「事業再構築補助金」で、新たな成長戦略を!
掲載日:2021年8月23日事業戦略
長引く新型コロナウイルス感染症の影響で、需要の回復や売上構築が見込めず、打撃を受けている企業が多いといわれています。そこで政府は、停滞している国内経済を改善するため、特に、コロナ禍で損害を受けた企業に、様々な支援策を打ち出しています。
本稿では、その中でも注目を浴びている「事業再構築補助金」の詳細と、成長戦略に乗り出すために、当該補助金を受けた企業の事例を紹介していきます。
発想を磨き、将来の“収益源”を立案する
新型コロナウイルスの影響で、経済と社会の状況が一変した今、従来の営業手法と同様の事業展開を続けるだけでは、自社の存続が危ぶまれると悩む経営者が増えているかもしれません。
しかし、そんな方々の強い味方になるものが、「事業再構築補助金」です。
これは、経済産業省が、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少しながらも、業種・業態転換・新事業など、変化に対応する新しい取り組みや、思い切った事業再構築にチャレンジしようとする中小企業等を支援しようとするもので、その補助金額は、最大で1億円です。
例えば、コロナ禍においては、「感染症対策」はもちろん、「巣ごもり消費」「在宅勤務」などをキーワードにした分野の事業が伸びているといわれています。
自社の事業を再検証して、そうした成長分野への進出や事業転換の可能性を探っている企業にとって、この事業再構築補助金は、自社の新ビジョンを描きながら、将来の収益源を確保するための“武器”となるかもしれません。
「ピンチをチャンスに変える」。企業のリーダーには、常に、こうした発想が求められますが、事業再構築補助金を活用することは、新しい成長戦略を立案するために、有効な一手といえるでしょう。
申請できる類型は5種類。公募対策のためにはチェックを怠らずに!
事業再構築補助金の、第1回と第2回公募はすでに終了してしまいましたが、第3回の公募は7月下旬からスタートしていて、さらに2021年度内に、複数の公募が予定されています。
これまでは知らなかった、申請する時間がなかった、あるいは、申請しても通らなかったという中小企業の経営者は、自社の将来を見据えた事業構築を練り込むとともに、「事業再構築補助金」の概要やポイントをしっかりと理解して、早めに、次の申請準備をしておくべきかもしれません。
- *申請の詳細や要件などについては、「補助金」についてまとめてある、みずほスマートポータルの記事「中小企業の救世主!「補助金」最新ガイド」を参照してください。
ちなみに、この事業再構築補助金の種類には、中小企業向けの「通常枠」と「卒業枠」、中堅企業向けの「通常枠」と「グローバルV字回復枠」、そして、中小企業と中堅企業が同時に対象となっていた「緊急事態宣言特別枠(第3回は公募中止)」といった、5つの類型があります。
「通常枠」以外に、「卒業枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」がありますが、「卒業枠」というのは、資本金あるいは従業員を増やして、中小企業から中堅・大企業へと成長することをめざすためのものといえます。
また、「グローバルV字回復枠」とは、減少した売上のV字回復をめざすためのもの、「緊急事態宣言特別枠」とは、早期の事業再構築をするためのものとなります。
いずれの類型においても、企業が申請できるのは、1回の公募について1回まで。そして、それぞれの類型によって、申請できる条件が異なり、また、補助額は100万円~1億円、補助率は4分の3から3分の1といった具合に内容が変わってきます。
公募の状況を知るためには、中小企業庁のウェブサイトをチェックしてみてください。
類型により異なる難易度。2件しか応募のない枠も……
第1回の公募には、17,050件(要件を満たした申請件数14,913件)の応募があり、審査の結果、5,150件が補助金を受けることになりました。ちなみに、通常枠がもっとも多く、卒業枠への応募は80件で、うち申請要件を満たしたのは69件。そこから45件が選ばれました。
グローバルV字回復枠への応募はわずか2件で、そのうち申請要件を満たしたのは1件のみで、この事業計画で応募した企業が選ばれました。
審査は厳正に行われており、応募すれば通るわけではないようです。
企業が、事業再構築補助金を申請するための要件は以下の3つです。
- ①売上が減っていること
- ②事業再構築に取り組むこと
- ③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
上記に合致する中小企業等は、「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を策定することが必須です。提出された事業計画は、外部有識者からなる審査委員会が評価し、より優れた事業計画が選ばれます。
「卒業枠」や「グローバルV字回復枠」では、特に優れた内容が求められるようです。
事例を参考に、自社の“未来”を創造する!
では、具体的にどのような「事業再生構築計画」が選ばれたのか、第一回公募の中から事例を抜粋して紹介します。
まず、群馬県にある居酒屋A社では、自動販売機を活用した“非対面式”弁当販売への事業転換を計画して、選ばれています。
とはいえ全体を見渡すと、必ずしも「非接触」「デリバリー」といった“距離を保つ”サービス展開をする事業構築が優遇されているわけでもないようです。
北海道は立地的に宇宙関連産業が振興されていますが、橋梁やクレーン、産業機械などの設計・製作・施工を行っているB社は、これまでの技術力を生かして、成長が期待できる「宇宙産業」への進出をめざした新規事業を構築したうえ、地域経済の活性化して雇用を守るという計画を打ち出したところ、選ばれました。
地域と合わせた方向性を打ち出したことが、補助金を受けることに結びついたと思われます。
建設業を営む埼玉県のC社は、もともと外食事業部を併設し、魚を中心とした食堂も運営していました。そのノウハウをいかして、「プロジェクションマッピングを活用した空間体験、釣りや干物作り体験等のエンターテイメント性をかねたテーマパークレストラン」を計画することによって、補助金を得て、これを推進していこうとしています。
まったく分野の異なる新事業に進出する企業もあります。
九州地方で30店ほどの飲食店を展開しているD社は、飲食店での売上激減に歯止めをかけるべく、「シニア向けのストレッチスタジオでサブスクモデル構築」という新事業を打ち立てました。
また、金属加工メーカーE社では、新型コロナウイルス感染症への対応で逼迫する医療に対して、人工呼吸器バルブを提供する新規事業を興す計画を立てています。
以上は、事業再構築補助金を得た企業のごく一部ですが、ある傾向としては、「医療分野」「飲食店におけるテイクアウト事業」「オンライン事業」などが目立つようです。
いずれにしても、事業再構築補助金に応募するためには、企業としての将来性と事業性をしっかりと練り込むことが大切ですが、申請する際に提出する事業計画書は、15ページ以内とされていますので、その範囲で分かりやすくまとめることもポイントだと思われます。
ちなみに、事業再構築補助金の申請は、電子申請システムでのみ受け付けており、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
このアカウントは、取得までに3週間程度かかるとされていますので、まだ取得していない場合は、早めに対応すると良いでしょう。
事業が伸び悩んでいる場合止まっているだけではなく、補助金等の制度を活用しながら会社の未来を描くことが重要かもしれません。
中小企業経営者に求められるのは、「変化に対応する」といった発想と行動力、そしてチャレンジ精神だといえるでしょう。
事業再構築補助金の概要を理解して、自社の“未来”への道筋を考えてみてください。
(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)