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「確定申告」2022、変更点を徹底解剖!

掲載日:2022年3月1日生産性向上

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令和2年分確定申告は、新型コロナウイルスの影響により、提出期限が1ヵ月延長されました。しかし、令和3年分は、従来通り、2月16日から3月15日までが申告期間となる予定です。
個人事業主にとって確定申告は、毎年やってくる重要な義務。内容をしっかり理解して、間違いなく進めることが必要でしょう。
本稿では、2022年から変更となるポイントや電子申告(e–Tax)の方法などについて再確認していきます。

2021年(令和2年分)での変更点を振り返る

確定申告は、所得にかかる税金を、自分で計算して精算していく手続きのことです。企業に属するビジネスパーソンであれば、「年末調整」などで人事労務担当が処理をしてくれるでしょう。しかし、個人事業主やフリーランスの場合は、自身で手続きしなければなりません。

確定申告は大切な義務です。できるなら、ミスなく、スムーズに、そして賢く進めたいもの。
「毎年やっているから、大丈夫」と考えている方も多いようですが、確定申告の内容や手続き方法は、実は、毎年少しずつ変更されています。
昨年の確定申告でもいくつかの変更がありました。まずは、今回もそのまま引き継がれる内容を、今一度確認しておきましょう。
理解すべきは、「青色申告特別控除の変更」と「基礎控除の変更」。それぞれについて、主なポイントは以下となります。

参考)青色申告の基礎知識

青色申告特別控除の変更

2020年(令和元年分)までは、複式簿記による記帳の場合65万円または簡易簿記による記帳の場合は10万円の青色申告特別控除が受けられました。
令和2年分からは、簡易簿記による記帳で受けられる控除は据え置きとなっていますが、複式簿記による記帳で受けられる控除が55万円に引き下げられています。

青色申告は、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかを受け取っている個人事業主を対象とする制度です。
複式簿記の帳簿やそれに伴う書類の保存が必要と、通常の確定申告よりも手間がかかる半面、「青色申告特別控除」が利点となっていました。昨年の変更で基本控除額が減少してしまいましたが、従来の条件に加えて、以下の2つの項目を満たすことで、これまで同様、65万円の控除を受けられます。

  1. e–Taxによる電子申告
  2. 電子帳簿保存

基礎控除の変更

近年の働き方改革に伴い、従来の給与所得控除・公的年金等控除の一部を基礎控除に振り替えることになりました。
基礎控除はどのような所得にでも適用されるため、起業したばかりの事業主や、副業でフリーランスの仕事をする方々など、様々な形で働く人を応援することを趣旨としています。

これまでの基礎控除額は、合計所得金額に関係なく一律38万円でしたが、10万円引き上げられ、48万円に変更となりました。ただし、合計所得金額が2,400万円を超えると、額が段階的に少なくなり、2,500万円を超えた場合は控除されなくなります。

また、「青色申告特別控除の変更」と「基礎控除の変更」以外にも、「給与所得控除」「公的年金等控除」がそれぞれ原則10万円引き下げられ、「配偶者控除」と「扶養控除」の要件が変更されました。さらに、婚姻歴や性別に関わらず、納税者がひとり親であるときに35万円を控除することができる「ひとり親控除」が創設されたことも特徴的です。

納税額が決まる確定申告において、上記の控除はそのまま節税につながります。課税額をできるだけ小さくできるよう、要件を細かくチェックしておくべきでしょう。特に「e–Taxによる電子申告」は、税務効率化の観点からも積極的に導入を進めると良いかもしれません。
これについては、本稿でも記事後半で取りあげていますので、その方法やメリットをチェックし、ぜひ活用してみてください。

参考)令和3年年末調整、印鑑廃止などの変更点を4点解説

2022年(令和3年分)の注目ポイント

2021年(令和2年分)に続いて、今回の2022年(令和3年分)の確定申告でも、申告書の書式が変更されたり、控除要件が追加されたりしている部分があります。
変わったことを理解せずに確定申告を進めれば、やり直しで手間と時間がかかり、従来の仕事に影響が出てしまうかもしれません。

だからこそ、今からでも変更ポイントを押さえ、間違いのないよう申請作業を進めることが重要です。
ここでは、「書式の変更」「内容の変更」について、しっかりと把握しておきましょう。

書式の変更

1. 押印義務の廃止

公的機関に提出する確定申告書や収支内訳書、青色申告決算書などの税務関係書類について、原則、押印不要とする改正が、2021年4月1日から適用されました。ただし、施行日前に提出された書類に押印がなくても、運用上、改めて求めないこととされていたため、2021年の確定申告では、既に押印が実質不要となっていたのです。

2022年からは、名実ともにその義務がなくなり、書類上の押印目印がない新しい様式に変更されます。手続きを進める中で、適当な場所に誤って押印することがないよう、留意しておきましょう。

2. 収入金額等の一部に区分欄が追加

個人事業主が青色申告をする場合などに使用する「確定申告書B」に、新たな項目が作られています。
具体的には、「収入金額等」における「事業」収入、「不動産」収入、「雑」収入内「その他」の部分で、それぞれ「区分」欄が追加されました。

事業収入の区分欄と、不動産収入の区分2欄には、記帳・帳簿の保存状況について、以下の該当する数字を書き入れます。

  • 電子帳簿保存法の規定に基づき、税務署長の承認を受けて、総勘定元帳、仕訳帳等について電磁的記録等による備付け及び保存を行っている場合……1
  • 会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合(1に該当する場合を除きます)……2
  • 総勘定元帳、仕訳帳等を備え付け、日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳している場合(1および2に該当する場合を除きます)……3
  • 日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)以外の簡易な方法で記帳している場合(2に該当する場合を除きます)……4
  • 上記のいずれにも該当しない場合(記帳の仕方が分からない場合を含みます)……5

不動産収入の区分1欄は、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(措法41の4の3)の適用がある場合のみ、「1」を記入しましょう。
雑収入内その他の区分欄には、個人年金保険の収入がある場合は「1」、暗号資産の収入がある場合は「2」、その両方の収入の両方がある場合は「3」とします。

内容の変更

1. 住宅ローン控除の期間延長と要件緩和

住宅ローン控除は、本来、取得した年度に入居しなければなりません。
しかし今回の改正により、新築住宅なら2021年9月末までに、分譲住宅なら2021年11月末までに取得(契約)した物件については、2022年12月末までに入居すれば控除が受けられるのです。

また、これまでは床面積が50平方メートル以上の住宅が対象となっていましたが、新築、分譲ともに上記期間に取得している場合は、控除を受ける人の合計所得金額が1,000万円以下であれば、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満でも対象となります。

2. 保育に関係する国や自治体からの助成金は非課税

昨年までの確定申告では、ベビーシッターの利用料や認可外保育施設、一時預かり・病児保育等の利用について助成金は「雑所得」として課税対象でした。令和3年分からは、保育関連の利用料について助成を受けた場合、非課税となります。

これは、「利用料の補助として助成を受けたのに課税される」という状況を改善するための措置です。これにより、今後、支援制度利用の促進が期待されています。

ここまで、昨年の確定申告から、今回、さらに変更となっているポイントを見てきました。
収入源の多様化や帳簿の電子化が進んだことによって、申告内容がより細かくなっている部分があります。また、押印が不要になるなど、時代に合わせた様式の変化にも対応しなくてはなりません。

誤った内容で手続きを進めてしまった場合には、修正申告が必要となり、余計な手間が増えてしまいます。変更点を理解し、正しい税務作業を心掛けましょう。

ネットで完了!「e–Tax」の方法とメリット

電子申告(e–Tax)とは、インターネット等を利用して電子的に作業を進めるシステムです。
確定申告についても、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成して手続きをすることができます。
自宅から24時間いつでも提出することができ、各種保険料の控除証明書や医療費の領収書といった必要書類を添付する必要がなくなるので、税務作業を効率良く進めることができるでしょう。

それ以外にも、冒頭で述べた「青色申告特別控除」が10万円増額したり、還付のスピードが速かったりと、多くのメリットがあります。準備が必要なので、もし、まだ未対応の場合は、次回から電子申告に移行すると良いかもしれません。

申告方法は2種類あり、「マイナンバーカード方式」か「ID・パスワード方式」のどちらかを選択して行います。

「マイナンバーカード方式」の場合は、本人確認書類の提出が不要です。
前回までは、ICカードリーダーでマイナンバーの読み込みをする必要がありましたが、2022年(令和3年分)の申告からは、対応機種のスマートフォンを使うことで、ICカードリーダーを用意する必要がなくなります。この場合は、事前にマイナポータルアプリをダウンロードしておけば、どこからでも手軽にできることが特徴です。

「ID・パスワード方式」の場合は、運転免許証などの本人確認書類を税務署に持参して、職員と対面による本人確認を行わなければなりません。その後、「ID・パスワード方式の届出完了通知」が発行されたら、パソコンやスマホから電子申告できるようになります。

ただし、「ID・パスワード方式」は、国税庁が「マイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応」としているものです。今後、電子申告を考えている場合は、「マイナンバーカード方式」に対応できるよう、早めにマイナンバーカードを取得し、読み取りに対応したスマートフォンを用意しておいた方が良いでしょう。

デジタル化が進む現代において、DXへの対応を求められているのは、企業だけではないのです。
「新しいことは面倒だから、今まで通りでいいよ」と思うこともあるかもしれませんが、その一手間が、未来の自分を助けることになります。この機会に、ぜひチャレンジしてみてください。

来年に向けて、やっておくべき準備は?

2022年(令和3年分)の確定申告は、もう始まっています。これは、個人事業主やフリーランスとしての義務であり、実行しなければならないことです。
これから作業を始める方は、短い時間で必要書類を集めたり、急いで申告書を記入したり、大変な思いをするかもしれません。

だからこそ、次の確定申告を見据えて、今から準備をしておくことが肝要です。
今回の確定申告が完了したら、以下の2点について、すぐに取り掛かるべきでしょう。

領収書の整理と各種控除の確認

まず、控除の対象になる領収書を整理してまとめる必要があります。領収書が見つからない経費は、出金伝票を作っておきましょう。

特に、1年間に10万円以上の医療費を支払っている場合は、医療控除を受けることができます。治療費だけでなく、通院にかかる交通費も対象です。
さらに、セルフメディケーション税制によって、特定の医薬品購入費も控除されます。品目は厚生労働省のホームページで確認できるので、薬局でもらったレシートなども確認するべきです。
その他、生命保険や地震保険、寄付金控除などの細かい項目についても、それぞれ証明書や受領書をまとめておくと良いでしょう。

マイナンバーカードの取得申請

前述したように、e–Taxを利用することでスムーズな申告が可能となります。発行までに時間がかかるので、未取得の場合は、早めに取得申請しておいてください。

個人事業主の義務となる確定申告ですが、煩雑な事務作業が多いことも事実です。
期限ギリギリになってから焦って始めると、ミスや漏れを招いてしまうかもしれません。毎日忙しいからこそ、日々少しずつ準備しておくことで、できるだけ手間を省いて進めることができるのではないでしょうか。

おわりに

ついつい、先延ばしになりがちな確定申告ですが、期限内に済ませておかないと、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」を課せられることがあります。手続きを忘れたり、申告内容が漏れたりしていると、最悪の場合、脱税とみなされてしまう可能性も。期限内に申告できるよう、事前の準備は必須です。
また、働き方の自由度が増したことで、来年以降の申告についても細かい変更がなされると予想できます。2023年にはインボイス制度も導入されるため、今後も最新情報を把握しておいたほうが良いでしょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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