債権回収の進め方は?時効や法的手段、代行を依頼できる相手まで分かりやすく解説
掲載日:2026年9月2日会計
債権回収とは、売掛金や貸付金等、期日までに支払われなかった債権を回収するための一連の手続きや対応を指します。貸倒れリスクを抑えるだけでなく、キャッシュ・フローの安定や事業の継続・成長にも影響する重要な業務です。
また、債権には消滅時効があり、放置すると回収不能となる可能性があるため、速やかな対応が求められます。
本記事では、債権回収の目的や進め方、手続きの種類を解説します。併せて、債権回収業務の代行を依頼できる相手も紹介します。
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債権回収とは
債権回収とは、期日までに支払われなかった債権を回収するために、債権者が行う一連の手続きや対応です。具体的には、交渉(任意の話し合い)や保全手続き、支払督促や訴訟等の手段が挙げられます。
本来は、期日どおりに支払われることが前提であり、債権回収が必要とならないよう適切に管理することが重要です。しかし、取引先の資金繰りの悪化等によって期日までに支払われないケースもあり、その場合には迅速な対応が求められます。
債権回収が必要になるケースには以下のようなものがあります。
- 期日を過ぎても取引先からの支払いがない
- 「返済に充てる資金がないから待ってほしい」と先延ばしにされる
- 取引先と連絡がつかない
- 取引先の経営状況の悪化が判明した 等
債権回収の重要性
債権回収は、未回収による損失を防ぐだけでなく、キャッシュ・フローの安定や事業の成長を支えるうえで重要な役割を担います。
売掛金等の回収が遅れると、仕入れ代金や外注費、人件費の支払いに支障が生じる等、資金繰りの悪化につながりかねません。特に、小規模法人や個人事業主の場合はその影響が相対的に大きく、会計上は黒字であるにもかかわらず資金が不足する可能性があります。
また、未回収の状態を放置すると、時間の経過とともに回収が困難となり、貸倒れのリスクが高まるほか、未払いを見逃すことで取引先との関係に悪影響が生じる可能性もあります。
関連記事:「貸倒損失とは?貸倒引当金との違いや損金算入の要件、仕訳方法を分かりやすく解説」
債権回収の消滅時効
債権には消滅時効があり、権利を行使しないまま一定期間が経過すると、請求できなくなる可能性があります。債権を回収するためには、消滅時効が完成する前に適切な対応を行うことが重要です。
2020年4月の民法改正により、債権の時効は原則として「権利を行使できると知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方に統一されました。
以前は職業別に1年〜3年の短期消滅時効がありましたが、現在は廃止され、上記の時効期間が適用されます。ただし、改正前(2020年3月31日まで)に発生した債権には旧法が適用される点に注意が必要です。
なお、「時効の完成猶予」または「時効の更新」の措置を取ることで、時効の完成を遅らせたり更新したりすることができます。具体的には、内容証明郵便による催告や仮差押え、支払督促の申し立て、訴訟の提起等が挙げられます。
債権回収の進め方
債権回収には複数の手段があり、状況に応じて適切な対応を行うことが重要です。
未回収が発生した場合は、まず請求内容の誤りや納品物の不備等、自社に原因がないかを確認します。そのうえで、取引先の状況や支払能力を把握し、段階的に債権回収を進めましょう。
- 電話やEメール等での請求
- 内容証明郵便による催告
- 仮差押え(民事保全)
- 支払督促の申し立て
- 民事調停の申し立て
- 訴訟の提起
- 強制執行(差押え)
初期段階では任意の交渉を行い、回収が難しい場合は法的手続きへ移行します。
電話やEメール等での請求
債務者に電話やEメール等で連絡を取ったり、直接面談したりして、支払いが遅れている理由や現在の状況を確認し、支払いを促します。いきなり法的手続きを取るよりも、取引先との関係悪化を防ぎやすい点が特徴です。
なお、取引先の事務手続きのミス等が原因である場合は、この段階で支払いが行われ、債権回収が完了するケースも少なくありません。
内容証明郵便による催告
電話やEメール等で複数回にわたって請求しても取引先が応じない場合には、内容証明郵便等の書面を送付して催告を行います。遅延損害金や支払期限に加え、「期限までに支払いがなければ法的手続きに進む」旨を通知することで支払いを促す方法です。
内容証明郵便とは、日本郵便が差出人・受取人・日付・内容を証明する郵便サービスです。正式な請求として送付できるため、普通郵便による催促よりも支払いを促しやすく、法的手続きに進んだ際に、請求をした証拠としても活用できます。
また、内容証明郵便による催告には、時効の完成猶予があります。時効の完成猶予とは、時効が成立する前に一定の事由が生じた場合に、一定期間は時効の完成が猶予される制度です。内容証明郵便による催告を行った場合、その後6ヵ月間は時効の完成が猶予されます。
仮差押え(民事保全)
仮差押えとは、債務者が保有する財産を一時的に差し押さえる手続きです。裁判で判決を得て強制執行に進むまでの間に、債務者が財産を手放したり隠したりする可能性があるため、債権を保全する目的で行います。
仮差押えを行うためには、裁判所に申し立てをします。仮差押えの申し立てにあたっては、書面等により「保全すべき権利の存在」と「保全の必要性」を証明する必要があります。裁判所による仮差押えが行われると、債務者は対象の財産を自由に処分できなくなります。
なお、仮差押えは債権者の申し立てに基づき、暫定的に債務者の財産の処分を制限する強力な手続きです。そのため、債務者が不当な損害を受けることのないよう、債権者は仮差押えの申し立てにあたり、一定額の担保(予納金)を裁判所に預ける必要があります。
支払督促の申し立て
支払督促とは、債権者の申し立てに基づき、簡易裁判所が債務者に支払いを命じる制度です。
書類審査のみで行われ、訴訟のように裁判所に足を運ぶ必要がありません。手数料も訴訟の半額であり、通常の訴訟に比べて手続きや費用の負担が少ない点が特徴です。
債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申し立てを行わず、さらに仮執行宣言付支払督促を受け取ってから2週間以内にも異議申し立てを行わなかった場合、当該仮執行宣言付支払督促に基づき、債権者は強制執行を申し立てることができます。
一方で、債務者が異議申し立てをした場合は通常訴訟に移行します。つまり、債権の額や支払時期について債権者と債務者の間に争いはないものの、債務者が支払わない場合に適した手段といえるでしょう。
民事調停の申し立て
民事調停とは、裁判所を通じて、債権者と債務者が協議して解決を図る手続きです。
訴訟とは異なり、当事者同士の話し合いを基本とするため、円満な解決をめざすことができます。また、訴訟に比べて手数料が安く、解決までの時間も短い傾向があります。申し立て後、2~3回の調停期日が開かれ、おおむね3ヵ月以内に終了するのが一般的です。
合意内容は「調停調書」にまとめられ、判決と同じ効力を持ちます。合意した内容が実行されない場合、債権者は強制執行を申し立てることができます。一方で、話し合いがまとまらない場合は、訴訟など他の手段を検討する必要があります。
訴訟の提起
通常訴訟や少額訴訟を提起し、判決によって解決を図る手続きです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
|
通常訴訟 |
裁判官が当事者の主張や証拠を審理し、判決によって解決を図る手続き |
|
少額訴訟 |
原則として1回の審理で解決を図る訴訟手続き
|
通常訴訟では、数回の弁論期日が開かれるため、解決に時間がかかる傾向があります。
一方、少額訴訟は原則として1回で審理が終了する迅速な手続きです。ただし、被告(債務者)の申し立てや裁判所の判断によって通常訴訟に移行することもあります。
強制執行(差押え)
強制執行とは、裁判所に申し立てを行い、債務者の財産を差し押さえて債権を回収する手続きです。
差押えの対象となる財産は、預貯金・給与・売掛金・不動産・自動車等、様々です。ただし、債務者の最低限の生活を保障するため、一部の財産は法律で「差押禁止財産」として差押えが禁止されています。
なお、強制執行を行う場合は、差押え対象となる財産を特定する必要があります。差押え対象となる預貯金口座や不動産が不明な場合は、裁判所を通じて債務者に財産を開示させる「財産開示手続」や、銀行等から情報を取得する「第三者からの情報取得手続」を行います。
債権回収代行を依頼できる相手
債権回収は、法的な知識や手続きが求められる場面が多く、自力で適切な手段を選んで進めるのは容易ではありません。また、本業と並行して債権回収を行う必要があるため、業務負荷が大きくなりやすい傾向があります。
そのため、状況に応じて債権回収代行を依頼することも選択肢のひとつです。代行を依頼できる主な相手は以下のとおりです。
- 弁護士
- 認定司法書士
- 債権回収会社(サービサー)
専門家が関与することで、債務者に支払いを促しやすくなる効果も期待できます。
弁護士
弁護士による交渉は、債務者に「法的手続きに進む可能性がある」という認識を与え、支払いを促しやすくなる効果が期待できます。
また、弁護士は催促や交渉だけでなく、内容証明郵便の作成や法的手続きも含め、対応できる範囲が広いことが特徴です。そのため、状況に応じて最適な手段を選びやすくなり、回収の可能性を高められます。
一方で、依頼する弁護士や依頼内容に応じて、以下のような費用が発生する場合があります。
- 相談費用
- 着手金
- 成功報酬
- 事務手数料
- 実費等
認定司法書士
認定司法書士への依頼は、一般的に債権額が比較的少額な場合や、複雑でない案件に適しています。
司法書士事務所によって異なりますが、弁護士に依頼する場合と比べて安価な場合があり、専門的な手続きを任せつつ費用を抑えられる点がメリットです。
一方、認定司法書士が支払督促や訴訟の代理を行えるのは、債権額が140万円以下で簡易裁判所が管轄となる案件に限られます。
債権回収会社(サービサー)
債権回収会社とは、債権回収を専門とする会社で、「サービサー」とも呼ばれます。
サービサーは法務大臣の許可を受けた業者のみが営業することができ、対応可能な業務範囲にも法的な制限があるため、依頼前に確認する必要があります。
サービサーが扱えるのは、法令で定められた「特定金銭債権」に限定されています。特定金銭債権には金融機関が保有する貸付債権等が含まれ、カードローン債権やクレジットカードのキャッシング債権、リース債権等が該当します。
未回収リスクを防ぐために資金管理体制を整えよう
債権回収は、未回収リスクを最小限に抑えるうえで重要な役割を果たします。しかし、未回収を防ぐためには、債権管理を徹底することも不可欠です。
そのためには、法人の資金を適切に管理する体制を整えることが重要です。法人口座を利用することで法人と個人の資金を明確に分けられるため、債権や入金の状況を正確に把握しやすくなります。
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関連記事:「法人口座開設におすすめの金融機関は?選び方とメリット・デメリット」
まとめ
債権回収とは、期日までに支払われなかった債権を回収するために債権者が行う一連の手続きや対応です。資金繰りの安定や未回収による損失の防止等につながる重要な業務です。
債権には消滅時効があり、権利を行使しないまま一定期間が経過すると、請求できなくなる可能性があります。
債権回収が必要とならないよう、日頃から適切な債権管理を行うとともに、未回収が発生した場合には迅速に対応することが重要です。
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監修者
古関 俊祐(こせき しゅんすけ)
- 弁護士
弁護士法人HAL代表弁護士。消費者金融、銀行ローン各社との債務整理、過払金請求事件を多数取り扱い、多くの依頼者からの相談を受けています。分かりやすく、人当たりの良い弁護士になることを目標に、日々の業務を行っています。債務整理案件だけでなく、保険や不動産など財産にまつわる問題、離婚や相続など家庭内の問題など、個人の生活において避けては通れない様々な問題について手広く対応しています。地元である東京都葛飾区の新小岩にて新小岩法律事務所を開設後、弁護士法人HALを設立し秋葉原と新小岩にオフィスを構えて活動しています。好きな言葉は明朗会計。趣味は、プロ野球観戦でシーズン中はしょっちゅう横浜スタジアムに足を運んでいます。