iDeCo+(イデコプラス)とは?企業と従業員のメリット・注意点や導入方法も解説
掲載日:2026年10月14日労務
iDeCo+とは、中小企業の事業主がiDeCoに加入している従業員に対し、掛金を上乗せして拠出できる制度です。
自社で企業年金を導入することが難しい企業でも、比較的少ない負担で従業員の老後資金作りを支援でき、人材の確保・定着を図るうえでも有効です。
本記事では、iDeCo+のメリット・注意点を企業側と従業員側に分けて解説します。また、企業型DC(企業型確定拠出年金)との違いや導入の流れも併せて紹介します。なお、本記事の内容は、2026年5月時点の情報に基づいています。
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目次
- *本記事は、株式会社みずほ銀行が提供しています。
- *記事の制作にあたっては、外部の協力会社に一部業務を委託しています。監修者は、情報の正確性・公平性の観点から監修を行っており、特定の商品やサービスをおすすめするものではありません。
iDeCo+(イデコプラス)とは
iDeCo+(イデコプラス)とは、iDeCoに加入している従業員の掛金に対し、中小企業の事業主が掛金を拠出できる制度です。正式には「中小事業主掛金納付制度」といいます。主な概要は以下のとおりです。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
|
導入できる事業主 |
企業年金*1)を実施していない、従業員*2)300人以下の事業主 |
|
事業主掛金の拠出対象者 |
iDeCoに加入している従業員のうち、事業主掛金を拠出することに同意した方 |
|
掛金額 |
加入者掛金と事業主掛金の合計額を、月額5,000円~23,000円の範囲内で設定し、事業主掛金と加入者掛金の合計額を1,000円単位で決定する(事業主掛金は、原則として拠出対象者全員が同額となるよう設定する)なお、加入者掛金を0円に設定することはできません |
|
納付方法 |
事業主が加入者掛金・事業主掛金をまとめて納付(給与天引き) |
2020年10月には、iDeCo+の対象となる事業主の従業員要件が「100人以下」から「300人以下」に拡大され、より多くの事業主が制度を導入できるようになりました。
事業主は、原則として厚生年金の被保険者であり、iDeCoに加入しているすべての従業員に対して、同額の事業主掛金を拠出します。ただし、勤続期間や職種等を基に社内規程を整備し、一定の資格区分を設ける場合は、その区分ごとに掛金額を設定することも可能です。
- *1)企業年金とは、企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金等です。
- *2)ここでいう従業員とは、厚生年金被保険者を指します。
企業型DC(企業型確定拠出年金)との違い
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が掛金を拠出し、従業員が資産を運用する企業年金制度です。
iDeCo+では、従業員が任意に加入するiDeCoに事業主が掛金を上乗せするのに対し、企業型DCは企業が主体となって実施します。
iDeCo+と企業型DCの主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | iDeCo+ | 企業型DC |
|---|---|---|
|
実施主体 |
国民年金基金連合会 |
企業型年金規約の承認を受けた事業主 |
|
掛金 |
|
事業主が掛金を拠出する(マッチング拠出制度がある場合は従業員が上乗せ可能) |
|
拠出限度額 |
加入者掛金と事業主掛金の合計額が月額5,000円~23,000円 |
月額55,000円からDB等の他制度掛金相当額を控除した額 |
|
運営にかかる費用の負担 |
従業員が負担 |
企業が負担 |
|
加入者への投資教育 |
義務なし |
努力義務 |
【企業側】iDeCo+のメリット
企業がiDeCo+を導入すると、従業員の老後に向けた資産形成を支援できるだけでなく、以下のようなメリットがあります。
- 福利厚生制度を拡充できる
- 掛金の全額を損金に算入できる
- コストや事務負担が比較的少ない
福利厚生制度を拡充できる
企業は、iDeCo+の導入によって福利厚生制度を拡充できます。従業員の将来を考えている姿勢を対外的に示せるため、求職者からの企業イメージ向上につながり、優秀な人材を確保しやすくなる可能性があります。また、従業員の定着率向上も期待できます。
また、勤続期間や職種等に応じた一定の資格区分ごとに掛金額を設定できるため、功労者への福利厚生を充実させる等、柔軟な制度設計も可能です。これにより、従業員のエンゲージメントや生産性の向上にもつながるでしょう。
掛金の全額を損金に算入できる
iDeCo+の事業主掛金は、全額を福利厚生費として損金算入できます。これにより課税所得が減少し、結果として法人税等の負担軽減につながります。
また、事業主が上乗せして拠出する掛金は給与とみなされないため、社会保険料の負担額は増加しません。
損金算入の考え方や費用との違いについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:「損金算入・不算入の考え方とは?損金・費用の違いも分かりやすく解説」
コストや事務負担が比較的少ない
iDeCo+は、企業型DC等の導入が難しい企業でも導入しやすい制度といえます。
中小企業にとって、自社で企業年金を導入することは、運営コストや事務負担等の面から難しい場合があります。
一方、iDeCo+は規約の作成が不要であり、投資教育の実施も法令上義務付けられていないため、企業型DCと比較すると導入・運営に伴うコストや事務負担を抑えやすい制度です。
【企業側】iDeCo+の注意点
一方、企業がiDeCo+を導入するうえでは、注意すべき点もいくつか存在します。
- 労使合意がなければ導入できない
- 従業員への周知や給与天引き等の事務が発生する
- 従業員数が300人を超えると制度を廃止する必要がある
労使合意がなければ導入できない
iDeCo+を導入するには、労働組合または労働者の過半数を代表する者と協議を行い、同意を得なければなりません。労働者に対して導入の目的や制度内容を十分に説明したうえで、労働組合または過半数代表者から同意書*の提出を受けます。
また、事業主掛金の額を変更・停止する場合や、制度を廃止する際にも同意を得る必要があります。
- *中小事業主掛金を拠出すること及び中小事業主掛金の額の決定に関する同意書
従業員への周知や給与天引き等の事務が発生する
iDeCo+は、企業型DCに比べて導入しやすい制度といえますが、従業員への説明や周知、届出書類の作成、掛金の給与天引き等、一定の事務負担が発生します。
また、一定の資格区分ごとに事業主掛金の額を設定する場合には、就業規則等の社内規程を見直す必要があります。
従業員数が300人を超えると制度を廃止する必要がある
iDeCo+では、従業員数(厚生年金被保険者数)が300人を超えると、制度の実施要件を満たさなくなるため、事業主掛金を拠出できなくなります。そのため、労使合意を得たうえで制度を廃止する手続きが必要です。
また、企業型確定拠出年金・確定給付企業年金・厚生年金基金のいずれかを導入した場合も、iDeCo+を継続することはできません。
【従業員側】iDeCo+のメリット
iDeCo+は従業員にとってもメリットのある制度です。
- 老後に向けた資産形成を進めやすくなる
- 事業主掛金は給与とみなされない
- 退職時に年金資産を移換できる
企業がiDeCo+の導入を検討するうえでは、従業員にどのようなメリットがあるかを理解することも重要です。
老後に向けた資産形成を進めやすくなる
従業員は、事業主による掛金の上乗せによって、より多くの老後資金を準備できるようになります。加入者掛金のみの場合と比べて効率的に資産形成できるため、老後に対する不安の軽減につながるでしょう。
将来の給付額は運用成果によって変動しますが、積立額が増えることで、老後に向けた資産形成を進めやすくなる点はメリットといえます。
事業主掛金は給与とみなされない
iDeCo+の事業主掛金は給与とみなされないため、所得に含まれません。そのため、所得税や社会保険料の負担額を増やさずに、将来に向けた資産形成を行うことができます。
さらに、加入者掛金は全額が所得控除の対象となるほか、運用益も非課税となります。
退職時に年金資産を移換できる
退職時に資産を移換し、運用を継続できる点もメリットの一つです。
例えば、退職して個人事業主になった場合でも、要件を満たせば、変更手続きを行うことでiDeCoに引き続き加入できます。また、転職先の企業型確定拠出年金や確定給付企業年金に移換できる場合もあります。
【従業員側】iDeCo+の注意点
一方、iDeCo+を導入している企業の従業員にとっては、以下の注意点があります。
- 事業主掛金を得るにはiDeCoに加入する必要がある
- 運用成果によって受取額が変動する
- 原則として60歳まで資産を引き出せない
事業主掛金を得るにはiDeCoに加入する必要がある
勤務先がiDeCo+の制度を導入していても、従業員自身がiDeCoに加入しなければ事業主掛金は拠出されません。
iDeCoに加入する際には、加入時・移換時に手数料がかかるほか、運営管理機関によっては口座管理手数料が発生する場合があります。ただし、事業主掛金によって、これらの手数料負担を実質的に補える可能性があります。
運用成果によって受取額が変動する
iDeCo+では、事業主による掛金の上乗せがある点がメリットですが、将来の受取額は運用成果によって変動します。
運用は従業員自身の責任で行う必要があるため、運用状況によっては資産額が増える可能性がある一方で、掛金元本を下回ることもあります。
原則として60歳まで資産を引き出せない
iDeCoは老後の資産形成を目的とした制度であり、iDeCo+において事業主と従業員本人が拠出した掛金は、いずれも原則として60歳まで引き出すことができません。
そのため、無理のない掛金設定や資金計画が求められます。
企業がiDeCo+を導入する流れ
企業がiDeCo+を導入する際は、以下の流れで手続きを進めます。
- ①拠出対象者や掛金額を設定する
- ②労使合意と拠出対象者の同意を得る
- ③事業所の事前登録を行う
- ④従業員がiDeCoの加入や変更手続きを行う
- ⑤国民年金基金連合会に届出書類を提出する
制度開始までには一定の期間を要するため、開始時期が遅れないよう余裕をもって進めることが重要です。
なお、導入手続きについて詳しくは、厚生労働省「iDeCo+導入ガイド」で確認できます。
①拠出対象者や掛金額を設定する
iDeCo+の事業主要件を満たしていることを確認したうえで、拠出対象者や掛金額を設定します。
掛金額は、原則として拠出対象者全員が同額となるよう設定しますが、勤続期間や職種等を基に一定の資格区分を設け、その区分ごとに掛金額を設定することも可能です。
②労使合意と拠出対象者の同意を得る
次に、iDeCo+の導入について、労働組合または厚生年金の被保険者の過半数を代表する者の同意を得ます。
労使合意後は、拠出対象者に実施内容を通知し、事業主掛金の拠出について同意を得る必要があります。
③事業所の事前登録を行う
iDeCo+を導入するには、あらかじめ中小事業主掛金納付事業所を登録し、「事業主払込」用の登録事業所番号を取得しておく必要があります*。
「中小事業主掛金納付事業所登録申請書(事前登録用)」を作成し、国民年金基金連合会に提出することで手続きが可能です。
iDeCo+の申請書類と併せて提出することも可能ですが、事前登録完了後、事業所登録通知書が届くまでには数日~1週間程度かかります。他の書類に先行して提出しておくことで、その後の手続きをスムーズに進められます。
- *既に事業主払込を登録している事業所は、事前登録不要です。
④従業員がiDeCoの加入や変更手続きを行う
iDeCo+の導入に伴い新たにiDeCoに加入する従業員は、iDeCoの加入手続きを行います。また、既にiDeCoに加入している従業員も、状況に応じて以下の手続きが必要です。
区分 変更手続き
「個人払込」で掛金を払い込んでいる場合 「事業主払込」に変更する
iDeCo+の導入に合わせて加入者掛金の額を変更する場合 運営管理機関に「加入者登録情報変更届」を提出する
| 区分 | 変更手続き |
|---|---|
|
「個人払込」で掛金を払い込んでいる場合 |
「事業主払込」に変更する |
|
iDeCo+の導入に合わせて加入者掛金の額を変更する場合 |
運営管理機関に「加入者登録情報変更届」を提出する |
⑤国民年金基金連合会に届出書類を提出する
届出書類一式をそろえ、専用の送付状を付けて、掛金の拠出開始月の前月20日までに国民年金基金連合会へ提出します。なお、事業主掛金の初回引落予定月を基準とすると、提出期限は前々月20日となります。
届出書類の書式はiDeCo公式サイトからダウンロードできます。
なお、一定の資格区分ごとに掛金額を設定する場合は、労働協約や就業規則等の写しが必要です。不備があると制度の開始が遅れるため、内容をよく確認のうえ、余裕をもって提出しましょう。
掛金の適切な管理や納付には法人口座の活用を
iDeCo+の導入後は、事業主が加入者の給与から掛金を天引きし、事業主掛金と合わせて納付を行います。こうした掛金の取りまとめや納付を適切に行うためには、法人口座を活用して資金の流れを明確にしておくことが重要です。
法人口座の開設には一定の期間を要するため、iDeCo+の導入準備と並行して、余裕をもって手続きを進めましょう。
みずほ銀行の法人口座は、休日・夜間でもお申し込みいただけるほか、原則来店不要で開設手続きが完結します。登記事項証明書・印鑑証明書の原本提出が原則不要なため、書類準備の負担を軽減し、スムーズな手続きが可能です。
みずほビジネスWEBや年会費無料の法人カード「みずほビジネスデビット」等、資金管理を効率化できるサービスや、創業期から多彩な経営サポートも提供しています。法人口座の開設はぜひみずほ銀行をご検討ください。
まとめ
iDeCo+とは、中小企業の事業主が、iDeCoに加入している従業員の掛金に上乗せして追加拠出できる制度です。福利厚生制度を拡充でき、人材確保や定着を図れるほか、事業主掛金の全額を損金算入できる等のメリットがあります。
一方で、iDeCo+の導入には、従業員への周知や申請等の手続きが伴うため、制度開始時期を見据えて計画的に進めることが重要です。制度の仕組みや従業員への影響を理解し、iDeCo+の活用を検討しましょう。
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監修者
大柴 良史(おおしば よしふみ)
- 社会保険労務士
- CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験をいかし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。