バーチャルオフィスで法人登記は可能?メリット・デメリットや選び方を解説
掲載日:2025年11月6日起業準備
目次
バーチャルオフィスは、物理的な拠点を持たずに事業用の住所等を利用できるサービスであり、登記上の住所としても使用できます。特に、法人設立時のコストを抑えたい方や、自宅の住所を知られたくない方に適した形態です。
本記事では、バーチャルオフィスで法人登記を行うメリット・デメリットや手続きの流れ、注意点を分かりやすく解説します。バーチャルオフィスを選ぶ際のポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスを借りることなく、事業用の住所や電話番号等を利用できるサービスです。主なサービスとして以下のようなものが挙げられます。
- 法人登記や銀行口座開設に必要な住所の提供
- 郵送物の受取や転送
- 名刺やウェブサイトへの住所・電話番号の掲載
利用者は、これらのサービスの対価として、バーチャルオフィスの運営会社に料金を支払います。
バーチャルオフィスで法人登記は可能?
バーチャルオフィスの住所を利用して法人登記を行うことは可能です。
法人を設立する際には、本店所在地(主たる事務所の所在地)を定めて登記を行いますが、本店所在地に法的な制限はありません。そのため、営業実態のないバーチャルオフィスの住所であっても、本店所在地として利用できます。
登記の際に本店所在地として届け出た住所が「登記上の住所」となり、登記簿謄本にも記載されます。
関連記事:「登記とは?法人登記に必要な手続きと必要書類を解説」
バーチャルオフィスの住所で法人登記するメリット
バーチャルオフィスは、法人設立時のコストを抑えたい方や、自宅住所の公開を避けたい方に適したサービスです。
バーチャルオフィスの住所を利用して法人登記を行うことには、以下のようなメリットがあります。
- 初期費用やランニングコストを抑えられる
- プライバシーを守れる
- 短期間で住所を取得できる
初期費用やランニングコストを抑えられる
バーチャルオフィスは、住所や電話番号のみを利用するサービスであり、物理的なオフィスを借りる必要がないため、初期費用や維持費を抑えられます。
物理的なオフィスを借りる場合、敷金・礼金・仲介手数料等の初期費用に加え、毎月の賃料や光熱費も発生します。そのため、総合的なコストが高くなる傾向があります。
一方、バーチャルオフィスでは、月額数千円程度で契約することが可能です。そのため、リスクを抑えて小規模で事業を始めたい方や、物理的な拠点が不要な方にとって有力な選択肢の一つです。
プライバシーを守れる
バーチャルオフィスの住所で法人登記を行えば、プライバシーの保護にもつながる点がメリットです。
オフィスを持たずに事業を運営したい場合、自宅の住所で法人登記を行うケースもあります。しかし、自宅の住所を登記上の住所にすると、登記情報として一般に公開されるため、個人情報の流出リスクが高まります。
バーチャルオフィスを利用することで、不特定多数の人に住所を知られることを避けられ、自宅に法人宛の郵送物が届くのも防げます。そのため、プライバシーを守りながら、安心して事業を運営することができるでしょう。
短期間で住所を取得できる
バーチャルオフィスは契約手続きが比較的スムーズで、短期間で利用を開始できる場合が多くあります。
物理的なオフィスを借りる場合、内見や入居審査、初期費用の支払に加え、電気・ガス・インターネット回線等のインフラ整備や内装工事等が必要となり、入居までに時間がかかるのが一般的です。
一方、バーチャルオフィスでは、申込から契約までの手続きがウェブで完結するケースが多く、早ければ即日から数日で法人登記に必要な住所を取得できます。
バーチャルオフィスの住所で法人登記するデメリット
バーチャルオフィスの住所を登記上の住所にすると、コストやセキュリティ面でのメリットがある反面、以下のようなデメリットもあります。
- 審査や許認可等の手続きに時間がかかる場合がある
- 郵送物の受取に時間がかかるケースがある
審査や許認可等の手続きに時間がかかる場合がある
法人口座の開設や融資の審査、許認可申請、取引先との契約等を行う際には、事業や事務所の実態を確認される場合があります。
しかし、バーチャルオフィスは住所や電話番号のみを借りるサービスであり、実際に業務を行う専用スペースは存在しません。そのため、事業の実態をより詳細に証明する必要があり、審査に時間がかかったり、追加書類の提出を求められたりする可能性があります。
関連記事:「法人口座の開設について 審査のポイントと開設手順をご紹介」
関連記事:「バーチャルオフィスでも法人口座は開設できる?審査で重要になるポイントも解説」
郵送物の受取に時間がかかる場合がある
バーチャルオフィスでは、郵送物の転送サービスも利用できます。自宅等で郵送物を受け取れるため便利ですが、転送は週1回から月1回程度の頻度で行われるのが一般的です。
そのため、実際の事業拠点で直接受け取る場合に比べて、郵送物の確認に時間がかかり、重要書類への対応が遅れるリスクもあります。
バーチャルオフィスの選び方
利用できるサービスの内容や費用等は、バーチャルオフィスによって異なります。以下のポイントを確認し、自社の事業規模や業務内容に合ったサービスを選びましょう。
- プラン内容やオプションサービス
- 郵送物の受け取りやすさ
- 費用
- 契約形態
- 立地やアクセス
プラン内容やオプションサービス
バーチャルオフィスによってプラン内容やオプションサービスが異なるため、自社の運営スタイルに合ったものを選定することが重要です。主なサービス例は以下の通りです。
- 法人登記用の住所の利用
- 名刺やウェブサイトへの住所掲載
- 郵送物の受取・転送
- 会議室やワークスペースの利用
- 固定電話の利用・転送
- FAXの利用
- 来客対応
例えば、対面での打ち合わせ等が発生しない事業で住所のみが必要な場合は、シンプルなプランを選ぶことでコストを抑えられます。
また、共用スペースの利用や受付スタッフによる来客対応を提供しているバーチャルオフィスもあります。こうしたサービスがあれば、急な来客にも柔軟に対応できるでしょう。
さらに、バーチャルオフィスに加えて、シェアオフィスやレンタルオフィスも提供している運営会社もあります。企業の成長に伴いオフィスの利用形態を変更したい場合は、複数の形態に対応した運営会社を選ぶことで、移転や契約手続き等の負担を軽減できます。
郵送物の受け取りやすさ
郵送物の受け取りの利便性は、実務に直結する重要なポイントの一つです。具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 郵送物を来店して直接受け取れるか
- 郵送物の転送に対応しているか
- 転送の頻度が事業運営に支障のない範囲か
- 郵送物の内容を受取前に確認できるサービスがあるか
- 転送サービスを利用する際に追加料金が発生するか
上記の点を確認して選ぶことで、郵送物に関するトラブルや対応の遅れを防ぎやすくなります。
費用
バーチャルオフィスにかかる費用には主に以下の項目があり、内容や金額は運営会社によって異なります。
- 入会金
- 保証金
- 年会費
- 月額料金
- オプションサービスの利用料金
サービス内容を充実させるほど費用は高くなるため、費用対効果を考慮して検討することが重要です。また、追加で発生する費用や解約時の費用も事前に確認しましょう。
契約形態
契約形態はバーチャルオフィスによって様々です。多くのサービスでは最低契約期間が設定されているため、一時的に利用したい場合は、月単位での契約が可能か事前に確認しましょう。
長期契約は割安になる傾向がありますが、途中解約時に返金されない場合や違約金が発生することもあります。また、契約終了時に自動更新の有無をあらかじめ確認しておくことも重要です。
立地やアクセス
バーチャルオフィスの住所は登記上の住所となるため、立地やアクセスの良さも選定時の重要なポイントになります。
主要なビジネス街や多くの企業が集まる人気エリアにあるバーチャルオフィスを選ぶことで、法人のイメージアップや取引先からの信頼感につながる可能性があります。
バーチャルオフィスを利用して法人登記する際の注意点
バーチャルオフィスは、コストを抑えて法人登記を行いたい場合に有効な選択肢の一つです。ただし、バーチャルオフィスの住所で登記する際には、注意すべき点もあります。
- バーチャルオフィスで法人登記できない業種もある
- 同一住所に同じ社名の法人は登記できない
バーチャルオフィスで法人登記できない業種もある
業種によっては、バーチャルオフィスでの法人登記ができない、または困難な場合もありす。具体的には、営業実態のある事務所が求められる業種や、許認可取得が必要な業種等が該当します。
- 人材派遣業
- 不動産業
- 建設業
- 一部の士業法人(弁護士法人や税理士法人等)
- 古物商
- 探偵業
例えば、人材派遣業を営むためには、事務所の面積が20㎡以上であること等、一定の要件を満たさなければなりません。
また、古物営業(中古品の売買等)に必要な許可を取得するには、営業実態のある事務所が必要とされ、バーチャルオフィスでは要件を満たさないと判断される可能性があります。
同一住所に同じ社名の法人は登記できない
同一の住所(本店所在地)に、自社と同じ社名の法人が既に登記されている場合、新たに法人登記を行うことはできません。これは、商業登記法により「同一の本店所在地において同一の商号を登記することはできない」と定められているためです。
また、社名が完全に一致していなくても、類似している場合には誤認を招き、トラブルに発展するリスクもあります。
バーチャルオフィスの住所で法人を設立する際は、法務局の「オンライン登記情報検索サービス」を利用して、同一または類似の社名が登録されていないか確認しましょう。
バーチャルオフィスで法人登記の手続きをする手順
バーチャルオフィスを利用して法人登記を行う場合、以下のような手順で進めるのが一般的です(株式会社の場合)。
- ①バーチャルオフィスの申込・契約を行う
- ②定款を作成して認証を受ける
- ③出資金を払い込む
- ④法人登記を申請する
法人を設立するには、定款(法人の根本規則を定めたもの)の作成が必要です。本店所在地は、定款の絶対的記載事項の一つであるため、定款作成時点までにバーチャルオフィスとの契約を完了し、住所を確定しておく必要があります。
なお、絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない法定項目であり、記載がなければ定款が無効となります。
また、法人設立登記の際には、定款に記載したバーチャルオフィスの住所を本店所在地として登記申請書に反映させましょう。
関連記事:「会社設立の流れを徹底解説!法人化のメリット・注意点も確認」
会社設立後に登記上の住所を変更する方法
法人設立後に本店所在地を変更する場合は、移転日から2週間以内に本店移転登記を申請する必要があります。「本店移転登記申請書」に必要事項を記載し、移転先の所在地を管轄する法務局に提出しましょう。
登録免許税は1件につき3万円ですが、管轄登記所外への移転の場合は、旧管轄と新管轄の両登記所へ申請書を提出する必要があるため、合計で6万円となります。
また、本店所在地を変更する際は、定款の記載内容に応じて、株主総会または取締役会の決議が必要です。
会社設立準備と並行して法人口座の開設準備も進めよう
バーチャルオフィスの住所を使用しても、法人口座の開設は可能です。法人を設立した際には、できるだけ早期に法人口座を開設することで、取引先への請求や経費の支払等がスムーズに進み、事業の立ち上げが円滑になります。
法人口座の開設には一定の日数を要するため、バーチャルオフィスの契約や法人設立と並行して準備を進めましょう。なお、バーチャルオフィスがビルの1フロアなどの場合、設立登記の際にはフロアまで含めて正確に記載することが大切です。
みずほ銀行の法人口座は、休日や夜間でもお申込いただけ、ウェブ面談にも対応しているため、来店不要で口座開設の手続きが完結します。ただし、一部のお客さまには、店舗での対応が必要な場合があります。
さらに、会社設立3年以内の企業は、インターネットバンキング「みずほビジネスWEB」の月額基本料が最大5年間無料になる等、創業期の企業をサポートするサービスをご用意しています。法人口座を開設する際は、ぜひみずほ銀行をご検討ください。
まとめ
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィスを構えることなく、住所や電話番号を借りるサービスで、登記上の住所としても利用できます。
実際のオフィスを借りる場合と比べて、大幅にコストを抑えることができ、小規模事業者に適した形態です。また、自宅住所を公開せずに済むため、プライバシー保護にもつながります。
プラン内容と費用のバランス、郵送物の転送頻度、立地やアクセス等を確認し、自社に合うバーチャルオフィスを選びましょう。
<最短翌営業日に開設>来店不要で休日・夜間も受付中!
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監修者
安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。