスを利用できる
- 失敗してもリスクが少ない
- 時間と体力をかけて事業に挑戦できる
- 実績により卒業後の選択肢が広がる
学生向けの起業支援サービスを利用できる
学生起業をすると、学生向けに提供されている起業支援サービスを利用できるのがメリットです。
学生の起業を支援している大学は多く、相談窓口が開設されていたり、学校の設備をビジネスに使えたりします。事業や経営に関する相談が身近でできれば、起業で分からないことがあっても安心できるでしょう。
起業支援のプログラムやサークル、部活動もあり、人脈を作ったり先輩起業家の話を聞けたりします。学生起業を検討しているなら、利用できる起業支援サービスが身近にないか探してみるのがおすすめです。
失敗してもリスクが少ない
学生起業は、社会人で起業する場合に比べて失敗したときのリスクを抑えやすいのがメリットです。
社会人になってから起業する場合はビジネスで生計を立てなければならないので、失敗すると収入が減少して生活が苦しくなることも考えられます。
一方、学生のうちは生活費などを保護者に頼っているケースも多いため、この点において学生ならではの挑戦しやすさがあると言えます。また、在学中に起業して失敗しても新卒での就職を選択できるため、既卒の場合に比べてキャリアに影響を及ぼしにくいでしょう。
時間と体力をかけて事業に挑戦できる
若い学生は時間と体力に余裕があるため、起業には大きなアドバンテージとなります。
事業を立ち上げる際は、事業の考案や各種手続き等やるべきタスクが多く、多大な時間が必要です。社会人が起業する場合は、会社勤めをしながら起業したいと思っても時間の捻出が難しく、体力が続かないケースもめずらしくありません。
学生であれば、時間と体力を活用し、何度もトライ&エラーをして事業をブラッシュアップしたり、積極的に営業できたりするので事業を成長させる可能性が高まります。
実績により卒業後の選択肢が広がる
学生起業を経験すれば、実績が評価されて卒業後の選択肢が広がります。
卒業時まで事業が成功していればそのまま専念できるほか、副業として続けることも可能です。事業を続けずに就職する場合も、起業によって培ったビジネス経験が社会人としていかせます。
また、学生起業に失敗しても、就職活動で経験を高く評価されるケースが多いです。
学生起業のデメリット
学生起業には様々なメリットがある一方で、デメリットも存在します。学生起業に興味があるなら、デメリットも必ず確認し、それでもやりたいのかをきちんと考えましょう。
- 資金調達が難しい
- 学業との両立が難しい
- プライベートの時間を確保しにくい
資金調達が難しい
学生起業は、資金調達が難しいという大きなデメリットがあります。ビジネスの実績がない学生は信用力が低いため、金融機関から資金を調達するのは難しいです。
近年では、学生起業家がクラウドファンディングやビジネスコンテストの入賞賞金等によって起業する事例が増えています。しかし、確実にお金を集められる方法ではないため、必要な資金が確保できない場合もめずらしくありません。
学生起業をするなら、できるだけ少ない資金で始められる事業を選んだり、小規模な事業から始めたりする工夫が必要です。
学業との両立が難しい
学生は起業のために時間や体力を使えるのがメリットである反面、起業と学業の両立が難しいというデメリットも存在します。
起業に力を入れた結果、単位が足りずに進級や卒業ができなくなる事態に陥るリスクも考えられます。学生の本分は学業であると理解し、事業をしながらでも計画的に単位を取得しなければなりません。
家族に学費を払ってもらっている場合、学業が疎かになると起業を反対されるおそれがあります。家族の理解を得るためにも、起業しながら学業にも力を入れましょう。
プライベートの時間を確保しにくい
学生起業をすると、プライベートの時間を確保しにくくなるのがデメリットです。
起業までに多大な時間を費やして事業計画を立て、開業の手続きをした後も、事業を存続させるために時間を使わなければなりません。周りの友達が遊んでいる間もビジネスに時間を費やさなければならないので、周囲が羨ましくなることもあるでしょう。
起業はどうしても時間がかかるので、学生の自由な時間を捧げる覚悟が必要です。プライベートの時間を減らしてでも起業したいと思えるなら、挑戦しましょう。
学生起業のやり方
学生起業をする場合は、以下のような流れで準備して事業を始めます。大まかなやり方を確認して、学生起業の流れをイメージしましょう。
起業目的やビジネスアイデアを決める
まずは、起業する目的やビジネスアイデアを決めます。
学生起業に限りませんが、起業目的や事業方針が決まっていないのに起業しても、うまくいきません。事業として成り立つかどうかを考えながら、新たな価値の提供や課題解決ができるビジネスアイデアを考えてみてください。
浮かんだアイデアがニーズに合っているか、市場調査や競合調査で調べるのも大切です。
事業計画書を作成し、必要に応じて資金調達する
事業内容が決まったら、事業計画書を作成します。
事業計画書は、事業内容や収益を上げるための戦略を具体的に記載するものです。取引先や金融機関に事業について説明する際に、事業計画書があると理解してもらいやすいでしょう。
事業計画書を作成した結果、資金が必要だと判断したら、資金調達を行います。学生起業では資金調達が難しい場合もあるので、できるだけ少ない資金で始められる事業計画を立てるのがおすすめです。
関連記事:「事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイントを分かりやすく解説!」
開業手続きを行う
起業の準備が整ったら、開業手続きを行います。会社を設立するか、個人事業主になるかを決めて手続きをしましょう。
会社を設立する場合は、株式会社か合同会社かを決めて必要な手続きを行います。複数の手続きが必要なので、計画的に進めてください。個人事業主の場合は、税務署に開業届を提出します。
関連記事:「起業とは?形態やフリーランスとの違い、成功のコツをわかりやすく解説」
学生起業を成功させるポイント

学生ならではの強みをいかせる一方、学生ゆえの未熟さで失敗する可能性があるのが学生起業です。成功させたいなら、以下のポイントを押さえてみてください。
小規模なビジネスから始める
学生起業を成功させたいなら、小規模なビジネスから始めるのがコツです。
ビジネスは規模が大きくなるほどリターンもリスクも大きくなるので、学生の時点では無理なく背負えるリスクに収まるスモールビジネスを選ぶといいでしょう。小規模なビジネスから始めれば、失敗したときのダメージを小さく抑えられます。
学生起業では友人と一緒に始めるケースも多いですが、複数人で事業を行うとトラブルが発生する可能性が高まります。スムーズに起業したいなら、1人で始めるのがおすすめです。
いきなり会社を設立せず、個人事業主から始めるのも1つの方法です。個人事業主であれば、所得が少ないうちは税率が低く、法人税を支払う必要もありません。金銭的な負担を抑えながら、手軽に事業を始められます。
関連記事:「個人事業主とは?必要な手続きやメリット・デメリットを解説」
事業計画を作り込む
学生起業を成功させるポイントは、事業計画をきちんと作り込むことです。
事業計画はビジネスの根幹となるので、時間をかけて作る必要があります。主観的な意見ではなく、客観的になるよう根拠を加えて説得力を高めましょう。資金を調達する際は、金融機関や投資家への説明で事業計画が必要なので、納得できるものを作り上げてください。
できるだけ資金を準備しておく
実際に学生起業をする前にできるだけ資金を準備しておくことも、成功するために大切なポイントです。
資金が足りなくなると事業を継続できませんが、学生起業の場合は資金調達が難しいです。起業時には初期費用がかかり、事業を継続するためには仕入れ代や家賃等の経費も必要なので、起業前に運転資金の6ヵ月分ほどを用意しておくといいでしょう。
資金面で不安がある場合は、学生起業家が利用できる補助金等の利用を検討してみてください。
失敗してもすぐに諦めない
失敗してもすぐに諦めずに継続することが、学生起業を成功させるポイントです。
知識や経験が少ない学生が起業すると、数々の失敗に直面します。未熟ゆえに失敗してしまい、起業がうまくいかないケースもあるでしょう。そこでモチベーションが下がってしまいやすいですが、諦めずに挑戦し続ければ成功の可能性を高められます。
学生に限らず、起業して成功した経営者の多くは、失敗を繰り返しても諦めませんでした。起業はすぐにうまくいくものではないと理解し、何度失敗しても挑戦を続ければ、成功につながるでしょう。
起業支援を行っている大学の相談窓口や、自治体の創業支援センター等を利用して支援を受けるのもおすすめです。
起業後に法人口座を開設するならみずほ銀行がおすすめ
起業後に資金管理や税務処理の透明化を確保するためには、法人口座を活用するのが望ましいです。法人口座を開設すれば、会社と個人の資金が明確に区別され、税務リスクを低減できます。
みずほ銀行では、創業期をサポートする便利で役立つサービスや特典を提供しています。全国47都道府県に支店があるためどこで起業しても申し込みやすく、開設後も事業のサポートをスピーディに受けることが可能です。
また、2024年には「〈みずほ〉の創業応援ラインアップ」をスタートし、以下のような起業家を支えるお得で多彩なサービスを提供しています。
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学生起業をしようと検討している方は、ぜひみずほ銀行の法人口座の開設を検討してみてください。
関連記事:「新設法人が法人口座を開設するメリットは?口座開設の流れやポイントも紹介」
まとめ
近年では国が制度を整えているため、学生起業に挑戦しやすくなっており、事例も多く存在します。
学生起業をするためには、事業計画を立てたうえで必要な手続きを行わなければなりません。メリットとデメリットの両方を確認し、それでも起業したいと思うなら挑戦しましょう。また、最初は個人事業主として起業し、事業の規模に応じて法人化をめざす方法もあります。
法人化したら、法人口座を開設するのがおすすめです。みずほ銀行はウェブ面談を行っており、来店なしで口座開設ができます。また、登記事項証明書・印鑑証明書の原本提出が原則不要なので、起業準備で忙しい学生も利用しやすいでしょう。
起業の際に法人口座の開設を検討しているなら、みずほ銀行の利用をご検討ください。
監修者

安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。