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効率の“一足飛“実現! デジタル時代の経理

掲載日:2023年10月3日生産性向上

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電子帳簿保存法の改正などにより、ペーパーレス化の気運が高まったことで、経理部門のデジタル化は一般的になってきました。業務効率化や生産性向上へとつながるDXは、まず身近なところから始めて、効果を実感したいところです。
会社全体の利益となる変革を進めるためには、まず何から始めるべきなのでしょうか。
本稿では、その要諦に迫ります。

遅々として進まないDX。その要因は?

ビジネスシーンにおけるDXの必要性について、多くの企業で意識するようになってから、数年が経ちました。
しかし、自社でデジタル化が進んでいないと感じているビジネスパーソンは、少なくないようです。

実際、1,000社の中小企業経営者や経営幹部を対象に行われたアンケート調査では、34.1%が「必要だと思うが取り組めていない」とし、41.1%が「取り組む予定はない」と回答しています(独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査」令和4年5月)。

DXは、先行きが不透明で、将来の予測が困難なVUCAと呼ばれる現代において、企業が激しい変化に対応し、競争上の優位性を確立するための重要な取り組みです。
ともすれば、上記の結果は由々しき事態だといえるでしょう。

これほどまでにDXが進まない理由として、同調査では、「予算の確保が難しい」「DXに関わる人材が足りない」「何から始めてよいかわからない」という課題が上位にランクインしています。
たしかに、ひとくちにデジタル化といっても、その範囲は多岐にわたるため、どこから手を付けるべきか、どの程度コストをかけるべきか、誰が主導で進めていくべきかというのは、難しい問題かもしれません。

加えて、近年、テクノロジーが急激に進化していることで、DXと聞いてイメージするレベルが高くなっているような側面もあります。
例えば、製造業であればAIを使った工場の完全自動化、小売・サービス業であれば顧客情報をビッグデータとして活用するといった成功事例を見聞きすることで、ハードルが高いと感じる経営者もいるはずです。

しかし、DXを成功させるうえで重要なのは、全社一丸となって進めること。
なぜなら、生産性向上や業務効率化などに取り組むにあたっての主体は、従業員一人ひとりであるからです。事業に関わるすべての人が、その価値を理解しなければなりません。
そのためには、それぞれがDXのメリットを実感できるように、身近な業務で小さな成功体験を積みあげていくことが、第一歩といえるでしょう。

そして、そうした成果をあげやすい分野の1つが、経理業務です。
請求書や見積もりの作成、経費精算など、経理業務には多くの従業員が関係しています。そこを変革することができれば、会社として大きな価値を生み出すことができるはずです。

ペーパーレス化と、ヒューマンエラーの削減

経理業務のDXを実現するツールは、ここ数年で多くのベンダーから様々なものがリリースされています。
特に紙を使った申請や管理が多かった分野であるため、クラウド会計システムや経費精算システム、電子請求書システムなどを使って、あらゆる作業を電子化することで、ペーパーレスにも大きく寄与するでしょう。

ここでは、そこから一歩進んで、経理DXにおける最新トレンドを紹介します。
どのようなツールを導入するか、以下の機能にも着目しつつ、自社に合ったものを探してみてください。

・AI-OCR
AI-OCRとは、人工知能(AI)と光学文字認識機能(OCR)を組み合わせたシステムのことです。
従来のOCRは画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換するだけで、手書きや手入力よりは手軽にできるものの、決められた書式以外だと読み込めないものがあるなど、不便さを感じる部分もありました。

そこにAIが搭載されたことで、フォーマットの異なる文書でも精度の高い文字認識を実現することができるようになったのです。
経費精算システムで活用されることが多く、例えば、スマートフォンで領収書の写真を撮るだけで、その内容をシステム内に入力してくれるものがあります。
そうしたシステムの中には、出張手配から出張費精算までをワンストップで実施できるツールもあるようです。

・RPA
RPAとは、業務プロセスを自動化する技術のこと。
これはDXが日本で注目されるようになる前から、業務効率化の観点で、多くの企業に取り入れられてきました。

その一方で、ここ数年、テクノロジーの進歩によって、RPA自体も進化しているといえます。
例えば、帳票類を前述のAI-OCRで文字データ化し、RPAへ受け渡すことで、まったく人の手を介さずに一連の経理業務を完了することができるようにもなるわけです。
これによって、属人化しやすい経理部門の仕事を分散することができるようになり、従業員の高齢化や人材確保の難航を解決するという側面でも、力を発揮するでしょう。

このように、システムやツールは日々進化しています。そのため、数年前に導入したサービスが陳腐化していないか、常に最新情報を集めながら、見直すことも必要なのです。

・BI
BIはビジネスインテリジェンスの略称で、企業が収集し、蓄積している膨大なデータを分析・加工して、組織の意思決定を支援することです。その実現のためには、BIツールと呼ばれるシステムが不可欠となります。

このツールを導入することで、売上や利益などの事業状況を、システム上で迅速に集計し、グラフ化なども簡単にできるようになるため、経営戦略の策定におけるデータ収集や資料作成などの煩雑な経理業務が、効率化されるでしょう。

これらに共通していえるのは、デジタル化によって業務効率があがるとともに、ヒューマンエラーが起こる確率も下がっていくということです。
従来の煩雑な処理方法では、どうしてもミスが発生することもあったでしょう。できるだけ自動化することができれば、人の手が介在する回数も減るため、そうした間違いが起こりにくくなるわけです。

ただし、ワンストップですべての作業をシステムやツールが代替するようなものに関しては、最初に設定する前提条件などにミスがあると、出てくる結果も誤ったものになってしまいますので、注意が必要です。

トップが強い意思を持って、継続的な予算確保を!

経理業務をデジタル化することで生産性向上や業務効率化を図る場合、考えなくてはならないのが「予算」です。
どんなツールやサービスにもコストがかかりますが、先に述べた通り、企業のDX推進を阻む壁の1つに、予算確保の困難さがあげられています。

独立行政法人情報処理推進機構が出した「DX白書2023」では、DX推進のための予算確保について、「年度の予算の中にDX枠として継続的に確保されている」と答えたのは、日本企業543社のうち、23.8%に留まりました。
対して米国企業では、40.4%と最も割合が高くなっています。

また、日本企業では「確保されていない」が28.0%と、継続的に予算を確保している企業を上回りました。
本来、DXは全社横断で取り組むべき中長期的な施策であるため、一過性ではない継続的な予算確保は、DX推進において重要な要素となります。
それにもかかわらず、予算が確保できていない理由には、デジタル化による「具体的な成果や効果が見えない」という不安感があるようです。これは、かかるコストに対する費用対効果がわかりづらいということでしょう。

この状況を打破するためには、まずデジタル化する対象の業務を棚卸しして、現状それに費やしている時間や人数などを算出しなければなりません。
そうした観点でも、経理業務は決まった時期に決まった作業を決まった担当者が行っていることが多く、DXの推進によってどれほどのコストカットにつながるかを計算しやすい分野でもあります。

ITツールやサービスの導入によって、どの程度の費用対効果があるのかは、各ベンダーに相談すると良いでしょう。
きっと親身になって答えてくれるはずです。

そうして自社に適したツールやサービスが見つかったら、最終的には経営者のDX推進に対する強い意思が必要となります。
トップの舵取りなくして、会社全体を動かすことはできません。
DXが従業員一人ひとりの仕事を向上させること、変革の必要性をしっかりと訴え、全員が納得感を持って進められるようにするのも、経営者の重要な役割なのです。

おわりに

経済産業省は、2018年に発表した「DXレポート」で「2025年の崖」という可能性を示唆しました。
これは、「企業の持つ既存のITシステムが老朽化し、レガシーシステムとなりDX推進の妨げとなる。レガシーシステムの刷新がうまくいかず、DXの実現が遅れることで、世界の市場で起きるデジタル競争に負ける状況が生まれる。その結果、2025年から2030年の間に日本国内で発生する損失は最大毎年12兆円と予測される」という内容です。

発表された当初は中期的な提言だったものの、今や、2025年は目の前に迫っています。
これからの時代を生き残っていくために、少しでも早くDXに取り組む必要があるのです。そのためには、常に新しい情報に耳を傾け、自社に合った有用なツールがあれば、積極的に取り入れていかなければならないのかもしれません。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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