労災とは?種類や認定基準、加入対象者、給付申請まで分かりやすく解説
掲載日:2026年10月26日労務
労災とは、業務中や通勤中の事故等によって、労働者が負傷したり病気になったり、障害を負ったり死亡したりすることを指します。
労災が発生した際に、労働者やその遺族へ必要な給付を行う制度が「労災保険」です。労働者を1人でも雇用する事業主は、原則として労災保険への加入が義務付けられています。
本記事では、労災の基本的な仕組みや認定基準、労災保険の加入対象に加え、補償内容や保険給付の申請手続についても紹介します。
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目次
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労災(労働災害)とは
労災(労働災害)とは、労働者が業務中または通勤中に負傷・疾病・障害・死亡等の被害を受ける災害を指します。
厚生労働省のデータによると、労働災害により毎年10万人以上が4日以上の休業を余儀なくされており、700人を超える方が死亡しています*。
決して他人事ではなく、あらゆる職場で起こり得るリスクです。
労災が発生した際には、正確な知識を基に適切な手続きを取ることが重要です。
労災の認定基準
労災には「業務災害」と「通勤災害」の2種類があり、それぞれに認定基準が設けられています。実際に認定されるかどうかは、労働基準監督署が個別の事案ごとに判断します。
各認定基準の詳細は、以下で解説します。
①業務災害
業務災害とは、労働者が業務中に、業務を原因として発生した負傷や疾病、障害、死亡を指します。例えば、作業中の事故によるケガや、業務に起因する疾病等が該当します。
労災保険の給付を受けるためには、その災害が業務災害として認定される必要があります。
認定にあたっては、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件を満たしているかどうかが重要な判断基準となります。
業務遂行性とは、労働者が事業主の管理下で業務に従事していた状態を指します。一方、業務起因性とは、発生した災害と業務との間に因果関係が認められることです。
これらの要件を総合的に判断したうえで、業務災害に該当するかどうかが決定されます。
②通勤災害
通勤災害とは、通勤中に発生した事故等による負傷や疾病、障害、死亡を指します。
業務災害とは区別されており、通勤災害として認定されるためには一定の基準を満たす必要があります。
通勤災害として認定されるためには、就業に関連する移動であることに加え、合理的な経路および方法による通勤であることが必要です。また、通勤途中に私的な用事のために通勤経路を逸脱したり、長時間中断したりした後に発生した災害は、原則として通勤災害と認められません。
ただし、日用品の購入や病院への通院等、日常生活上必要な行為のために立ち寄った場合は、その用事を終えて合理的な通勤経路に戻った後の移動について、通勤として扱われることがあります。
労災保険の加入条件
労災が発生した際には、「労災保険(労働者災害補償保険)」によって保険給付が行われます。労災保険とは、業務上または通勤中の災害によって労働者が負傷・疾病・障害・死亡した場合に、必要な保険給付を行う制度です。
労災保険の加入条件は、以下のとおりです。
- 適用事業所
労働者を1人でも使用するすべての事業場が対象です。業種や規模を問わず、労働者を雇用している事業場であれば適用されます。
- 加入対象となる労働者
雇用形態に関わらず、事業に雇用され賃金の支払いを受けるすべての労働者が対象です。正社員だけでなく、パートやアルバイト等も含まれます。
個人事業主やフリーランスは原則として労働者に該当しないため、労災保険の適用対象にはなりません。ただし、一定の業種や条件を満たす場合は「特別加入制度」を利用することで、労災保険に任意加入できる仕組みが設けられています。
労災保険料の計算方法
労災保険の保険料は、労働者に支払う賃金総額に労災保険率を乗じて求めます。計算式は以下のとおりです。
労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険率
労災保険率は事業の種類ごとに定められており、主な例は以下のとおりです。
| 事業の種類 | 労災保険率(令和6年4月1日改定) |
|---|---|
|
食料品製造業 |
1000分の5.5 |
|
木材・木製品製造業 |
1000分の13 |
|
建設事業(鉄道・軌道新設事業) |
1000分の9 |
|
農業(農業または海面漁業以外の漁業) |
1000分の13 |
|
小売業・卸売業・飲食店 |
1000分の3 |
なお、この保険料は事業主が全額負担する点が特徴です。
保険料は、年度当初に概算保険料を申告・納付します。その後、翌年度に前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付する「年度更新」の仕組みが採用されています。
また、実際の納付においては、労災保険料単独ではなく、雇用保険料と合わせた「労働保険料」としてまとめて納付します。労災保険料は全額事業主負担ですが、雇用保険料は事業主と労働者の双方で負担する点も押さえておきましょう。
労災保険の補償内容
労災保険の主な給付には、以下のようなものがあります。
- 療養(補償)等給付
- 休業(補償)等給付
- 障害(補償)等給付
- 遺族(補償)等給付
- 介護(補償)等給付
- 二次健康診断等給付
それぞれの内容について、以下で詳しく解説します。
療養(補償)等給付
療養(補償)等給付は、労働災害によって負傷したり、疾病にかかったりした際に、必要な療養を受けるための給付です。給付の内容は、診察・薬剤の支給・処置・手術といった医療行為のほか、入院時の療養に必要なサービスも対象となります。
労災指定医療機関で治療を受ける場合は、自己負担なく治療を受けられる「療養の給付(現物給付)」が適用されます。一方、指定外の医療機関を利用した場合は、いったん費用を立て替えた後に請求する「療養の費用の支給」が適用されます。
休業(補償)等給付
休業(補償)等給付は、労働災害による負傷や疾病の療養のために働くことができず、賃金を受けられない期間に支給される給付です。休業4日目以降から支給対象となり、給付基礎日額の60%相当が休業(補償)等給付として支払われます。
これに加え、給付基礎日額の20%相当の休業特別支給金も別途支給されるため、合計で給付基礎日額の80%相当を受け取ることができます。
療養のために仕事を休まざるを得ない期間の生活を支える重要な給付です。
障害(補償)等給付
障害(補償)等給付とは、労働災害によって生じた傷病が治癒(症状固定)した後も、一定の障害が残った場合に支給される給付です。障害の程度に応じて等級が定められており、その等級に応じた給付を受けられます。
障害等級第1級から第7級に該当する場合は障害(補償)等年金が、第8級から第14級に該当する場合は障害(補償)等一時金が支給されます。
さらに、等級に応じた障害特別支給金や、賞与等の特別給与を基礎として算定される障害特別年金、障害特別一時金も併せて支給されます。
遺族(補償)等給付
遺族(補償)等給付は、労働災害によって労働者が死亡した場合に、その遺族に対して支給される給付です。
給付の内容は、遺族の数や生計維持関係等の要件に応じて、年金形式で支給される「遺族(補償)等年金」と、一時金形式で支給される「遺族(補償)等一時金」の2種類があります。
また、労働者が死亡した場合には、葬儀を行った遺族や会社等に対して「葬祭料等(葬祭給付)」も支給されます。葬祭を行った方の負担を軽減するための給付であり、遺族(補償)等給付と併せて請求できます。
介護(補償)等給付
介護(補償)等給付は、労働災害によって一定の障害が残り、現に介護を受けている場合に支給される給付です。
障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者のうち、障害等級・傷病等級が第1級の方、あるいは第2級のうち精神神経・胸腹部臓器の障害を有する方が対象となります。
常時介護を必要とする場合と随時介護を必要とする場合とで支給額が異なり、介護の実態に応じた給付が受けられる仕組みです。
二次健康診断等給付
二次健康診断等給付は、定期健康診断等で一定の異常所見が認められた労働者を対象に、脳血管疾患や心臓疾患の発症予防を目的として実施される二次健康診断および特定保健指導に関する給付です。
一次健康診断において、血圧・血糖・血中脂質・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに異常所見が認められた労働者が対象となります。
給付内容は、二次健康診断(脳血管・心臓の状態を把握するための検査)と、その結果に基づいて行われる特定保健指導(栄養指導・運動指導等)の2種類です。
脳血管疾患や心臓疾患の発症リスクを早期に把握し、予防につなげるための給付制度です。
労災保険給付の申請手続
労災保険の給付を受けるためには、所定の請求書に必要事項を記入し、管轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
手続きの大まかな流れは以下のとおりです。
- 被災労働者(または遺族)が所定の請求書を入手する
- 請求書に必要事項を記入する
- 事業主による証明が必要な場合は、事業主欄への記入・証明を受ける
- 請求書を労働基準監督署または指定された提出先へ提出する
- 給付が決定・支給される
請求書の記載例や様式は、厚生労働省の公式ウェブサイトからダウンロードできます。手続きを進める際は、事前に必要な様式や添付書類を確認しておくことが重要です。
労災に関するよくある質問
労災が発生した際に、多くの方が疑問に感じるポイントをまとめました。以下では、特によく寄せられる質問についてQ&A形式で解説します。
労災保険と健康保険の違いは?
健康保険とは、病気やケガ、出産等に備えるための公的医療保険制度です。
労災以外の傷病に対して支給されるもので、業務中や通勤中に発生した病気やケガには適用されません。
業務中・通勤中の病気やケガには、原則として健康保険ではなく労災保険を利用します。
なお、労災であるにもかかわらず誤って健康保険を使用してしまった場合でも、所定の手続きを行うことで、労災保険へ切り替えられることがあります。まずは勤務先や医療機関、労働基準監督署に相談し、必要な手続きを確認しましょう。
会社が労災保険に未加入の場合はどうなる?
会社が労災保険に未加入だった場合でも、従業員は労災保険給付を受けることができます。
労災保険は本来、事業主が加入手続きを行うべき制度ですが、未加入の状態で労災が発生した場合でも、被災した労働者には労災保険給付が行われます。
ただし、会社側には重大なリスクが生じます。未加入期間中に労災が発生した場合、国が支払い済みの給付額の全部または一部が会社に請求される「費用徴収制度」が適用されます。
さらに、保険料の遡及徴収や追徴金が課されるケースもあり、会社の経済的負担は相当なものになりえます。労災保険への加入は事業主の義務であるため、未加入状態は早急に解消する必要があります。
労災が認定された場合の会社側の影響は?
労災が認定された場合、会社側にはいくつかの影響が生じる可能性があります。主なデメリットは以下のとおりです。
- 従業員から損害賠償請求を受ける可能性がある
- 企業イメージに影響する可能性がある
- 労災保険料が上がる場合がある
特に労災保険料については、「メリット制」の適用により、翌々年度以降の保険料が引き上げられる可能性があります。メリット制とは、事業主の労働災害防止努力を保険料に反映させる仕組みで、一定規模以上の事業主が対象です。
労災の発生が多いほど保険料負担が増えるため、会社にとって経済的な影響も無視できません。また、損害賠償請求に発展した場合は、法的な対応コストも生じます。
労災認定は労働者を保護するための仕組みですが、会社側にも様々な影響が及ぶ可能性がある点を理解しておくことが重要です。
従業員が安心して働ける環境には適切な資金管理も重要
労災リスクに備えることはもちろん、福利厚生の充実や給与の適切な支払い、労働保険料の管理体制を整えることは、従業員が安心して働ける環境づくりの基盤となり、企業の持続的な成長に不可欠です。
こうした資金管理を効率化するうえで、法人口座の活用は有効な手段のひとつです。
給与の振り込みや保険料の納付管理を法人口座に集約することで、資金の流れが明確になり、管理負担の軽減につながることが期待できます。
みずほ銀行の法人口座は、各種口座振替に対応しており、企業の資金管理をまとめて行いやすくなります。法人口座の開設手続きは24時間申し込みが可能で、業務負担を増やさずスムーズに口座を用意できます。
関連記事:「法人口座開設におすすめの金融機関は?選び方とメリット・デメリット」
まとめ
労災(労働災害)とは、労働者が業務中または通勤中に負傷や疾病、障害、死亡等の被害を受ける災害を指します。労災が発生した場合は、労災保険によって療養費や休業中の所得補償、障害補償、遺族補償等の給付を受けることが可能です。
また、労災保険は労働者を1人でも雇用する事業場に原則として適用され、事業主には加入義務があります。万一に備えるためにも、労災の認定基準や保険給付の内容、申請手続の流れをあらかじめ理解しておくことが重要です。
さらに、従業員が安心して働ける環境を整えるためには、労災保険への適切な対応だけでなく、給与や保険料の管理を含めた労務管理体制を整備することも欠かせません。
日頃から職場の安全管理と適切な労務管理を徹底し、労働災害の防止と企業の持続的な成長につなげていきましょう。
<最短即日>来店不要で休日・夜間も受付中!
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監修者
大柴 良史(おおしば よしふみ)
- 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。