バーチャルオフィスでも法人口座は開設できる?審査で重要になるポイントも解説
掲載日:2025年8月25日法人口座

登記した法人の住所がバーチャルオフィスであっても、法人口座の開設は可能です。取引先や顧客からの事業理解を深め、企業を成長させるためにも、法人口座を開設することが望まれます。
ただし、バーチャルオフィスは事業実態が客観的にわかりにくいという特徴があります。口座開設に申し込むと、事業実態が調査されるため、明確な事業目的と事業実態を示す必要がある点を認識しておきましょう。
本記事では、登記上の住所がバーチャルオフィスの法人が、銀行で法人口座を開設する方法について解説します。
目次
バーチャルオフィスでも法人口座の開設は可能
商業登記法では、本店所在地に住所の制限はありません。実際の物理的なオフィスではなく、仮想的に提供されるバーチャルオフィスでも、法人の登記は認められています。
バーチャルオフィスの住所で登記している法人であっても、適切に事業を行っていることが確認され、銀行側が問題ないと判断した場合には、法人口座を開設することが可能です。
なお、金融庁は法人口座を悪用した詐欺を防ぐために、金融機関に対して金融犯罪への対策を要請しています。口座開設を申し込むときは、事業実態を証明するために、契約書や発注書、納税証明書等の書類を提出することが推奨されます。
バーチャルオフィスで法人口座を開設する際のポイント

一般的にバーチャルオフィスの利用を理由に、口座開設を断られることはありません。
口座開設の申し込みをしたときに必要な書類を準備し、事業実態を証明できる資料を提出できれば、バーチャルオフィスでも法人口座を開設できます。
以下で、バーチャルオフィスで法人口座を開設する際のポイントを解説します。
必要書類を不備なく提出する
法人口座の開設にあたっては、登記事項証明書(履歴事項全部証明書等)や実質的支配者の確認ができる書類、代表者の本人確認書類等の提出が求められます。書類に不備がないか確認したうえで、漏れなく提出しましょう。
提出した書類に不備や誤りがあると、法人の事業内容や事業実態を正しく評価できず、審査に通過できない要因となる可能性があります。また、履歴事項全部証明書の記載内容が他の提出書類と一致しているかどうか、整合性を確認することも重要です。
事業実態を明確に示す
審査の過程で、事業内容や事業実態の有無が確認されます。銀行の担当者から質問を受けたときに、「どのような事業を行っているのか」「どのような商品・サービスを取り扱っているのか」を、明確に説明できるよう準備しておきましょう。
事業実態が不明瞭またはバーチャルオフィスでの事業展開が非現実的なビジネスの場合、疑念を持たれる可能性があります。
口座の売買やマネー・ローンダリング等に悪用される懸念があると、審査に落ちしてしまう可能性が高まります。
バーチャルオフィスは「法人口座が悪用されるリスクがある」という印象を持たれる可能性があるため、事業実態を分かりやすく伝えることが重要です。
取引目的・事業内容・実質的支配者を明確に示す
犯罪収益移転防止法では、マネー・ローンダリング対策やテロ資金供与対策が定められています。この法律により、口座開設の申し込みを受けた金融機関には、取引目的・事業内容・実質的支配者の審査が義務付けられています。
基本的には、銀行が提出を求める書類を漏れなく提出すれば問題ありません。また、事業計画書や自社が販売する商品やサービスのパンフレット等、取引目的や事業内容等の根拠資料があれば、併せて提出しましょう。
法人が二期目以降であれば、法人名義の国税または地方税の領収書等を提出すると、実態証明の資料になります。
資本金額と資本金の出所を明確に示す
資本金とは、法人を設立する際に株主(出資者)が出資したお金の総額です。「会社の体力」とも呼ばれ、事業の安定性や信頼性を測る指標でもあります。
一般的に資本金が大きいほど対外的な信用を得やすいものの、資本金額が低いからという理由で、口座の開設を断られるわけではありません。資本金が小さくても、適正に事業を行っている企業が多く存在するためです。
ただし、資本金の出所が不明な場合、事業実態に対して疑念を持たれる可能性があるため、「誰が、いくら出資したのか」を明確にする書類(通帳のコピー、振込証明書等)を提出しましょう。
ウェブサイトやパンフレットを提出する
会社概要を明確に示したウェブサイトや、自社が販売している商品やサービスのパンフレット等は、事業実態を証明する資料の一つです。必要書類と併せて、ウェブサイトのURLや資料も提出しましょう。
ウェブサイト上に代表取締役の情報や事業内容、会社の基本情報等があれば、「しっかりと事業運営をしている」という印象を与えられます。また、登記上の事業目的とウェブサイト上の実際の事業内容が一致していれば、信用を得やすくなるでしょう。
代表者の信用情報を良好に保つ
代表者の信用情報は、常に良好な状態に保つことが重要です。法人口座を開設する際は、事業実態だけでなく、代表者の個人信用情報が審査対象となる場合があるため、個人としての信用を維持することも欠かせません。
事業実態が明確でも、代表者の個人信用情報に問題がある場合、「安心して取引できない」と評価されるかもしれません。結果として、法人口座の開設を断られる可能性があります。
事業計画を明確に答えられるように備える
法人口座を開設するにあたって、銀行の担当者と面談する機会があります。面談では、事業内容や今後の展望等、事業計画が伝わりやすいように可視化しておきましょう。
また、今後の事業計画を財務的な面から説明するためにも、現在のキャッシュ・フローの状況を正確に把握することが大切です。
バーチャルオフィスで法人口座を開設するときの注意点

バーチャルオフィスの住所で法人登記をしている会社が、法人口座を開設するにあたって知っておくべき注意点を解説します。
事業計画をバーチャルオフィスで実現できるかを確認する
法人口座を開設する際の面談では、事業計画や描いている将来的な事業展開がバーチャルオフィスで実現可能かどうかが確認されます。
例えば、実店舗や事務所を必要としないIT・WEB関連事業やコンサルティング業であれば、バーチャルオフィスでも事業展開が可能です。
「どのような事業を行うのか」「どのような商品・サービスを販売するのか」「そもそもバーチャルオフィスでの開業が可能か」を確認しておきましょう。
過去に問題が起こったバーチャルオフィスを避ける
過去に犯罪で利用されたバーチャルオフィスの可能性もあるため、事前に住所を検索して「トラブルが起こっていないか」「安心して利用できるかどうか」を確認することが重要です。併せて、バーチャルオフィス運営会社の信頼性や、本人確認・審査が厳格に行われているかも確認しましょう。
法人口座が悪用・不正利用されるリスクがあると判断された場合、口座は開設できません。複数のバーチャルオフィスを比較検討し、少しでも不安や懸念がある住所に関しては、利用を避けた方が良いでしょう。
いつでも連絡がつく体制を整備する
ビジネス用の固定電話番号を設置し、いつでも連絡が取れる体制を整備しましょう。固定電話番号があることで、事業への信頼性が高まります。連絡が取りやすい状況が整っていれば、金融機関とのコミュニケーションが円滑になり、審査がスムーズに進む可能性があります。
また、バーチャルオフィスで契約している住所宛に、郵便物が確実に届くかどうかも重要です。口座開設時だけでなく、開設後も銀行から重要書類が郵送されることがあるため、郵送物の転送体制が整っていると安心です。
みずほ銀行は創業期の企業の法人口座開設をサポート
みずほ銀行では、創業期の企業の成長支援に取り組んでいます。バーチャルオフィスの住所で登記をしている法人も、原則として来店不要・ウェブ面談で口座開設手続きを進められます。
法人口座を開設すると、インターネットバンキング(みずほビジネスWEB)の月額利用料(3,300円/月)がお申込月から3ヵ月間無料です。
さらに、創業期限定特典として、会社設立3年以内かつ「法人口座開設ネット受付」でお申し込みいただいた法人のお客さまは、月額利用料が最大5年間無料になります。
他にも、スタートアップ企業の成長をサポートする会員制サービス「M’s Salon」が会費無料でご利用いただける等、多角的なサポートを提供しています。
まとめ
登記上の住所がバーチャルオフィスの法人でも、法人口座の開設は可能です。事業実態や事業目的、今後の事業計画について適切に説明し、書面上でも証明できれば審査が円滑に進みます。
事業実態を証明するためにも、銀行から提出を求められた書類だけでなく、事業計画書や事業を運営していることを証明できる書類(請求書や見積書等)を提出しましょう。また、面談時には事業の現況や将来の展望等も、銀行の担当者に伝えることが大切です。
みずほ銀行では、企業の成長を支援するサービスをご用意しているため、お気軽に口座開設へお申し込みください。
監修者

安田 亮(やすだ りょう)
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。
連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。