起業するには何が必要?準備すべき項目や必要な手続きについて
掲載日:2022年10月14日 起業準備
起業には何よりも情熱や勢いが重要というイメージを持つ人は多いでしょう。情熱や勢いは確かにビジネスに欠かせないものですが、それだけで必ず成功できるわけではありません。起業の成功確率を高めるためには、念入りな事前準備も必要です。事前準備を怠ると、起業後に思わぬリスクを背負うことになりかねません。
本稿では、起業の成功につながる基礎知識や具体的な手続きの流れ、起業についてのよくある疑問について解説しています。
目次
起業の定義と起業形態
起業の定義は、個人事業主になること、または法人を設立することです。
個人事業主は一般的にフリーランスや自営業とも呼ばれ、特定の組織や他人から雇われることなく独立してビジネスをする個人を指します。
法人の設立とは、株式会社や合同会社、一般社団法人などを立ち上げることです。なお、「法人」以外の組織形態にはLLP(有限責任事業組合)や企業組合などがあります。
個人事業主と法人経営者の共通点は、ビジネスに裁量権を持つ代わりに、結果に対して責任を負うという点です。
起業に必要な主な6つの準備
ここからは、起業に欠かせない6つの事前準備について解説します。このフェーズをしっかり行うことで、良いスタートが切れるでしょう。
ビジネスアイデア・事業計画
起業における事前準備の第一段階では、ビジネスアイデアと事業計画を練り上げます。ビジネスを成功させたいなら、まずは土台となる事業計画を作成しないことには始まりません。
ビジネスアイデアや事業計画を考えるときは、ビジネスの種類や狙う市場を定めるだけでなく、起業の目的や動機も明確にしておきましょう。「適当に」「なんとなく」決めるのではなく、「なにを、どうして、なんのために」を合理的に突き詰めるのがポイントです。
資金調達・資金繰り計画
必要資金の調達方法についても、起業前にぬかりなく検討しておきましょう。起業時に必要な資金だけでなく、起業後の運転資金も確保できるような資金調達のプランを検討する必要があります。資金に関する見通しの甘さは赤字経営につながり、ビジネスの失敗を招きかねないので、資金繰り計画は入念に作り込むことが大切です。
起業時における資金調達には、いくつかの方法があります。詳しい資金調達方法については後述します。
人材確保計画
人材確保の必要性についても、事前に検討しておきましょう。創業者一人だけで運営できるビジネスならともかく、誰かの助けが必要と予想できる場合は、起業前の段階で人材確保に動く必要があります。
起業直後の大事な時期を乗り切るためには、優秀な人材を確保したいところです。人材確保の方法は様々ですが、一般的には、公共職業安定所(ハローワーク)や求人情報サイトなどの求人媒体を利用するケースが多いといえます。また、人脈を使って人材を確保するというのも一つの手です。
設備・オフィス・ホームページの準備
起業の前に、必要な「環境」と「モノ」を準備しましょう。必要な設備や備品、環境はビジネスの種類によって異なります。オフィスが必要なビジネスもあれば、パソコンさえあれば実現できるビジネスもあるでしょう。
なお法人を設立する場合、オフィスに関しては注意が必要です。法人を設立するには設立登記を法務局へ申請し受理されなければなりません。法人登記簿には「本店所在地」が記載されるため、どこかしらの住所を法人の「本店」として定める必要があります。また、行政による許認可の条件として一定の事業所の設置が求められるビジネスもあるのでその点も確認しておきましょう。
オフィスや設備などの物理的な要素の準備と並行して、会社の事業や商品を知ってもらうためのホームページやSNSアカウントといったデジタル関係の要素も準備しておくとスムーズです。
経営・マーケティング・法律の情報収集計画
昨今の情報化社会においては、情報を制するものがビジネスを制すると言っても過言ではありません。会計などの知識や、マーケティング関連の知識はもちろんのこと、ビジネスに関係する法律についても最低限の知識を持っておくことが望ましいでしょう。
例えば、株式会社を設立する場合、会社法の中でも意思決定の方法や経営者責任といった基本的なポイントだけでも押さえておきたいところです。
ビジネス用の銀行口座の準備
個人事業主にありがちですが、ビジネス用の口座と個人の生活費などのための銀行口座を同じにしてしまうと、起業後の会計処理が複雑になってしまいます。法律上の義務はありませんが、会計処理効率を上げるためにも個人用口座と別にビジネス用口座を用意しておきましょう。
法人の場合は、法人名義の口座を開設してビジネスに用いるのが通常です。
ここからは、起業までの基本的な流れについて具体的に解説していきます。
起業までの基本的な流れ・手順1:計画・準備編
まずは、競合調査および事業計画の作成です。
競合他社・市場の調査
起業前に、競合他社や市場を調査しましょう。競合他社のサービスについて調査し、自社が提供する予定のサービスと比較しましょう。競合他社のサービス一つひとつと比較していくことで、自社のサービスの長所と欠点を洗い出し、改良や改善につなげることができます。また、競合他社との比較や市場の調査は、適切な価格設定のためにも欠かせない手順です。
市場調査の方法の一つとしては、インターネットや電話を通じたアンケートがあげられます。市場調査会社に依頼するのが一般的です。構想段階でコストをかけたくない場合は、インターネットなどで参考になりそうな実施済みのアンケート調査結果がないか調べてみてください。アンケートによって需要を把握できれば、画期的なサービスや商品開発の糸口を掴めるかもしれません。
事業計画書の作成
ビジネスを順調に展開するには、精度の高い事業計画書を作成することが肝心です。事業計画書を作成することで、事業の方向性を明確にできるだけでなく、ビジネスアイデアに一貫性や説得力を持たせられます。また、融資を取り付けたり優秀な人材に参加してもらったりするためにも、何をどのように解決するのか、収益性や将来性を含め魅力が伝わるように作成することが大切です。
事業計画書の作成方法についてはインターネットで調べると解説記事が多くあり、テンプレートも取得できます。独立行政法人の中小企業基盤整備機構のウェブサイトなどでは、実例を見ることもできるので参考にしてみてください。
起業までの基本的な流れ・手順2:資金調達編
次に、起業時に必要な資金の調達方法について解説します。資金調達の方法は、主に「自己資金」「融資」「出資」の3つです。順番に詳しく見ていきましょう。
自己資金を投入する
貯金などの「自己資金」を事業資金に投入するのが最もシンプルな資金調達方法です。融資や投資とは違って、起業する人だけで資金調達が完結してしまうので、特に起業を急ぐような事情があるときはこの方法がスムーズだといえます。起業時はひとまず自己資金を使っておき、ビジネスが拡大してから改めて融資や出資を検討するのも手です。
融資を受ける
自己資金が足りない場合の資金調達方法の一つが金融機関から必要な資金を借りる「融資」です。融資を受けるには、銀行などの金融機関へ融資の申し込みを行う必要があります。金融機関は提出された事業計画書などの資料や起業する人の経験・能力、返済の可能性などを総合的に審査します。
融資を受けられるかどうかは、金融機関による審査の結果次第です。各金融機関によって融資の種類や審査基準が異なるので、ウェブサイトなどで調べてください。民間金融機関以外には日本政策金融公庫が創業融資に取り組んでいます。
出資を受ける
自己資金が足りない場合の、もう一つの資金調達方法が「出資」を受けることです。自己資金と融資でまかなうのが一般的とはいえ、大きな金額が必要な場合にベンチャーキャピタル(VC)や創業して間もない企業へ出資するエンジェル投資家などからの出資を募るケースは珍しくありません。
VCや投資家が出資する際の重要な判断基準の1つが「リターン」です。出資によるリターンとはインカムゲインやキャピタルゲインが代表的ですが、創業期の会社に出資する投資家のほとんどはキャピタルゲインを重視する傾向にあります。出資を募る場合は、出資者に熱意や将来性を示し、納得感を持ってもらうことが大切だといえるでしょう。
なお、個人事業主には「出資」という概念はそぐわず、出資はあくまでも法人用の資金調達方法です。ただし、個人事業主でもクラウドファンディングなどを利用して不特定多数の投資家から資金を集めることはできます。クラウドファンディングは厳密な審査などがないため法人においても出資を募りやすいですが、ビジネス自体の魅力や支援者へのリターンが魅力的でないと、まとまった資金を得るのが難しいという側面があります。
補助金・助成金を申請する
起業の内容によっては、国や地方自治体から補助金や助成金を受けることができます。補助金や助成金を受けるための条件は自治体によって異なるため、事前に該当窓口で確認しておきましょう。個人事業主でも、自治体による補助金や助成金の対象になるケースがあります。
「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」では研究開発型スタートアップ支援事業を行っており、研究開発段階でまだ芽が出ていない技術を持つ起業家に対して事業化に向けた助成・サポートをしています。助成内容は年度ごとに異なるので、機構のウェブサイトにて確認してみてください。
起業までの基本的な流れ・手順3:事業開始に必要な手続き編
ここからは、事業を開始するために必要な手続きの内、届出や登記、許認可などの事務的な面について、会社設立と個人事業主に分けて解説していきます。
会社設立に必要な手続き
会社設立に必要な事務的手続きについて、株式会社を例にして解説します。株式会社を設立する場合に必須となる事務的手続きの大まかな流れは以下の通りです。
- 定款作成
- 公証役場での定款認証
- 出資金の払込
- 法務局での会社設立登記
公証役場での定款認証と法務局での会社設立登記には、通常、印紙代や登録免許税などに一定の費用がかかります。また、定款作成や定款認証、会社設立登記を司法書士などの専門家に依頼するなら、印紙代や登録免許税に加えて専門家への報酬も必要となるので、事業資金だけでなく手続きにかかる費用も別途準備しておきましょう。
会社設立についてはこちらの記事を参照ください。
業種ごとの各種許可申請手続き
業種によっては、行政・地方自治体からの許認可を受けなければならない場合があります。以下は、許認可が必要なビジネスの一例です。
- 建設業
- 食品製造業
- 酒類販売業
- 薬局
- 古物営業
- 宅地建物取引業
- 飲食店営業
- 美容業
- 風俗営業
許認可の申請先は、業種によって異なります。スムーズに営業を始められるよう、申請先だけでなく申請に必要な書類も確認しておきましょう。
従業員を雇用するために必要な手続き
従業員を雇用する際の第一段階が「労働契約」の締結です。厚生労働省によると、労働者を雇用する際の労働契約では以下の事項を書面により明示しなければならないとされています。
- 労働契約の期間
- 就業の場所・従事する業務の内容
- 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
- 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
労働条件の明示義務に違反した場合は、罰金刑が科せられることがあるため注意が必要です。契約締結後、契約内容に応じて各種保険の加入や労働条件通知書の交付といった手続きを進めていきます。労働者災害補償保険は労働基準監督署へ、雇用保険は公共職業安定所へとそれぞれ届出先が異なるため、必要書類について事前に確認しておきましょう。
個人事業主としての開業必要な手続き
個人事業主として起業する場合は、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。届出に費用はかかりません。
また、必要に応じて「青色申告承認申請書」も合わせて提出します。事業所得の確定申告は、白色申告と青色申告の2種類から選ぶことが可能です。青色申告なら税制上の優遇措置を受けられますが、複式簿記による帳簿を作成する必要がある等、税務処理は白色申告よりも複雑になります。
起業についてのよくある疑問
どの起業形態を選べば良いのか?
どの起業形態を選ぶべきかについては、絶対的な正解はありません。個人事業主には個人事業主の、法人設立には法人設立のメリット・注意点があるので、ビジネスプランにあてはめて考えてみてください。
以下では、個人事業主と法人の違いについて、主なポイントをまとめています。
個人事業主 | 法人 | |
---|---|---|
起業の届出や設立にかかる費用 | 開業届出に費用はかからない | 法人の形態によるが、定款認証や登記に数万円以上の費用がかかるのが一般的 |
所得に関する税金 | 累進課税所得税なので、儲けが増すほど税率が高くなる | 法人税が適用され、どれだけ所得が増えても税率は23.2%まで |
経費 | 事業に関わる支出は経費として計算できる | 事業に関わる支出の他、自身の給与や生命保険料も経費計上可能 |
社会的な信用度 | 個人の信用度がそのまま反映されやすい | 法人組織としての信用度が評価される |
どちらが良いか決めかねる場合は、例えば最初は個人事業主として起業し、所得が増えてきたら法人化する等、状況に応じて検討するのも手です。
起業での失敗を避けるコツは?
起業での失敗を避けるコツは、マーケティング戦略とリスク回避にあります。たとえ自分の中で最高と思える商品やサービスを提供しても、消費者がそれらを求めていないなら売上にはなりません。まずは市場のニーズや規模を把握し、市場にマッチする商品やサービスを提供することが重要です。また、長期的な視点を持ち、時代の流れにも柔軟に対応していけるマーケティング戦略を立てましょう。
起業時のリスク回避としては、まず、起業の初期費用を可能な限り削減する方法があげられます。まずは副業から始めて様子見をするのも手堅い方法です。
ただし、起業を成功に導きたいのであれば、戦略やリスク回避といったテクニックだけでなく、強いモチベーションや熱意は必須です。「なぜ起業するのか?」「どうすれば成功できるのか?」を常に自問自答し、熱意を持ってビジネスに取り組む姿勢が結果を左右します。
まとめ
起業するには、まず自分に合う起業形態を見極め、準備・計画から資金調達、手続きまでをスムーズに行うことがポイントです。ケースに応じて税務署や公共職業安定所、年金事務所などでの手続きが必要で、起業後には事業用の銀行口座開設など会社を運営するうえで重要な要素もあります。
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(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
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