スタートアップ投資とは?メリット・デメリットを分かりやすく解説
掲載日:2025年7月1日起業準備

スタートアップ投資は、高いリスクを伴いますが、その分、大きなリターンを得られる可能性もある投資手法です。スタートアップの成長を支える重要な役割を果たしています。
スタートアップ投資の形態として、主にエンジェル投資やVC(ベンチャーキャピタル)投資、クラウドファンディングが挙げられます。
本記事では、スタートアップ投資の形態と、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。スタートアップ企業から見たメリット・デメリットも紹介するので、ぜひご覧ください。
目次
スタートアップ投資とは
スタートアップ投資は、スタートアップに資金を提供する活動を指します。
そもそもスタートアップとは、短期間で急成長をめざす企業のことです。経済産業省によると、一般的に以下に該当する企業が「スタートアップ」にあたります*1)。
スタートアップ
新しい企業であって、新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、急成長を目指す企業
日本政策金融公庫によると、起業時の資金調達額は平均1,197万円で、このうち自己資金の割合は24.5%です*2)。起業家の多くは、起業時に必要な資金を外部から調達していることが分かります。
スタートアップ投資は、創業間もない企業にとって、事業を成長させるための重要な資金調達手段の一つです。
スタートアップ投資の形態
スタートアップ投資には主に以下の3つがあり、それぞれ投資形態や特徴が異なります。
- エンジェル投資
- VC(ベンチャーキャピタル)投資
- クラウドファンディング
エンジェル投資
一般的にエンジェル投資とは、創業間もない企業に個人投資家が資金を提供する活動です。
スタートアップの初期段階では十分な実績や信用力がなく、銀行等から必要な資金を調達するのが難しい傾向があります。エンジェル投資は、こうした初期段階のスタートアップにとって、有効な資金調達方法の一つです。
エンジェル投資家の主な目的は、出資のリターンとして株式を取得し、その企業が成長した際にキャピタルゲイン(売却差益)を得ることです。また、単に資金を提供するだけでなく、経営に参画し、アドバイス等を行うこともあります。
VC(ベンチャーキャピタル)
VC(ベンチャーキャピタル)とは、新興企業に出資する投資会社やファンドです。未上場の段階で株式を取得し、企業が成長した際にキャピタルゲイン(売却差益)の獲得をめざします。
機関投資家や個人投資家から資金を集めてファンドを組成し、そのファンドを通じて資金を提供することが一般的です。
ベンチャーキャピタルは主に、スタートアップのアーリー期やミドル期に投資を行います。ただし、運営の主体により「政府系」や「金融系」、「企業系」等の種類に分類され、それぞれ投資対象や方針等が異なります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人から少額ずつ資金を調達する方法です。資金を調達したい法人や個人がプロジェクトを立ち上げ、それに賛同した方が資金を提供する仕組みです。
クラウドファンディングを大きく分けると、「購入型」「寄付型」「金融型」の3つに分類されます。
区分 | 概要 |
---|---|
購入型 |
物品や権利を購入する方法 |
寄付型 |
リターンを求めない方法 |
金融型 |
投資や融資によって支援する方法 |
不特定多数の支援者から少額ずつ資金を調達できるため、融資やVCからの資金調達が難しい場合もプロジェクトを実現できる可能性があります。
また、インターネット上でプロジェクトを公開するため、PRや市場の反応を事前に確認できる等もメリットの一つです。
クラウドファンディングはスタートアップの新たな資金調達の選択肢として活用が広がっており、市場規模が拡大しています。
投資家から見たスタートアップ投資のメリット

スタートアップ投資は、投資家にとって大きなリターンを狙える投資手法の一つです。主なメリットは以下の通りです。
- 大きなリターンを得られる可能性がある
- 経営に参画できる可能性がある
- 税制の優遇措置を受けられる可能性がある
- 少額から投資できる
大きなリターンを得られる可能性がある
スタートアップ投資の最大のメリットは、投資が成功した場合のリターンが大きいことです。
スタートアップの初期段階は経営が安定しにくく、投資した資金を回収できないリスクが高い反面、迅速な意思決定や新しい技術の活用等によって急成長する可能性も秘めています。
高い成長が見込まれるスタートアップに早い段階から投資し、その企業が急成長すれば、大きなキャピタルゲインを得られる可能性があります。
経営に参画できる可能性がある
資金を提供するだけでなく、経営に関与できるチャンスがあることもスタートアップ投資のメリットです。
多くのエンジェル投資家は、共同経営者として自らの経験やネットワークをいかした経営アドバイス等を行い、企業の成長を支援します。
税制の優遇措置を受けられる可能性がある
スタートアップに投資すると、エンジェル税制を適用できる可能性があります。
エンジェル税制とは、スタートアップに投資を行った個人投資家に対して投資時点・売却時点で税制の優遇措置を行う制度です。スタートアップへの投資を促進する目的で、1997年に創設されました。
投資時点の優遇措置として、以下のいずれかを選択できます(2025年3月時点)。
区分 | 優遇措置の内容 |
---|---|
優遇措置A |
(ベンチャー企業への投資額 – 2,000円)をその年の総所得金額から控除※ |
優遇措置B |
ベンチャー企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除(投資額の上限なし) |
- *控除対象となる投資額の上限は、総所得金額×40%または1,000万円のいずれか低い方
また、売却時点の優遇措置として、売却によって生じた損失をその年の株式譲渡益と相殺でき、相殺しきれなかった損失は翌年以降3年にわたって順次相殺できます(2025年3月時点)。
なお、エンジェル税制の適用を受けるためには、投資企業・個人投資家それぞれの要件を満たさなければなりません。
少額から投資できる
近年、まとまった資金がなくてもスタートアップに投資できる環境が整ってきています。
従来のスタートアップ投資は比較的規模が大きく、富裕層等の限られた方だけが行えるものでした。しかし、インターネットの普及によって株式投資型クラウドファンディング等が広がり、個人投資家でもスタートアップ投資を行いやすくなっています。
少額から投資できるため、まとまった資金を用意できなくても投資を始められ、複数の企業に投資することでリスク分散を図れます。
投資家から見たスタートアップ投資のデメリット
スタートアップ投資は高いリターンが見込める反面、リスクが大きい投資手法です。デメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
- 元本割れのリスクが高い
- 流動性が低い
- 十分な情報を得られない場合がある
元本割れのリスクが高い
スタートアップは短期間で急成長する可能性がある一方で、市場環境が変化したり、想定外の課題に直面したりして、事業が計画通りに進まないケースが少なくありません。
その結果、IPOやM&A等に至らない、あるいは倒産してしまい、投資した資金を回収できない可能性があります。
なお、新興企業(業歴10年未満の企業)の倒産は、倒産全体の約3割を占めています。
流動性が低い
流動性の低さもデメリットの一つです。未上場株式は、上場株式のように自由に売買ができるものではなく、IPOやM&Aに至った場合等に限られます。IPOやM&Aの実現には長い期間がかかる場合が多く、投資した資金を早期に回収するのは容易ではありません。
必要なタイミングで資金化できないため、投資家が急な出費等で資金繰りに困ることが懸念されます。
十分な情報を得られない場合がある
スタートアップ企業の情報は、上場企業と比べて限定的であり、投資家からは見えにくい部分があります。
上場企業であれば、有価証券報告書や決算短信等を通じて財務状況を把握することが可能です。一方、スタートアップの場合は、こうした情報が一般に公開されていない場合が多く、投資判断に必要な情報を十分に得られない可能性があります。
スタートアップ企業にとってのメリット・デメリット
スタートアップ企業から見たスタートアップ投資の主なメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット |
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デメリット |
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メリット |
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デメリット |
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スタートアップ投資によって調達した資金は、借入金とは異なり、返済義務がありません。投資家から提供された資金は、負債ではなく自己資本として扱われるため、自己資本比率が向上し、財務基盤の安定につながります。
さらに、経営に関するノウハウや事業支援に必要な人脈を得られる点も、スタートアップ投資を受けるメリットの一つです。
一方で、経営の自由度が低下する可能性もあります。また、返済義務はないものの、投資家はキャピタルゲインの獲得等を目的に資金を提供するため、業績の向上を求められます。
なお、金融機関等からの融資によって調達した資金は、投資家から提供を受けた資金とは異なり、利息を加えて返済が必要です。ただし、支払った利息は損金として計上できます。また、きちんと返済していれば、特別な定めのない限り債権者が経営に関与をしません。
スタートアップ投資以外の資金調達方法も含め、自社に合った方法を検討することが重要です。
スタートアップを立ち上げたら法人口座の開設を
スタートアップを立ち上げたら、法人口座を開設することがおすすめです。
法人口座を開設すると、個人と法人の資金を明確に区別でき、資金管理の透明性を確保できます。また、資金調達の適切なタイミングや方法を見極めやすくなるメリットもあります。
法人口座を開設する主なメリットは、以下の通りです。
- 資金管理の透明性を確保できる
- 取引先から信用を得やすくなる
- 税務リスクを軽減できる
- 経営判断を行いやすくなる
法人口座を開設できる金融機関は複数ありますが、資金管理の観点だけでなく、将来的な事業のサポートを見据えて選ぶ視点も大切です。
みずほ銀行では、スタートアップ企業を支援する会費無料の会員制サービス「M’s Salon」をご用意しており、必要不可欠な経営知識、事業遂行ノウハウ、ビジネス拡大機会、資金調達サポート等を提供し、スタートアップ企業の成長をサポートします。
関連記事:「法人口座開設におすすめの金融機関は?選び方とメリット・デメリット」
まとめ
スタートアップ投資は、短期間で急成長をめざすスタートアップに資金を提供する活動です。主な形態として、エンジェル投資やVC投資、クラウドファンディングが挙げられます。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、スタートアップ投資以外の方法も含めて自社に合った資金調達方法を検討しましょう。
また、スタートアップを立ち上げたら、円滑に事業を進めるために、法人口座を開設することをおすすめします。
みずほ銀行では、スタートアップを支援する多彩なサポートをご用意しています。休日・夜間でもお申し込みでき、ウェブ面談によって原則来店なしで手続きを完結できます。
ぜひみずほ銀行での法人口座開設をご検討ください。
監修者

安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。