事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイントを分かりやすく解説!
掲載日:2022年11月28日 法人口座開設準備
事業計画書とは、今後の事業の内容や成功させるための戦略、収益と費用の見込み等を説明した計画書です。優れた事業計画書は、それが経営者自身の指針になるとともに、計画の通りに進めればうまくいくと読み手に思わせることができます。
しかし、そのためには根拠となる数字を明らかにし、具体的で説得力のある表現を用いる必要があるため、難しく感じる方も多いでしょう。
本稿では、一般的な事業計画書に記載される項目と記載する際のポイント、さらに事業計画と併せて検討しておきたい内容を分かりやすく解説します。
目次
事業計画書とは
事業計画書とは事業の内容や戦略、収支の見込み等を背景や根拠等も含めて明らかにした計画書です。企業全体についてのものと、一部の事業についてのものがあります。なお創業時の事業計画書を、特に「創業計画書」と呼ぶことがあります。
事業計画書を作成する主な目的は、「事業計画を言葉と数字で明文化して整理する」「ステークホルダー(取引先や金融機関、従業員等の関係者全体)に事業の内容を説明し理解を得る」といったものです。
事業計画書を作成すると、計画段階で矛盾する点や曖昧な点、経営上のリスクに気付きやすく、また経営方針に一貫性を持たせることもできます。さらに資金を調達する際や従業員とビジョンを共有する際の説明資料としても使用されます。
事業計画書の書き方
事業計画書には統一の様式があるわけではなく、作成する目的や提出先に応じて書き方が異なります。
提出先からの指定があれば、それに従って記入しますが、指定がない場合にはインターネット上で公開されている様式等が参考になり便利です。詳しくは記事後半の「無料で活用できる事業計画書のフォーマット・雛形」で解説します。
事業計画書を書く際は、様式を埋めることが目的になってしまわないよう注意してください。「自分が行おうとしている事業がなぜうまくいくのか」を根拠とともに他者に説明できるように推敲することで事業計画が洗練され、実際に行う事業が成功する確率が高まります。
事業計画書の記載項目
ここでは、事業計画書に記載する主な項目とその書き方を紹介します。
ビジョン・理念・創業の動機
事業計画書の冒頭には、ビジョンや理念が記載されることが多く、これらは短期的ではなく、長期的な目標・方針を記載します。ビジョンはその事業を行うことで実現しようとする目的であり、理念はその土台となる考え方や価値観です。
ビジョンや理念に代えて、創業の動機を記載しても良いでしょう。「利益が見込めるから」ではビジョンや理念につながりにくいですが、「ある悩み・課題を持っている人がおり、自社の商品・サービスによって解決に役立ちたいから」というように考えれば、企業としての役割が見えてきます。
経営者の略歴
経営者の略歴や実績を記載する際、その事業を成功させる能力や実績等があることを具体的に示せれば事業計画書の説得力が増します。読み手からすると、「計画している事業に関するノウハウ・経験の有無」はその事業がうまくいくかどうかの重要な判断材料だからです。
役職や営業成績のように分かりやすいものに限らず、自分の経験を広く見直して事業に役立てられるものはないかを考えてみましょう。経営・マネジメント職の経験がなくても、当該業界での実務経験が豊富であることは事業を進めるうえで役立つ可能性があります。
商品・サービスの特徴
提供する商品・サービスを記載します。どこまで具体的に記載するかは戦略や次の項目の「市場・競合の分析・自身の優位性」との兼ね合いを考慮して決めましょう。
例えば、飲食店の事業計画書で詳細なメニューまで明記することは一般的ではありませんが、自身だからこそ仕入・提供できる品がある場合などは別です。独自の強みを具体的に記載することで他店と比較した際の優位性をアピールできるのであれば、事業計画書の説得力が高まります。
市場・競合他社の分析・自身の優位性
市場・競合他社の分析や自身の優位性を事業計画書の根拠として組み込むことで、読み手に納得してもらいやすくなります。
自身の商品・サービスに自信があったとしても、消費者が購入するかどうかは、競合他社との比較によって決まることがほとんどです。仮に外部環境を無視した事業計画書では説得力に欠けてしまうでしょう。
そこで、競合を踏まえたポジションや強みを具体的に記載することが重要です。分析のための情報は、国や地方自治体などが発表している統計資料や民間のデータリサーチ会社の情報サービス、競合他社のウェブサイトのほか店舗予定地の視察等により収集できます。
仕入・生産・販売計画
商品売買業であれば、仕入と販売についての計画を記載します。加工業や製造業等であれば生産についての計画も必要です。
以前勤めていた企業の下請けとして独立する場合は、既に得意先が決まっているため、販売計画について説得力の高い記述ができるでしょう。同じく、仕入先と仕入値が記載されていれば数字の根拠にもつながります。
また、不特定多数の顧客を相手にする業種では、計画通りの売上を期待できるかを判断する際に、宣伝広告等の集客方法や成約率を上げるための戦術的な内容も重要です。
資金調達の計画
一般的に、必要な資金を設備資金と運転資金に分けて明らかにし、それらの資金を調達する計画を記載します。
必要な資金とは、事業開始までにかかる設備資金だけではありません。事業を始めても軌道に乗るまで利益が出ず、損失が続く見込みであればその間の運転資金も見積もる必要があります。運転資金が枯渇すれば事業の継続は困難になるため、軌道に乗るまでの期間の見積には余裕を持たせることが重要です。
また、資金調達は自己資金を記載し、それでも足りない部分を出資や融資で補う計画を立てます。
損益計画・見通し
損益計画とは、毎月の収益と費用を算出し、3~5年といった期間で収支(利益または損失)がどのように推移するかを計画したものです。事業開始直後のキャッシュアウトや軌道に乗るまでの期間、従業員を増やすタイミング等を考える際に役立ちます。
また、融資を受けた場合の返済を開始するのに適した時期を考える際にも重要です。
商品売買業のように多数の顧客に販売する場合には、損益分岐点を用いた見積も必要となることがあります。これは、費用を固定費と変動費に分け、それらを売上と比較して、何個またはいくら販売すれば収支が黒字になるのかを計算し参考にするものです。
無料で活用できる事業計画書のフォーマット・雛形
事業計画書は提出先からの指定がない限り、様式は自由です。
しかし、基準がないと逆に悩んでしまう方には、日本政策金融公庫が公開している各種様式が参考になります。「創業計画書」という1枚で多くの記載事項が網羅された様式と、上記で紹介した損益計画を立てるための「月別収支計画書」は日本政策金融公庫で融資を受けなくても基本様式として広く役立ちます。
同じく、独立行政法人中小企業基盤整備機構は「事業計画書フォーマット」として様式を公開しており、具体的な書き方や注意事項を分かりやすく解説しているのでこちらも参考になります。
また、表計算ソフトや会計ソフトにも事業計画書に使える様式が用意されていることがあり、フォームに入力していくと事業計画書が作成できるため便利です。
事業計画書を作成する際のポイント・注意点
ここからは、事業計画書を作成する際のポイントと注意点を解説します。
平易かつシンプルな表現を用いる
事業計画書はビジネス文書であり、融資等の審査に使われることもあるため、「かしこまった表現の方が良いのでは」と思われることもありますが、必ずしも硬い表現を用いる必要はありません。
以下のように、できる限り誰が読んでも理解できる平易かつシンプルな表現を用いましょう。
難解 | 平易 |
---|---|
SWOT分析の結果、弱点として挙げられる開店当初の知名度不足を解消するために、 | 地域の住民に、店舗がオープンすることを開店1ヵ月前から知ってもらうために、 |
来店の動機付けを兼ねた宣伝広告を行う。 | 割引券付きのオープンのお知らせチラシを1,000枚配布します。 |
提出先の読み手が理解しにくいと感じてしまえば、計画している事業が本来持つ魅力に気付いてもらえない可能性があります。そこで、家族や友人に見てもらい、意味が伝わりにくい箇所がないか意見を聞くのも有効です。
具体的な表現を徹底する
事業計画書は必要な記載事項をすべて盛り込んでいることが前提となっています。つまり、多くの場合、読み手に補足説明する機会がありません。そこで、誤解を招く表現を避けるのはもちろん、抽象的な表現も避け、具体的に記載することが重要です。
また、曖昧な表現では、説得力のある根拠にはなりません。事業計画書だけを見て、「この事業はうまくいきそうだ」と思ってもらうには、反論が生まれないような明確な論理の徹底が必要です。
抽象的・曖昧 | 具体的・明確 |
---|---|
店舗候補地には競合店が少なく、 | 店舗候補地の半径10㎞以内の競合店は1軒であり、 |
近いうちに、店舗を増やすことも視野に、 | 開業3年以内に、2店舗目を出すことを目安に、 |
地域住民の健康の促進に寄与します。 | 〇〇市のウォーキング愛好家を1割増やすことを目標とします。 |
読み手に合わせて調整する
事業計画書は読み手に合わせて調整する必要があります。読み手によって重視するべきことが異なるのと同時に、書き手が読み手に伝えたいことも異なるからです。
例えば、出資や融資をする側にとって、事業の成長性や回収期間を重視するのは当然ですが、「経営者がその事業におけるリスクを慎重に考慮できているか」も重要です。経営上重大なリスクについては、事業計画書の中であえて触れ、その対策も記載するのが望ましいでしょう。
しかし、従業員に対して、企業理念を共有することでモチベーションを高めるために書かれた事業計画書で経営リスクとその対策が羅列されていると、余計な不安を与えてしまいます。
このように、事業計画書は、読み手の欲しい情報や書き手の伝えたい情報に合わせて調整が必要です。
事業計画を立てる際に併せて検討しておきたいこと
ここでは、事業の内容に直接関係しないものの、事業計画と密接な関係にある補助金・助成金と会社設立時の手続きについて解説します。
活用できる補助金・助成金の調査
事業の時期や内容によって活用できる補助金や助成金があります。どちらも融資とは異なり、給付されたお金は、原則、返済する必要がありません。補助金や助成金の申請には「創業〇年以内または計画中」という条件付きのものがあるため、事業計画を立てる際に併せて検討しておくと良いでしょう。
特に、補助金は申請しても給付されるかは審査次第ですが、助成金の多くは要件を満たせば基本的に給付され、資金調達計画に組み込むことで財務負担を抑えることが可能です。補助金・助成金は種類が豊富なため、活用可能なものがないかを確認する価値があります。
創業時に使える補助金は?助成金・支援金や申請時の注意点も解説
登記など必要な手続きの確認
次に、当該事業を「個人事業主として行うか会社として行うか」を、事業計画と併せて検討すると良いでしょう。どちらを選択するかによって事業計画の内容にも違いが生じることがあります。
まず、会社を設立する場合には費用がかかるため計画書内の必要な資金が増え、さらに税金の計算方法が異なるため損益計画にも変更が生じます。また、許認可が必要な事業の場合、許認可申請は会社設立後に可能になるため、許認可にかかる日数も考慮してタイムスケジュールを決める必要があるでしょう。
会社設立を検討する場合には、以下の会社設立の流れを把握しておきましょう。
- 1.会社の基本事項を決める
- 2.会社実印を作成する
- 3.定款の認証を受ける
- 4.資本金を払い込む
- 5.会社設立登記を申請する
- 6.税務署・社会保険事務所・地方自治体等に届出書を提出する
法人名義の銀行口座の開設
当該事業を会社として行う場合、会社設立登記の申請が完了した後、初めて法人名義の銀行口座を開設できます。
代表者個人と会社のお金は分けて管理する必要があり、代表者個人名義の銀行口座だけで管理するのは容易ではありません。法人名義の銀行口座があれば、会社の事業に関わるお金を個人のお金の流れと分けて管理できるため、会社のお金の流れが把握しやすくなります。
また、法人名義の銀行口座があれば、その銀行が発行するデビットカードへの申込が可能なほか、法人名義のクレジットカードの引落口座として利用でき、決済のキャッシュレス化を進められます。
まとめ
事業計画書は具体的で説得力があり、かつ分かりやすいものをめざしましょう。その際、アピールできる材料は着実に記載することが重要です。
また、事業計画を立てる際、会社設立とともに法人口座の開設の準備も検討しましょう。事業開始時は本業に加えて様々な手続きで多忙になりがちです。
みずほ銀行は非対面での法人口座開設受付や面談に対応しており、原則来店不要で手続きが完結します。法人設立時の負担を減らすためにも、みずほ銀行での法人口座開設を検討してみてはいかがでしょうか。
(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
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