法人の社会保険料は口座振替できる?メリット・注意点や手続方法を解説
掲載日:2025年11月6日法人口座
目次
法人は毎月、従業員負担分と事業主負担分を合わせて社会保険料を納付しなければなりません。社会保険料は、金融機関での納付の他に、口座振替やインターネットでの納付が可能です。
本記事では、法人の社会保険料を口座振替で納めるメリット・注意点や、口座振替を利用するための手続きの方法を解説します。
社会保険料を滞納した場合の影響や労働保険料の納付方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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法人の社会保険料は口座振替で納付できる
法人が毎月納める社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)は、口座振替による納付が可能です。納付方法は以下の3種類です。
- 金融機関の店舗
- 口座振替
- 電子納付(Pay-easy)
なお、電子納付とは、インターネットバンキング・モバイルバンキング・ATM等を利用して納める方法を指します。
法人の社会保険料の納付とは
法人は、毎月の給与および賞与から従業員の負担分を控除し、事業主負担分と合わせて、日本年金機構(年金事務所)に社会保険料を納めます。なお、社会保険料には、以下の保険料が含まれます。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料(健康保険料に含まれています)
納付期限は、「納付対象月の翌月末日」とされており、末日が休日にあたる場合は翌営業日が期限となります。例えば、4月分の保険料は、5月末日が納付期限です。
保険料額は、毎月20日頃に日本年金機構(年金事務所)から送付される「保険料納入告知書」または「保険料納入告知額・領収済額通知書」(口座振替の場合)で確認できます。
法人の社会保険料を口座振替で納付するメリット
法人が社会保険料を口座振替で納付することで、主に以下のようなメリットがあります。
- 金融機関に出向く手間が省ける
- 納付忘れが起きにくくなる
- 事務負担が軽減される
業務の効率化を図りたい方や滞納のリスクを回避したい方は、口座振替による納付を検討しましょう。
金融機関に出向く手間が省ける
口座振替で納付すれば、保険料が毎月自動で引き落とされるため、金融機関に出向く必要がありません。金融機関までの移動時間や店舗での待ち時間を省けるほか、交通費の削減にもつながります。なお、口座振替による納付は手数料も無料です。
通常、納付書は毎月20日前後に届くため、納付期限(末日)までの期間に余裕がないこともあります。口座振替を利用すれば、限られた期間内に納付手続きを行う必要がなく、安心して対応できます。
納付忘れが起きにくくなる
一度口座振替の手続きを行えば、以後は毎月の納付手続きが不要となるため、納付忘れのリスクを軽減できます。
その結果、延滞金の発生や、行政・金融機関からの信用低下といったリスクも回避しやすくなります。
事務負担が軽減される
社会保険料を口座振替で納付すれば、納付書の管理や金融機関での納付手続きが不要になり、担当者の事務負担を軽減できます。
これにより、業務が効率化され、他の業務により多くの時間を充てられるでしょう。
法人の社会保険料を口座振替で納付するための手続き
社会保険料を口座振替で納付するには、事前の手続きが必要です。以下の流れで手続きを進めましょう。
- ①「保険料口座振替納付(変更)申出書」を記入する
- ②金融機関の確認を受ける
- ③所轄の年金事務所に提出する
なお、すでに口座振替を行っている場合で、振替口座を変更する際も、「保険料口座振替納付(変更)申出書」の提出が必要です。
①「保険料口座振替納付(変更)申出書」を記入する
「健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」を入手し、必要事項を記入しましょう。申出書は2枚綴り(1枚目が年金事務所用、2枚目が金融機関用)となっており、日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。
主な記載項目と記載方法は以下の通りです。
| 項目 | 記載方法 |
|---|---|
|
提出先 |
所轄の年金事務所長名を記載する |
|
日付 |
提出日を記載する |
|
提出者記入欄 |
事業所整理番号・事業所番号(新規申出時は空欄)、事業所所在地、事業所名称、事業主氏名、電話番号を記載する |
|
振替事由 |
新規(新たに口座振替を申し出る場合)または変更(口座を変更する場合)に○を付ける |
|
指定預金口座 |
金融機関名・支店名・預金種別・口座番号(ゆうちょ銀行の場合は記号・番号)を記載する |
|
押印 |
金融機関によっては2枚目(金融機関提出用)に金融機関届け出印を押印する |
なお、振替に使う預金口座の名義は、年金事務所に登録されている事業所の情報(所在地・名称・代表者氏名)と一致している必要があります。
②金融機関の確認を受ける
口座振替を行う金融機関に申出書を提出すると、金融機関が預金口座の照合を行い、1枚目(年金事務所用)を年金事務所に送付します。
ただし、金融機関によっては、確認後に申出書が返却されることもあります。その場合は、1枚目の「金融機関の確認欄」に必要事項が記載されていることを確認したうえで、次の③のステップに進みましょう。
なお、ネット銀行を振替口座として指定する場合は、金融機関を経由せず、申出書を直接年金事務所に提出します。
③所轄の年金事務所に提出する
金融機関から申出書を返却された、またはネット銀行を振替口座として指定する場合は、事業所の所在地を所轄する年金事務所に、申出書の2枚(年金事務所用・金融機関用)をあわせて提出します。提出方法は以下のいずれかです。
- 事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所へ郵送する
- 年金事務所に持参する
事務センターまたは年金事務所の所在地は、日本年金機構のウェブサイトで確認しましょう。
法人の社会保険料を口座振替で納付する際の注意点
社会保険料を口座振替で納付する際に注意点を把握していないと、手続きが遅れたり、意図せず滞納となったりするおそれがあります。スムーズかつ確実に納付するために、以下の3点を事前に確認しておきましょう。
- 取扱のできない金融機関がある
- 振替開始までに時間がかかる場合がある
- 口座残高が不足していると滞納となる
取扱のできない金融機関がある
社会保険料の口座振替は、すべての金融機関で利用できるわけではありません。手続きを行う前に、ご利用の金融機関が口座振替の対象かを必ず確認しましょう。
なお、対象金融機関の一覧は日本年金機構のウェブサイトで確認できます。
振替開始までに時間がかかる場合がある
「保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出した時期によっては、振替開始までに1~2ヵ月程度の期間が必要です。
申出書の提出後でも、振替が開始されるまでは納付書による納付が必要です。納付忘れが起きないように十分注意しましょう。
なお、振替開始時期が分からない場合は、年金事務所へ問い合わせてご確認ください。
口座残高が不足していると滞納となる
口座振替を利用すれば、社会保険料の納付を自動化でき、納付忘れを防ぎやすくなります。ただし、振替日に口座残高が不足していると、引き落としができず滞納となってしまいます。
納付専用の法人口座を開設する、振替口座の残高確認に関するルールを明確化する等の対策を行い、残高不足による滞納を防ぐことが重要です。
また、残高不足で引落ができなかった場合は、後日送付される納付書で速やかに納付しましょう。再引き落としに対応していない場合は、手動での納付が必要です。
関連記事:「法人口座を複数開設するメリット・デメリットは?使い分けの方法も解説」
法人の社会保険料の納付に関するよくある質問
最後に、社会保険料の納付方法や納付遅れに関するよくある質問を紹介します。
Q.社会保険料はクレジットカードで納付できますか?
A:社会保険料の納付方法は、金融機関の店舗、口座振替、電子納付(Pay-easy)の3つに限られており、クレジットカード納付には対応していません。
Q.社会保険料の納付が遅れるとどうなりますか?
A:残高不足等により納付期限を過ぎると、電話や文書、事業所への訪問等による納付督励(行政指導として自主納付を促す行為)が行われます。
督促状に記載された期限までに納付しない場合、延滞金が発生するほか、納付指導や財産調査が行われ、最終的には財産を差し押さえられる可能性があります。
なお、事業所の状況によっては分割納付が認められるケースもあるため、納付が難しい場合でも放置せず、早めに年金事務所へ相談しましょう。
Q.労働保険料は口座振替で納付できますか?
A:労働保険料(労災保険と雇用保険の保険料)は、口座振替で納付することが可能です。
口座振替を利用するためには、「労働保険 保険料等口座振替納付書送付(変更)依頼書兼口座振替依頼書」を提出する必要があります。必要事項を記入し、納期に応じた申込期間中に金融機関へ提出しましょう。
口座振替の対象となる金融機関は、厚生労働省のウェブサイトで確認できます。
社会保険料の納付には法人口座の活用を
社会保険料を口座振替で納付するためには、対象金融機関の法人口座が必要です。指定する振替口座の名義は、年金事務所に登録されている事業所の情報(所在地・名称・代表者氏名)と一致している必要があります。
また、法人と個人の資金を明確に分け、資金管理の透明性を維持するためにも、法人設立後はできるだけ早期に法人口座を開設しましょう。社会保険料を確実に納付するためには、納付用の口座を分けて管理するのも効果的です。
法人口座を開設するメリットをより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:「法人口座の開設方法は?メリットや金融機関の選び方、必要書類を解説」
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まとめ
法人が毎月納める社会保険料は、金融機関での納付の他に、口座振替やインターネットでの納付が可能です。口座振替を利用すれば、毎月社会保険料が自動で引き落とされるため、金融機関に出向く手間が軽減され、納付忘れも防ぎやすくなります。
「保険料口座振替納付(変更)申出書」に必要事項を記入し、金融機関または年金事務所に提出しましょう。
口座振替を利用した場合も、振替口座の残高が不足していると滞納となるため、社内でルールを明確化し、適切な資金管理を行うことが大切です。
<最短翌営業日に開設>来店不要で休日・夜間も受付中!
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監修者
安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。