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個人事業主が加入できる社会保険は?法人化でどう変わるかも解説

掲載日:2025年4月14日起業準備

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個人事業主と会社員では、加入できる社会保険の種類や保険料の負担が異なります。

本記事では、個人事業主が加入できる・加入できない社会保険を解説します。

従業員を雇用した場合に事業主として加入しなければならない社会保険や、法人化した場合に社会保険・保険料がどう変わるかも紹介するので、個人事業主の社会保険を詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

個人事業主と会社員は加入できる社会保険が異なる

「社会保険」を広い意味で捉えると、以下の5つを指します。

  • 健康保険
  • 年金保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

このうち、健康保険・年金保険・介護保険の3つを「狭義の社会保険」と呼ぶこともあります。以下の通り、個人事業主と会社員は、加入できる社会保険が異なります。

個人事業主 会社員
健康保険

国民健康保険

健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)

年金保険

国民年金

厚生年金

介護保険

40歳以上の方(国民健康保険料と合わせて支払う)

40歳以上の方(健康保険料と合わせて支払う)

雇用保険

加入不可

加入

労災保険

原則として加入不可(特別加入制度あり)

加入

健康保険
個人事業主

国民健康保険

会社員

健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)

年金保険
個人事業主

国民年金

会社員

厚生年金

介護保険
個人事業主

40歳以上の方(国民健康保険料と合わせて支払う)

会社員

40歳以上の方(健康保険料と合わせて支払う)

雇用保険
個人事業主

加入不可

会社員

加入

労災保険
個人事業主

原則として加入不可(特別加入制度あり)

会社員

加入

なお、会社員として働きながら、副業で個人事業主として事業を行う場合は、勤務先で健康保険・厚生年金に加入するため、国民健康保険や国民年金に別途加入する必要はありません。

個人事業主が加入できる社会保険

個人事業主が加入する社会保険は、大きく以下の3つです。

  • 公的医療保険(国民健康保険等)
  • 国民年金
  • 介護保険

公的医療保険

日本では国民皆保険制度が採用されており、すべての国民に公的医療制度の加入が義務づけられています。

公的医療制度とは、病気やケガをした際に医療費の一部を公的機関が負担してくれる制度です。公的医療制度には、大きく「被用者保険」(健康保険組合・協会けんぽ・共済組合)、「国民健康保険」、「後期高齢者医療制度」の3つがあります。

多くの個人事業主は国民健康保険に加入しますが、主な方法は以下の4つです。

  1. 1.国民健康保険に加入する
  2. 2.国民健康保険組合に加入する
  3. 3.健康保険の任意継続被保険者となる
  4. 4.被扶養者として家族の健康保険に加入する

加入対象者や保険料の負担等を踏まえて加入を検討しましょう。

1. 国民健康保険に加入する

国民健康保険は、都道府県および市町村が保険者として運営する公的医療制度です。他の公的医療制度に加入していないすべての方が、国民健康保険に加入します。

会社員等が加入する健康保険は、事業主と被保険者で保険料を折半しますが、国民健康保険の場合は被保険者が全額を自己負担しなければなりません。

国民健康保険料は自治体によって異なりますが、前年の所得が大きいほど保険料も高くなる仕組みです。

国民健康保険の被保険者となった方は、14日以内に自治体での手続きが必要です。

2. 国民健康保険組合に加入する

個人事業主の場合、従事している業種によっては国民健康保険組合(国保組合)に加入できる場合があります。

国保組合とは、特定の職種ごとに設立された医療保険制度です。国保組合が設立されている業種の一例を紹介します。

  • 土木建築
  • 弁護士・税理士
  • 飲食
  • 食品製造販売
  • 芸能
  • 文芸美術(小説家や画家等)
  • 理美容等

加入するためには、各組合が定める加入条件を満たさなければなりません。また、審査の結果、加入できない場合もあります。

保険料も国保組合によって異なりますが、所得に関わらず定額を支払うことが多く、国民健康保険に加入する場合と比べて手数料を抑えられる場合があります。

3. 健康保険の任意継続被保険者となる

勤務先を退職して個人事業主になった方は、退職前に加入していた健康保険を任意継続する方法もあります。

健康保険の任意継続とは、退職等によって健康保険の被保険者資格を喪失した場合に、一定の条件のもとで健康保険に継続して加入できる制度です。

対象となるのは、退職前の勤務先で健康保険に加入していた期間が継続して2ヵ月以上ある方で、任意継続の被保険者期間は2年間です。

保険料は、個人事業主になってからの所得ではなく、退職時の給与(正確には標準報酬月額)を基に計算されます。ただし、退職前とは異なり、保険料を全額自己負担しなければなりません。

なお、任意継続するためには、退職日の翌日から20日以内の申請が必要です。

4. 被扶養者として家族の健康保険に加入する

家族に生計を維持されている個人事業主は、一定の条件を満たすと、家族が加入する健康保険に被扶養者として加入できます。被扶養者になるための条件は以下の通りです。

  • 年収が原則130万円未満かつ被保険者の2分の1未満である
  • 3親等以内の親族である

個人事業主の場合、売上から直接的必要経費を差し引いた金額が130万円未満かどうかで判断されることが一般的です。

直接的経費とは、その費用がなければ事業が成り立たない経費のことであり、租税公課や福利厚生費等の経費は差し引くことができません。

直接的必要経費は、所得税を計算する際の「必要経費」より狭い概念であるため、所得税法上の所得が130万円未満でも被扶養者として加入できるとは限りません。

被扶養者と認定される基準は健康保険によって異なるため、詳しくは家族が加入する健康保険に確認しましょう。

なお、被扶養者の条件を満たすと、保険料の負担なしで健康保険に加入できます。

国民年金

個人事業主は、第1号被保険者として国民年金に加入し、国民年金保険料を納めます。

国民年金の加入対象者は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方です。国民年金保険料は所得に関わらず定額で納めます(2024年度は月額16,980円)。

加入するためには、退職日の翌日から14日以内に自治体での手続きが必要です。

なお、配偶者の被扶養者になる場合は、第3号被保険者として国民年金に加入でき、保険料の負担がありません。

介護保険

個人事業主を含め医療保険加入者は、40歳になると第2号被保険者として介護保険に加入し、健康保険料と合わせて介護保険料を納めます。加入手続は原則として自動で行われるため、別途手続きは不要です。

会社員の場合は、健康保険料と同様に会社との折半で介護保険料を負担しますが、個人事業主は全額を自己負担しなければなりません。

なお、介護保険の第2号被保険者は、加齢に伴う一定の疾病によって要介護認定を受けた場合に、介護サービスを受けられます。

また、65歳になると第1号被保険者となり、原因に関わらず要介護認定・要支援認定を受けた場合に介護サービスを利用することが可能です。

個人事業主が加入できない社会保険

個人事業主は、原則として労働保険(雇用保険・労災保険)に加入できません。

雇用保険

労働者が失業した場合等に給付を行い、労働者の生活・雇用の安定を図る制度

労災保険(労働者災害補償保険)

業務上の事由または通勤中のケガ等に対して給付を行い、労働者の社会復帰の促進等を行う制度

雇用保険

労働者が失業した場合等に給付を行い、労働者の生活・雇用の安定を図る制度

労災保険(労働者災害補償保険)

業務上の事由または通勤中のケガ等に対して給付を行い、労働者の社会復帰の促進等を行う制度

雇用保険や労災保険は、労働者を対象とした制度であり、個人事業主は加入対象外です。

ただし、労災保険には特別加入制度があり、業務の実態等から労働者と同様に保護すべきだとみなされる一定の方は、任意で加入できる場合があります。

個人事業主が法人化すると社会保険・保険料はどうなる?

イメージ

個人事業主が法人化して社長になると、加入する社会保険が健康保険(基本的に協会けんぽ)・厚生年金保険に変わります。

この章では、健康保険・厚生年金保険への加入によって、保険給付や保険料がどう変わるのかを解説します。

なお、雇用保険・労災保険は労働者が対象であるため、事業主である社長は原則として加入できません。ただし、労災保険は特別加入制度によって加入できる場合があります。

健康保険

個人事業主 社長(法人化後)
加入する健康保険

国民健康保険

健康保険(基本的に協会けんぽ)

保険料

前年の所得等を基に決定

役員報酬を基に決定

保険料の負担

全額自己負担

会社との折半

扶養制度

なし

あり

出産手当金・傷病手当金

なし

あり

加入する健康保険
個人事業主

国民健康保険

社長(法人化後)

健康保険(基本的に協会けんぽ)

保険料
個人事業主

前年の所得等を基に決定

社長(法人化後)

役員報酬を基に決定

保険料の負担
個人事業主

全額自己負担

社長(法人化後)

会社との折半

扶養制度
個人事業主

なし

社長(法人化後)

あり

出産手当金・傷病手当金
個人事業主

なし

社長(法人化後)

あり

国民健康保険の保険料は全額自己負担ですが、法人化して健康保険に加入すると、会社との折半になります。

また、健康保険には国民健康保険にはない扶養制度や、出産手当金・傷病手当金の仕組みがあることも特徴です。

年金保険

項目 法人化前 法人化後
加入する年金保険

国民年金

厚生年金

保険料

所得に関わらず定額
(2024年度は16,980円)

役員報酬を基に決定
(会社・社長の負担合計で18.3%)

保険料の負担

全額自己負担

会社との折半

将来の年金

老齢基礎年金

老齢基礎年金+老齢厚生年金

個人事業主が法人化した場合、厚生年金に加入します。

厚生年金に加入すると、一般的に保険料の負担は重くなりますが、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取れるため、将来の年金額が増えるメリットがあります。

個人事業主が従業員を雇った場合に加入義務がある社会保険

従業員を雇用する可能性がある個人事業主は、ご自身が加入する社会保険とは別に、事業主として加入すべき社会保険についても理解しておかなければなりません。

この章では、狭義の社会保険(健康保険・年金保険・介護保険)と労働保険に分けて、従業員を雇った場合の社会保険について解説します。

会社設立時に必要な社会保険・労働保険の手続きについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

関連記事:会社設立時に必要な社会保険・労働保険の手続きは?基礎から解説

従業員が常時5人以上なら社会保険の加入手続が必要

個人事業主でも、常時従業員を5人以上雇用している場合は「強制適用事業所」となり、健康保険・厚生年金保険・介護保険に加入しなければなりません(一部の業種を除く)。

「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を作成し、事実発生から5日以内に日本年金機構へ提出しましょう。

同時に、被保険者になる従業員の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」(被扶養者がいる場合は「被扶養者(異動)届」も併せて)を提出します。

被保険者となる従業員は、以下に該当する方です*

  • 適用事業所に常時雇用される70歳未満の方
  • パート・アルバイトで1週間の所定労働時間、1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上の方
  • *特定適用事業所では、一定の条件を満たす短時間労働者も被保険者となります。

従業員を1人でも雇ったら労働保険の加入手続が必要

個人事業主でも、従業員(パート・アルバイトを含む)を1人以上雇ったら、雇用保険・労災保険の加入手続が必要です(一部の業種を除く)。

区分 提出先 届出
労災保険

事業所を管轄する労働基準監督署

  • 保険関係成立届
  • 概算保険料申告書
雇用保険

公共職業安定所(ハローワーク)

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

なお、ハローワークで手続きする際、労働基準監督署へ提出した「労働保険関係成立届」(事業主控え)を持参する必要があります。そのため、労災保険の手続後に雇用保険の手続きを行いましょう。

なお、労働保険の加入条件はそれぞれ以下の通りです。

労災保険

すべての従業員

雇用保険

31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、かつ所定労働時間が20時間/週の従業員

労災保険

すべての従業員

雇用保険

31日以上引き続き雇用されることが見込まれ、かつ所定労働時間が20時間/週の従業員

  • *一部の業種は手続方法が異なるため、ご確認ください。

事業の成長に応じて法人化を視野に入れよう

個人事業主としての所得が増えるほど、社会保険料の負担は重くなります。加えて、個人事業主の社会保険には扶養の仕組みがないため、経済的に支えている家族がいる場合も個別に健康保険に加入しなければなりません。

事業が軌道に乗ってきたら、法人化も検討しましょう。法人化すると、健康保険・厚生年金に加入できるため、将来の年金額が増え、医療保険の給付も手厚くなります。また、利益が多くなると、法人化した方が税金を抑えられる傾向があります。

個人事業主の場合、所得が増えるほど所得税率が高くなり、所得税の負担が重くなります。一方、法人化した場合、社長の役員報酬は条件を満たせば損金として計上が可能です。

さらに、社長自身の所得税を計算する際には「給与所得控除」を適用できるため、個人としての税負担も抑えられます。社会保険や税金等がどう変わるかを含め、法人化を検討しましょう。

法人を設立した際には、法人口座を開設し、会社と個人のお金を明確に区別することが重要です。法人口座を開設すれば、取引先や顧客からの信用が得やすくなる、健全な資金管理ができる等のメリットもあります。

法人化のメリットや個人事業主との違いについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

関連記事:事業を法人化する9つのメリット|個人事業主との違いや注意点を解説

まとめ

個人事業主は、一般的に国民健康保険・国民年金に加入し、全額自己負担で保険料を納めます。売上が増え、社会保険料の負担が重くなってきたタイミングで法人化も選択肢に入れましょう。

事業の規模や状況等によって異なりますが、法人化すれば税金や社会保険の面で負担を抑えられる場合があり、また社会保険の給付も手厚くなります。

法人設立後は、健全・効率的な資金管理のために法人口座を開設するのがおすすめです。

みずほ銀行の法人口座は、休日・夜間でもお申し込みでき、原則来店不要でのお手続きが可能です。原則として登記事項証明書・印鑑証明書なしでお申し込みいただけるため、書類を用意する手間を省けます。

創業期のお客さまに向けた特典もご用意しているので、ぜひご検討ください。

みずほ銀行の法人口座開設(法人のお客さま)

監修者

安田 亮

安田 亮

  • 公認会計士
  • 税理士
  • 1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

HP:https://www.yasuda-cpa-office.com/

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