スタートアップ企業が活用できる補助金は?メリット・注意点や申請の流れも解説
掲載日:2025年12月12日起業準備
補助金とは、国や自治体が事業者の取り組みを支援する目的で交付する資金です。スタートアップ企業にとっては、事業を早期に軌道に乗せ、成長していくための有効な資金調達手段となります。
本記事では、スタートアップ企業が活用できる補助金や支援制度を紹介します。また、スタートアップ企業が補助金を活用するメリット・注意点や、交付までの流れも解説します。
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目次
スタートアップ企業が活用できる補助金
スタートアップ企業が活用できる資金調達手段の一つに、国や自治体による補助金があります。
補助金は公的な資金を財源としており、受給には要件を満たしたうえでの申請と審査が必要です。スタートアップ企業が活用できる補助金には、次のようなものがあります。
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- 自治体による補助金・助成金
なお、国や自治体が交付する資金には「助成金」もあり、制度上、補助金との明確な違いが設けられていない場合もあります。
関連記事:「スタートアップの資金調達方法とは?成長ステージ別の方法や成功のポイントを解説」
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ものづくり補助金
ものづくり補助金は、革新的な製品・サービスの開発や海外需要開拓等に必要な設備投資やシステム導入を支援する補助制度です。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
2025年7月に公募要領が公表されたものづくり補助金(第21次公募)では、「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つの申請枠が設けられました。
| 製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 | |
|---|---|---|
| 目的 |
革新的な新製品・新サービス開発の支援 |
海外事業の実施による国内の生産性向上を支援 |
| 補助上限額 |
750万円~2,500万円 |
3,000万円 |
| 補助率 |
中小企業1/2 |
中小企業1/2 |
| 目的 | |
|---|---|
| 製品・サービス高付加価値化枠 |
革新的な新製品・新サービス開発の支援 |
| グローバル枠 |
海外事業の実施による国内の生産性向上を支援 |
| 補助上限額 | |
| 製品・サービス高付加価値化枠 |
750万円~2,500万円 |
| グローバル枠 |
3,000万円 |
| 補助率 | |
| 製品・サービス高付加価値化枠 |
中小企業1/2 |
| グローバル枠 |
中小企業1/2 |
さらに、賃上げに関する一定の要件を満たした場合には、補助金の上限額が追加で最大1,000万円引き上げられる特例が適用されます。
補助要件
ものづくり補助金(第21次公募)を申請するためには、以下の基本要件①~③を満たす事業計画の策定が必要です。加えて、従業員数が21名以上の場合は、④も満たす必要があります。
- ①付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年平均成長率3%以上増加させる
- ②給与支給総額を年平均成長率2.0%以上増加または最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加
- ③事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準にする
- ④従業員の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定・公表する
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓等に取り組む際に、その経費の一部を支援する制度です。この補助金は、顧客獲得や売上向上を目的とした広報活動、ECサイトの構築、展示会への出展、業務効率化に向けた設備導入等に活用できます。
第18回公募(2025年6月)の概要は以下の通りです。
| 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 目的 |
販路開拓・業務効率化を支援 |
賃金引上げを支援 |
事業規模拡大を支援 |
「アトツギ甲子園*1)」のファイナリスト等になった事業者の支援 |
創業間もない事業者の販路開拓支援 |
| 補助率 |
2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4) |
||||
| 補助上限額*2) |
通常枠50万円(その他の枠は200万円) |
||||
- *1)中小企業・小規模事業者の後継予定者が、既存の経営資源をいかした新規事業アイデアを競うイベントです。
- *2)インボイス特例の要件を満たす場合は50万円、賃金引上げ特例の要件を満たす場合は150万円が上乗せされます。
補助要件
小規模事業者持続化補助金を申請するには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- ①日本国内に所在する小規模事業者である
- ②資本金または出資金が5億円以上の法人に100%の株式を保有されていない(法人のみ)
- ③申告済みの直近過去3年分の「各年」または「各事業年度」の課税所得の年平均額が15億円以下である
なお、小規模事業者とは、以下に該当する事業者を指します。
| 業種 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) |
5人以下 |
|
その他業種の場合 |
20人以下 |
IT導入補助金
IT導入補助金とは、業務効率化やDX推進を目的として、ITツールの導入に必要な経費の一部を支援する制度です。ソフトウェアやシステムの購入費用、保守サポート費、クラウドサービス利用料等、デジタル化に関連する幅広い経費に活用できます。
「IT導入補助金2025」の概要は以下の通りです。
| 通常枠 | インボイス枠(インボイス対応類型) | インボイス枠(電子取引類型) | セキュリティ対策推進枠 | 複数社連携IT導入枠 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 目的 |
労働生産性向上の支援 |
インボイス制度への対応支援 |
生産性向上およびインボイス制度への対応支援 |
セキュリティ対策の強化支援 |
複数社へのITツールの導入支援 |
| 補助上限額 |
450万円 |
350万円 |
350万円 |
150万円 |
3,000万円 |
| 補助率 |
1/2~2/3以内 |
2/3~4/5以内 |
中小企業・小規模事業者等2/3以内 |
小規模事業者2/3以内 |
1/2~4/5以内 |
補助要件
IT導入補助金の対象となるのは、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者です。
通常枠では、以下の要件を満たす事業計画の策定が要件として定められています。
- ①1年後に労働生産性を3%(一部の事業者は4%)以上向上させる
- ②事業計画期間において、労働生産性の年平均成長率を3%(一部の事業者は4%)以上とする
- ③労働生産性の向上の目標が実現可能かつ合理的である
自治体による補助金・助成金
スタートアップ企業の支援を目的とした、各自治体の補助金や助成金を活用するのも手段の一つです。
例えば、東京都や大阪府では、創業予定者や創業間もない事業者に対して以下の補助・助成事業を実施しています。
| 補助金の名称 | 対象者 | 対象経費 | 補助率・上限 | |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 |
創業助成金 |
都内で創業予定または創業後5年未満の中小企業者等 |
創業初期に必要な経費の一部 |
2/3以内(上限400万円) |
| 大阪府 |
大阪起業家グローイングアップ補助金 |
ビジネスプランコンテストの優秀提案者等 |
創業や新事業の展開に要する経費の一部 |
1/2以内(上限100万円) |
| 東京都 | |
|---|---|
| 補助金の名称 |
創業助成金 |
| 対象者 |
都内で創業予定または創業後5年未満の中小企業者等 |
| 対象経費 |
創業初期に必要な経費の一部 |
| 補助率・上限 |
2/3以内(上限400万円) |
| 大阪府 | |
| 補助金の名称 |
大阪起業家グローイングアップ補助金 |
| 対象者 |
ビジネスプランコンテストの優秀提案者等 |
| 対象経費 |
創業や新事業の展開に要する経費の一部 |
| 補助率・上限 |
1/2以内(上限100万円) |
詳しくは、各自治体のウェブサイト等でご確認ください。
スタートアップ企業が活用できる支援制度
国は、国際的に競争力を持つスタートアップの起業・成長を加速させるため、資金面に加え、ネットワークや人材育成等、多方面での支援を実施しています。
この章では、スタートアップ企業が補助金以外で活用できる支援制度の例を紹介します。
- 始動Next Innovator
- J-Startupプログラム
始動Next Innovator
始動Next Innovatorは、スタートアップ経営者や起業志望者を対象に募集・選抜を行い、次世代のイノベーションを担う人材を育成するプログラムです。
プログラムは以下の3部で構成されています。
- 国内プログラム
- シリコンバレープログラム
- DEMO DAY(成果報告会)
国内プログラムでは、第一線で活躍する講師による講座を無料で受講でき、イノベーターに必要なスキルやマインドセットを習得できます。
さらに、国内プログラムで選抜された受講者は、シリコンバレープログラムに参加でき、現地の起業家やベンチャーキャピタリストとの交流やプレゼンテーションの機会が与えられます。
なお、始動Next Innovatorに応募するには、「事業アイデア」と「自己PR動画」の作成・提出が必要です。
J-Startupプログラム
J-Startupプログラムは、経済産業省が2018年に立ち上げたスタートアップ育成プログラムです。潜在力のある企業としてJ-Startup企業に選定されると、政府の支援施策や民間企業による支援を受けやすくなります。支援内容の例は次の通りです。
| 政府の支援例 |
|
|---|---|
| 民間の支援例 |
|
| 政府の支援例 |
|---|
|
| 民間の支援例 |
|
第5次選定(2025年3月)時点で、累計約270社がJ-Startup企業に選定されています。ただし、J-Startup企業は推薦に基づいて選定されるものであり、自ら応募する仕組みはありません。
スタートアップ企業が補助金を申請する際の流れ
補助金ごとに申請方法や手順は異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。
- ①事前準備
- ②申請
- ③採択結果の通知
- ④交付決定・事業の実施
- ⑤実績報告
- ⑥補助金の交付
- ⑦事業効果報告
補助事業の内容や対象者、要件を確認したうえで、必要な書類を準備し、受付期間中に電子申請システムから申請します。採択後は、計画に基づいて事業を実施し、実績報告を経て補助金の交付額が確定します。
また、補助金の交付後には、事業の進捗や効果に関する報告が義務付けられる場合が多いです。
スタートアップ企業が補助金を利用するメリット
スタートアップ企業が補助金を利用すると、主に以下のメリットが期待できます。
- 返済不要な資金を調達できる
- 事業計画を整理できる
- 信用力の向上が期待できる
返済不要な資金を調達できる
補助金は、金融機関等からの融資とは異なり、返済や利息の支払いが不要です。補助率や補助上限額は定められていますが、設備投資、システム導入、広告費等、事業拡大や業務効率化等に必要な経費の一部を支援してもらえます。
一般的に資金力や信用力が十分でないスタートアップ企業にとって、自己資金や融資に頼らずリスクを抑えて事業を進められることは大きなメリットです。
事業計画を整理できる
補助金の申請を通じて、事業計画を整理し、ブラッシュアップできる点もメリットの一つです。
補助金を申請するには、取組内容や現状、今後の展望、企業全体の事業計画をまとめた事業計画書の提出が必要です。
これにより、課題や優先的に取り組むべき施策が明確になり、限られたリソースの中で効率的かつ戦略的に事業を進めやすくなります。
また、作成した事業計画書は事業運営の指針となり、進捗確認や戦略の見直し、意思決定を行ううえでも役立ちます。
関連記事:「事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイントを分かりやすく解説!」
信用力の向上が期待できる
国や自治体から補助金を受ける際には、事業計画の妥当性や実現可能性等が審査されます。そのため、補助金の採択実績があると、健全な事業を運営している企業として評価されやすくなります。
その結果、ブランド力や知名度の向上、販路拡大等、事業成長につながる効果が期待できます。
スタートアップ企業が補助金を利用する際の注意点
補助金は、スタートアップ企業にとって事業成長を支える有効な資金調達手段です。しかし、安易に申請を行うと、事務負担が増えて事業の進行が滞ったり、採択されずに必要な経費をまかなえなくなったりする可能性があります。
補助金の活用を検討する際は、以下の注意点を確認しておきましょう。
- 申請に多くの手間や時間がかかる
- 補助金は後払いで、事業実施後に交付される
- 申請しても必ず受給できるとは限らない
申請に多くの手間や時間がかかる
補助金を活用するには、事業計画書や決算書等の書類準備、申請に必要な環境整備等を行ったうえで、所定の期間内に手続きを行う必要があり、多くの手間と時間を要します。
また、採択決定後は計画通りに事業を実施し、事業報告を行わなければなりません。
スタートアップ企業は少人数で事業を進めることが多いため、申請準備や報告作業が負担になりがちです。役割分担を明確にし、余裕をもったスケジュールを立てることが重要です。
補助金は後払いで、事業実施後に交付される
補助金は後払い(精算払い)が基本です。採択決定後に事業を実施し、実績報告等を経て初めて受給できます。
そのため、設備投資資金やシステム導入費、広告費等の補助対象経費は、まず自社で支払わなければなりません。
スタートアップ企業は、一般的に限られた資金や人手で事業を進めるため、補助金が交付されるまでの期間に資金不足に陥らないよう、事前に資金計画を立てることが重要です。
申請しても必ず受給できるとは限らない
補助金は多くの場合、予算や採択件数に上限があるため、要件を満たしたうえで申請したからといって、必ずしも受給できるわけではありません。
例えば、「IT導入補助金2025」(通常枠)の場合、申請件数10,351件に対し、採択されたのは4,132件でした(1次~3次締切分の合計)。
また、申請内容や書類に不備があると審査対象とならない場合があるため、十分に確認してから申請してください。
なお、不正受給が発覚した場合は、補助金の全額返還や事業者名の公表等の措置が行われます。
補助金の適切な管理・運用に法人口座の活用を
補助金を受けるには、適切な経理処理と資金管理を行い、契約書や請求書、領収書等、経費の証拠となる書類を保管する必要があります。申請の不備や補助対象経費として認められないリスクを避けるためにも、法人設立後は早い段階で法人口座を開設しておきましょう。
法人口座を開設すると、事業と個人の資金を明確に区別できるため、帳簿付けや補助金の申請・報告がスムーズに行えます。また、経費の証拠としての信頼性が高まり、補助金を適切に活用していることを証明できます。
適切な資金管理に加えて、事業の段階に応じて多角的なサポートを受けたい方は、ぜひみずほ銀行での法人口座の開設をご検討ください。
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関連記事:「新設法人が法人口座を開設するメリットは?口座開設の流れやポイントも紹介」
まとめ
スタートアップ企業が活用できる補助金には、ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金等があります。
融資とは異なり、返済が不要なため、リスクを抑えつつ事業の成長や拡大に挑戦しやすくなります。一方で、申請には手間や時間がかかり、申請しても必ず受給できるとは限らない点に注意が必要です。
補助金をスムーズかつ正確に申請するためにも、適切な経理処理を行い、資金管理を徹底しましょう。
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監修者
安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。