人的資本経営とは?求められる背景やメリット、情報開示のルールを分かりやすく解説
掲載日:2026年5月8日経営手法
人的資本経営とは、人材を「資源」ではなく、価値を生み出す「資本」と捉え、企業価値の向上につなげる経営の考え方です。
競争力を高め、企業が持続的に成長していくために重要な要素とされており、優秀な人材の獲得・定着に取り組むうえでも、正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、人的資本経営の定義や従来の人材戦略との違い、人的資本経営に取り組むメリットを解説します。企業に求められる情報開示や人的資本経営を実践するためのステップも併せて紹介します。
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目次
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人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を単なる資源ではなく、価値を生み出す資本(投資対象)として捉え、企業の持続的な成長につなげる経営の考え方です。これは、「人」が持続的な企業価値向上を支える源泉であるという考えに基づいています。
経済産業省では、人的資本経営を次のように定義しています*。
人的資本経営の定義
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
従来の人材戦略と人的資本経営の違い
従来の人材戦略と人的資本経営では、人材マネジメントの位置づけや目的が大きく異なります。主な違いは以下のとおりです。
| 従来の人材戦略 | 人的資本経営 | |
|---|---|---|
| 人材の捉え方 |
消費される経営資源(コスト) |
価値を創造する資本(投資) |
| 人材マネジメントの目的 |
管理(必要な人数の確保や配置の最適化等) |
中長期的な企業価値の向上 |
| 取り組み |
人事(諸制度の運用や改善) |
経営戦略を実現するための人材戦略 |
| 主導者 |
人事部が主導 |
経営陣・取締役会が主導し、経営戦略と紐付けて実行 |
| 個人と企業の関係 |
個人は企業に依存し、企業は囲い込む(終身雇用や年功序列等)関係 |
互いに選び合い、ともに成長する関係 |
| 人材の捉え方 | |
|---|---|
| 従来の人材戦略 |
消費される経営資源(コスト) |
| 人的資本経営 |
価値を創造する資本(投資) |
| 人材マネジメントの目的 | |
| 従来の人材戦略 |
管理(必要な人数の確保や配置の最適化等) |
| 人的資本経営 |
中長期的な企業価値の向上 |
| 取り組み | |
| 従来の人材戦略 |
人事(諸制度の運用や改善) |
| 人的資本経営 |
経営戦略を実現するための人材戦略 |
| 主導者 | |
| 従来の人材戦略 |
人事部が主導 |
| 人的資本経営 |
経営陣・取締役会が主導し、経営戦略と紐付けて実行 |
| 個人と企業の関係 | |
| 従来の人材戦略 |
個人は企業に依存し、企業は囲い込む(終身雇用や年功序列等)関係 |
| 人的資本経営 |
互いに選び合い、ともに成長する関係 |
従来の人材戦略では、人材を「経営資源」と捉え、コスト管理の対象として位置づけられることが多くありました。人事部による制度の管理や運用が中心となり、経営戦略との連動が十分に意識されないケースもあります。
一方、人的資本経営では、人材を「資本」(価値を創造するもの)と捉え、投資対象として位置付けます。経営陣が主体的に関与し、経営戦略と連動させながら実行する点が大きな特徴です。
人的資本経営に関する国の動き
日本では、人的資本経営を推進する動きが広がっており、国も様々な施策を通じて後押ししています。
| 時期 | 国による主な動き |
|---|---|
|
2020年9月 |
経済産業省による「人材版伊藤レポート」の公表 |
|
2022年5月 |
経済産業省による「人材版伊藤レポート2.0」の公表 |
|
2022年8月 |
「人的資本経営コンソーシアム」の設立 |
|
2023年3月期決算から |
有価証券報告書への人的資本に関する情報開示の義務化 |
人的資本経営への注目が高まる契機の一つが、経済産業省が2020年9月に公表した「人材版伊藤レポート」です。
本レポートでは、人的資本への投資の重要性や人的資本経営に取り組むうえでの変革の方向性が示されており、経営者に加えて投資家や働き手の間でも注目が高まりました。
2022年8月には、人的資本経営の実践・開示の促進を目的に「人的資本経営コンソーシアム」が設立され、2023年3月期決算企業から、有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報(人的資本を含む)の開示が拡充されています。
人的資本経営が求められる背景
近年の社会環境の変化により、人的資本経営の重要性が高まっています。人的資本経営が求められる主な背景は以下のとおりです。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 働き方や価値観の多様化
- ESG経営への注目の高まり
少子高齢化による労働人口の減少
日本では少子高齢化が進行しており、労働人口の減少は企業にとって重要な課題となっています。
生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向にあり、2024年時点で7,373万人です。将来推計人口では、2050年に5,540万人、2070年に4,535万人まで減少すると推計されています*。
今後も人材確保が難しくなる中、生産性の向上や多様な人材が活躍できる環境整備の重要性が高まっています。こうした課題への対応策の一つとして、人的資本経営への取り組みが求められています。
働き方や価値観の多様化
働き方や価値観の多様化が進んでいることも、人的資本経営への注目度が高まる要因の一つです。
近年は、年功序列や安定志向だけでなく、成長ややりがいを重視する価値観も広がっています。また、育児や介護との両立等、ライフステージに応じた柔軟な働き方への関心も高まっています。
優秀な人材を確保し、定着させるには、人材への投資を積極的に行い、従業員が働きがいを実感できる環境を整えることが重要です。
ESG経営への注目の高まり
投資家をはじめとするステークホルダーは、企業評価においてESG等の非財務情報にも関心を寄せています。
ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を考慮した経営や事業活動のことです。人的資本経営は、ESGのうち主に「社会」に関連する取り組みの一つとして位置づけられます。
近年は、有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報の開示拡充を背景に、人的資本に関する情報開示の重要性も高まっています。
人的資本経営で企業に求められる情報開示
人的資本経営における情報開示は、投資家からの評価や企業価値の向上に寄与し得る重要な取り組みの一つです。
日本では、人的資本の情報開示に関する統一的な枠組みは発展途上です。こうした中、内閣官房は2022年8月に「人的資本可視化指針」を公表し、情報開示の考え方を示しました。
指針では、4つの要素(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)に沿って説明することが望ましいとされ、開示事項の具体例も示されています。
さらに、2023年1月の内閣府令等の改正により、有価証券報告書等でサステナビリティ情報の開示が求められることとなりました*。人的資本(人材育成方針等)に関する記載や、多様性指標の開示も含まれ、2023年3月期決算企業から適用されています。
改正により、有価証券報告書等で新たに開示が求められている主な項目は以下のとおりです。
- 多様性に関する指標(女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金格差)
- 人的資本に関する方針や指標、目標・実績
開示の義務付けは主に有価証券報告書の提出会社が対象ですが、情報開示の重要性は今後、非上場企業や中小企業にも広がる可能性があります。
人的資本経営に取り組むメリット
人的資本経営は、企業の規模を問わず活用できる考え方です。企業が人的資本経営に取り組むことで、主に以下のような効果が期待できます。
- 生産性や競争力が向上する
- 従業員エンゲージメントが向上する
- 投資家からの評価が向上する
- 企業イメージが向上する
生産性や競争力が向上する
人的資本経営では、経営戦略を実現するためにどのような人材が必要かを定義したうえで、人材の採用・配置・育成を戦略的に進めることが重要です。
こうした取り組みにより、従業員一人ひとりが能力を発揮しやすくなれば、生産性や企業の競争力の向上につながるでしょう。
さらに、企業が成長することで人材への投資余力が生まれ、その人材投資が再び企業の成長につながるという好循環が期待されます。
従業員エンゲージメントが向上する
人的資本経営に取り組むことで、従業員の特性や希望に応じた働き方や経験機会を提供しやすくなります。
その結果、従業員のモチベーションが高まり、キャリアを主体的に考えやすくなることで、従業員エンゲージメント(企業への貢献意欲)の向上や離職率の低下が期待できます。
例えば経営者と従業員の距離が近い中小企業では、定期的な面談やミーティング等を通じて企業文化を共有することが、エンゲージメント向上につながる場合があります。
投資家からの評価が向上する
人的資本経営への取り組みは、投資家が企業を評価する際に参照する非財務情報の一つです。近年では、人的資本情報を経営戦略の実現性を測る指標として捉える投資家もみられます。
適切に人的資本情報を開示することで、企業の持続的成長に向けた取り組みが伝わりやすくなり、投資家の理解促進につながる可能性があります。
企業イメージが向上する
人的資本経営の実践は、企業イメージの向上にもつながり得る重要な取り組みです。
人材への投資を積極的に行う企業は、「人材を大切にしている」「働きやすい環境を整えている」等の印象を与えやすく、社会的信頼やブランドイメージの向上に寄与します。
さらに、柔軟な働き方や能力開発機会の提供等の取り組みを発信することで、求職者からの印象が良くなり、採用力の強化にもつながるでしょう。
人的資本経営を実践するためのステップ
人的資本経営の実践には、短期的な施策にとどまらず、中長期的な視点で段階的に取り組むことが重要です。
- ①経営戦略と連動させた人材戦略を策定する
- ②課題を整理してKPIを設定する
- ③効果を検証しながら改善を重ねる
①経営戦略と連動させた人材戦略を策定する
人的資本経営を進めるうえでは、経営戦略と人材戦略を連動させることが重要です。
めざす組織像を明確化し、それを実現するために必要な人材像や、確保・配置の方針を整理することが求められます。
また、経営戦略と結びつけるために、人材戦略の策定・実行を担う責任者を設け、責務範囲を明確にすることも重要です。
②課題を整理してKPIを設定する
次に、経営戦略の実現を妨げる人材課題を整理し、課題ごとにKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。KPIを用いて、企業がめざす姿と現状のギャップを数値で把握することで、経営戦略の実現に向けた人材育成・配置を検討しやすくなります。
なお、2020年に経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート2.0」では、定量的な指標(人材の数や生産性等)だけでなく、定性的な指標(企業理念・文化の浸透度やエンゲージメントレベル等)も含めてKPIを設定する重要性が示されています。
③効果を検証しながら改善を重ねる
策定した人材戦略に基づいて施策を実行し、効果を検証しながら改善を重ねていきます。経営環境の変化等により経営戦略を見直す場合は、人材戦略も柔軟に見直す必要があります。
さらに、経営陣と従業員の対話の場を設ける等、人材戦略を企業文化として、従業員一人ひとりの行動に落とし込む仕組み作りも重要です。
人的資本経営の取組事例
国は、日本企業による人的資本経営の実践を後押しするため、先進事例の公表等の取り組みを進めています。取組事例の一部を紹介します*。
| 項目 | 取組事例 |
|---|---|
|
化学製品メーカーA社 |
|
|
総合商社B社 |
|
|
電気通信会社C社 |
|
なお、上記は一例であり、各社が自社の状況に応じた取り組みを検討・実施することが重要です。
- *出典:経済産業省「実践事例集」
創業期から人的資本経営を見据えた経営基盤づくりを
人的資本経営は、人材を資本として捉え、企業価値の向上につなげる経営の考え方です。企業の規模を問わず、重要性が高まっています。
企業を持続的に成長させるには、設立段階から人材への投資を適切に管理し、経営の透明性や信頼性を高めていくことが重要です。
その土台の一つとして、法人としての資金管理体制を整えておきましょう。資金の流れを整理・可視化できれば、経営状況や人材への投資状況を把握しやすくなり、人材戦略を中長期的な視点で計画的に進めやすくなります。
資金管理を適切に行う手段の一つが、法人口座の開設です。法人口座を開設することで、法人と個人の資金を明確に分けて管理しやすくなり、資金の流れも可視化されます。
さらに、金融機関によっては、資金管理だけにとどまらず、創業期から中長期的な視点で経営支援を受けられる場合もあります。
法人口座開設におすすめの金融機関や選び方についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
関連記事:「法人口座開設におすすめの金融機関は?選び方とメリット・デメリット」
法人口座の開設はみずほ銀行がおすすめ
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まとめ
人的資本経営とは、人材を資源ではなく資本として捉え、その価値を引き出すことで持続的な企業価値の向上につなげる経営の考え方です。
人材不足や定着が企業にとって課題となる中、投資家の評価基準の変化等も背景に、人的資本経営に取り組む重要性が高まっています。人的資本経営の考え方や情報開示の在り方を理解し、自社の経営にいかしましょう。
<最短翌営業日に開設>来店不要で休日・夜間も受付中!
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監修者
大柴 良史
- 社会保険労務士
- CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。