法人口座の開設ができない理由とは?審査基準と対策、スムーズな開設のポイントを解説
掲載日:2025年5月23日法人口座
法人としての信用力を高め、事業を円滑に進めるためには、法人口座の開設が重要です。しかし、個人口座とは異なり、法人口座の開設には審査があり、「法人口座が作れない」と悩むケースも少なくありません。
本記事では、法人口座が作れない主な理由とその対策、スムーズに開設するためのポイントを詳しく解説します。

目次
法人口座開設の審査に通らない主な理由とは?
法人口座の開設は、個人口座よりも厳格な審査が行われます。これは、銀行が法令に基づき、口座の適正な利用を確保する責務を負っているためです。特に、マネーロンダリングや特殊詐欺等の不正利用を防ぐため、事業の実態や口座の用途について慎重に確認が行われます。
ただし、口座開設の可否は特定の条件のみで決定されるわけではなく、各種法令および内部審査基準に基づき、総合的に判断されます。なお、以下に挙げる内容は審査の詳細を示すものではない点にご留意ください。
ここでは、法人口座の開設に関わる要因について詳しく解説します。事前に適切な準備をすることで、スムーズな口座開設につなげることができるでしょう。
1. 提出書類に不備・不足がある場合
法人口座の開設には、各種書類の提出が必要です。
これらの書類に不備があると、法人口座の開設が難しくなる可能性があります。
では、具体的にどのような書類が必要でどのような不備が問題となるのでしょうか。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 履歴事項全部証明書の記載内容が、他の提出書類と一致していない。
- 公的書類の有効期限が切れている。
- 代表者の本人確認書類が最新の情報に更新されていない(旧姓のまま等)。
- 必要書類が不足している。
これらの不備を防ぐためには、事前の確認が大切です。 口座開設をスムーズに進めるためにも、提出前に必要書類がすべてそろっているか、記載内容に誤りがないか、有効期限が切れていないかを必ずチェックしましょう。
2. 事業内容・実態が確認できない場合
法人口座は、事業活動のための口座です。そのため、銀行では、口座開設時に法人の事業内容や実態を確認します。事業の内容や実態が不明確な場合、審査基準を満たさず、口座開設が認められない可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 具体的な事業内容が不明確である。
- 事業実績が確認できない。
- ウェブサイトやパンフレット等、事業内容を客観的に示す資料がない。
- 登記上の事業目的と、実際の事業内容が一致していない。
なお、バーチャルオフィスの利用や固定電話の有無といった特定の条件だけをもって、審査結果が決定されるものではありません。
3. 資本金の額と出所の確認ができない場合
資本金は、会社の事業規模や経営の安定性を示す指標の一つです。そのため、銀行では資本金の額や出所を確認する場合があります。
また、資本金の出所が不明確な場合、審査に影響を及ぼす可能性があります。適切な証明書類を提出することで、スムーズな口座開設につながるでしょう。
例えば、以下のようなケースでは、追加の確認を求められる場合があります。
- 資本金の出所を証明する書類(通帳のコピー、振込明細書等)が提出されていない。
- 代表者個人の預金口座から資本金を拠出しているが、その預金の出所が不明確。
- 第三者から出資を受けているが、その出資者との関係性や出資の理由が不明確。
資本金の出所を明確にするために、以下のような書類の提出が求められることがあります。
- 出資者からの出資証明書
- 金融機関からの融資証明書
- 資本金の振込明細書や入金履歴が確認できる通帳のコピー
4. 代表者・役員の信用情報に問題のある場合
法人口座の開設審査では、代表者や役員の信用情報が確認される場合があります。信用情報について不安がある場合は、個人信用情報機関(CIC、JICC、KSC等)で自身の信用情報を確認し、必要に応じて専門家に相談することも有効でしょう。
法人口座開設をスムーズに進めるための準備事項

法人口座の開設を円滑に進めるためには、審査のポイントを理解し、適切な準備を行うことが重要です。あらかじめ対策を講じることで、口座開設の可能性を高めることができます。ここでは、法人口座の開設に向けた具体的な準備や対策について解説します。事前に適切な準備や必要な書類を整えることで、スムーズな審査手続きを進めることができるでしょう。
具体的な法人口座開設の流れは関連記事をご確認ください。
企業の事業実態を証明する準備【一般的なケース】
法人口座開設の審査では、企業の事業実態が重視されます。以下のような準備をしておくことで、事業実態の確認が円滑に進みやすくなります。
1. 事業内容を説明できる
事業の概要、提供するサービス・商品、ターゲット顧客を整理し、口頭でも説明できるように準備しておきましょう。
2. ウェブサイトを充実させる
企業の実態を示すため、会社情報と事業内容を明確に記載した企業公式のウェブサイトを用意しましょう。
3. 事業の活動実績を示す資料を準備する
銀行は、企業が実際に事業を運営しているかを確認するため、請求書や契約書のような取引書類や、事業計画書等の提出を求めることがあります。あらかじめ準備しておくと、手続きを円滑に進めることができるでしょう。
4. 必要な許認可や資格を取得する
業種によっては、公的な許認可証(例:建設業許可証、古物商許可証)が必要な場合があります。事前に要件を確認し、必要に応じて対応すると良いでしょう。
法人口座開設に必要な書類の準備【一般的なケース】
法人口座を開設する際には、どのような書類が必要になるのでしょうか。 必要な書類や手続きの詳細は銀行によって異なるため、事前に各銀行の公式情報を必ず確認しましょう。
書類名 | 説明 |
---|---|
履歴事項全部証明書(登記簿謄本) |
法務局で取得できる、会社の基本情報が記載された書類。発行日から3ヵ月から6ヵ月以内の書類を求められることがある。 |
印鑑証明書 |
法務局で取得できる、会社の実印を証明する書類。発行から3ヵ月から6ヵ月以内の書類を求められることがある。 |
代表者の本人確認書類 |
運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等、顔写真付きの証明書を求められることがある。 |
定款 |
会社の基本的なルールを定めた書類を求められることがある。 |
事業計画書 |
事業内容、収支計画、資金計画等を具体的に記載した書類を求められることがある。 |
株主名簿 |
株主の氏名や住所、保有株式数等が記載された書類を求められることがある。 |
その他(銀行の審査基準による) |
事務所の賃貸借契約書、許認可証、取引先との契約書等、事業の実態を示す書類を求められることがある。 |
銀行ごとの審査基準を確認
審査基準は、銀行によって異なるため、事前に公式サイトを確認し、必要な書類の違いや特定の要件を把握しておくことが重要です。また、複数の銀行の要件を比較し、自社の状況に最も適した銀行を選ぶのも一つの方法でしょう。
法人口座開設に必要な書類【みずほ銀行の場合】
みずほ銀行で法人口座を開設する際の書類についてご紹介します。 なお、申込の際の最新の情報や具体的な提出方法については、法人口座開設ページをご確認ください。
インターネットでお申込の場合
「法人口座開設ネット受付(来店不要・ウェブ面談)」を利用する場合は、登記事項証明書や印鑑証明書の提出が原則不要となるため、書類準備の負担を軽減できます。
1. インターネットで申込入力をする際に必要な書類:
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書等)
- 代表者・役員・実質的支配者等の名前・住所・生年月日等が確認できる書類
- 運転免許証、マイナンバーカード等、写真付き本人確認書類
- *口座開設情報入力の際に必要な情報が記載された書類であり、必ずしもご提出いただく書類ではありません。
2. ウェブ面談までにご提出が必要な書類:
- 「株式会社・有限会社・投資法人・特定目的会社」の場合は、実質的支配者の確認書類(株主名簿、有価証券報告書、実質的支配者リスト、法人税確定申告書別表二の明細書の写し等)
3. 追加で必要となることがある書類:
- 事業内容や事業実態が分かる資料
- 登記事項証明書(原本)、印鑑証明書(原本)
- 法人名義の国税・地方税の領収書、受注書・発注書、請求書
店舗でお申込の場合
店舗でお申込の場合、必要なものは以下の通りです。
- 印鑑(法人)*1)
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書など、発行日から6ヵ月以内の原本)
- 来店する方の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)
- 当該法人の取引であることが分かる書類*2)
- 実質的支配者の確認ができる書類*3)
- 事業内容や事業実態の分かる書類*4)
- *1)シャチハタは使用できません。
- *2)代表者以外の方が対応する場合、委任状の提示等、みずほ銀行所定の確認手続きが必要です。
- *3)
法人格が「株式会社・有限会社・投資法人・特定目的会社」の場合、以下のいずれかの書類の提出が必要です。
- 株主名簿、有価証券報告書、実質的支配者リスト、法人税確定申告書別表二の明細書の写し等
- *4)
以下のいずれかをご提出ください。
法人のウェブサイトURL、会社案内、商品パンフレット、法人名義の国税または地方税の領収書、受注書・発注書、請求書等
法人口座開設におすすめの銀行とは

法人口座を開設できる銀行は数多くあり、それぞれ提供するサービスや審査基準が異なります。自社の事業内容や取引のスタイルに合った銀行を選びましょう。
ここでは、法人口座の開設を検討する際に考慮すべきポイントを解説します。銀行ごとの特徴を理解し、適切な選択をすることで、事業をスムーズに進めることができます。
都市銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行とは
法人口座を開設できる銀行には、主に都市銀行・地方銀行・信用金庫・ネット銀行の4種類があります。
-
都市銀行
全国規模で展開する大手銀行で、法人向けの金融サービスが充実しています。企業の信用力を重視する傾向があり、資金調達や経営支援を受けやすい点が特徴です。 -
地方銀行
特定の地域に根ざした銀行で、地元企業とのつながりが強く、地域経済を支える役割を担っています。地域密着型の融資や経営支援を提供することが多く、地元の発展に貢献しています。 -
信用金庫
地域の中小企業や個人事業主を主な対象とする金融機関で、地域経済の活性化を目的とした運営が特徴です。親身な対応や柔軟な融資を行うことが多く、地元で事業を展開する法人に適しています。 -
ネット銀行
オンラインでの取引を主とする銀行で、来店不要で口座開設や各種手続きを行うことができます。手数料が比較的低く、24時間利用可能な点が特徴です。
手数料・金利・サービス内容を比較する
手数料・金利・提供サービスは銀行によって異なります。それぞれの違いを明確にすることで、事業に適した銀行を選ぶ判断材料になるでしょう。
比較の主なポイント
- 手数料:振込手数料、ATM利用手数料、口座維持手数料、インターネットバンキング利用手数料等
- 金利:普通預金・定期預金の金利、融資を利用する場合の借入金利
- サービス内容:インターネットバンキング、融資、海外送金、その他(デビットカード、会計ソフト連携等)
例えば、取引回数が多い企業は振込手数料の低い銀行を選ぶことでコストを抑えることができ、融資を利用する場合は金利や借入条件が大切になるでしょう。
将来的な事業展開を見据えて選ぶ
法人口座を開設する際には、現在の利便性だけでなく、将来的な事業展開も考慮しましょう。
例えば、融資を受ける可能性がある場合は、融資に関するサポートが充実している銀行を選ぶことで、将来的な資金調達の選択肢が広がります。また、海外取引を検討している場合は、海外送金サービスや外貨預金の取り扱いが充実している銀行を選ぶことで、スムーズな国際取引につながるでしょう。
信頼関係の構築
法人口座を開設すると、銀行と継続的に取引をすることになります。特に、資金管理や金融サービスの利用において、お互いの信頼関係を築くことは大切です。
銀行は、企業の成長を支える金融パートナーとしての役割を担っています。口座開設の際に、自社の事業内容や経営方針について適切に伝えることで、銀行側も企業の状況を理解しやすくなります。信頼関係が構築されることで、必要なときに相談しやすくなることもあるでしょう。
法人口座開設後の注意点
法人口座は、開設して終わりではなく、そこからの適切な運用が重要です。適正な管理をすることで、資金の流れをスムーズにし、事業の安定につながります。
ここでは、法人口座を安全かつ有効に活用するためのポイントを解説します。適切な運用を心がけることで、銀行との信頼関係を築き、事業の継続性を高めることができます。
1. 口座の不正利用に注意する
法人口座は、個人口座に比べて取引額が大きくなるため、不正利用のリスクが高まります。適切なセキュリティ対策を講じることで、リスクを最小限に抑えましょう。
以下の表に、不正利用を防ぐための一般的なポイントをまとめました。
注意点 | 具体的な対策 |
---|---|
パスワードの管理 |
|
インターネットバンキングの利用環境 |
|
通帳や印鑑の管理 |
|
取引履歴の確認 |
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セキュリティ通知の活用 |
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みずほ銀行では金融犯罪の事例ページをご用意しています。事前に手口を理解し、適切な対策を講じることで、被害を未然に防ぐことができます。十分ご注意ください。
2. 定期的に残高・取引履歴を確認する
法人口座の残高や取引履歴は、定期的に確認しましょう。身に覚えのない取引を発見した場合は、速やかに銀行へ連絡し、調査を依頼することが重要です。
インターネットバンキングを活用すれば、24時間365日、いつでも残高や取引履歴を確認できるため、効率的な資金管理に役立ちます。
3. 住所変更等、届出事項に変更があった場合は速やかに手続きを行う
会社名、所在地、代表者名、事業内容等、銀行に届け出ている事項に変更があった場合は、速やかに変更手続きを行う必要があります。 変更手続きを怠ると、銀行からの重要な連絡が届かなくなったり、口座が利用できなくなったりする可能性があります。
変更手続きは、銀行によって異なりますが、一般的には、書面での手続きが必要です。必要書類を準備し、銀行の店舗または郵送で手続きを行いましょう。
4. 法人口座と個人口座を明確に使い分ける
法人口座と個人口座は、適切に区別して管理しましょう。法人の経費を個人口座で支払ったり、個人の支出を法人口座から引き出したりすると、税務上の問題が生じる可能性があるため注意が必要です。
例えば、以下のように使い分けると良いでしょう。
管理項目 | 適切な口座の利用 |
---|---|
法人の経費 |
法人口座から支払う(事業用の取引を明確にするため) |
個人の支出 |
個人口座から支払う(法人資金と混同しないため) |
役員報酬・給与 |
法人口座から個人口座へ振り込む |
配当金 |
法人口座から個人口座へ振り込む |
法人と個人の資金を明確に分けることで、会計処理がスムーズになり、税務上のトラブルを回避することができます。
法人口座開設に関するよくある質問
みずほ銀行では、法人口座開設に関するよくある質問にお答えするFAQページを用意しています。口座開設に関する不安を解消し、手続きをスムーズに進めるために、ぜひご活用ください。
法人口座開設前の質問例:
Q1. 法人口座開設の方法を知りたいです。 A1. みずほ銀行では、来店不要・ウェブ面談のみで手続きが完了する「法人口座開設ネット受付(来店不要・ウェブ面談)」が利用できます。店舗での手続きにも対応しています。
Q2. みずほ銀行に同一の法人で口座を複数開設したいができますか。 A2. 同一の法人で複数口座の開設は可能です。法人口座開設ができる店舗にてお手続きください。
Q3. 現在登記申請中ですが、口座開設はできますか。 A3. 登記申請中は口座開設ができません。登記完了後、口座開設をお申し込みください。
法人口座開設審査に関する質問例:
Q4. 一次審査完了後の連絡は、どの程度の日数を要しますか。 A4. 最長で1週間ほどかかります。祝日(年末年始・GWなど)や申込の集中状況によって、さらに時間を要する場合があります。
Q5. ウェブ面談で使用するオンライン会議システムは何ですか。 A5. ウェブ面談には「Cisco Webex Meetings」を使用します。IDやパスワードの管理は不要です。利用方法は、「ご利用ガイド(PDF/1,005KB)」をご確認ください。
Q6. 審査の結果、口座開設見送りの連絡(メール)をもらったが、口座開設見送りの理由を教えてください。 A6. 総合的な判断によるもので、詳細は公開されていません。
その他のご質問については、以下のリンクからご覧ください。
法人口座開設はみずほ銀行がおすすめ
みずほ銀行では、来店不要・ウェブ面談のみで手続きが完了する「法人口座開設ネット受付(来店不要・ウェブ面談)」が利用できます。これにより、休日や夜間でも手続きが可能です。
また、「法人口座開設ネット受付」を活用すると、通帳・キャッシュカードの初回発行手数料が無料となり、店舗で手続きする場合よりもお得に口座を開設できます。
実際の事例のご紹介
創業者インタビューを通じて、実際の開設事例を掲載したページを公開しています。 具体的な活用イメージの参考になれば幸いです。
みずほ銀行の法人口座開設は、以下のリンクからお申し込みいただけます。ぜひご活用ください。
まとめ
本記事では、法人口座の開設ができないとお悩みの方や、作れるかどうか不安な方に向けて、審査のポイント、必要な準備、開設後の管理に関する重要なポイントを解説しました。
法人口座の開設には、個人口座に比べて審査が厳格であり、提出書類や事業内容、代表者の信用情報等、多岐にわたる要素が確認されます。しかし、審査の基準を理解し、適切な準備をすることで、スムーズな口座開設が可能となるでしょう。
本記事でご紹介した、必要書類の準備、事業計画書の作成、事業の実態を示す情報の整備、銀行選びのポイント等を参考に、適切な準備を進めていただくことをおすすめします。
法人口座は、事業の資金管理を適切に行うための重要なツールです。開設後も適正な運用を心がけ、健全な事業運営につなげていきましょう。