小規模企業共済とは?メリット・デメリットや加入条件、手続きまで分かりやすく解説
掲載日:2026年10月14日起業準備
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や個人事業主等が、廃業や退職に備えて資金を積み立てる制度です。
退職金制度を整備することが難しい経営者や個人事業主でも、引退後に備えて計画的に資金を準備できる点が特徴です。
本記事では、小規模企業共済の仕組みやメリット・デメリットを解説します。また、加入条件や手続き方法も併せて紹介します。なお、本記事の内容は、2026年5月時点の情報に基づいています。
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- *本記事は、株式会社みずほ銀行が提供しています。
- *記事の制作にあたっては、外部の協力会社に一部業務を委託しています。監修者は、情報の正確性・公平性の観点から監修を行っており、特定の商品やサービスをおすすめするものではありません。
小規模企業共済とは
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や個人事業主が、廃業や退職時の生活資金等を積み立てられる「経営者の退職金制度」です。1965年に発足した制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。
加入者は毎月掛金を積み立て、廃業や退職時に掛金の納付月数に応じた共済金を受け取ることができます。
小規模企業共済の加入者数は年々増加しており、2025年3月末時点で約169万人にのぼります*。
小規模企業共済の加入条件
小規模企業共済に加入できるのは、小規模企業の経営者・役員や個人事業主等のうち、従業員数が一定以下の方です。具体的な基準は、事業の種類によって異なります。
【個人事業主・個人事業の共同経営者*1)・会社の役員】
| 事業の種別 | 常時使用する従業員数*2) |
|---|---|
|
建設業・製造業・運輸業・不動産業・農業・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)等 |
20人以下 |
|
商業(卸売業・小売業)・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く) |
5人以下 |
【組合等・士業法人の役員】
| 事業の種別 | 従業員数 |
|---|---|
|
企業組合 |
事業に従事する組合員数が20人以下 |
|
協業組合 |
常時使用する従業員数が20人以下 |
|
農業の経営を主として行っている農事組合法人 |
常時使用する従業員数が20人以下 |
|
弁護士法人、税理士法人等の士業法人 |
常時使用する従業員数が5人以下 |
- *1)共同経営者とは、事業主の方と一体となって事業の経営に携わっている方で、個人事業主1人につき2人まで加入が可能です。
- *2)常時使用する従業員は正社員として雇用されている方で、家族従業員やパート・アルバイト従業員は含まれません。
受け取れる共済金の種類
小規模企業共済で受け取れる共済金等には、「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」があり、契約者区分によって種類や請求事由が異なります。
会社等役員の場合、共済金の種類と請求事由は以下のとおりです。
| 共済金等の種類 |
請求事由 |
|---|---|
| 共済金A |
会社等が解散した |
| 共済金B |
|
| 準共済金 |
法人の解散や疾病・負傷によらず、65歳未満で役員を退任した |
| 解約手当金 |
|
| 共済金等の種類 |
|---|
|
請求事由 |
| 共済金A |
|
会社等が解散した |
| 共済金B |
|
| 準共済金 |
|
法人の解散や疾病・負傷によらず、65歳未満で役員を退任した |
| 解約手当金 |
|
また、共済金等の金額は、掛金の納付月数に応じて種類ごとに定められています。
中小企業庁の公式ウェブサイトでは、掛金納付年数30年、掛金合計額360万円の場合を例に紹介しています。事業を廃業した場合の共済金は、434万8,000円とされています*。
詳しい請求事由や共済金等の額については中小機構「共済サポート navi」をご確認ください。
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済は、節税しながら計画的に資金を積み立てられる制度です。加入すると、主に以下のメリットがあります。
- 掛金を柔軟に設定できる
- 掛金の全額が所得控除の対象となる
- 共済金の受取方法を選択できる
- 共済契約者貸付を利用できる
- iDeCo(個人型確定拠出年金)と併用できる
掛金を柔軟に設定できる
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円~7万円(500円単位)の範囲で自由に設定できます。
同月内での再変更はできませんが、加入後も回数制限なく増額・減額が可能なため、売上や資金繰り等に合わせて無理なく継続しやすいでしょう。
また、掛金の納付方法は、月払い・年払い・半年払いから選択できるほか、一括で前払いすることも可能です。一括納付した場合は、掛金月額や前納期間に応じて「前納減額金」(割引額)が適用されます。
掛金の全額が所得控除の対象となる
小規模企業共済で払い込んだ掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります(1年以内の前納掛金も含む)。所得税や住民税の計算では、課税所得から控除できるため、税負担額の軽減につながります。
課税所得金額を400万円と仮定した場合、小規模企業共済に加入していない場合の所得税額は372,500円と試算されます。一方、加入した場合の所得税額は以下のとおりです*。なお、所得税のみの概算で、住民税の軽減効果は含まれていません。
| 掛金月額 | 掛金控除額 | 課税所得金額 | 所得税額 |
|---|---|---|---|
|
1万円 |
12万円 |
388万円 |
348,500円 |
|
3万円 |
36万円 |
364万円 |
300,500円 |
|
5万円 |
60万円 |
340万円 |
252,500円 |
|
7万円 |
84万円 |
316万円 |
218,500円 |
- *復興特別所得税を考慮していません。試算であり、実際の税額とは異なる場合があります。
共済金の受取方法を選択できる
共済金の受取方法には、「一括受取」「分割受取」「一括受取と分割受取の併用」の3種類があり、ライフプランに合わせて柔軟に選択できます。
ただし、分割受取または併用受取を選択できるのは、以下の条件を満たす場合に限られます。
- 共済金Aまたは共済金Bである
- 請求事由が共済契約者の死亡でない
- 請求事由が発生した日に60歳以上である
- 共済金の額が次のとおりである
- 分割受取の場合:300万円以上
- 併用の場合:330万円以上(一括受取額30万円以上、分割受取額300万円以上)
共済契約者貸付を利用できる
小規模企業共済の契約者は、「共済契約者貸付」を利用できます。
共済契約者貸付とは、掛金の範囲内で事業資金を借り入れできる制度です。最短で即日の貸し付けに対応しており、比較的低金利で利用できる点が特徴です。
共済契約者貸付は、事業資金を迅速に借り入れられる「一般貸付」と、特別な事情がある場合に利用できる「特別貸付」に大別されます。特別貸付には、以下のような制度があります。
| 特別貸付の種類 | 概要 |
|---|---|
|
緊急経営安定貸付 |
経済環境の変化等による一時的な売上の減少により、資金繰りが著しく困難となった場合に、事業資金を借り入れできる制度 |
|
傷病災害時貸付 |
疾病・負傷による入院や災害救助法の適用された災害等により被害を受けた場合に、事業資金を借り入れできる制度 |
|
福祉対応貸付 |
福祉の向上に必要な住宅改造資金、福祉機器購入等の資金を借り入れできる制度 |
|
創業転業時・新規事業展開等貸付 |
新規開業や転業を行う際に必要な資金を借り入れできる制度 |
|
事業承継貸付 |
事業承継(事業用資産または株式等の取得)に必要な資金を借り入れできる制度 |
|
廃業準備貸付 |
個人事業の廃止または会社の解散を円滑に行うために必要な資金を借り入れできる制度 |
iDeCo(個人型確定拠出年金)と併用できる
小規模企業共済の大きな特徴は、iDeCo(個人型確定拠出年金)と併用できる点です。例えば、退職金代わりの安定した積み立ては小規模企業共済、投資信託等を活用した資産運用はiDeCoというように、目的に応じて使い分けられます。
小規模企業共済(最大月7万円)とiDeCo(加入区分により月最大6.8万円)の両方に加入すると、年間100万円を超える所得控除を受けられる場合があります。
どちらも受取時に退職所得控除を利用できますが、受け取り時期が近い場合は退職所得控除額が調整されて、税負担が増える場合があります。そのため、受け取りのタイミングは事前にシミュレーションしておくことが重要です。
小規模企業共済のデメリット
一方、小規模企業共済にはデメリットもあります。
- 掛け捨てのリスクがある
- 元本割れのリスクがある
小規模企業共済への加入は、長期的に積み立てを継続できるかを踏まえて検討することが重要です。
掛け捨てのリスクがある
小規模企業共済は、任意に解約した場合でも解約手当金を受け取ることができます。しかし、掛金納付月数が一定期間に満たない場合は、請求事由が発生しても共済金を受け取れない可能性があります。
掛金が掛け捨てとなるのは、以下のケースです。
| 共済金の種類 | 掛金が掛け捨てとなる場合 |
|---|---|
|
共済金A・B |
掛金納付月数が6ヵ月未満の場合 |
|
準共済金 |
掛金納付月数が12ヵ月未満の場合 |
|
解約手当金(任意解約等) |
掛金納付月数が12ヵ月未満の場合 |
元本割れのリスクがある
掛金の納付月数が20年(240ヵ月)未満で任意解約した場合、解約手当金の額は納付した掛金の合計額を下回ります。なお、任意解約ではなく、事業の廃業や退職等によって受け取る場合は、所定の納付月数を満たしていれば、受け取れる金額が掛金合計額を下回る(元本割れする)ことはありません。
解約手当金の額は、納付した掛金の80~120%相当額の範囲で、掛金の納付月数に応じて決まります。納付月数が240ヵ月以上になると、納付した掛金の100%を超える解約手当金を受け取れます。
なお、加入期間が240ヵ月以上であっても、掛金の未納等により掛金納付月数が240ヵ月未満の場合は、元本割れする可能性があります。また、掛金を12ヵ月以上滞納すると強制的に解約(機構解約)となり、任意解約と同様に解約手当金が支給されます。滞納により納付月数が不足し、元本割れを引き起こすケースもあるため、注意が必要です。
小規模企業共済に加入する際の注意点
小規模企業共済は、長期的に資金を積み立てる制度です。加入する際は、以下の2点を確認しておきましょう。
- 無理のない掛金額を設定する
- 受取時の税金の取り扱いも理解しておく
無理のない掛金額を設定する
小規模企業共済で払い込んだ掛金は、預金のように任意のタイミングで自由に引き出せるわけではありません。そのため、無理のない掛金額を設定することが大切です。デメリットとしてご紹介した通り、任意解約は可能ですが、掛金納付月数が12ヵ月未満の場合は解約手当金が支払われません。
また、掛金合計額を上回る解約手当金を受け取るには、原則として240ヵ月以上の納付が必要です。急な資金需要が生じても、すぐに現金化できるとは限りません。そのため、長期的な積み立てを前提として、運転資金や緊急時の資金とは分けて考えることが大切です。
受取時の税金の取り扱いも理解しておく
小規模企業共済の掛金は全額が所得控除の対象になりますが、受取時には税金がかかる点も理解しておきましょう。税金の取り扱いは、一括受取か分割受取かによって異なります。
| 受取方法 | 所得の種類 |
|---|---|
|
受取方法 |
退職所得 |
|
分割受取 |
公的年金等に係る雑所得 |
|
65歳未満での任意解約による解約手当金等 |
一時所得 |
退職所得は、原則として、退職金額から退職所得控除額を差し引き、さらに2分の1にした金額に対して課税されるため、税負担額を抑えやすい点が特徴です。公的年金等に係る雑所得では、所得金額の計算時に公的年金等控除を差し引けます。
また、一時所得は、特別控除額50万円を差し引いたうえで、その2分の1の金額に対して所得税が課されます。
一方で、受け取るタイミングや他の所得状況等によっては、想定より税負担が大きくなる可能性もあります。
小規模企業共済の加入手続き
小規模企業共済の加入手続きには、オンラインと窓口(委託機関または金融機関)の2つの方法があります。オンライン申請の流れは以下のとおりです。
- ①メールアドレスを登録する
- ②マイナンバーカードを読み取る
- ③必要事項入力・書類アップロードを行う
- ④掛金引落口座を設定する
- ⑤受付確認のメールが届く
- ⑥加入資格に関する審査が行われる
- ⑦審査結果が通知される
- ⑧契約証書等の書類が届く
オンライン申請は、時間や場所の制約を受けずに手続きできる点がメリットです。まずは、「小規模企業共済オンライン 加入受付サービス」でメールアドレスを登録しましょう。
次に、スマートフォンにマイナポータルアプリをインストールし、マイナンバーカードを読み取ります。ICカードリーダライタを持っている場合は、パソコンでも手続きが可能です。
申込後の資格審査には40~60日程度かかるため、余裕をもって手続きを行いましょう。なお、以下にあてはまる方はオンラインで手続きできないため、委託機関または金融機関で申し込む必要があります。
- 共同経営者の地位で加入する方
- マイナンバーカードおよび読み取り機器(スマートフォン等)を持っていない方
- 引落口座がオンライン手続きが可能な金融機関でない方
- 未成年者の方
加入時の必要書類
小規模企業共済の加入時には、契約申込書に加えて以下の書類を提出する必要があります。
| 加入者区分 |
主な必要書類 |
|---|---|
| 個人事業主 |
所得税の確定申告書の控え(事業を始めたばかりの方は開業届の控え) |
| 共同経営者 |
|
| 会社等役員 |
|
| 加入者区分 |
|---|
|
主な必要書類 |
| 個人事業主 |
|
所得税の確定申告書の控え(事業を始めたばかりの方は開業届の控え) |
| 共同経営者 |
|
| 会社等役員 |
|
また、上記以外の書類が必要になる場合もあります。詳しくは独立行政法人中小企業基盤整備機構「共済サポート navi」をご確認ください。
事業資金の管理体制も整えよう
小規模企業共済は、経営者個人の将来に備える積立制度であり、個人口座から掛金が引き落とされます。そのため、日々の運転資金や納税資金等の事業資金とは明確に分けて管理する必要があります。
事業資金を適切に管理するためには、法人の資金の流れを把握しやすい体制を整えておくことが欠かせません。その第一歩として、法人設立後はできるだけ早い段階で法人口座の開設を検討しましょう。
法人口座を開設すると、事業資金の流れを把握しやすくなり、資金管理の健全化につながります。また、資金調達のタイミングや経営状況についても判断しやすくなるメリットがあります。
みずほ銀行の法人口座では、インターネットバンキング「みずほビジネスWEB」や年会費無料の法人カード「法人デビットカード」等、資金管理の効率化をサポートするサービスをご用意しています。法人口座の開設は、ぜひみずほ銀行をご検討ください。
法人口座を開設する銀行の選び方についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:「法人口座はどの銀行で開設する?手数料をはじめメリット・デメリットから選び方を紹介」
まとめ
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や個人事業主等が、廃業や退職に備えて資金を積み立てる制度です。事業や資金繰りの状況に応じて掛金を柔軟に設定でき、払い込んだ掛金は全額が所得控除の対象となります。
一方で、解約手当金の額が払い込んだ掛金合計額を下回る場合もあります。そのため、長期的な積み立てを前提として、無理のない資金計画を立てることが重要です。
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監修者
安田 亮(やすだ りょう)
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。