エクイティとは?デットとの違いからメリット、注意点まで分かりやすく解説
掲載日:2025年11月6日資金調達
事業の成長において、「資金調達」は欠かすことのできない重要な要素です。中でも「エクイティ(出資)」は、融資とは異なり返済義務が発生しない手法として注目を集めています。
本記事では、エクイティとは何かという基本的な定義から、その仕組み、融資や投資との違い、メリット・デメリットまでを体系的に解説します。併せて、エクイティ調達が適している企業の特徴や活用時の留意点についても紹介し、資金戦略の検討に役立つ情報を総合的にお届けします。
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目次
エクイティとは?
エクイティとは、企業が株式等の形で出資を受け、資本を増強する資金調達手法です。出資を行った投資家は企業の所有権の一部を保有する「株主」となり、出資を受けた企業には返済義務がありません。
このように、エクイティは借り入れによる資金調達(いわゆる「デット=他人資本」)とは大きく性質が異なります。デットでは返済義務や利息負担が生じますが、エクイティでは出資者が企業の一部を所有する代わりに、返済の必要はありません。
なお、「エクイティ」という言葉は本来、自己資本そのものを指しますが、実務では資金調達手段(エクイティファイナンス)を意味する文脈で使用されることも一般的です。本記事では後者の意味も統一して「エクイティ」と表記します。
エクイティとデットの違い
企業が資金を調達する手段は、大きく分けて「エクイティ」と「デット」の2種類に分類されます。両者は、資金の出し手や返済義務の有無、経営への影響といった点で明確に異なります。
以下に、エクイティとデットの代表的な違いを整理します。
| 比較項目 | エクイティ(自己資本) | デット(他人資本) |
|---|---|---|
|
返済義務 |
なし(出資者は資金回収を配当や株式売却で行う) |
あり(元本と利息の返済が必要) |
|
資金の出し手 |
株主(投資家) |
債権者(銀行・金融機関・社債購入者等) |
|
資本コスト |
高め(配当や売却益など投資家の期待リターンが大きい) |
比較的低め(市場金利+信用リスクに応じた利息) |
|
経営権への影響 |
あり(議決権や株主総会での発言権) |
原則なし(返済不能時にのみ関与する場合あり) |
|
財務上の扱い |
自己資本として計上 |
負債として計上 |
|
信用への影響 |
自己資本比率の向上に寄与 |
債務超過リスクあり |
|
利用される場面 |
スタートアップや成長期企業、ハイリスク・ハイリターン投資等 |
安定収益が見込まれる企業の資金繰り・設備投資等 |
このように、エクイティは返済不要で財務的な余裕を持てる一方、経営判断には株主の意向が反映される可能性があります。一方で、デットは経営の自由度を維持しやすいものの、返済義務が伴います。
それぞれに利点と注意点があるため、企業の状況に応じて使い分けることが重要です。
関連記事:融資とは?出資・投資との違いと法人が活用するための基礎知識
エクイティの種類と主な手法
エクイティには、企業の状況や目的に応じて多様な形態があります。企業の目的や状況に合わせて、発行する株式の種類や資金調達の手法を適切に選定・組み合わせることで、資本政策を戦略的に構築することが可能です。
ここでは、エクイティを構成する基本的な要素である「株式の種類」と「主な手法」について、それぞれの代表的な選択肢を解説します。
株式の種類
まず押さえておきたいのが、投資家に対して提供する「株式」の種類です。株式ごとに異なる権利や条件が設定されており、どの種類を発行するかによって、株主との関係性や企業の意思決定に与える影響が大きく変わります。
代表的な株式の種類は、以下の2つです。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
|
普通株式 |
最も一般的な株式。議決権があり、企業の成長とともに価値が上昇する可能性がある。 |
|
優先株式 |
配当や残余財産分配で優先されるが、議決権は制限されることが多い。 |
スタートアップの資金調達では、投資家が一定のリスクを引き受ける代わりに、配当や売却時のリターンを優先的に受け取れる「優先株式」が選ばれることもあります。
調達の手法
エクイティでは、誰に対して・どのような条件で出資を受けるかによって、選択すべき調達手法が異なります。企業の成長フェーズや目的に応じて、適切な手法を組み合わせることが重要です。
以下に、代表的な調達手法を整理します。
| 手法 | 概要 |
|---|---|
|
第三者割当増資 |
特定の投資家(例:ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家)に対して新株を発行し、資金を調達する手法。スタートアップにおいて最も一般的に用いられる。 |
|
SAFE/J–KISS |
将来の株式発行を前提に、現時点では株価評価を行わずに資金を受ける契約形態。初期フェーズのスタートアップで多く活用される。日本ではJ-KISSが主流。 |
|
ストックオプション |
あらかじめ設定した価格で将来的に株式を取得できる権利を発行する手法。従業員インセンティブとしての活用が多いが、資金調達と併用されるケースもある。 |
|
株主割当増資 |
既存株主に対して持株比率に応じて新株を割り当てる手法。企業の支配権を維持しながら資金を調達したい場合に選ばれる。 |
|
公募増資 |
不特定多数の投資家に向けて新株を発行し、広く資金を集める手法。主に上場企業が活用する。 |
|
転換社債型新株予約権付社債(CB) |
債券として資金を調達し、一定条件で株式に転換できる仕組み。成長企業や上場準備企業で利用される。 |
このように、エクイティには複数の手法が存在し、それぞれ出資者の性質や企業の成長段階、資本政策の方針によって選択肢が異なります。調達の目的や将来の事業展開を見据えたうえで、適切な手法を戦略的に選ぶことが重要です。
主な投資タイプと出資元の特徴
エクイティによる資金調達では、どのような投資タイプから出資を受けるかによって、調達可能な金額、経営への関与度、得られる支援内容が大きく異なります。
以下に、代表的な投資タイプとその出資元の特徴を整理します。
-
ベンチャーキャピタル(VC)
主にスタートアップや成長企業を対象に、数千万円〜数億円規模の出資を行う機関投資家を指します。シリーズA〜C等、企業の成長段階に応じて複数回の出資を行うケースが一般的です。経営支援や人材紹介、ネットワークの提供等、ハンズオン支援を行うことも多くあります。 -
コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)
事業会社が戦略目的の基に設立した投資部門を指します。資金提供に加え、共同開発や販路支援等、出資先企業と自社事業とのシナジー創出を重視します。純投資よりも戦略的関係性が重視される傾向にあります。 -
エンジェル投資家
主に創業初期の企業に対して、個人が自己資金で出資を行います。投資規模は数百万円〜数千万円程度が一般的です。出資と併せて、投資家自身の起業経験や人的ネットワークを生かした実践的な助言を提供することもあります。 -
クラウドエクイティ(株式投資型クラウドファンディング)
オンラインプラットフォームを通じて、多数の個人から少額ずつ出資を募る仕組みです。エンジェル投資の拡張的手法とも言われ、資金調達に加えて知名度向上やファン形成といった効果も期待されます。一方で、出資者が分散することによる株主管理や意思決定の複雑化には注意が必要です。
このように、投資タイプごとに出資の特性や支援の内容、経営への関与度合いが異なるため、企業は自社の成長フェーズや目的に応じて、適切な出資元を見極めることが重要です。
関連記事:クラウドファンディングのメリット・デメリットを徹底比較|種類別の特徴と事例も紹介
エクイティのメリットとデメリット
エクイティは、返済不要の成長資金を確保できる有効な手段である一方、経営面で留意すべき点も存在します。ここでは、エクイティのメリットとデメリットを解説します。
エクイティのメリット
- 1.
返済義務がない
調達した資金は自己資本となるため、融資等とは異なり、元本や利息の返済義務が生じません。そのため、キャッシュフローが安定していない創業期や、事業が赤字の段階でも資金繰りを圧迫するリスクが低く、事業成長に集中できる点は大きなメリットです。 - 2.
財務体質の改善に寄与
エクイティによる調達は自己資本に計上されるため、自己資本比率が高まり、債務超過リスクを軽減できます。 - 3.
信用力向上に繋がる
経験豊富な投資家から出資を受けることで、事業の成長性や信頼性が客観的に評価されているという証明になります。これは、金融機関からの追加融資や、新たな取引先との関係構築において、与信力の向上に繋がる場合があります。 - 4.
事業拡大に必要な金額を調達しやすい
特にベンチャーキャピタル等は、将来の企業価値を評価して比較的大きな金額を出資する傾向があり、研究開発や海外展開といった大規模投資にも対応しやすくなります。
エクイティのデメリット(注意点)
- 1.
経営権の希薄化
新たに株式を発行すると、既存株主の持株比率が低下します。これを「株式の希薄化(ダイリューション)」と呼びます。創業者の持株比率が大幅に低下した場合、重要な経営判断を単独で行うことができなくなり、経営の主導権を失うリスクがあります。 - 2.
株主との利害調整が必要
株主は出資の見返りとして配当や企業価値の向上を求めます。企業はこれに応える形で、利益配分や経営方針に配慮する必要があります。 - 3.
情報開示の負担が増す
株主に対しては、事業の状況や財務情報を定期的に報告し、経営戦略について説明する責任が生じます。特に、上場後は法制度に基づく厳格な適時開示(ディスクロージャー)が義務付けられ、その対応が生じます。
このように、エクイティは資金調達と引き換えに、経営の自由度や意思決定プロセスに影響を与えるため、企業のビジネスモデルや戦略等に応じて選択しましょう。
どのような企業にエクイティが向いているか
エクイティは、すべての企業に適しているわけではありません。成長ステージ、資金ニーズ、経営方針に応じて、向き不向きが存在します。ここでは、エクイティが効果を発揮しやすい企業の特徴をご紹介します。
1.成長資金を求める創業初期のスタートアップ
創業初期のスタートアップは、売上や利益よりも将来の成長性が評価されるため、エクイティによる資金調達が利用されることがあります。特にテクノロジーやSaaS領域等、初期段階で大規模な先行投資が必要な事業においては、返済不要のエクイティが好まれる傾向があります。
2.急成長ステージにある中堅企業
事業基盤がある程度整っている企業の場合でも、第二成長期における大規模な投資局面で急成長を望む場合にはエクイティが有効です。例えば、海外進出や大規模な設備投資、M&A等では一時的に資金需要が膨らむため、自己資本を厚くして財務健全性を維持しながら成長を加速させる例があります。
3.社会的インパクトを重視する企業(ESG・地域創生等)
環境技術、教育、医療、地域活性といった分野では、財務リターンだけでなく社会的価値を重視する投資家(インパクト投資家)との親和性が高いといえます。こうした企業は、共感に基づくクラウドエクイティやインパクトファンドを通じて、長期視点の資金を確保するケースが増えています。
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まとめ
本記事では、「エクイティとは何か?」という基本的な定義から、その仕組み、デットとの違い、具体的な活用事例までを網羅的に解説しました。
エクイティは、返済不要でありながら企業の将来性に対して評価を得る資金調達手段として、特にスタートアップや成長企業にとって不可欠な選択肢です。一方で、経営権の希薄化や株主対応等の制約も伴うため、すべての企業にとって万能な手法ではありません。
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