ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

親しき仲にも。「創業者間契約」の必要性

掲載日:2023年1月5日創業関連情報

キービジュアル

起業を志すとき、一人ではなく、親しい友人と会社を立ちあげることを考える人は少なくないでしょう。
そんなケースだからこそ、信頼し合っている間柄、と気を緩めるのではなく、ビジネスパーソン同士としての意識を明確に持つことが大切といえます。
この点に気を付けないと、それぞれが会社の株主となっていることで、トラブルに発展してしまうケースもあるのです。

本稿では、知り合い同士等の複数人で起業する場合に、念頭に置いておきたい「創業者間契約」について、その重要性を解説します。

創業者間契約とは?

創業者間契約とは、会社の創業時に複数人が株式を保有する場合、やがて発生するかもしれないリスクに備え、創業メンバーである株主間で結ぶ契約です。

スタートアップ企業では、社長を含む経営陣や、創業初期から会社に参画している従業員が、一定数の株式を保有していることも多いでしょう。

会社が複数人に株式を譲渡する理由は様々ですが、ある程度の株式を保有してもらうことで経営に積極的に参加してもらいたいという考えや、報酬や給与の代わりに、インセンティブとして株式を譲渡するというケースもあるようです。

そのような状況で、もし創業メンバーの一人が会社を去ることになった場合に、残されたメンバーの一人、もしくは複数人が、辞める人が保有していた株式を買い取ること等をあらかじめ定めておくことが、創業者間契約なのです。

例えば、友人3人が共同で起業し、それぞれが20%、30%、50%の株式を保有していたとします。
その内、30%の株式を保有していた人が退職することになった場合、創業者間契約を結んでいれば、残りの二人の内どちらか、もしくは二人ともが、退職した人の株式を買い取ることになります。

友人同士の起業でも、締結が必要な理由

実は、仲の良い友人同士で起業したとしても、会社を動かしていく中で意見が対立して、創業メンバーが離れてしまうのは頻繁にあることなのです。

創業メンバーが協力し合い、長期間会社を持続させていくのはもちろん理想的です。
しかし、起業したばかりのスタートアップやベンチャー企業においては、最初にどれだけ綿密な事業計画書を作成しても、事業が想像通りに進むことは稀でしょう。
予想外の事態に直面し、メンバーそれぞれの方向性の違いが顕在化し、仲違いによって創業メンバーが会社を去ることも想定するべきです。

そもそも、友人等の社会的な関係性と、プロフェッショナルとしての関係性は別物です。
それまでの対等な立場と、起業してからの指揮系統、意思決定のストラクチャーにおける上下関係にギャップを感じたり、それまで仲が良かったからこそ、一度関係が悪化した後に溝が深まってしまったりするケースもあります。

上記のような理由からメンバーの一人が会社を離れるとき、その人が株式を保有していることによって、トラブルに結び付く可能性があるのです。
株式は一度譲渡すると、会社側から一方的な形で株主としての地位を剥奪することはできません。
創業者間契約を締結していない場合、自社株を保有したまま退職されてしまうという事態もあり得るのです。

株主は議決権を行使できる権利を持っており、保有する株式の持分割合が多いほど、会社に対する支配力が強くなります。
つまり、持分割合の多い人が離れた場合、会社は重要な意思決定ができずに、事業が停滞してしまう可能性があるのです。
さらには、最悪の場合議決権を行使され、経営陣の意図と関係なく経営をコントロールされてしまう場合もあります。

このようなトラブルの発生を避けるため、例え友人間であっても、創業者間契約をあらかじめ結んでおくことが得策といえるでしょう。

リスクマネジメントを学ぶ機会にも

起業をする前から、誰かが辞めたときに必要な契約を結ぶのはネガティブに感じられるかもしれませんが、株式に関する問題は、あらゆる会社で発生するリスクがあるのです。

そして、会社が事業を推進していくうえで、取引先と契約を締結する機会は頻発します。
その際、将来起こり得るリスクを想定して、できる限り回避できるように合意するのは契約の基本といえるでしょう。
リスク管理がままならないと、取引先とのトラブルが発生しやすくなり、それに伴って、事業の停滞をも招きかねません。

創業メンバーが、最初に創業者間契約を結ぶことで、それ以降、幾度となく契約を締結する際に必要となる、リスクマネジメントの基礎を学ぶきっかけにもなるのです。

昨今では、会社の事業推進におけるコンプライアンス遵守に対し、世間から厳しい目が向けられています。
想定できる限りのリスクをなるべく回避し、ビジネスをスムーズに進めていく姿勢は、企業の成長のために重要なことといえるでしょう。

また、あらかじめ創業者株主間契約を結んでおくことによって、友人関係と、仕事上の関係を分けることにもつながります。
創業メンバーとしての関係が終わったとしても、契約によって私情を挟まずに手続きを進められるので、深刻なトラブルを避けることができるためです。
すなわち、創業者間契約は株式による問題の回避に加えて、会社を離れた後の友人関係を保つことにも役立つのです。

創業者間契約を結ぶ際の4つのポイント

では、創業者間契約を締結する際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
以下に4つのポイントを紹介します。

ポイント1. いつ契約を締結すべきか

起業段階で退職予定の人がいなかったとしても、いつ創業者同士の関係性に変化が訪れるかは分かりません。
特に会社を立ちあげてからすぐのタイミングでは、前述のように予想外の出来事が頻発し、起業前とのギャップを感じやすいものです。

加えて、会社を辞める人にとって、株式を手放すメリットはないので、関係が悪化してからの契約締結は困難でしょう。
トラブルをなるべく避けるためにも、株式を譲渡するタイミングで契約を締結するのがベストといえます。

ポイント2. 誰が買い取るのか

一般的に、辞めた人の株式を買い取るのは社長のみ、もしくは創業株主全員となることが多いです。
もしくは、社長、創業株主全員が指定する第三者が買い取る場合もあります。

会社法上、会社は「分配可能額」の範囲でしか自社の株式を買い取れないため、ベンチャーキャピタルから出資を受け資金が豊富だったとしても、会社が買い取るのは難しいと考えておくべきでしょう。

ポイント3. いつ買い取るのか

買取のタイミングとしては、辞任、解任、退職、解雇等の形式を問わず、「会社の役職員の地位を失ったとき」と定めることが多く見受けられます。

また、べスティング(在籍期間に応じて一定割合の株式を保有できる仕組み)を設定する等、細かくルールを定めることでなるべくトラブルを避けましょう。

ポイント4. いくらで買い取るのか

株式の買取評価額は、取得したときの価額に設定するケースが多く、買取時に締結した価額、買取時の時価に設定することもあります。

しかし、買取時に締結した価額の場合、会社を離れる創業株主と折り合いがつかないと買い取れないという事態に陥ることもあるため、注意が必要です。

おわりに

友人同士で起業することによって、予想と違う現実に直面し、創業メンバーが会社を離れることはよくあります。

しかし、あらかじめ創業者間契約を締結しておくことで、そのときに起きかねないリスクをできるだけ減らすことができるのです。
そして、契約を通して、創業者同士がビジネスパーソンとして向き合うことは、会社の躍進のためにも重要な機会となります。
経営者はリスクを冷静に管理してこそ、成功に近づくことができるのではないでしょうか。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

その他の最新記事

ページの先頭へ