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国が進めるスタートアップ支援とは?その種類や内容、活用するメリットを解説

掲載日:2025年7月1日起業準備

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スタートアップ支援とは、革新性を持ち、急成長をめざすスタートアップ企業を支援する枠組みです。国や自治体・ベンチャーキャピタル(VC)等がスタートアップの成長を支援し、イノベーションの実現をめざしています。

政府は2022年11月28日に「スタートアップ育成5か年計画」を決定し、スタートアップ企業を支援するための取り組みを進めています。具体的な取り組みとして挙げられるのは、融資や出資をはじめとした経済的な支援、ノウハウの共有等です。

今回は、政府が進めているスタートアップ支援の内容を解説します。スタートアップの起業を検討している方は、制度を有効活用すると良いでしょう。

政府がスタートアップ支援を進めている理由

政府がスタートアップ支援を進めている主な理由は、経済の活性化や国力向上です。経済産業省の調査によると、スタートアップによる経済効果は以下のように試算されています。

  • 創出GDP:10.47兆円(間接波及効果まで含めると19.39兆円)
  • 雇用創出:52万人
  • 所得創出:3.17兆円

人口減少社会に突入している日本で、生産性や国力を高めるためにも、政府はスタートアップの起業や成長を加速させたい意向があります。

また、企業の参入率・退出率の平均(創造的破壊の指標)が高い国ほど、一人当たりの経済成長率が高いこともわかっています。しかしながら、日本の開業率は、米国・英国と比較すると低い水準です。

開業率
日本

5.1%

米国

9.2%

英国

11.9%

日本で起業する人が少ない理由として、身近に起業家が少ない点が挙げられます。起業が働き方の選択肢として浸透していないため、起業する人が増えづらい傾向があります。

これらの課題を解決するために、政府は開業率の向上や、優れたアイデア・技術を持つ若い人材の発掘・育成をめざしています。経済の新陳代謝を促し、経済成長につなげるために、スタートアップ支援に力を入れています。

スタートアップ支援の種類

政府が行っているスタートアップ支援は、経済的な支援や経営に関するノウハウの共有等、多岐にわたります。

ここからは、資金調達への心理的ハードルを下げてくれる具体的な支援内容や、スタートアップが経営ノウハウを学ぶためのサポートなどを紹介します。

低金利での融資や債務保証

日本政策金融公庫による低金利での融資や、保証会社による債務保証が行われています。

低い金利で融資を受けられれば、返済時の利息負担を抑えられます。利息負担を軽減できれば事業に投資できる資金が増え、開発やマーケティング、設備投資など成長戦略により多くの資金を回せるようになるでしょう。

また、債務保証により信用保証協会や政府機関が、融資の一部または全部の返済リスクを引き受けてくれます。金融機関側からすると、保証があることにより、スタートアップのように実績が少なく信用力が十分でない企業にも融資を行いやすくなります。

スタートアップ企業の中には、経営の安定性や資金繰りで課題を抱えるケースは少なくありません。これらの支援を通じて、自己資金不足や信用力の低さなど初期段階でのハードルを乗り越えやすくなり、イノベーションに必要な資金を用意できます。

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補助金や助成金

補助金や助成金は、主に国や地方自治体が支給する支援金です。スタートアップ向けの補助金や助成金制度を設けて、経済的に支援する取り組みも進められています。

融資は利息を付けて返済する必要がある一方で、補助金や助成金は返済不要です。人材採用や設備投資等の要件をクリアする必要があるものの、企業にとっては収入となるため、実質的に雇用や投資のコストを抑えられます。

ただし、補助金や助成金は、基本的に後払いで支給されます。さらに、補助金の場合は採択されないと支給されないことがあるため、「本当に必要な人材採用や設備投資なのか」を考えることが大切です。

関連記事:「会社設立時に利用できる助成金・補助金について徹底解説」

投資を呼び込む環境づくり

スタートアップが資金調達する方法の一つに、「出資を受ける」というものがあります。政府は投資家への税制優遇制度を設けて、スタートアップへの投資が増える環境作りも進めています。

具体的な制度が「エンジェル税制」や「オープンイノベーション促進税制」です。これらの制度では、投資をした人に対して税制優遇を適用し、スタートアップへの投資を促進しています。

エンジェル税制
  • 「対象企業への投資額-2,000円」をその年の「総所得金額」から控除(優遇措置A)
  • 対象企業への投資額全額をその年の他の「株式譲渡益」から控除(優遇措置B)
  • 対象企業への投資額をその年の「株式譲渡益」から控除(プレシード・シード特例)
オープンイノベーション促進税制

スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%を所得控除

エンジェル税制
  • 「対象企業への投資額-2,000円」をその年の「総所得金額」から控除(優遇措置A)
  • 対象企業への投資額全額をその年の他の「株式譲渡益」から控除(優遇措置B)
  • 対象企業への投資額をその年の「株式譲渡益」から控除(プレシード・シード特例)
オープンイノベーション促進税制

スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%を所得控除

スタートアップは急成長をめざしており、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から投資を呼び込みやすい点が強みです。「投資家がメリットを感じられる仕組み」を作り、スタートアップの資金調達を支援していることが分かります。

ノウハウの共有や情報交換の場の提供

スタートアップにとって、経済的な課題だけでなく経営に関するノウハウ不足で悩むことも少なくありません。

そこで、政府や自治体は「スタートアップ起業家」「先輩創業者」「投資家」「メンター(専門家)」等、情報交換する場を提供して実践的なノウハウの吸収をサポートしています。

これらの場を通じて、事業計画の策定支援を受けられ、創業に関する情報交換・人脈形成等を行えます。スタートアップ起業家にとって、実績のある企業からの事業モデルや経営に関するノウハウを学べるのは有意義でしょう。

政府によるスタートアップ支援策の例

イメージ

ここからは、政府によるスタートアップ支援策の中で、起業家が受けられる制度を具体的に紹介します。

新規開業・スタートアップ支援資金

新規開業資金とは、日本政策金融公庫が行っている新規創業者向けの融資制度です。

利用できる方

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方

資金の用途

新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金

融資限度額

7,200万円(うち運転資金4,800万円)

返済期間
  • 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)
  • 運転資金10年以内(うち据置期間5年以内)
利率(年)

基準利率

利用できる方

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方

資金の用途

新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金

融資限度額

7,200万円(うち運転資金4,800万円)

返済期間
  • 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)
  • 運転資金10年以内(うち据置期間5年以内)
利率(年)

基準利率

基準金利は、「税務申告を2期終えている方」「税務申告を2期終えていない方」等によって異なります。幅広い方の創業を支援する目的の制度であるため、設備資金や運転資金を用意する際には有効活用しましょう。

ディープテックベンチャー向け債務保証制度

ディープテックベンチャー向け債務保証制度とは、ディープテックベンチャー企業の量産体制整備等のための資金に対する融資に関し、独立行政法人中小企業基盤整備機構が債務保証を行う制度です。

対象者

ベンチャーキャピタル等のファンドから出資を受けている非上場のディープテックベンチャー企業

対象・要件
  • 組織内に研究開発機能を有している
  • 事業活動計画で研究成果を活用している
  • 指定金融機関等からの借入である 等
保証率

50%

保証金

1.5~25億/件

保証料

原則年0.3%(有担保)、年0.4%(無担保)

保証期間

設備投資10年、設備投資以外5年

対象者

ベンチャーキャピタル等のファンドから出資を受けている非上場のディープテックベンチャー企業

対象・要件
  • 組織内に研究開発機能を有している
  • 事業活動計画で研究成果を活用している
  • 指定金融機関等からの借入である 等
保証率

50%

保証金

1.5~25億/件

保証料

原則年0.3%(有担保)、年0.4%(無担保)

保証期間

設備投資10年、設備投資以外5年

債務保証を受けられると融資を受けやすくなり、資金調達のハードルが下がります。担保や保証人が用意できないと融資を受けられないスタートアップにとって、活用する価値があります。

スタートアップチャレンジ推進補助金

スタートアップチャレンジ推進補助金とは、大企業の人材がスタートアップで実務経験を積む「スタートアップチャレンジ」に対して、補助金を支給する制度です。

大企業の若手・中堅人材がスタートアップ等の外部環境に挑戦する際の費用は、一部補助を受けられます。

大企業等向け

スタートアップとのマッチングを行う認定事業者の認定サービスの利用費を補助(類型A)

スタートアップ等向け

大企業等に所属する人材の採用・活用を支援する事業者の認定サービスの利用費を補助(類型B)

大企業等向け

スタートアップとのマッチングを行う認定事業者の認定サービスの利用費を補助(類型A)

スタートアップ等向け

大企業等に所属する人材の採用・活用を支援する事業者の認定サービスの利用費を補助(類型B)

これにより、大企業等からスタートアップへ行く従業員は成長機会を得られ、スタートアップ側は人材不足を解消できます。また、大企業のノウハウを学べるメリットがあるため、双方にとってメリットがある制度です。

自治体によるスタートアップ支援策の例

独自の取り組みとして、スタートアップの支援を行っている自治体もあります。東京都産業労働局と品川区を例に、具体的に受けられる支援を紹介します。

東京都産業労働局

東京都産業労働局では、東京都内の創業・起業をめざす人々を支援する情報プラットフォーム「東京都創業NET」を用意しています。

具体的な支援として、創業や起業に関するノウハウや法令・融資制度・支援プログラム等の情報提供、セミナーやイベントの開催を行っています。

「TOKYO創業ステーション」「東京開業ワンストップセンター」など、創業にあたっての相談対応や法人設立や事業開始時に必要な定款認証など、各種手続きの相談も可能です。創業にあたって抱える悩みを解消できる場として、有効活用できるでしょう。

品川区

東京都の品川区は、スタートアップ企業の集積地である「五反田バレー」があり、ITベンチャー・スタートアップ企業等の一大集積地です。スタートアップを支援するための独自の取り組みとして、「五反田バレーアクセラレーションプログラム」で交流の場を設けています。

「五反田バレーアクセラレーションプログラム」以外にも、ベンチャー・スタートアップ支援として、以下のようなものがあります。

  • ウェルビーイング・SDGs推進ファンド事業
  • 新規事業展開支援助成
  • ソフトウェア開発支援
  • 事業PR・販売促進支援助成事業
  • DX・デジタル技術活用推進事業
  • 新製品・新技術開発支援
  • 融資斡旋
  • 経営相談・経営診断

経営支援に関する実践的なアドバイス、コワーキングスペースの貸出等の支援を受けられるため、必要に応じて活用すると良いでしょう。

スタートアップ支援を受けるメリット

これからスタートアップを起業する方がスタートアップ支援を受けることで、経営に関する様々なノウハウを吸収でき、起業における不安等を解消できるメリットがあります。

無料で行政や民間団体の支援を受けられる

一般的に、専門家からアドバイスを受ける際には相談料が発生しますが、国や自治体が行っている相談や交流会への参加は基本的に無料です。

起業に関する悩みや不安を解消できたり、事業展開に役立つ情報を得られたりするため、有効活用しましょう。

ただし、セミナーや交流会の中には一部有料の催しがあります。そのため、参加対象者や費用等は、申し込み前に確認してみてください。

経営のノウハウを得られる

起業家同士や、先輩起業家と交流できるイベントへの参加を通じて、経営に役立つ様々な情報を得られます。

成功談だけでなく失敗談等も参考にして、自分のビジネスに応用できるでしょう。

交流会の中には、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルの担当者と直接話ができる催しもあります。投資家から経営ノウハウを教えてもらえたり、資金調達のアドバイスを受けられたりするメリットも期待できるでしょう。

事業を拡大するためのチャンスを得られる

政府や自治体が行っているスタートアップ支援には、ビジネスモデルの構築やマーケティングの支援、人材育成等も含まれます。

例えば、効果的なマーケティング方法で悩んでいるスタートアップが専門家からマーケティング支援を受けると、事業を拡大するためのアイデアを得られるでしょう。

自分自身だけでなく、複数の第三者から客観的な意見やアドバイスを受けることで、今後事業を拡大するためのヒントを得られる可能性があります。

スタートアップ支援を受けるときの注意点

スタートアップ支援では有意義なサポートやアドバイスを受けられるメリットがある一方で、気を付けるべき点もあります。

投資家が経営に介入する場合がある

ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から出資を受けると、返済不要の資金を調達できます。一方で、自社の株式を取得されるため、経営に介入される可能性がある点に注意しましょう。

ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家は、「早く投資先企業を成長させて、リターンを獲得したい」と考えるためです。

投資家からのアドバイスを通じて、経営の視点が広がるメリットを得られるのは事実です。しかし、投資家の出資額が大きくなるほど、経営の自由度が下がってしまう点には注意が必要です。

融資や補助金・助成金を受けるには審査に通過する必要がある

銀行から融資を受けるためには、審査に通過する必要があります。債務保証制度により融資のハードルは低くなっているとはいえ、成長性や財務安定性に疑問があると、審査に通過できないでしょう。

国や自治体が行っている補助金・助成金を利用するときは、所定の条件をクリアしなければなりません。また、補助金の中には採択されなければ支給されない制度があるため、「利用できるだろう」と甘い見通しで申請するのは控えるべきです。

多くの補助金は予算が設けられており、応募が殺到する人気の補助金は早々に打ち切られる可能性があります。審査の過程で、自社の魅力や将来性等をアピールする必要がある点も押さえておきましょう。

スタートアップ企業は法人口座の開設を検討しよう

スタートアップ企業を設立した後は、法人口座の開設をおすすめします。スタートアップはこれまでの事業実績がないため、認知度が低いうえにゼロから信頼関係の構築をしなければなりません。

法人口座を保有していることにより、金融機関から「きちんと運営されている法人である」と対外的にアピールできます。また、法人口座があれば事業資金を一元管理できるため、個人のお金が紛れ込んでしまうリスクを防げます。

銀行の中には、法人口座を開設すると経営支援を受けられるところがあります。金融機関側から見た自社の課題や問題点の把握に役立つため、事業の将来的なサポートも見据えて口座を開設する銀行を選びましょう。

みずほ銀行は、創業期をサポートする様々なサービスや特典を提供しています。

全国47都道府県に支店があり、来店不要で口座開設の手続きが完結するサービスも全国対応しています。

関連記事:法人口座開設におすすめの金融機関は?選び方とメリット・デメリット

みずほ銀行の法人口座開設(法人のお客さま)

まとめ

政府はスタートアップ支援に力を入れており、自治体によっては独自の支援を行っているところがあります。「起業前」「起業後」のフェーズにおける悩みを相談できる仕組みが整備されているため、積極的に活用しましょう。

支援の枠組みの中には、スタートアップの資金繰りを支援する制度や、事業PR・販売促進支援等のマーケティングを支援する制度もあります。自社が必要としている支援に応じて、事業活動を発展させるために有意義な支援を受けましょう。

法人を設立した後は、法人口座の開設をご検討ください。みずほ銀行では、イノベーション企業を支援する会員制サービス「M’s Salon」の展開をはじめ、スタートアップの支援を積極的に行っています。

みずほフィナンシャルグループのネットワーク、金融サービス提供力、コンサルティング力をフル活用して、創業期の企業を多角的にサポートするため、ぜひご活用ください。

みずほ銀行の法人口座開設(法人のお客さま)

監修者

安田 亮

安田 亮

  • 公認会計士
  • 税理士
  • 1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

HP:https://www.yasuda-cpa-office.com/

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