会社登記(商業登記)とは?流れや必要な書類、費用を解説
掲載日:2025年6月9日起業準備

会社を設立する際には、必ず会社の情報を法務局で登記しなければなりません。登記をすることで会社の登記事項が一般に閲覧可能になり、正式に法人格を得ます。
会社形態には、株式会社や合同会社など複数の種類があり、手続きの流れも異なります。会社登記を検討している方は、具体的な流れや手順を把握し、スムーズに手続きを進めましょう。
本記事では、会社登記をする際の流れや必要書類、必要な費用等を解説します。
目次
会社登記(商業登記)とは
会社登記は「商業登記」とも呼ばれ、法人格を得るために欠かせない手続きです。会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社等)を登記することで、商号・名称や所在地、役員の氏名等が公示されます。
なお、会社登記は取引の安全と円滑化を実現するためにも、大切な役割を果たしています。会社法では、会社に対して実態に合った正しい登記を求めており、虚偽の登記申請に対する罰則も定めています。
つまり、「会社を登記した」という事実は、会社法に則って手続きをクリアしたことの証明となるのです。会社の事業実態を証明し、信用を獲得するためにも、会社登記は必ず行いましょう。
会社登記の流れと手続き
会社登記の完了とは、「法務局で登記申請が正常に受理されること」です。登記が完了するまでの間に、様々な準備や手続きをする必要があるため、全体的な流れを見ていきましょう。
会社形態によって会社登記の流れは異なりますが、今回は株式会社のケースで解説します。
発起人と基本事項の決定
株式会社を設立する際には、発起人が必要です。発起人とは、企画や出資、会社設立手続きを行う人を指します。発起人は設立時に1株以上の株式を引き受ける必要があり、会社登記後は株主となります。
ただし、株式会社以外の持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の場合、発起人は不要です。
また、会社の基本事項とは、以下の会社に関する基本情報を指します。
- 会社の目的
- 社名
- 事業内容
- 本店所在地
- 資本金の額
- 持株比率
- 役員構成
- 決算期
目的や事業内容等の登記事項は、登記が完了すると誰でも閲覧できるようになります。
定款の作成
会社形態に関係なく、会社を設立するには定款(法人の組織・活動の根本規則)を作成しなければなりません。株式会社の定款には、以下の「絶対的記載事項」を必ず定めます。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
絶対的記載事項に不備があると定款が無効と判断され、作り直す手間が発生するため、注意しましょう。
関連記事:「定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説」
定款の認証を受ける
作成した定款は、会社の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局所属の公証人による認証を受ける必要があります。
定款の認証とは、定款の記載に法令上の問題がないか等をチェックし、正式な定款であることを証明してもらう手続きです。
認証を受ける際には、発起人の印鑑証明書と資本金に応じた認証手数料(3万~5万円)、収入印紙代(電子定款の場合は不要)などが必要となるため、用意しておきましょう。
なお、持分会社の場合は定款の認証を受ける必要がありません。
会社の印章を作成する
会社登記をする際には、会社の実印登録をした証明である印鑑届出書が必要です。法務局に登記申請をする前に、会社の印章を作成しておきましょう。
社名が決定したら代表者印(実印)や銀行印、角印等を作っておくと良いでしょう。
なお、会社印は登記をするときだけでなく、テナント契約をするときや業務上の契約をするときにも使用します。金融機関によっては、法人口座を開設する手続きで必要となることもあります。
資本金を払い込む
発起人は、株式会社の設立に際して、設立時発行株式を1株以上引き受けます。資本金を支払う手続きとして、引き受けた株数に相当する金額を払い込みましょう。
この段階では会社が設立していないため、会社名義の法人口座がありません。そのため、発起人個人の銀行口座に出資金を振り込む流れとなります(発起人が複数いる場合は代表の発起人の口座へ振り込む)。
発起人が自分の銀行口座へ振り込む場合は、いったん引き出してから再度入金することで、払込の証拠を作る必要があります。登記申請の際に必要となるため、払い込まれた事実を証明できる通帳のコピーを取っておきましょう。
なお、持分会社の場合は発起人がいないため、「発起人」ではなく「代表社員」の口座に資本金を払い込みます。
会社登記に必要な書類を用意する
法務局で会社登記の申請をする前に、以下の必要書類を用意しておきましょう。
株式会社の場合 |
|
---|---|
持分会社(合同会社)の場合 |
|
書類に不備があると登記申請が受理されないため、書類がそろっているか、書類の内容に誤りや記載漏れがないか確認しましょう。
法務局で登記申請をする
資本金を払い込んだら、法務局で登記申請をします。登記申請は、設立時取締役等の調査が終了した日または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に行わなければなりません。
なお、株式会社の設立の登記において登記する必要がある項目は、以下の通りです。
- 目的
- 商号
- 本店および支店の所在場所
- 資本金の額
- 発行可能株式総数
- 発行する株式の内容
- 発行済株式の総数ならびにその種類および種類ごとの数
- 取締役の氏名
- 代表取締役の氏名および住所
- 取締役会設置会社であるときは、その旨
- 監査役設置会社であるときは、その旨および監査役の氏名
- 公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
会社登記は、会社を代表する立場にある人が申請します。本店の所在地で設立の登記をして、正式に受理されることによって、会社が成立します。
関連記事:「会社設立にかかる最短日数は?最短で設立する3つのポイントも解説」
法務局で登記をする方法
法務局での会社登記には以下の方法があります。
- 窓口へ持参する
- 郵送で送る
- オンラインで申請する
3通りの中で自身に合う方法を選択して、登記を進めましょう。
法務局の窓口で申請する
法務局の窓口に出向いて、必要書類を提出する方法です。法務局の窓口で、書類の記載方法を教えてもらえるため、その場で確認したいことがある場合に向いています。
申請後、通常であれば7日~10日程度で登記が完了します。提出後、もし書類に不備がある場合は法務局から連絡が来るため、指示に従いながら修正しましょう。
なお、窓口の受付時間は平日午前9時00分から午後5時00分まで(2025年3月時点)のため時間内に手続きをしましょう。
郵送で申請する
法務局が遠い場合や足を運ぶ時間がない場合は、郵送で必要書類を提出する方法があります。重要な書類を送るため、普通郵便ではなく簡易書留や特定記録郵便で送付すると良いでしょう。
法務局に届いてから、7日~10日程度で登記が完了します。不備や確認事項がある場合は法務局から連絡が来るため、修正をしたうえで再提出しましょう。
オンラインで申請する
登記・供託オンライン申請システムを利用して、オンラインで会社登記をすることも可能です。システムを利用できる時間は、平日の午前8時30分から午後9時00分までとなっており、法務局の開局時間よりも長い特徴があります。
利用にはICカードリーダライタが必要で、利用にあたっては事前に設定を済ませる必要がありますが、自宅にいながら会社登記の手続きを進められます。また、電子証明書で電子署名を行えば一部の添付書類の提出を省略できるため、手間を軽減できます。
株式会社の登記で必要な費用は20万~30万円程度
株式会社を登記する際の費用は、総額で20万~30万円程度となるのが一般的です。持分会社の場合は定款の認証が不要であるため、株式会社よりも10万円近く設立費用を抑えられます。
株式会社 | 持分会社 | |
---|---|---|
定款用収入印紙代 |
4万円(電子定款では不要) |
|
定款の謄本手数料 |
2,000~3,000円程度 |
|
定款の認証手数料 |
3万~5万円 |
不要 |
登録免許税 |
15万円または資本金額×0.7%(高い方) |
6万円または資本金額×0.7%(高い方) |
定款用収入印紙代 | |
---|---|
株式会社 |
4万円(電子定款では不要) |
持分会社 |
4万円(電子定款では不要) |
定款の謄本手数料 | |
株式会社 |
2,000~3,000円程度 |
持分会社 |
2,000~3,000円程度 |
定款の認証手数料 | |
株式会社 |
3万~5万円 |
持分会社 |
不要 |
登録免許税 | |
株式会社 |
15万円または資本金額×0.7%(高い方) |
持分会社 |
6万円または資本金額×0.7%(高い方) |
なお、上表の金額は自分で会社登記を進めた場合の費用です。会社登記を司法書士に依頼する場合は、プラスで依頼手数料(5万円~10万円程度)がかかる点を押さえておきましょう。
会社の登記が完了するまでの期間

会社の登記が完了するまでの期間は、株式会社の場合は2週間~4週間程度、持分会社の場合は1週間~2週間程度が目安です。
法務局に対する登記申請の手続き自体は1日で完了するものの、事前準備や法務局に必要書類を提出した後の審査期間を含めて考えると、数週間の期間がかかります。
会社登記の書類を提出するときに注意すべき点
会社登記の申請書類に不備があると、修正したうえで再提出しなければなりません。手間と時間がかかり、また事業開始の準備を妨げてしまう可能性があるため、注意しましょう。
法務局に登記申請するときには、特に以下の点に注意すると良いでしょう。
- 必要事項の記入漏れがないか確認する
- 誤字脱字がないか・記載事項に誤りがないか確認する
- 登録免許税の収入印紙を貼り忘れていないか確認する(郵送で申請する場合)
- 実印の押し忘れがないか確認する
- 印鑑証明書の発行日が3ヵ月以内か確認する
- 提出方法によって設立日が変わるので、問題ないか確認する
書類が再提出になると、会社の設立が遅れる可能性があります。「縁起が良い日を会社の登記日にしたい」等と考えており、登記日にこだわりがある場合は、事前に法務局で不備や誤りがないか確認すると安心です。
まとめ
会社を設立するときは、法務局で会社登記(商業登記)をする必要があります。どの形態で会社を設立する場合でも、登記の手続きは欠かせないため、必要書類を確認したうえで計画的に準備を進めましょう。
会社形態によって差があるものの、会社登記に必要な費用は株式会社の場合で20万~30万円程度、持分会社の場合は10万円~20万円程度です。また、準備期間を含めて登記が完了するまでの期間は、株式会社は2週間~4週間程度、持分会社の場合は1週間~2週間程度を見積もっておきましょう。
会社登記をすることで法人格を取得し、会社法に基づいて経営されていることを対外的に証明できます。事業実態を明確に伝えられるメリットがあるため、事業運営で役立つ場面があるでしょう。
会社登記が済んだら、法人口座の開設を検討するのがおすすめです。会社のお金を管理するための口座を開設することで、経理に関する事務負担を軽減できます。
みずほ銀行の法人口座は、原則として登記事項証明書・印鑑証明書の原本提出なしでお申し込みいただけます。また、創業期のお客さまに向けた特典もご用意しているので、ぜひみずほ銀行の法人口座をご検討ください。
監修者

志塚 洋介
- 行政書士
- 1級FP技能士
- CFP
大学在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。証券会社で資産運用コンサルティングに従事したのち、不動産会社で保有不動産の収支計算や資産管理、収支改善業務などに従事し、独立開業。行政書士とファイナンシャルプランナーというお金と法律の2つの側面から会社設立、相続、遺言、運用、不動産などに関する幅広い業務を展開中。雑誌やwebでの執筆や株式や投資のセミナーなどの講師も行い、YouTubeでの投資に関する動画も好評。