会社設立の流れを解説!準備から法人登記後の手続きまで
掲載日:2022年11月28日 法人口座開設準備
会社を設立するためには、第一歩として会社設立登記申請の準備から始める必要があります。ここでは、設立登記の手続きと、会社設立後に求められる手続きや事業をスムーズに運営するために注意したい実務上のポイント、設立に関してよくある質問等について解説します。
目次
会社を設立するとはどういうことか
会社は法人の一種であり、会社設立とはすなわち法人格を取得することになります。法人格とは、法律により人格を与えられた組織体のことです。例えば、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社等はすべて法人格であり、自然人(私たち人間)と同様に独立した権利義務の主体として法人名義での契約行為等を行うことができます。
会社を設立するには、組織の基本事項や運営ルールを定め、資本金を準備し、法務局へ法人設立登記を申請するといった手続きが必要です。
なお、会社設立と似た用語に「起業」がありますが、この言葉は会社設立だけでなく個人事業主の開業も含みます。この記事では会社を設立する流れについて紹介します。
会社設立の流れ1.基本情報の決定・準備
まずは法人登記に必要な基本情報を決定しましょう。株式会社の設立方法には発起設立と募集設立の2種類があり、発起設立は発起人が株式のすべてを引き受ける方法で、募集設立は発起人以外にも株式を引き受ける者を集める方法を指します。ここでは、株式会社を発起設立する場合を例として、会社設立手続きの流れを解説します。
会社の基本事項を決める
株式会社の発起設立において、早期に決定しておきたい主な基本事項は以下の通りです。
- 商号
- 目的
- 本店所在地
- 会社の機関設計
- 役員
- 事業年度
- 発行可能株式総数
- 設立時に発行する株式の総数
- 発起人が現物出資をする場合はその内容
- 会社設立後の資本金および資本準備金の額
- 発起人が受け取る報酬の額
なお、資本金の額を決める際は事業開始に必要な初期費用と当面の運転資金を軸に検討するのが一般的です。詳しくは後述の「よくある質問」を参照してください。
基本事項が決まったら、次は定款の作成です。定款とは、簡単にいうと会社運営のルールブックであり、すべての会社に作成義務があります。定款を作成せずに会社を設立することはできません。なお、定款に記載する内容は、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類に分けられます。
記載事項の種類 | 概要 | 主な基本事項 |
---|---|---|
絶対的記載事項 | 定款に必ず記載する必要がある項目 |
|
相対的記載事項 | 必須ではないが、定款に記載しなければ無効になる項目 |
|
任意的記載事項 | 定款に記載しなくても、効力を否定されない項目 |
|
絶対的記載事項の内の一つでも欠けると定款そのものが無効となるため、漏れがないかどうかを念入りに確認しましょう。
会社実印を作成する
会社設立登記の準備と並行して、法務局に届け出る会社実印を作成しましょう。2021年2月15日以降は法務局への実印届出義務は撤廃されていますが、実際はほとんどの会社が実印を届け出ています。実務上は会社実印の押印や印鑑証明書の提出を求められる場面が多いからです。
会社実印のほか、関連業務ごとに必要となる銀行印、角印、ゴム印などを作成しておくとスムーズに手続きが進められるので準備しておくと良いでしょう。
定款の認証を受ける
株式会社の設立にあたっては、公証人によって定款の認証を受ける必要があります。原則として、認証後の定款変更は認められないため、認証を受ける前に定款の記載事項の誤りや漏れがないかどうかを十分に確認しましょう。
なお、株式会社とよく比較される会社形態に「合同会社」があります。合同会社を設立する場合も定款作成は必要ですが、認証は不要です。
定款とは?作り方・記載内容から認証の方法まで分かりやすく解説
資本金を払い込む
株式会社の発起設立では、通常、定款認証後に資本金を払い込みます。設立段階では法人名義の口座を開設することはできないため、資本金の払込先は発起人の個人口座です。発起人が数人いる場合は、その内の一人を発起人総代と定め、その者の口座へそれぞれが出資金を払い込みます。
注意点として、総代になった者も、自分の口座に預け入れするのではなく、自分の名義で振り込みを行う必要があります。資本金の払込人と金額が記載された取引明細や通帳のコピーが登記申請に必要だからです。
なお、合同会社を設立する場合は、定款作成後に資本金を払い込むのが一般的です。
会社設立の流れ2.法人登記
資本金の払込が完了した後、法務局に会社設立登記を申請します。会社設立登記が完了して初めて、会社は公的に存在を認められ、各種手続き(税務署や地方自治体等への届出や社会保険の手続き等)を会社名義で行えるようになります。
法人登記に必要な書類を用意する
法務局へ株式会社(発起設立)の設立登記を申請する際に必要な書類は次の通りです。
株式会社設立登記申請書 | 法務局の窓口またはウェブサイトでひな形を入手して記入・提出します。 |
---|---|
登記すべき事項を記載した書面または電磁的記録 | 設立登記申請書とは別に、登記すべき事項(会社法第911条第3項の事項)を記載した書面または電磁的記録(CD-R等)を提出します。 |
認証後の定款 | 公証人の認証を受けた定款を提出します。 |
発起人の同意書(発起人の決定書) | 発起設立においては、原則として、発起人が割り当てを受ける株式の数および発起人の出資金額を発起人全員で決定します。発起人が一人の場合には、決定書を提出します。 |
設立時役員(取締役代表取締役等)の就任承諾書 | 設立時取締役の就任承諾書には市区町村に登録した個人実印を押印しなければなりませんが、設立時監査役は認印の押印で足ります。 |
設立時取締役の印鑑証明書 | 就任承諾書に押印した個人実印の印鑑証明書が必要です。登記申請日から遡って3ヵ月以内に発行された印鑑証明書を準備してください。 |
印鑑届出書(届出は任意ですが、設立登記申請書と合わせて出すことで手間が省けます。) | 印鑑届出書は、法務局の窓口またはウェブサイトで入手できます。印鑑届出書には、代表者個人の実印を押印したうえで、代表者個人の印鑑証明書を添付する必要がありますが、この印鑑証明書は、設立時役員として申請書に添付する印鑑証明書を兼ねることができます。 |
委任状 | 専門家等代理人に申請を依頼する場合に必要です。 |
法務局へ法人登記の申請をする
設立登記申請書と必要書類が準備できたら、法務局に設立登記を申請します。法務局への設立登記申請の方法は「窓口申請」「郵送申請」「オンライン申請」の3種類です。それぞれの申請方法について、詳しくはこちらの記事を参照してください。
会社設立の流れ3.設立後の行政関連の手続き
続いて、法人設立登記の完了後に必要となる行政関連の手続きについて解説します。
税務署への届出
法人は、設立の日から2ヵ月以内に税務署へ「法人設立届出書」を提出しなければなりません。届出書の提出により、国から法人税の課税対象として認識されます。
また、法人の多くは法人設立届出書と合わせて「青色申告の承認申請書」を税務署へ提出します。青色申告の承認申請書の提出期限は、設立日から数えて3ヵ月経過した日または第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日までです。
地方公共団体への届出
会社の設立後、法人住民税と法人事業税に関する手続きとして、本店所在地の都道府県税事務所と市町村役場へ「法人設立届」を提出します。
法人設立届は地方公共団体のウェブサイトまたは窓口で入手できます。提出期限やその他必要書類は地方公共団体によって異なるので、ウェブサイトか電話またはメールで確認するのが良いでしょう。
年金事務所への届出
法人は、加入要件を満たした日から5日以内に年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」等を郵送か窓口への持参によって提出しなければなりません。代表者1名のみの会社であり、従業員を雇わない場合でも、同様です。
労働基準監督署への届出
法人が従業員を雇用する場合は、雇用日の翌日から数えて10日以内に「労働保険関係成立届」を労働基準監督署に提出しなければなりません。なお、労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。
労災保険は従業員を雇うすべての事業者に加入義務が生じるのに対し、雇用保険は正社員か一定の条件(31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、かつ、1週間の所定労働時間が20時間以上である)を満たすアルバイト・パートタイマーを雇う場合に加入義務が生じます。
ハローワークへの届出
雇用保険に加入する法人は、雇用保険の対象である従業員を雇った日から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」を管轄のハローワークへ提出しなければなりません。
許認可の申請
事業の中には、開始前に行政の許認可を得なければならないものがあります。許認可の種類は大きく分けて「許可」「認可」「免許」「届出」「登録」の5つです。許認可が必要な事業の例を申請先と合わせて表にまとめました。
業種 | 必要な許認可 | 申請窓口 |
---|---|---|
飲食業 | 食品営業許可 | 保健所 |
酒類の販売業 | 酒類販売業免許 | 税務署 |
建設業 | 建設業許可 | 都道府県庁 |
不動産業 | 宅地建物取引業免許 | 都道府県庁 |
貸金業 | 貸金業登録 | 財務局または都道府県庁 |
リサイクルショップ業 | 古物商許可 | 警察署 |
スナック、キャバレー | 風俗営業許可 | 警察署 |
旅行代理業 | 旅行業登録 | 都道府県庁 |
運送業 |
|
陸運支局 |
会社設立の流れ4.設立後のその他手続き
ここからは、法律上の義務ではありませんが、実務上は必須といえる会社設立後の手続きについて解説します。
印鑑カードの取得
印鑑カードとは、法務局で会社の印鑑証明書を発行してもらうために必要なカードです。市町村に届け出る個人の実印と同様の仕組みです。
印鑑カードの取得は印鑑届出書の提出と同じく任意ですが、銀行口座開設時や融資の申込時等、印鑑証明書が必要な場面は多いため、実務上、作成は必須といえます。法務局に印鑑カード交付申請書を提出すると無料で発行してもらえます。
銀行口座開設
会社名義の銀行口座開設は法律上の義務ではありませんが、実務上の理由で、ほとんどの会社が会社名義の口座を開設します。
代表者個人の口座で会社の資金を管理すると、資金の流れが不明瞭になり、会計処理も複雑化してしまいます。また、対外的な信用度の低下も避けられないでしょう。会計処理の簡易化と社会的信用度の向上のために、会社名義の銀行口座を会社設立時に開設しておくことが肝要です。
金融機関の選択肢として全国展開している都市銀行、地方銀行、ネット銀行、信用金庫等があげられます。それぞれのサービス、手数料、地域密着性、金利等の様々な要素を比較検討し、利便性の高い金融機関で口座を開設するのが良いでしょう。
人材採用
従業員を雇う場合は、求人広告等を利用するのが一般的です。求人サイト、求人情報誌、ハローワーク、ウェブ広告や人材紹介エージェント等、選択肢は様々ですが、手あたり次第に利用するのではなく会社にとって必要な人材を採用しやすい媒体を選択して利用するのが得策です。
例えば、業界経験者を採用したいなら業種特化型の人材紹介エージェント等を利用することで、希望通りの人材に出会える確率が高まります。
オフィス契約・家具設置
事業開始までに、必要であればオフィス、家具、備品を準備します。近年は、購入や賃貸以外にシェアオフィスやコワーキングスペース等をオフィスとして選ぶ会社が増えていますが、事業内容によっては部外者とのオフィスの共同使用が望ましくないものもあるため、慎重に検討しなければなりません。
なお、家具や備品にかける初期費用を抑えたいなら、サブスクリプションやリースを利用するのも一手です。
業務用ソフトの準備
会計業務や労務管理業務に業務用ソフトの準備が必須というわけではありませんが、情報の一元化や手続きの簡素化など、業務効率を促進するメリットの大きさから多くの会社が設立時から導入しています。また、業種によっては専門ソフトの導入が必須となる場合もあります。
会社設立の流れについてよくある疑問
ここからは、会社設立に関してよくある質問を一つずつ解説します。
会社設立にかかる期間は?
会社設立にかかる期間は設立する会社の形態によって異なりますが、2週間程度が目安です。株式会社と合同会社を比較すると、定款認証といった手間数が多い株式会社の方が、設立に時間を要する傾向にあります。
なお、株式会社でも合同会社でも、書類や手続きに不備があれば設立にかかる期間は長くなります。自分で行うなら1ヵ月ほど前から時間的な余裕をもって、設立手続きを進めるのが良いでしょう。
自分で設立できる?専門家に頼むべき?
会社設立手続きは自分で完結できますが、設立を急ぐ場合や、設立に関する疑問を解消しながら手続きを進めたい場合は専門家に相談するのが良いでしょう。登記に関する専門家で、登記手続きの相談や登記申請の代理を依頼できるのは司法書士です。
設立時に従業員を雇うことが決まっている場合には社会保険労務士に、税金関係について詳細な計算や確認が必要な場合は税理士に相談することで、スムーズに会社設立を進められます。
資本金額の決め方は?
一般的に、初期費用や当面の運転資金の見込額をベースに資本金額を決めます。資本金額の目安は運転資金の3~6ヵ月分といわれていますが、プロの意見を聞きたい場合は税理士や会計士等に相談しながら決めると良いでしょう。
また、資本金額次第で法人税額、登録免許税額や定款の認証手数料も異なるほか、場合によっては許認可の審査にも影響するため、資本金額は多角的な視点で検討することが求められます。
まとめ
会社設立は、まず会社の基本事項を決め、定款を作成し、公証人の認証を受けるまでが一区切りです。次に、資本金の払込をし、認証を受けた定款や取締役になる方の印鑑証明書等の必要書類を用意し、設立登記申請をします。会社設立後には、税務署・地方公共団体・社会保険事務所といった行政に対し届出や申請を行うのが一般的な流れです。
商号とは会社の名前であり、事業年度を設定することはつまり決算日を決めることです。会社設立後を想像しながらしっかり考えていきましょう。
そして、会社設立後は早期に法人用銀行口座の開設も行っておきたいものです。法人用の口座があることで事業用のお金の管理がしやすくなり、また金融機関が提供する様々なサービスを活用できます。
みずほ銀行では、「法人口座開設ネット受付」を実施しているため、来店することなく申し込みから口座開設まで完了することが可能です。ぜひ、この機会にご利用ください。
(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
- *本稿に含まれる情報の正確性、確実性あるいは完結性をみずほ銀行が表明するものではありません。
また、個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
最新の情報をご確認のうえ、ご自身でご判断いただくようお願いいたします。