個人事業主に事業用口座は必要?開設のメリットや口座開設の手順も解説
掲載日:2025年4月10日起業準備

個人事業主として事業を営むにあたり、プライベートと事業用で口座を分けるべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。
個人事業主が事業目的で開設できる口座は、「個人名義の事業用口座」と「屋号付きでの事業用口座」の2種類です。プライベート用と口座を分けると、お金の流れが分かりやすくなるだけでなく、取引先の信頼を得やすくなる等のメリットもあります。
本記事では、事業用口座の必要性や事業用の口座を分けるメリットや注意点、手順を解説します。事業用の口座を開設し、円滑かつ効率的な事業運営に役立てましょう。
目次
個人事業主はプライベート用と事業用で口座を分ける必要がある?
個人事業主として事業を営む場合、生活用(プライベート用)の口座と事業用の口座を分けなくても特に問題はありません。
ただし、プライベート用・事業用で口座を分けない場合、個人・事業の入出金が混在するため、お金の流れが分かりにくくなります。また、事業用だとみなされた場合に、個人用のサービスが利用できなくなる等の影響が生じる可能性があります。
さらに、事業用の口座を分けない場合、事業用の入出金を仕分けして帳簿付けを行わなければなりません。手間がかかるだけでなく、ミスも起きやすくなります。
このような理由から、円滑に事業を営んでいくために、事業用口座の開設をおすすめします。
個人事業主が開設できる事業用口座は、「個人名義の事業用口座」と「屋号付きでの事業用口座」の2種類です。
「屋号付きでの事業用口座」とは
屋号付きでの事業用口座とは、口座名義に屋号が入る事業用の口座です。「屋号」とは事業用の名称のことで、店名等が該当します。
個人事業主やフリーランスが事業用の口座を開設する場合、銀行によっては「屋号付きでの事業用口座」を開設できる場合があります。
屋号付きでの事業用口座を開設する場合、口座名義は「屋号+氏名」または「氏名+屋号」になります。一般的に、屋号のみでの口座開設はできません。
事業用口座を開設するメリット
個人事業主が事業用口座を開設すると、お金の管理がしやすくなるだけでなく、事業の信頼性が高まる効果も期待できます。事業用口座を開設する主なメリットは、以下の通りです。
- お金の流れが分かりやすくなる
- 顧客や取引先から信頼を得やすくなる
- 法人用のサービスが利用できる場合がある
- 確定申告の手間が軽減される
お金の流れが分かりやすくなる
事業用の口座を開設すると、プライベートと事業のお金を分けて管理できるため、お金の流れを把握しやすくなります。事業の収入・支出を正確に把握できれば、資金繰り計画を立てやすくなり、安定的な事業運営につながるでしょう。
また、事業用の口座を開設し、事業のお金を明確に区別して管理すれば、税務署から不正を疑われるリスクも防げます。
顧客や取引先から信頼を得やすくなる
屋号付きの事業用口座を持っていれば、顧客や取引先から信頼を得やすくなる要因になります。事業を正式に営んでいることや、プライベートと事業のお金を区別して適切に管理していることを示せるためです。
また、屋号付き口座を開設する際には、事業に関する書類の提出や事業内容の説明等を行い、金融機関の審査に通過する必要があります。口座を持っていると、金融機関の審査に通過したことを証明できるため、事業の信頼性が高まるでしょう。
法人用のサービスが利用できる場合がある
銀行によって異なりますが、事業用口座を開設すると、インターネットバンキングやビジネスデビット(法人向けデビットカード)等の法人用サービスが利用できる場合があります。こうしたビジネスに役立つサービスを活用すれば、経理負担の軽減や業務効率化を図れるでしょう。
反対に、プライベート用と事業用の口座を分けずに管理すると、事業用だとみなされた場合に、個人用のサービスが利用できなくなる場合があります。詳しくは、各銀行にご確認ください。
確定申告の手間が軽減される
個人事業主が事業用口座を開設すると、確定申告の手間が軽減されるメリットもあります。
事業のお金を分けて管理すると、帳簿付けの際にプライベートと事業の取引を仕分けする必要がありません。また、事業用口座を会計ソフトと連携すれば、事業に関する入出金データのみが自動で取得されるため、帳簿付けの手間が大きく軽減されます。
プライベートの支出を誤って経費に計上してしまうリスクも減らせるため、よりスムーズかつ正確な確定申告が可能です。
個人事業主が事業用口座を開設する際の注意点

事業を円滑・安定的に営むためには、事業用口座を開設し、プライベートと事業のお金を分けて管理することが重要です。ただし、事業用口座の開設には注意点もあります。
- 屋号付きでの事業用口座を開設できない銀行もある
- 開設に時間がかかる傾向がある
屋号付きでの事業用口座を開設できない銀行もある
屋号付きでの事業用口座は、すべての銀行で開設できるわけではありません。一部の銀行では、個人名義の事業用口座のみ開設できる場合や、事業用口座の開設に対応していない場合があります。
また、申込方法や手続きができる店舗が限られる場合があるため、屋号付き口座の開設を検討している方は各銀行に確認しましょう。
開設に時間がかかる傾向がある
事業用口座の開設には、一定の時間を要します。銀行によって異なりますが、プライベート用の個人口座と比べて必要書類が多く、また開設までに1~2週間程度かかることが一般的です。
申込の混雑状況等によっては、1ヵ月程度かかる場合もあるため、口座開設を急ぐ方は事前に確認しましょう。
事業用口座を開設する流れ
個人事業主の方が事業用口座を開設する際の一般的な流れは、以下の通りです。
- ①必要書類を用意する
- ②口座開設を申し込む
- ③口座開設に係る審査が実施される
- ④口座開設が完了する
事業用口座を開設する際には、主に本人確認書類(運転免許証等)や営業事実確認書類(事業を行っていることが分かる書類)、印鑑が必要です。
事業を行っていることが分かる書類には、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の控えや確定申告書、屋号付き個人名義の国税・地方税の領収書等が挙げられます。詳しくは各銀行にご確認ください。
必要な書類を準備したうえで、店舗等で口座開設の申込手続きを行います。来店予約ができる銀行を選べば、店舗での待ち時間を短縮でき、スムーズに手続きしやすいでしょう。
必要書類については、次のみずほ銀行のウェブサイト内で詳しく解説しています。
【法人】営業性個人(屋号付き個人、個人事業主等)としての口座を開設したい。
申込後、口座開設に係る審査が実施され、完了後にキャッシュカード等を受け取って口座開設が完了します。ただし、審査の結果によっては口座開設を断られる場合もあります。
実際の流れは銀行によって異なるため、各銀行のウェブサイト等で確認しましょう。
なお、法人化を検討中の方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:「法人口座の開設方法は?メリットや金融機関の選び方、必要書類を解説」
個人事業主が事業用口座の銀行を選ぶ際のポイント
サービス内容や手数料等は、銀行によって異なります。複数の銀行を比較し、ご自身のニーズや事業規模・形態に合ったところを選びましょう。
個人事業主が事業用口座の銀行を選ぶ際、特に着目したいのは以下のポイントです。
- 各種手数料がいくらかかるか
- 使い勝手が良いか
各種手数料がいくらかかるか
個人事業主にとって、手数料等のコストを抑えることは、安定的に事業を運営していくために重要な要素の一つです。銀行を選ぶ際は、手数料の種類や金額を確認しましょう。
事業用口座を利用する際にかかる手数料には、以下のようなものがあります。
- ATM利用手数料
- 振込手数料
- カード発行手数料
- 口座を維持するための手数料等
使い勝手が良いか
利便性が高い銀行を選べば、円滑に資金管理ができ、事業の効率化を図れます。具体的には、以下のようなポイントに着目しましょう。
- 近くに支店やATMがあるか
- インターネットで取引ができるか
- 会計ソフトと連携できるか
- 利用可能時間がご自身の事業に合っているか
インターネットバンキングで利用できる取引の種類や画面の見やすさ等も確認しておくと安心です。
法人口座を開設するならみずほ銀行がおすすめ
事業形態・規模や資金繰り等によっては、法人化も視野に入れましょう。法人は、会社法等の法律に基づいて運営するため、個人事業主と比べて社会的な信用を得やすい傾向があります。
法人化して法人名義の口座を開設すれば、取引先・顧客からの信頼性が高まる、資金調達がしやすくなる等の効果が期待できるでしょう。また、法人口座を開設すると、より多彩な法人用サービスを利用できる場合もあります。
個人事業主が法人化するメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:「個人事業主とは?必要な手続きやメリット・デメリットを解説」
みずほ銀行では、休日や夜間でも法人口座開設のお申込が可能です。「法人口座開設ネット受付」でお申し込みいただくと、原則ウェブ面談を経て来店不要で口座を開設できます。
また、会社設立3年以内のお客さまは、インターネットバンキング(みずほビジネスWEB)の月額利用料が最大5年間無料になる創業期特典もご用意しています。
みずほビジネスデビットが無料で付帯する等、ビジネスを支えるサービスが充実しているため、法人化を検討している方は、ぜひみずほ銀行での口座開設をご検討ください。
まとめ
事業用の口座を開設すれば、事業の収支を正確に把握でき、資金繰り計画を立てやすくなるほか、顧客や取引先から信頼を得やすくなる等のメリットが得られます。日々の帳簿付けが容易になり、確定申告の負担も軽減されます。
また、個人事業主としての売上が増加した、あるいは社会的信用を向上させたい等のタイミングで、法人化を検討するのも手段の一つです。法人化すれば、法人口座を開設でき、取引の拡大や資金調達等で有利になりやすいでしょう。
みずほ銀行は、法人口座の開設が可能で、ビジネス向けのサービスも充実しています。法人口座を開設したい方は、ぜひみずほ銀行をご検討ください。
監修者

内山 貴博
- 1級FP技能士
- CFP
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。