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法人化すると消費税が2年間免除される?条件や期間を延ばす方法を解説

掲載日:2025年12月12日起業準備

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個人事業主は、課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後から課税事業者として消費税を納めなければなりません。しかし、法人化することで、設立後2事業年度(最大約2年間)は、原則として消費税が免除されます。

本記事では、個人事業主が法人化した際に消費税が免除される条件や、免除されないケースを詳しく解説します。また、免除される期間を長くする方法やインボイス制度についても解説します。

なお、記事の内容は2025年9月時点の情報です。

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法人化すると消費税の納税義務が2年間免除される理由

事業者は、課税売上高が1,000万円を超えるとその2年後から消費税を納めなければなりません。ただし、法人設立1期目・2期目は、原則として消費税の納税義務が免除されます。これは、小規模な事業者の事務手続きや税務コストの負担軽減を目的に設けられた特例措置です。

納税義務が免除される主な理由は以下の2つです。

  • 基準期間がないため
  • 法人と個人事業主は別の事業者とみなされるため

なお、法人化(法人成り)とは一般的に、個人事業主が法人を設立し、その事業を法人に引き継ぐことを指します。

基準期間がないため

消費税が課税されるのは、原則として「課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者」です。

基準期間とは、消費税課税の課税判定に使われる期間で、法人の場合は「前々事業年度」を指します。しかし、新たに設立した法人には基準期間が存在しないため、1期目・2期目は原則として納税義務が発生しません。

法人と個人事業主は別の事業者とみなされるため

法人化する前の「個人事業主」と法人化後の「法人」は、別の事業者とみなされます。

法人・個人事業主に関わらず、課税売上高が1,000万円を超える事業者は、その2年後(翌々期)から消費税を納めなければなりません。しかし、消費税が課税されるかどうかの判定は、事業者単位で行われます。

そのため、個人事業主としての課税売上高は、法人設立後の納税義務の判定には引き継がれません。

法人化で消費税免除の特例を受ける条件

法人設立1期目の消費税が免除されるのは、原則として「資本金(または出資額)が1,000万円未満の法人」です。

資本金が1,000万円以上の新設法人は、免除の特例が適用されず、1期目から消費税の納税義務が発生します。また、設立2期目も消費税の免除を受けるには、上記に加えて、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 特定期間(設立1期目の事業年度開始日から6ヵ月間)の課税売上高が1,000万円以下である
  2. 特定期間の給与等支払額が1,000万円以下である

なお、設立1期目が7ヵ月以下かつ特定期間が存在しないの場合は、2期目において「特定期間」の判定は不要となるため、上記の条件を満たさなくても、2期目の消費税が免除されます。

法人化で消費税が免除されないケース

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資本金が1,000万円未満の新設法人は、1期目・2期目の消費税が原則として免除されます。しかし、以下に該当する場合は、消費税の免除の対象外です。

  • インボイス発行事業者である
  • 特定新規設立法人に該当する

インボイス発行事業者である

インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)は、資本金や特定期間の条件を満たしていても、消費税の免除が適用されません。

インボイス発行事業者とは、インボイス(適格請求書)を発行できる課税事業者のことです。免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受けると、登録日以降は課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。

消費税の納税義務が発生すると、経理業務や税務処理が複雑になり、資金管理も重要になります。個人と法人の収支を明確にするためにも法人口座の開設を検討しましょう。

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特定新規設立法人に該当する

特定新規設立法人は、資本金が1,000万円未満であっても納税義務が免除されず、課税事業者となります。

特定新規設立法人とは、他の者に支配されている法人であり(例:株式等の50%以上を直接的または間接的に保有されている場合)、その支配者等が以下のいずれかを満たす法人です。

  1. 基準期間相当期間*における課税売上高が5億円を超える
  2. 基準期間相当期間における売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額(国外も含む)が50億円を超える
  • *基準期間相当期間とは、新設法人のその事業年度の基準期間に相当する期間のことです。

法人設立3期目以降は消費税の免除がなくなる?

法人設立3期目以降は通常通り、「基準期間の課税売上高」を基準に消費税の課税事業者となるかどうかを判定します。

課税事業者となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  1. その事業年度の基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える
  2. 特定期間における課税売上高(または給与支払額)が1,000万円を超える

なお、1期目・2期目と同様に、インボイス発行事業者の登録を受けると、登録日以降は上記に関わらず課税事業者となります。

法人設立後1期目~3期目に納税義務の有無は、以下のような判定基準が参考になります。ただし、実際に免除が受けられるかどうかは、必ず専門家にご相談ください。

1期目 2期目 3期目
資本金1,000万円以上かつ1期目の課税売上高が1,000万円超

課税

課税

課税

1期目の課税売上高が1,000万円超

課税

課税

1期目からインボイス発行事業者

課税

課税

課税

特定新規設立法人かつ1期目の課税売上高が1,000万円超

課税

課税

課税

2期目における特定期間の課税売上高・給与支払額がいずれも1,000万円超

課税

課税

資本金1,000万円以上かつ1期目の課税売上高が1,000万円超
1期目

課税

2期目

課税

3期目

課税

1期目の課税売上高が1,000万円超
1期目

課税

2期目

3期目

課税

1期目からインボイス発行事業者
1期目

課税

2期目

課税

3期目

課税

特定新規設立法人かつ1期目の課税売上高が1,000万円超
1期目

課税

2期目

課税

3期目

課税

2期目における特定期間の課税売上高・給与支払額がいずれも1,000万円超
1期目

2期目

課税

3期目

課税

法人化で消費税の免除期間を延ばす方法

個人事業主が法人化した際に、消費税の免除期間を延ばす主なポイントは以下の通りです。

  • 資本金1,000万円未満で設立する
  • 課税売上高または給与支払額を調整する
  • 事業年度を調整する

免除を受けることで、設立初期の資金繰りに余裕が生まれ、事業の安定や成長につながる可能性があります。

資本金1,000万円未満で設立する

資本金1,000万円未満で法人を設立した場合、原則として設立1期目は消費税の納税義務が発生しません。また、増資する場合は、設立2期目の事業年度開始日を過ぎてから行うことで、設立2期目も免除の対象となります。

ただし、資本金は事業を運営する元手や、会社の信用力を示す基準としての意味もあります。そのため、税務面だけでなく、資金繰りや経営面等を含めて総合的に決定することが重要です。

関連記事:「資本金とは?その役割と金額を決める際の基準について解説」

課税売上高または給与支払額を調整する

資本金が1,000万円未満で、設立1期目の前半6ヵ月間の課税売上高または給与支払額が1,000万円以下であれば、設立2期目も消費税の納税義務が発生しません。

例えば、大口契約の納品時期や役員報酬の金額を調整すれば、前半6ヵ月間の課税売上高や給与支払額を抑えられ、結果的に免除を受ける期間が長くなる可能性があります。

ただし、こうした調整は、契約条件等に基づく正当な理由があり、適切な方法で行うことが前提です。

関連記事:「役員報酬の決め方は?給与との違いや相場、変更のルールも解説」

事業年度を調整する

設立1期目の事業年度を長めに設定すれば、消費税の免除を受けられる実質的な期間を延ばせます。

例えば、法人設立が4月で決算月を9月とした場合、1期目の免除期間は6ヵ月間です。一方、決算月を3月に設定すると、1期目の免除期間が12ヵ月間となり、2期目も免除を受ければ、最大2年間の免除期間を活用できます。

また、法人化のタイミングを工夫するのも手段の一つです。個人事業主と法人は別の事業者として扱われるため、条件次第では最大約4年間(個人事業主の開業当初2年間と法人設立後の2年間)の免税を受けられることがあります。

ただし、事業年度は消費税の免除期間だけで決めるのではなく、事業の繁忙期や税務処理の負担等を考慮した設定が重要です。

法人設立後はインボイス制度に対応すべき?

個人事業主が法人化した際、原則として2年間は消費税の納税義務が免除されますが、必ずしも免税事業者のままでいることが望ましいとは限りません。

2023年10月1日よりインボイス制度が開始され、インボイスのある取引でなければ仕入税額控除を受けられなくなりました。

インボイスは、インボイス発行事業者として登録を受けた課税事業者でなければ発行できません。

そのため、登録を受けると消費税の免除は受けられなくなりますが、インボイスの発行が可能となります。取引先が仕入税額控除を受けられるため、設立初期の取引拡大に効果的な場合もあります。

ただし、課税事業者になるべきかどうかは、事業内容や取引状況等によって異なるため、慎重に検討しましょう。

法人設立後の適切な資金管理に法人口座を活用しよう

個人事業主が法人化した際には、事業用資金と個人資金を明確に分けて管理することが重要です。消費税の免税を受けている期間中であっても、売上や経費、給与の管理には適切な会計処理と資金管理が欠かせません。

また、資本金や売上等によっては、設立2期目から消費税の納税義務が生じたり、インボイス制度への対応が必要となる可能性もあります。そのため、できるだけ早期に法人口座を開設し、資金管理体制を整備することが望ましいでしょう。

法人口座を開設すると、資金の流れが可視化されて経営判断を行いやすくなるほか、社会的信用度が向上する等のメリットもあります。

関連記事:「起業1年目にやるべきことと赤字を防ぐ対策|利益率・資金繰りの実態を解説」

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まとめ

個人事業主が法人化すると、設立前の課税売上高に関わらず、消費税の納税義務が2年間免除されます。

ただし、資本金が1,000万円以上の場合やインボイス発行事業者、特定新規設立法人に該当する場合等は、免除の対象となりません。

また、消費税が免除される条件を満たしていても、必ずしも免税事業者のままでいることが自社にとって最適とは限りません。取引先への影響や売上規模、資金繰りの見通し等を総合的に考慮し、自社に合った判断を行いましょう。

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監修者

安田 亮

安田 亮

  • 公認会計士
  • 税理士
  • 1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

HP:https://www.yasuda-cpa-office.com/

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